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2009年秋 - 八ヶ岳・天狗岳〜三ツ頭縦走


2009年11月21日(土)〜11月23日(月)
場所
長野県茅野市、南佐久郡小海町、南牧村、山梨県北杜市(旧北巨摩郡高根町、長坂町、大泉村)
ルート
11月20日
高尾=小淵沢(泊)
11月21日
小淵沢=茅野=渋の湯…黒百合平…中山峠…東天狗…オーレン小屋(泊)
11月22日
オーレン小屋…赤岩ノ頭…硫黄岳…横岳…赤岳…キレット小屋(泊)
11月23日
キレット小屋…権現岳…三ツ頭…天女山=甲斐大泉駅
参加者
K、H、K、S、中山、I
参考文献

はじめに

 剱岳早月尾根の偵察から3週間が経ち、山にも雪が積もってきた。当初、上越でラッセル山行の予定であったが、それでも雪の量が少ないため八ヶ岳の縦走になった。

 私は八ヶ岳は3回しか行ったことがなく、それも赤岳周辺だけ(八ヶ岳阿弥陀南稜赤岳主稜阿弥陀岳北稜&石尊稜)であり、八ヶ岳の地理には疎い。しかし今回天狗岳から南側を縦走することで八ヶ岳を概観することができた。

 予報では天気はあまりよくなかったのだが、1日目はくもり、2日目は晴れのちくもり、3日目は快晴と2日目の夜を除いて降られなかった。終日風は吹いていたが、八ヶ岳なのでいつもどおりである。気温は高く、雪山としては快適であった。サングラスを忘れたが雪面が輝くほどまぶしかったのは最終日だけであり、それも日が雲から出て2時間ほどで下山してしまったので問題なかった。

 天気がよかったので雪の白と空の青のコントラストのとれた写真がたくさん撮れた。

0日目

2009年11月20日(金) 

高尾=小淵沢(泊)

 22:26発の最終小淵沢行きに間に合うよう22時高尾集合。しかし中央線が事故のため遅れており、22:15ごろに高尾に着いた。列車は接続を考慮したのかどうかよく分からないまま5分ほどの遅れで出発した。大月あたりまで来ると人が減ってくるので適当なボックスシートにばらけて寝る。

 終点小淵沢に到着し、ホームの待合室で就寝。外は寒いが、待合室は風もなく快適であった。

1日目

2009年11月21日(土) くもり

小淵沢=茅野=渋の湯…黒百合平…中山峠…東天狗…オーレン小屋(泊)

コースタイム
渋の湯7:56
8:23
パノラマコース合流点9:17
9:30
黒百合ヒュッテ10:43
11:07
中山峠11:14
東天狗岳12:27
東天狗岳下12:45
12:56
根石岳13:19
三冠山13:33
13:56
オーレン小屋14:22
19:00就寝

 小淵沢駅で起床、1本目の下り列車に乗って茅野へ。茅野で予約していたタクシーに乗車。予定では竜源橋から入山、天祥寺原、横岳、縞枯山を経て1日目は麦草峠で泊まり、編笠山までの縦走の予定であったが、この3日間毎日雨もしくは雪の予報が出ており、夏山ほどのスピードが出せないと判断し、麦草峠よりさらに南の渋の湯から入山することにした。予定のほぼ1日分をカットしているが、結果的にちょうどよいくらいの行程となった。

 40分ほどで渋の湯に到着。渋の湯の標高は1850mあり、道にはうすく雪が積もっていた。渋川を渡り、黒百合平へ向かう。道はシラビソの林の中を緩やかに登っていく。1時間ほどで稜線に出る。稜線は平らで道がないとどこを歩くのか分からない。稜線に出ても緩やかな道が続く。やがて唐沢上流の谷沿いの道に出る。谷沿いと言ってもごく浅い谷で水も流れていない。平らかな斜面にはシラビソ、コメツガ、トウヒなどがあり、Iさんに違いを教わりながら歩く。木々はみな葉っぱに雪が積もっており、重そうにこうべを垂れていた。足下はすっかり雪で覆われ、景色は白い。もう山は冬であった。

黒百合ヒュッテへ
11/21 黒百合ヒュッテへ向かう。平坦な道で現在地が分からない。
シラビソ
11/21 シラビソとコメツガの林の中を歩く。

 やがて黒百合ヒュッテに到着。山の民家風の小屋と新しいトイレ、太陽電池が並んでいた。小屋は開いていてテントが1張り。気温は-6℃。天気はくもりだが、ときどき晴れ間が見えて雪面がまぶしい。Kさんがサングラスを忘れたことを後悔していてあまりに天気がよくなるようなら下山しようかと考えていた。私もサングラスを忘れてしまいどうしようか迷うが、とりあえずはくもりだしそのまま歩くことにする。

黒百合ヒュッテ
11/21 黒百合ヒュッテ到着。
中山峠
11/21 中山峠。茅野側は平坦だが、佐久側が切れ落ちている。

 黒百合ヒュッテの横を通り、中山峠を経由して天狗岳へ向かう。峠道らしくない平坦な道を歩き、中山峠に出る。峠から稜線を南に登る。部分的に裸地があり、風が冷たい。思わず目出帽をかぶる。裸の雪面を登っていくと東天狗岳にたどりついた。しかし風が強くとても休んでいられない。休める場所を探しながら根石岳へ向かう。

東天狗岳
11/21 東天狗岳へ登る。風が強い。後方は蓼科山。
東天狗岳
11/21 東天狗岳山頂まであとわずか。

 東天狗岳からはトレースがなく、歩く人は少ないようだ。少し下ったところで軽く一本とる。寒いのですぐ出発。東天狗岳から根石岳を越えて根石山荘までは木も草もなく風がもろに当たる。道を示すロープにはエビのシッポが発達していた。根石山荘は稜線から少し下がったところにあり、どうやら閉じているようだった。根石山荘から少し登ると樹林帯に入り、風はやむ。登りきると箕冠山。ここで一休み。

根石山
11/21 東天狗岳から根石山、硫黄岳を望む。硫黄岳には雲がかぶっている。
根石山荘
11/21 根石山荘の鞍部。奥に箕冠山。根石山荘はすでに営業を終えていた。

 箕冠山でこの日の幕営地を相談する。オーレン小屋か赤岳鉱泉か。赤岳鉱泉だと硫黄岳から赤岳への縦走には遠回りになるのでオーレン小屋に泊まることにする。箕冠山からオーレン小屋への道は遭難事故があったため通行禁止、オーレン小屋の冬季小屋は閉まっていると看板があったが、夏沢峠経由だと遠回りなのでオーレン小屋へ直接下る。看板の注意の割に道はしっかりしており、難なくオーレン小屋にたどり着いた。オーレン小屋に着くころには天気は晴れてきてあたたかく、沢には水も流れていた。

箕冠山
11/21 箕冠山で一休み。樹林帯で風がなく、落ち着いて休める。
オーレン小屋
11/21 オーレン小屋の冬季小屋に宿泊。

 オーレン小屋の冬季小屋は開いており、広く快適なので小屋を使わせてもらう。小屋内はやたらと注意書きの張り紙が多く、小屋の宿泊費の箱を開けたり、非常食に手を付けると「死ぬぞ」と書かれていた。小屋が快適な反面、泥棒にも狙われやすいようだ。水は橋のすぐ下流側で簡単に汲め、雪を溶かす必要もなく快適な夜を過ごせた。この日はみんな早めに寝たのだが、みんな寝る直前にKさんが「実は誕生日なんですよ」と告白しみんなに祝われていた。

2日目

2009年11月22日(日) 晴れのちくもり

オーレン小屋…赤岩ノ頭…硫黄岳…横岳…赤岳…キレット小屋(泊)

コースタイム
オーレン小屋4:00起床
6:12
赤岩ノ頭7:36
7:45
硫黄岳8:05
硫黄岳小屋8:25
8:42
横岳奥ノ院9:36
9:54
赤岳展望荘11:04
11:30
赤岳12:09
12:14
キレット小屋13:43
20:30就寝

 4時起床。ご飯を食べて出発。天気は快晴で夜明け前は星がよく見えた。朝のうちは寒いが昼は暖かくなりそうだ。6時過ぎに出発するころにはヘッドランプは要らないくらいに明るくなっていた。

 オーレン小屋から赤岩の頭へ向かう。雪の樹林帯を登っていく。緩やかな道を登っていくと1時間ほどで針葉樹林からハイマツ帯に変わり、やがて草木のない赤岩ノ頭に着いた。ここから縦走する硫黄岳、横岳、赤岳が並んで見える。しかし見える赤岳はだいぶ遠い。まずは硫黄岳に登る。

赤岩ノ頭
11/22 静かな樹林帯を赤岩ノ頭へ登る。
硫黄岳
11/22 赤岩ノ頭から硫黄岳へ登る。

 割になだらかな斜面を登ると真っ平らな硫黄岳山頂。一番高いと思われるところに社と看板があり、そこで写真撮影。赤岳鉱泉側のガケに沿って硫黄岳を下る。広い斜面で迷わないように所々にケルンがあった。ガスだったらここを下るのは難しそうだ。少々風が出てきて寒い。下り着いて硫黄岳山荘。小屋じまいしている硫黄岳山荘で一本とる。Hさん曰く、昔は11月の勤労感謝の日のころは八ヶ岳のどの小屋も営業しており、登山者でにぎわっていたそうだが、今の山はそれほど登山者がいない。

硫黄岳
11/22 平坦な硫黄岳に到着。何だか丸い地球の上のようだ。
硫黄岳
11/22 硫黄岳から硫黄岳小屋へ。雲海の空へ下る。

 硫黄岳山荘から横岳に登る。まずは台座の頭へ。広い斜面の台座の頭を登る。台座の頭も木がなく、赤みを帯びた石ころで覆われている。赤岳鉱泉側が急なガケになっており、富士山のお鉢巡りのようである。さらに奥ノ院への登り。いったん東側に鎖を伝って下り、また西側に移って急な斜面を登ると横岳の奥ノ院であった。そこで一本。太陽はひつじ雲のような雲の群れに覆われ、日差しはない。雪目になる心配はないが、赤岳の南側にも雲が湧いてきて天気は悪くなりそうだ。

 奥ノ院からは割となだらかな道を行く。三叉峰で杣添尾根を分け、気づかぬうちに石尊峰を過ぎる。石尊峰は今年2月に登った石尊稜の到達点だ。鉾岳を西から巻き、日ノ岳を東側から下る。二十三夜峰を過ぎて地蔵仏。地蔵尾根を分けて赤岳展望荘へ登る。地蔵仏からすぐに赤岳展望荘に着く。赤岳展望荘も小屋じまいしていたが、冬季はまた営業するそうだ。東側の風の弱いところで休む。Iさんのアイゼンが靴と合っておらずアイゼンの長さを合わせる。靴も今回買ったプラスティックブーツで靴擦れして痛いらしい。

横岳
11/22 硫黄岳を下り横岳へ登る。
奥ノ院
11/22 台座の頭から奥ノ院への稜線。
稜線
11/22 奥ノ院から赤岳への稜線。
鉾岳
11/22 鉾岳の巻き。

 赤岳へ登る。3000m近い稜線で急登であり風も吹いてきて息苦しい。赤岳頂上小屋も閉まっていた。山頂看板に立つと歩いてきた天狗岳や硫黄岳、となりの阿弥陀岳、これから歩く権現岳が見える。その先には南アルプスが控えていた。赤岳はさすが八ヶ岳最高峰でありほかにも2人の単独行が山頂にいた。ただ私は気づかなかったのだが、一人はアイゼンもピッケルも持たずに下っていたとのことで、恐ろしいことをする人がいたもんだと思った。

赤岳展望荘
11/22 赤岳展望荘。小屋は閉まっていた。
赤岳山頂
11/22 赤岳山頂にて登頂写真。

 赤岳からキレット小屋へ下る。ガラガラの下りにくい道である。前に阿弥陀南稜のあとこの道をたどったが、ひどく疲れた記憶がある。雪もまばらで夏道と変わらない下りにくさであった。下りきって少し登り下りするとキレット小屋に着いた。できれば今日中に権現岳まで行きたいところだが、時刻は13時を回っており、権現岳から先、テント張れそうなところまで行くのは難しいためキレット小屋にテントを張る。

赤岳
11/22 赤岳からキレット小屋への下り。雪は少なくガラガラで下りにくい。
幕営
11/22 キレット小屋で幕営。

 キレット小屋も開いておらず、幕営する人も私たちだけであった。水は水場まで下ると沢にわずかに流れていたが、水を集めるのに非常に時間がかかり手間もかかるため8リットルほど汲んであとは雪を溶かすことにした。この晩はご飯とシチューだったが、ご飯に芯の残っている部分があり、残してしまった。夜は雪がしんしんと降り、20cmほど積もった。

3日目

2009年11月23日(月) 快晴

キレット小屋…権現岳…三ツ頭…天女山=甲斐大泉駅

コースタイム
キレット小屋3:30起床
6:23
ツルネ6:55
旭岳7:21
権現岳8:00
8:33
三ツ頭9:15
甲斐小泉分岐9:20
9:28
前三ツ頭9:46
10:11
天ノ河原11:15
11:21
天女山駐車場11:30
11:52

 3:30起床。朝のうちは晴れたりうすく雲が出たりして星が見えたり消えたりしていた。出発するころには快晴になっていた。

 準備のできた人から順次出発。樹林帯の中、ツルネヘ登っていく。平坦なツルネからは赤岳と天狗尾根の特徴的なギザギザが見えた。すでに夜明けになってもよい時間だが、東の空には雲があり、太陽は雲に隠れていた。おかげでまわりの山が青白く見える。佐久から野辺山にかけての盆地には雲が雲海のように張っていた。ツルネから旭岳はしばらく平坦な道を行く。昨日の雪で葉っぱを落とした木は白く染まっていた。葉っぱの残っている木はまだ黒いままだ。景色が美しいので立ち止まって写真を撮るが、電池の起電力が弱まっており、カメラをシャツの中に入れて温めながら歩く。

赤岳
11/23 ツルネで振り返る赤岳。
旭岳
11/23 これから登る旭岳。左奥には富士山。

 旭岳の登りは急である。雪の積もった道をジグザグに登る。旭岳に登り着くころには太陽も雲から姿を現し、東側斜面の雪はまぶしく照り返していた。振り返れば阿弥陀岳から赤岳に至る稜線にも日の光が当たり、陰影がよりはっきりしている。

エビのシッポ
11/23 岩に伸びたエビのシッポ。
権現岳
11/23 旭岳から権現岳へ。

 旭岳から下り着くあたりでアイゼンが外れたため、アイゼンを装着し直す。権現岳に登り返し、最後に長いハシゴを登る。50段はあろうかという長いハシゴだ。登っていて疲れてくるし、ハシゴが斜面から浮いた位置に設置されているため高度感がある。そのハシゴを登りきると権現岳の山頂は間近であった。稜線上で休む。

ハシゴ
11/23 権現岳の長いハシゴ。
権現岳
11/23 権現岳山頂。

 休んでいると西風が冷たい。しかし展望は最高で北アルプスから木曽御岳、中央アルプス、南アルプス、富士山まで見える。30分ほど待っていると後続のHさん、Sさん、Iさんが遅れてやってきた。合流してから三ツ頭、天女山方面へ下ることを伝える。Iさんがだいぶ遅れてきたので下山にタクシーを使うことを考える。携帯電話の電波は入るようだった。

 三ツ頭へはしばらく平坦な稜線を歩いた後急な下りである。鎖の着いた箇所を過ぎるとあとは樹林帯の中を下っていき、登り返すと木のない三ツ頭山頂に着く。三ツ頭山頂で単独行の人にあった。天女山から往復であろうか。甲斐小泉への道を分けるところで大泉観光タクシーに電話する。電話は入った。三ツ頭は雪があるが、天女山の駐車場は車で入れるとのことだ。近づいたらまたタクシーを呼ぶ連絡をすることを伝える。

権現岳
11/23 権現岳から三ツ頭へ下る。遠くには富士山。
三ツ頭
11/23 天ノ河原付近から三ツ頭を振り返る。

 少々急な道を下ると河原のような前三ツ頭に出る。太陽が昇ってきてだいぶ暑い。シャツ2枚に減らすが、また下り始めるとそれでも暑くなった。前三ツ頭で12時に天女山にタクシーをよぶ。前三ツ頭から急な道を下る。ベンチのある1859m峰付近からは平坦で広い尾根を下る。前三ツ頭から天ノ河原までエアリアマップで2時間となっているが、意外と早く天ノ河原にたどり着けた。天ノ河原から天女山駐車場までは10分。子供連れや犬を連れた人が歩いていた。特に犬を連れて歩く人が多く、ある1頭には吠えられてしまった。

 天女山駐車場でタクシーに乗り込み、12時頃甲斐大泉駅に着いた。幸い12:09に普通列車が来たのでそれに乗り、小淵沢で普通高尾行きに乗り換え、高尾で解散した。

おわりに

 八ヶ岳中山峠からの縦走は初めてであったが、中山峠から南側をひと通り歩くことで八ヶ岳南部を概観することができた。11月末の勤労感謝の日で下界は紅葉の末の季節とはいえ、八ヶ岳はすでに雪景色であった。その分、雪山の練習になったと思う。また予報より天気はよかった。風は強かったもののひどく寒いということはなく山歩きを楽しめた。

 11月末の八ヶ岳は稜線上の営業小屋が黒百合ヒュッテくらいしかなく、テント泊でないとほとんど歩けないことを注意されたい。また水もオーレン小屋には流れているものの、雪を融かすことを前提で燃料を用意した方がよいだろう。

(2009年11月27日記す)


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