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2006年夏 - 奥秩父・滝川水晶谷[1/2]


6月24日(土)・25日(日)
場所
埼玉県秩父市(旧大滝村)/奥秩父
コース
24日
JR府中本町駅=(Kさんの車・中央道経由)=豆焼橋上の出会いの丘…天狗岩トンネル下…豆焼沢出合…釣橋小屋跡…1250m付近(泊)
25日
1250m付近…水晶谷・古礼沢二俣…雁坂トンネル排気孔…2072m峰…雁坂小屋…黒岩尾根…豆焼橋上の出会いの丘=(Kさんの車・中央道経由)=JR府中本町駅
参加者
K、H、中山
天気
24日くもり、25日くもりのち雨
参考文献
06奥秩父・荒川滝川水晶谷の地図

はじめに

 大学を卒業してしばらく大学ワンゲルの現役と登ったり、ひとりで登ったりしていたが、沢登りには限界が出てきた。一人で沢を歩くのは心細い。滝に取り付いて登ることも下ることもできなくなってしまったらどうしようもない。特に5月にひとりで登った奥多摩峰谷川坊主谷でその怖さを感じた。

 というわけで適当な山岳会に顔を出してみることにした。どこの山岳会にするかはあんまり深く考えず、職場の都庁の山岳部に行ってみた。とちょうアイで代表の一人として名前の載っているKさんに連絡をとると、6月14日に都庁第二庁舎で例会があるというので行ってみる。しかし、指定された部屋には人がおらず、鍵がかかったままでだいぶ不安になった。しばらくしてKさんがやってきて部屋を開けてもらう。しばらく2人で雑談していると3人目Kさんが現れた。この日の例会はこの3人だけ。Kさんは欠席する人の多さに怒っていた。

 その例会で都庁山岳部の概要説明をしてもらう。夏は岩登りか沢登り、冬は雪山をやるらしい。聞いていた様子だと特に雪山が激しそうで剣岳のバリエーションルートを登るようだ。雪山経験のない私にはなんだかハードルが高そうに感じる。岩登りもほとんど経験がないので不安だ。

 その上で、この24,25日の週末に沢登りに誘われた。先方は私のレベルが分からないということもあり、私に登る沢を選ばせてくれた。車で行くというのでここぞとばかり車でしか行けそうにない滝川水晶谷を選んだ。滝川水晶谷は去年入川金山沢大荒川谷を計画した際、滝川水晶谷とどちらを行くか迷った沢でもあった。

1日目

2006年6月24日(土)

JR府中本町駅=(Kさんの車・中央道経由)=豆焼橋上の出会いの丘…天狗岩トンネル下…豆焼沢出合…釣橋小屋跡…1250m付近(泊)

コースタイム
豆焼橋上の
出会いの丘
9:00
9:15
天狗岩トンネル
川又側
9:30
豆焼沢810m9:51
10:09
板小屋沢出合上
850m
11:15
11:28
曲沢出合12:00
金山沢出合12:19
直蔵淵上910m12:35
12:55
槙ノ沢出合14:02
14:22
釣橋小屋14:50
枝沢(熊穴沢)出合14:56
枝沢出合上
1250m付近
15:20
19:30就寝

 週末24日6:30JR府中本町集合。越谷に住んでいるHさんと川崎に住んでいるKさんと待ち合わせ。私はJR一駅分の切符を買うのがいやなので京王線府中駅からJR府中本町駅まで歩いた。6:25ごろにKさんが自動車で到着。6:40ごろにHさんが下車。中央道経由で荒川滝川へ向かう。

 前日大量に飲んだらしいHさんがコンビニで麦茶1リットルパックを買ったり、サービスエリアで塩もなかアイスなるものを買ったりしながら現地へ。西沢渓谷からループ橋を渡り、雁坂トンネル料金所。普通自動車710円。去年ナメラ沢を下ったときそこから出たんですよ、などと話しながらトンネルへ突入。あるのは知っていたものの、なかなか行く機会のなかった雁坂トンネルへ行くことができた。トンネルの中央部には県境を示す「山梨県」「埼玉県」という表示が壁にあった。

 埼玉側にトンネルを抜けて入渓点を探す。「奥秩父の谷100ルート」や「東京周辺の沢」、Hさんの記憶などを頼りに天狗岩トンネル川又側の小尾根の踏み跡をたどることにした。25,000分の1地形図(昭和60年修正測量)には天狗岩トンネル川又側から豆焼沢上流側にトラバースし、小尾根を一気に下る道が示されているが、この道は見つからなかった。トンネル入り口の脇はかなり急な沢になっており、とてもトラバースできない。したがって地形図の道のある小尾根は私たちが下った小尾根とは異なると思う。

 下山は黒岩尾根経由で豆焼橋に降り立つので近くの駐車場である「出会いの丘」に車を停め、ここで着替えて歩き出すことにした。場所はワサビ沢を埋め立ててつくったスペースで国道から少し離れたところにある。駐車場は広く50台くらい停められそうだ。しかし、ほかに停まっている車はない。立派な建物があり、奥秩父の自然を紹介する展示室になっているらしい。トイレがあり、着替えも容易である。出発準備をしていると管理人のおっちゃんに話しかけられ、泊まりがけなら端っこに車を停めてくれと言われた。あのおっちゃん、毎日ここに来て展示室とか駐車場の管理をしているのだろうか。人来ないし、なんだか大変そうだ。

 国道を下り、天狗岩トンネル川又側から滝川へ下降する。急な小尾根だが踏み跡はある。下るに従いだんだん踏み跡は心もとなくなり小さい落石を出しながら下る。途中でずいぶん立派な水平道に出る。トンネル入り口にあった隣の沢には白い橋までかかっている。小さいショベルカーで道をならしたようで、キャタピラの跡まである。こんな道があるならこの道の始点から入山すれば楽だったと嘆く。さらに木にかかった工事用ロープに頼りながら下降し、豆焼沢に到達する。天狗岩トンネルそばの沢のガレの脇で入渓準備。

 押し出された大きな岩の転がる豆焼沢の河原を2分下って滝川本流。水量は多く、膝くらいある。河原は右岸か左岸のどちらかにしかなく、河原のないところもある。徒渉を繰り返しながら歩いて行く。両岸いっぱいまで水が広がっているようすは白神山地追良瀬川を思い起こさせた。

滝川豆焼沢出合
6/24 滝川豆焼沢出合。いったん豆焼沢に出て滝川本流に入る。
最初の淵
6/24 最初の淵を抜けるKさん。深さは腰ほど。

 やがて最初の淵。腰ほどまで入って真ん中を抜ける。腰まで浸かるとけっこう寒い。そして巻くこともできない淵が現れる。右岸からへつれそうだが、水際の岩が斜めになっておりスタンスに乏しい。結局泳ぎ。Hさんがザックに腹這いになって対岸にわたろうとするが、バタ足の甲斐なく力つき、下流へ流されていった。次に私がラッコ泳ぎで挑戦。これは成功。水をいやがるKさんはそれでもへつりの可能性を諦めず岩にしがみついていた。やがてHさんが戻ってきてシュリンゲをつないで上流側の私が引っ張り上げることにする。しかし、Hさんから投げられたシュリンゲを私がキャッチし損ねてしまい、シュリンゲは下流へと流されてしまった。しかもHさんが探しに行ったもののシュリンゲは見つからなかった。その間にへつりを諦めたKさんは泳ぎを決意し、私が引っ張り上げる。戻ってきたHさんをやはり引っ張り上げ、この淵を越えた。今回の山行で足がつかなかったのはこの淵だけであった。

泳いだところ
6/24 滝川本流で唯一足が届かず、泳いだところ。
吊橋の跡らしきワイヤーロープ
6/24 吊橋の跡らしきワイヤーロープ。

 右岸和名倉山側から滝をかけて枝沢が出合う。枝沢は2つあり、2つ目が沢小屋沢らしい。地形図を見てもなかなか進んでいないのがわかる。沢小屋沢のあと、5分ほどで「奥秩父の谷100ルート」にある吊橋の跡らしきワイヤーロープを見る。現在残っているのはワイヤーロープだけだ。その後も腰ほどの深さの淵を越えたりして850m付近にたどり着く。ここで一本。この日の昼までは各自行動食なので各自でパンなどを食べる。

深い淵
6/24 深い淵。
曲沢出合
6/24 曲沢出合。曲沢は小滝をかけている。

 その先も腰ほどの深さの淵を越えて行く。やがて曲沢出合。2mほどの小さな滝をかけて滝川本流と合流している。「奥秩父の谷100ルート」の曲沢の項には出合に岩小屋があるとあるが、注意していなかったからか見つからなかった。つづく金山沢出合には大きな淵があり、右岸金山沢側から巻き、残置ロープを使って下りる。金山沢出合から10分ほどで直蔵淵。深い淵があり、両岸狭いため流れも強い。まともに泳いで行くのは難しそうだ。ここは淵のあたりが急な右カーブになっていることからカーブをショートカットするように岩を登って行く。残置ロープがあり、ロープに頼って岩を越える。越えたところで一本。一本とった河原にはカエルがおり、カエルを隠していた木をどけるとのたのたと歩き出した。

 その後もいくつか青い淵を腰ほどまで浸かりながら越えて行く。途中、なんでもない河原の右岸に人工物らしき四角い光るものがあったので行ってみると、誰かの遭難を示すプレートであった。「○○君、ここに眠る」と書かれ、プレートの下には水の入ったペットボトルが置いてあった。

直蔵淵
6/24 直蔵淵。右のルンゼから巻く。
大きな淵
6/24 大きな淵。右から巻く。

 直蔵淵から15分ほどで今度は大きな淵が現れる。右手から泳いで行けば行けそうだが、パーティーの雰囲気は明らかに巻きだ。水を避ける傾向にあるKさんが左岸を巻き始めた。パーティーが分かれても問題なので私もKさんについて行く。道はぼんやりとついており、淵の上流側に出た。その先には明らかに登れなさそうな滝があり、続けて巻く。今度は道も明瞭であり、残置ロープもあった。

 巻き終わって5分ほどで夫婦岩。2つの大きな岩があり、右の岩には杉の木が生えているのですぐ分かった。その後15分ほどで川の真ん中に映画「2001年宇宙の旅」のモノリスみたいな四角い岩が置いてあるのを見過ごし、左岸から滝が落ちているのを見る。下ってくる2人の釣り人とすれ違って槙ノ沢出合。

 槙ノ沢出合は河原になっており、広いので一本とる。滝川本流と槙ノ沢の水量比は1:1。槙ノ沢の方が滝川の下流と直線的につながっており、河原も広いので槙ノ沢の方が本流に見える。ここで休んでいるとパラパラと雨が降ってきた。ひょっとしたらこのまま明日まで雨かも、という嫌な予感が横切る。何にしても現在14時なので早く適当なテン場を見つけたいところだ。槙ノ沢出合には茶色の看板が立っており、仕事道を示す看板だろうと話していたが、実際近づいて見てみると釣り人向けの看板であった。釣りにあたっては入漁券を買うこと、ほかの水系の魚を放流しないことなど。道はなかった。ただ、Hさんの話によれば滝川右岸のだいぶ上の方には道があり、その道の金山沢と槙ノ沢の間には小屋もあるそうで興味をそそられる。

槙ノ沢出合
6/24 槙ノ沢出合。左が槙ノ沢、右が滝川本流。河原になっている。
釣橋小屋
6/24 半壊している釣橋小屋。泊まるのは難しそうだ。

 滝川本流へは右へ暗い流れを行く。いきなり深そうだが、ぶらさがった工事用ロープを使えば水に浸かるのは膝くらいまでですむ。5分ほどで左岸に3張りくらいできそうなスペースを発見し、Kさんにここなら合宿もできそうだねと声をかけられる。槙ノ沢出合から10分ほどの箱淵は切り立ってはいないが狭く深い淵で右から巻く。

 箱淵のあとだんだん遅れるようになり、疲れてきたところで釣橋小屋。右岸にぺしゃんこにつぶれた小屋が見える。「奥秩父の谷100ルート」には「ちょっと汚いが泊まることも可能だ」、「東京周辺の沢」には「屋根が半壊していて泊まる気にはなれない」とある。どちらも同じ1995年の記録だが、この2006年現在では泊まるのは無理と考えた方がよいだろう。雨露をしのぐことはできるかもしれないが、その半面、倒壊の危険もある。小屋泊まりを当てにするのはやめた方がいいと思った。振り返れば草に覆われた釣橋が残っていた。しかし、その草の覆いっぷりはかなりのものでくぐった私も釣橋小屋を見つけるまで釣橋を見つけられなかった。そのようすから小屋同様、釣橋も使用は危険であると感じた。今となってはサルが利用するくらいだろうか。両岸の道は確認していない。

釣橋
6/24 ツタが絡んだ釣橋。もう渡れないと思う。
枝沢(熊穴沢)出合先に幕営
6/24 枝沢(熊穴沢)出合先に幕営。

 釣橋小屋から5分で枝沢(熊穴沢)出合。滝などはなく、平凡そうに見えた。そのすぐ先の右岸にひと張りはれそうなスペースを発見する。時刻も15時とちょうどいいので、ここに張るかとテントを広げる。しかし、そのあとでKさんが上流側3分ほどのところにすごい広いテント場があるというのでそちらに移動することにした。川が分流し、また戻ると右岸に広い河岸段丘のようなスペースがあった。段丘の上段にも下段にも張れる。Kさんのいうとおりかなり広く、釣り人も幕営していると見えて槙ノ沢出合にあった釣り人向けの看板もあった。今回は水が近いからという理由で下段にテントを張った。

 夜は各人が持ち寄った酒でだいぶ酔い、19:30に寝た。もっとも普段はもっと飲むそうだ。その飲みっぷりに少しあきれた。


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