山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2007年山行一覧>奥鬼怒・金精峠〜物見山[1/2]
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やっとこの縦走を成し遂げた。感無量である。
今回の縦走の中心となった燕巣山は栃木県と群馬県の境にある山。鬼怒川源流の一番奥まったところにあり、鬼怒沼山と念仏平の間に位置する。群馬側には双子のように四郎岳が張り出している。標高2222mとぞろ目の山でもある。
例によって県境縦走のターゲットとしてこの山を選んだのだが、これまで悪天候のため3度退けられた。その概要については次の「これまでのあらすじ」を参照いただきたい。今回4度目にして計画通り縦走を成し遂げられ、感無量である。
ルートには金精峠〜念仏平〜湯沢峠〜燕巣山〜物見山を選んだ。第一の目的が県境縦走であることからこのルートであり、区間として道のないヤブ区間の念仏平〜物見山をとりあげた。縦走の向きとしては念仏平2326mの方が物見山2113mより高いので念仏平→物見山とした。また物見山→念仏平の記録はネットで見かけても念仏平→物見山の記録は見つけられなかったからだ。
燕巣山の登山ルートとしては群馬県側、丸沼から四郎沢を登り、燕巣山を往復するのが最も一般的である。エアリアマップ(尾瀬 燧ヶ岳・至仏山、2007)にもそのルートが破線で示されている。このルートであれば煩わしいヤブ漕ぎも少ないようだ。
一方、物見山から燕巣山への縦走、燕巣山から湯沢峠への縦走も一部の登山者によって行われている。以下に参考となる文献を示す。これらの文献を参考に私も今回の縦走を行った。
0日目 |
2007年10月6日(金) |
新宿駅=栗橋=東武日光駅(泊)
湘南新宿ラインでJR東北本線栗橋へ。東武日光線に乗り換え、東武日光駅下車。東武日光駅の軒下で就寝。なんかすげー寒い。着るものをシャツ+カッパにしぼったことを後悔する。23:00就寝。
1日目 |
2007年10月7日(土) 晴れときどきくもり |
東武日光駅=湯元温泉バス停…金精峠…念仏平避難小屋…湯沢峠(泊)
東武日光駅 | 5:30起床 |
6:13 | |
湯元温泉バス停 | 7:25 |
7:26 | |
金精峠登山口 | 8:32 |
8:41 | |
金精峠 | 9:03 |
念仏平避難小屋 | 10:14 |
10:31 | |
2326m峰 | 10:50 |
2326m峰西 道迷い | 11:00 |
11:40 | |
2260m峰手前 | 12:00 |
12:19 | |
2260m峰 | 12:25 |
2020m鞍部 | 13:00 |
2070m峰 | 13:25 |
13:42 | |
2018m標高点 | 14:10 |
1940m鞍部 | 14:43 |
15:00 | |
2001m峰 | 15:21 |
湯沢峠 | 15:44 |
18:40就寝 |
始発のバスに合わせて5:30に起きる。東の空は晴れ。今度こそ天候はよさそうだ。湯元温泉行きのバスに乗り、また寝る。湯元温泉まで1650円。通い慣れた金精峠旧道を登る。途中、中ツ曽根の登山口で山行計画書を提出する。旧道の少しヤブっぽいところを抜けて車道に出る。男体山方面が晴れて明るい。今まで燕巣山を目指してきてこれほど晴れた日があっただろうか。いや、ない。半ば縦走を終えたような気になって金精峠登山口に登る。
金精峠登山口にはたくさんの車が停まっていた。今日は天気がよいので入山者が多いようだ。金精峠への急登を登る間にも6人ほどのパーティーに追いついた。金精峠には全部で30人ほど人がいる。人も多いし、休むにもきりが悪いので先を進む。登っている間になんだか空がくもってきた。私のせいか?
温泉ガ岳の登山口には去年なかった分かりやすい看板があった。その先、温泉ガ岳の巻きでは20人ほどのパーティーに追いつく。巻ききったところで先を通してもらう。念仏平避難小屋手前の水場で水を補給。2泊3日、下山まで水を汲めないと想定し、8リットルを汲む。結局1泊2日で3リットル余ったので5リットル使った計算になる。
この辺歩く人は1日目に金精峠→根名草山→日光沢温泉(小屋泊)、2日目に鬼怒沼湿原往復が一般的(アルペンガイドも同様のコースを紹介している)なようで軽装の人が多い。そのため100リットルザックを背負う私はかなり奇異な存在らしく、どこへ行くのか聞かれた。しかし「湯沢峠」というと「日光沢温泉下りてから登り返すの?」という話になり、いまいち噛み合わなかった。
10/6 2326m峰山頂付近。平坦でヤブは薄い。 |
10/6 薮のない谷状の地形。自然にできたのだろうか。 |
2326m峰へ登る。登山道が最高点に達するあたりから左のヤブに突入。2326m峰まではヤブもなく歩きやすい。2326m峰は丸い山頂でどこが最高点かよく分からない。最高点を過ぎたと思われるあたりで西へ向かう。尾根になっているところはツガのヤブが濃いので、薮のない右手の谷状の地形を下る。ここだけ倒木もなく道のようだ。下りきると湿地帯。乾いたところを探して先を進む。
↑この地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(三平峠、川俣温泉、丸沼、男体山)を使用したものである。
10/6 湿地帯。薮のない谷状の地形を下った先にあった。 |
10/6 2326m峰南面の笹原。遠くに日光白根山が見える。 |
湿地帯を過ぎてあまり北寄りに進むと道迷いの原因になるので、先ほど避けた左手の尾根を越える。尾根を越えるとそこは広い笹原。遠くに白根山が見える。ということは真南を向いているので西へ軌道修正。都合良く笹原は西へ続いているのでそれをたどる。すると2300m〜2290mの等高線がややつまったところに出る。これが見たところ急な下りが続くようであたかも300m西の2260m等高線付近に見える。これを下ってしまっては根名草沢源頭に下ってしまうと考えてちゅうちょするが、ほかに道がない。等高線に沿って北へ向かうが、根名草山が見える。こちらの方角ではない。しかたがないので疑心暗鬼になりながら南寄りの斜面を下る。5分ほど下ると左手に尾根が見える。これを見て下りすぎたと勘違いし、来た道を引き返す。が、見えた尾根は先ほど自分が歩いていた尾根であった。現在地が分からず窮する。
10/6 2300m〜2290mの等高線の先。急に下っていて下っていいものか悩む。 |
10/6 2280m付近。踏み跡らしきものがある。 |
下手に進まずに引き返すのも手だが、ここまでの晴れを逃したくない。ザックを置いて南側の斜面を見に行き、白根山で南斜面であることを確かめた上で、下るべき南向きの尾根がまだ現れていないことを確認し、西へ進むことにする。さっき下った斜面をまた下り、さらに先へ進む。進むと踏み跡のようなものもある。ヌタ場を過ぎてヤブっぽいところを突っ切る。コンパスで方角を合わせて今度こそ南へ向かう。歩くに従い、尾根が細くなってきたので現在地に確信を持てた。2326m峰西で稜線が真南に折れる2260m付近だ。
現在地を把握できたので一休みする。地形図を見ても2326m峰付近が平坦でルートファインディングが難しそうなのは分かっていたが、だいぶ手こずった。先が思いやられる。気がつけばいったんくもった空も晴れてきた。今日中に湯沢峠に着きたい。
10/6 2260m峰から少し下ったところにあったヌタ場。 |
10/6 四郎岳と燕巣山が見えた。 |
2260m峰の登りは割とヤブが薄く登りやすい。下りは2237m標高点へ下らないように西側の斜面に注意しながら下る。なんとなく西側の斜面が張り出しているところを下る。すぐヌタ場を発見し、それを過ぎると尾根が細くなる。はじめは何となく道があり、下りやすい。四郎岳と燕巣山が見えるあたりから厳しいヤブとなり、泳ぐように下る。そのあとは尾根の形がはっきりしなくなるのでルートを誤らぬよう北寄りの斜面を下る。
10/6 2260m峰の下り。コースどりが悪いのかヤブに突っ込む。 |
10/6 これだと何の写真かよく分からないが、2070m峰登りの針葉樹のヤブ。手強い。 |
下りきったあたりは根名草沢右俣の源頭だが、水は見えない。風の音か水の音かザーという音は聞こえる。確かめる気力もなく先を進む。次の2070m峰は手強い針葉樹のヤブが控える。格子に挟まれるようになりながら何とか越えると2070m峰。この栂のヤブがこの日一番のヤブだった。ここで一本。背中に入った栂の枯れ葉をかき出すが、面倒になってシャツを脱いで背中を払った。
2070m峰からはヤブもおとなしくなる。となりの2050m峰の登りで今日3つ目のヌタ場を発見。何ともヌタ場の多いところだ。山頂付近にももう一つヌタ場があった。2050m峰の下りで切り開いたような幅2mヤブなしの斜面があり、楽なのでこれを下る。こういう斜面は自然にできたのだろうか。何とも不思議だ。2050m峰の下りも容易に進むが、2020m付近は若干急な下り。途中北側の開けたところで根名草山西面の白いザレを認める。2018m標高点のややヤブっぽいところを過ぎ、2030m峰の登り。2030m峰の山頂は広い。2030m峰の下りでまたヌタ場発見。その先、北へ下らないよう西側斜面に気をつけながら下る。下りきった1940m鞍部は広い。ヤブもあるがそんなに気にならない。ここで一本。
10/6 2030m峰の下りでまたヌタ場発見。 |
10/6 広い1940m鞍部。ここから2001m峰へ登る。 |
何とか湯沢峠まで一本で着けそうなところにたどりついた。あとは2001m峰を越えて湯沢峠へ下るだけである。笹ヤブを越えて2001m峰。ここで南西に尾根を分ける。目的の湯沢峠は北なので北へ向かう。途中で燕巣山が見えた。下草が生えているが下りやすい。やがて鞍部。が、そこは湯沢峠ではなくただの鞍部。湯沢峠が笹に埋もれて人跡がなくなってしまったのかと思ったが、地形図を見るとまだ湯沢峠ではないらしい。背丈ほどのヤブを越えて登り、少し下ると湯沢峠に出た。
10/6 2001m峰。笹ヤブに覆われている。 |
10/6 湯沢峠にツェルトを張る。道の真ん中に張ったが、幸い誰も通らなかった。 |
今度は刈り払いのある確かな峠だ。字が消えて読めないけれど看板もある。日光沢温泉側、丸沼側ともそれなりにしっかりした道だ。ここにツェルトを張って一夜を過ごす。16時近いので米を水に浸し、気象図をとる。中心気圧922hPaという聞いたこともないような低気圧の台風15号にビビる。明日も高気圧が本州にありそうだが、入山前、天気予報では3日目雨と聞いた。なんとか明日中に下りたいものだ。
ツェルト設営の際、水に浸した米をひっくり返すというアクシデントに襲われつつも、無事ハヤシライスを作ることができた。道の真ん中にツェルトを張ったが、誰も来なかったので問題なかった。夜寝る前に空を眺めると満天の星と2機の飛行機が見えた。飛行機でも下界の灯りでもそうだが、一方が完全な文明社会にいて、もう一方の私が原始的な生活をしていて、それが見える範囲で同時に行われているというのは何だか不思議な気がする。ふと寂しさに包まれながら就寝。