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2007年秋 - 南会津・檜枝岐川実川硫黄沢


2007年9月17日(月)
場所
福島県南会津郡檜枝岐村/尾瀬周辺
コース
9月16日
下ノ沢奥の二俣1720m…駒の小屋…会津駒ヶ岳・中門岳往復…駒の小屋…会津駒ヶ岳登山口=七入駐車場…硫黄沢出合(泊)
9月17日
硫黄沢出合…蛇滝…県道沼田檜枝岐線=尾瀬御池=七入=駒の湯=西那須野塩原IC=東川口駅(解散)
参加者
H、Y、K、中山
参考文献
07南会津・檜枝岐川実川硫黄沢の地図

はじめに

 実川硫黄沢は尾瀬の沼山峠付近を源流とする沢。下流は檜枝岐川で伊南川、只見川へ流れている。前日に登った檜枝岐川下ノ沢の南4kmあたりにある沢である。

 「関東周辺の沢」には「水量は多く、釜あり、へつりあり、ゴルジュありと遡行は短いが楽しい沢登りが期待できる」とあり、なかなか楽しい沢であった。下ノ沢と違って高巻きも1回だけ、他はほとんど登れたのでよかった。

 「関東周辺の沢」によれば「忘れられた渓谷」らしいが、釣り人2人x2パーティー、沢登り7人パーティーを見かけ、割と有名な沢のようだ。

2日目

2007年9月16日(日) 晴れ

下ノ沢奥の二俣1720m…駒の小屋…会津駒ヶ岳・中門岳往復…駒の小屋…会津駒ヶ岳登山口=七入駐車場…硫黄沢出合堰上(泊)

2日目コースタイム
1820m付近5:30起床
7:20
駒の小屋8:11
8:25
会津駒ヶ岳8:38
8:41
中門岳9:16
9:30
駒の小屋9:56
10:30
水場11:04
11:14
会津駒ヶ岳登山口11:56
12:17
七入駐車場13:00
13:20
硫黄沢出合堰上13:55
21:10就寝

 会津駒ヶ岳登山口の駐車場から実川硫黄沢の入渓点である七入へ移動する。途中でJAの店に寄る。日曜日だったが店は開いていた。ギョウザやこんにゃくなどを買い求め、七入に移動。何だかただっぴろい七入駐車場に車を停め、実川硫黄沢へ向かう。

 沼田街道を少し進み、七入山荘の横を通って硫黄沢に出る。硫黄沢の手前に3台ほど車を停めるスペースがあった。2台停まっている所を見ると釣りか沢登りか2パーティー入っているようだ。硫黄沢には左岸に車道が少し延びており、そこを進んで行くと堰の見えるところで車道終点。10mくらいの立派な堰だ。

 この10m堰を右から越す。はじめは踏み跡らしいものがあったが、堰堤に近づくにつれて踏み跡がハッキリしない。上からザレが落ちてきて踏み跡を消してしまうようだ。何とか堰堤にたどり着く。さらに野バラの生えた斜面をトラバース。ところどころで引っかかれ痛い。

 何とか下れるところで堰のバックウォーターの浅いところを渡る。靴を脱いで2mほどの渡渉。足の裏の砂利が痛い。渡ったところで沢タビに履き替え、テント場を探す。時間は14時近い。堰の上流はだいぶ砂利が堆積してテントが張れそうなスペースがあったが、Yさんから増水の危険があるとのことで高台にテント場を探す。Yさんが左岸に、Kさんと私が右岸にテント場を見つけた。右岸の方が堰を巻く道があり、増水時にエスケープしやすいので右岸にテントを張ることにする。

堰
9/16 実川硫黄沢最初の堰。右から巻いたが、左からが正解だった。
河原
9/16 堰の上の河原で飯の支度。テントは右岸の台地に張った。

 ザックを右岸の台地に移動していると私たち同様、堰を左岸から越えてくるグループがいる。彼らも野バラのトラバースに苦戦しているようだった。私たちがこの堰上付近でテントを張る様子を見て彼らは更に上流へ向かって行った。その後も堰を右岸から越えてきた釣り日帰り2人パーティー、堰の上で釣りしていた2人パーティーなど釣り人にも有名な沢のようであった。日帰り2人パーティーが戻ってくるとき釣果を尋ねると「いやあ、あんまり釣れなかった」と言っていたが、2時間ほどの間に30cmほどのイワナ2匹を釣っていた。2人2時間で30cmのイワナ2匹は少ないのだろうか。釣り人恐るべし。昨日下ノ沢でまったく釣れないあげく、釣り道具壊した私とは違う人種のようだ…。

 河原には燃えやすそうな流木が多く、夜は十分たき火を楽しめた。晩飯もごはんに豚汁、水餃子、サラダと豪華なものだった。夕方黒い雲が東の方に見えたが、夜になるとすっかり晴れた。天の川も望め、明日も予報ははずれて天気がよさそうだった。

3日目

2007年9月17日(月) 晴れ

硫黄沢出合堰上…蛇滝…県道沼田檜枝岐線=尾瀬御池=七入=駒の湯=西那須野塩原IC=東川口駅(解散)

3日目コースタイム
硫黄沢出合堰上4:40起床
6:52
ブナ平の沢二俣7:26
8m幅広滝下
1230m付近
7:44
7:57
右岸崩壊7m滝上
1350m付近
9:13
9:38
1450m付近11:03
11:25
県道沼田檜枝岐線
1500m付近
12:10
12:30
1520m付近
バス乗車
12:45
尾瀬御池12:55
13:25

 4:40起床。晴れなので予報ははずれ、硫黄沢を遡行する。

 出発してすぐ釜を持つ3mの滝。左から容易に登る。その後少し河原があるが、滝が連続する。地形図では等高線は詰まっていないのでちょっと意外だ。○3、幅広3段連続滝は下段、中断、上段の順に左、右、左と登った。中段の釜のへつりがちょっと難しかった。沢が左に曲がるところでネジレの滝。釜が深く、へつりもできないので左から巻く。巻き道はしっかりしている。

幅広3段連続滝
9/17 幅広3段連続滝の中段をへつって登る。
ネジレの滝
9/17 ネジレの滝。左から小さく巻く。

 ネジレの滝の後、○4蛇滝?に出る。蛇滝の位置はよく分からない。地形図では1205m二俣より上流に蛇滝が描かれているが、「関東周辺の沢」では二俣より下流に蛇滝がある上「これが蛇滝ではないかと思われる」と断定していない。ここでは「関東周辺の沢」の表記に従い、蛇滝が1205m二俣より下流にあるとする。

 蛇滝は広い釜を持ち、釜を右から巻く。蛇滝の写真を1枚撮って歩きながらカメラをしまおうとしたらずっこけた。危うくカメラをポチャンするところだったが、カメラを持っていた左手を直上に上げ何とか防げた。そのかわり左膝を打ち、だいぶ痛い思いをした。蛇滝の上は段々のナメ滝になっており、気持ちよく登れる。そして右から二条の滝をかけて枝沢が下ってきている。1205m二俣のようだ。

蛇滝?
9/17 蛇滝?。地形図と関東周辺の沢で位置が違うので断定できない。
枝沢
9/17 蛇滝上で右から枝沢が下りてきている。

 この先右から何本も滝をかけながら枝沢が下ってきていた。数えてみたら1205m二俣の右沢を含めて8本の沢が下ってきていた。地形図を見ると右から下ってきている沢は1本しかないので硫黄沢の上の台地の流れが分岐しているのかもしれない。

 右から8本目の小沢が下ってきているところで本流には8m階段状の滝がかかっている。そこで先行7人パーティーに追いついてしまったので一本とる。左岸に台地のようなものが見えたが、テン場ではなくヌタ場になっていた。地形図を広げるがほぼまっすぐな谷で両岸ともガケマークが続くので、現在地がつかめない。1230mあたりだろうと見当をつける。

枝沢
9/17 右から何本も滝をかけながら枝沢が下ってきている。
8m幅広階段状滝
9/17 奥が8m幅広階段状滝。先行パーティーに追いついたので一本とる。

 休みののち、8mほどの滝を登る。手前の大きな釜は各自右でも左でも好きなところから巻く。8m滝は左から。上部で少し水をかぶりながら登る。すぐ上に5mほどの滝。左から登る。「関東周辺の沢」で○8、8m幅広階段状、5m右から巻きとなっているところだろうか。「関東周辺の沢」には「上段はヤブ伝いに巻いた方が安全だ」とあるが、そんなに難しくなかった。沢のようすが変化しているのかもしれない。

5m滝
9/17 8m幅広階段状滝のすぐ上の5m滝。左から登れる。
穏やか
9/17 しばらく穏やかな渓相。

 5m滝を越えて簡単な小滝が続く。深い釜を持つ2条4m滝は右から登る。その上で沢は左に曲がる。そこには10m大瀑(「関東周辺の沢」では○9)が控えていた。奥まったところから豪快に水を落としている。ここは直登できないので左から巻く。すぐ横のルンゼに取り付くが足下がズルズルしてちょっと怖い。先行パーティーの足跡もないのでもう少し下から巻く。Yさんが踏み跡を見つけ、まっすぐ登る。

10m大瀑
9/17 10m大瀑。硫黄沢で一番大きい。
10m大瀑巻き
9/17 10m大瀑を左から巻く。うっすら踏み跡あり。

 巻き道はどんどん登っていく。大瀑からさらに10m近く上がったところで沢に下りるところを探す。大瀑上のルンゼが下れそうだが、だいぶ急で怖い。先行パーティーはさらに巻いたようだ。躊躇しているとYさんが器用に私の横を下りて行く。私も追って下るが、昨日の下ノ沢と違って笹もないし頼りない草しか生えていない。足下はズルズルで落っこちそうだ、と思っていたら落っこちた。3mほど下っている姿勢のまま落ちて止まった。沢床に下りるまでにもう一度1mほど滑り、痛かった。左手中指の爪が割れてしまった。

2段5m滝
9/17 2段5m滝。右からYさんがトライするが登れず。
2段5m滝
9/17 2段5m滝を左から登る。Kさんにシュリンゲを出してもらうHさん。

 大瀑上の10x15m幅広ナメを登ると2段5m滝。Yさんが右からようすを見に行くが登れないようだ。左から巻く。左側の直方体みたいな岩を登り上部で右へへつるが、このへつりが難しい。Hさんが登れず、Kさんがなんとか越えてみせた。Kさんの差し出すシュリンゲにつかまりながらみんなへつる。

 2段5m滝を越えると○10、7m滝。この硫黄沢で1回だけザイルを出したところである。地形図の1350m付近の滝記号だろうか。滝は落ち口が狭まっていることもあって登れない。8mほどの高さの右壁から登る。なかなかルートがとりにくく、Yさんが2mほどフリーで登って下りてきた。ザイルを出し、Kさんリード。うさんくさい岩角に支点をとるが、Kさんが足をかけるとその岩はわずかに動いた。しかし他に支点もなく、だましだましその岩角を支点に使う。その岩から右に大股にトラバースし、直上。Kさんはそつなく登った。

7m滝
9/17 7m滝。水流近くは登れない。
7m滝
9/17 7m滝を右壁から登る。Kさんのリード。

 セカンドで私。登ってみるが全然動けない。例の岩角がじゃまになり登れない。HさんとYさんに岩角を押さえてもらいながら足をかける。そしてまたトラバースができない。岩がかぶっているのか、私が岩にくっついているのか知らないが、動けない。やむをえずザイルを引っ張ってトラバースした。トラバースして1段登る。が、次のスタンスが外向きに傾いており一歩が出ない。Kさんは右から巻いていたが、右からも難しそうだ。私は直登を試みる。幸い滑ることなく登れた。それで難しいところは終わり。ビレイしているKさんの横を過ぎ、沢に下りたところで一本とる。

 何だかあとの2人もKさんと同様そんなに苦労していなかったようだ。私は5分以上かかった気がするが、2人ともそんなにかかっていなかったような気がする。ただ待っているのもなんなので空身で先を見てくる。先は深いゴルジュですぐ右に曲がっている。腰まで浸かって曲がり角まで見に行くとなんとか側壁をトラバースできそうなゴルジュが20mほど続き、その先は河原になっていそうだ。

 ザックを置いたところに戻り、行動食を出す。今回行動食2日分の担当だったが、重くてかさのあるパンとキャベツのサラダを用意してしまった。しかも昨日は行程が短いことからほとんど食べられず、2日分ほとんど手をつけない状態で持っていた。何とか減らしたい一心からパンを出す。幸いこの一本で2斤のパンがなくなった。

ゴルジュ
9/17 硫黄沢最後のゴルジュ。
ゴルジュ
9/17 硫黄沢最後のゴルジュ。スタンスが少ない。

 ゴルジュに突入する。どうやら「関東周辺の沢」の○11、硫黄沢最後のゴルジュのようだ。右の側壁を慎重にへつる。けっこう怖い。下は白く泡立った釜。落ちたらケガはないもののずぶ濡れである。Yさんが少し苦戦したがみんな無事ゴルジュを越えた。ゴルジュの出口には3x5mのナメ滝があり、これで硫黄沢の難しい箇所は終了。

3x5mのナメ滝
9/17 3x5mのナメ滝。これで硫黄沢の難しい箇所は終了。
河原
9/17 あとは長い河原歩き。

 この後は明るい河原が主となる。1450m付近の右岸に崩壊の見える河原で一本。枝沢がほとんどなく、沢がくねくね曲がっているので現在地がよく分からなかった。ここまで滝は3mほどのが3つ。どれも簡単だった。天気は非常によく、予報は見事にはずれたようだ。休んでいるところも日陰。沢の水はなんとなく白く濁っているように見える。この先、「関東周辺の沢」に従って本流の長池には出ず1510m付近で右の枝沢を登って県道沼田檜枝岐線に出る予定だ。

 1475m付近で右に枝沢が現れる。水量比は10:1くらい。近くの枝に水の入ったビニル袋がぶら下がっており、ここがその枝沢かどうか気になる。でも枝沢の先が倒木で荒れていそうなので、ここは本流を進む。その先で最後の3m直瀑。左岸は岩なのにえぐれてかぶっている。ここは左から巻き。

一本
9/17 河原歩きの途中で一本。
3m直瀑
9/17 3m直瀑。左から巻く。

 この3m直瀑の前か後か思い出せないが、左から細い沢が2本下ってきているのに気づく。これで現在地を把握する。どうやら1490m付近らしい。そこから河原歩き。途中、酸化鉄で赤く染まった小さい流れを見つける。ひょっとしてこれが硫黄沢の名前の由来だろうか。硫黄沢の流域には燧ヶ岳くらいしか火口がなく、硫黄が出てくる場所がない。赤い酸化鉄(III)は硫黄とは関係ないが、硫黄の黄色に見えたのかもしれない。あるいは途中なぜか沢の水が白濁していたのだが、その正体が硫化物だったのだろうか。由来はよく分からない。

 途中で7人パーティーを追い越し、水量比2:1の二俣。右の支流に入る。このあたりになれば木がなく湿原にでもなっているのかと思っていたが、実際は樹林帯の中の流れで特に展望はない。やがて県道のコンクリート橋が見えた。左から道路へはい上がり、遡行終了。

酸化鉄
9/17 酸化鉄で赤く染まった小さい流れ。
コンクリート橋
9/17 県道のコンクリート橋で遡行終了。

 遡行の感動も覚めぬうちに沼山峠方面から路線バスがやってくる。遅れていたHさんを除く3人ともつい見送ってしまう。いや、なんとかしてバスを停めて七入まで乗せて行ってもらいたいのだが、ここはバス停じゃないとか、まだHさんが登ってきていないしとか、つい頭の中で否定してしまって動けなかった。

 バスが見えなくなってしまってから失敗したことに気づき、がっかりする。「幸運の女神には後ろ髪がない」とはいうものだが、後の祭り。みんなでがっかりしながら装備を解除する。日は高く、御池経由七入まで2時間弱、つらそうだ。しょんぼりしながらみんな歩き出す。Yさんから次のバスがいつごろか聞かれるが、七入でバスが5往復しかないことを確かめていたので、望みは薄かった。

 歩き始めて15分ほど。道路が登り道になりはじめる。後悔の念が強くこみ上げてくる頃、後からバスが。尾瀬御池〜沼山峠のバスらしい。今度はバスを停めて乗っけてもらう。尾瀬御池〜沼山峠間はマイカー規制なので何本かバスが走っているそうだ。助かった。尾瀬御池について下車。ひとり400円。降りてから気づいたが7人パーティーもこのバスに乗っていた。

 御池から七入まではタクシーを考えるが、檜枝岐のタクシーはなく、次に近いところは会津田島で希望は薄かった。と、7人パーティーが一般車をヒッチハイクすることに成功したらしい。ああ、その手があったかと思うか思わないか、7人パーティーのひとりから「あなたたちも頼んでみたら」と声をかけられた。お言葉に甘え、Kさんを呼んでその車に乗せてもらった。7人パーティーには助かった。

 Yさん、Hさんと30分ほど待っているとKさんが車でやってきた。助かった。これで七入まで歩かずに済む。みんな車に乗り、檜枝岐へ。駒の湯(500円/人)に浸かり、来た道を東京へ帰った。

おわりに

 実川硫黄沢は登れる滝が多く、高巻きも1回しかなく楽しかった。「関東周辺の沢」のとおり、紅葉の時期はさぞかしきれいなのだろうが、紅葉の時期は水量が多くて寒いだろう。後半の河原歩きが長いのが難点か。

(2007年9月23日記す)


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