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2006年夏 - 奥秩父・滝川水晶谷[2/2]


6月24日(土)・25日(日)
場所
埼玉県秩父市(旧大滝村)/奥秩父
コース
24日
JR府中本町駅=(Kさんの車・中央道経由)=豆焼橋上の出会いの丘…天狗岩トンネル下…豆焼沢出合…釣橋小屋跡…1250m付近(泊)
25日
1250m付近…水晶谷・古礼沢二俣…雁坂トンネル排気孔…2072m峰…雁坂小屋…黒岩尾根…豆焼橋上の出会いの丘=(Kさんの車・中央道経由)=JR府中本町駅
参加者
K、H、中山
天気
24日くもり、25日くもりのち雨
参考文献
06奥秩父・荒川滝川水晶谷の地図

2日目

2006年6月25日(土)

1250m付近…水晶谷・古礼沢二俣…雁坂トンネル排気孔…2072m峰…雁坂小屋…黒岩尾根…豆焼橋上の出会いの丘=(Kさんの車・中央道経由)=JR府中本町駅

コースタイム
枝沢出合上
1250m付近
4:30起床
6:15
天然ダム7:58
ブドウ沢出合8:20
8:31
水晶谷・古礼沢二俣9:10
9:19
面蔵滝9:57
雁坂トンネル排気孔10:10
10:30
水晶谷1400m11:45
11:50
3段25m滝12:18
12:35
水晶谷1600m遡行終了点12:55
13:07
奥秩父主稜線2072m峰13:45
14:09
雁坂小屋14:15
黒岩尾根アセミ峠15:29
15:36
車道終点16:00
豆焼橋上の出会いの丘16:29
16:45

 朝起きて前日の晩飯の残りを食べ、さらにインスタントラーメンを食べる。結果的に晩飯より量が多い。二日酔いの頭痛と満腹の気持ち悪さに苛まされながら出発。

 歩き始めはあんまり濡れたくないなと思っていても、歩いて行くうちに体は暖まり、膝くらいの深さなら水のなかに入って行ける。20分ほどで三本桂沢が右から滝をかけて合流する。やがて深そうな淵を発見、朝一で泳ぎたくないので右から巻く。みんな同じことを考えるのか、踏み跡があった。しかし、下降には踏み跡はなく、木を支点に懸垂下降を行った。

 それを越えるとまた深そうな淵を見つける。やはり濡れたくない。そんな思いから右手の踏み跡を登る。しかし、踏み跡は10mほど登ったあたりで消え、そこからはさらに登るか懸垂下降するかしか選択肢がなかった。ゴルジュの先、左岸は切り立っており、かなりの大高巻きになる。懸垂下降すると下の淵にドボンと落ちる。どちらも嫌なのでいったん戻って諦めて淵の中を行くことにする。下りにはザイルを使った。そして改めて入った淵は意外と浅くせいぜい腰くらいで泳ぐ必要はなかった。水を怖がるのはよくないことだ。

 その後もゴルジュ帯を行く。深いところをうまくかわすように倒木が流れ方向に橋のようにかかっているところがあった。ここはHさんが倒木の上を歩く。途中までは幹から枝が生えているのでホールドがあるが、あるところから枝はなくなり幹の位置も高くなる。進退窮まるHさんに「幹にまたいで移動したら」と私が進言したら、Hさんは幹にまたがりがんばって移動し、その淵を越えた。私は幹の上を歩くのが面倒だったので淵を腰ほどまで浸かりながらザブザブ渡った。

倒木をまたいで登る
6/25 倒木をまたいで登るHさん。
5mほどの斜めの滝
6/25 5mほどの斜めの滝。右側から登れた。

 ゴルジュはグニャグニャと曲がりながら続く。左へ曲がったところにある5mほどの斜めの滝は一見つるつるで登れそうにないが、これが意外と水線沿いに右から行けた。なかなか面白い。続く6mほどの滝も右の岩壁から簡単に登れた。

 さらに10分ほどで正面に崩壊地を迎える。その下は何となく予想はついていたが押し出されたガレで天然ダムができていた。深い青緑色の淵である。ここは左から水線沿いに巻き。新しそうなガレに見えたが、なんとなく人の歩いた跡が感じられ、どうやら今年できた天然ダムという訳ではなさそうだ。

天然ダム
6/25 天然ダム。左から水線沿いに巻ける。
ブドウ沢出合
6/25 ブドウ沢出合。手前の残置ロープに頼りながらトラバース。

 河原を少し歩いた後、再びゴルジュ。8m滝を迎える。一見難しそうだが、右側のバンドに残置ロープがあり、これに沿って簡単に登れた。次の4m滝は左壁から落ち口へトラバース。残置シュリンゲが多く、これを使えば容易に突破できる。4m滝の上はつるつるの右岸側壁を残置ロープに頼りながらトラバースする。一歩ごとにシュリンゲがぶら下がり、全部で10ほどある。もう腕力がものをいうところであり、まるでうんていを渡るようにトラバースする。こんなところにハーケンを打った人の苦労がうかがい知れる。腕力トラバースのあと、ゴルジュの中で左からブドウ沢が流れ込む。ここの部分は「東京周辺の沢」の巻頭カラーページに写真が載っている。

 このブドウ沢出合で一本とる。ブドウ沢は滝をかけて滝川本流に合流している。登るとしたら滝の左手からだろう。ブドウ沢出合の上流は平和そうな川であり、ゴルジュを抜けたかのように見えた。一本のときに昼飯を用意する係であるHさんから「何か食べる?」と聞かれたが、まだ胃から酔いと満腹が抜けておらず遠慮しておいた。

 その後、平和な河原が続くかと思えたが、ブドウ沢出合から15分ほどで小さい釜の連続するところがあり、ここは右からいっぺんに巻いた。水平距離100mほどか。一応踏み跡はあり、下りもガレたルンゼからロープを出さずに下ることができた。

ブドウ沢出合先の巻き
6/25 ブドウ沢出合先の巻き。意外に長いが、下りはザイル出さずに沢に下りられた。
水晶谷・古礼沢二俣
6/25 水晶谷・古礼沢二俣。右岸にテント場。

 巻き終えてから10分ほどで水晶谷・古礼沢二俣。流量は若干古礼沢の方が多いが、どちらも本流に見える。「東京周辺の沢」によれば水晶谷が滝川本流ということになっているが、地形図見ても河川延長、流域面積ともほぼ等しく、本流の判別はつかない。右岸台地に2張りほどのスペースと釣り人向けの看板がある。さらにタープ用と見られるひもが木と木の間にかけられ、ビニルシートまであった。快適だが、虫が多い。

 いよいよ水晶谷へ入る。水晶谷に入るといよいよ水量は少なく平凡な河原歩きになる。難しいところもなく、ときどき現れるナメが美しい。いくつか小滝もあるが大したこともなく過ぎて行く。

日本庭園のような河原
6/25 日本庭園のような河原。
面蔵滝
6/25 面蔵滝。下流側は井戸を断ち割ったようなゴルジュになっている。左から巻き。

 1350m付近で右岸に枝沢が合流するあたりは枝沢と水晶谷が並走する。開けた枝沢の方を歩いて行くと滝にぶつかり右手の水晶谷本流へ移る。するとそこはすぱっと切れ落ちた狭いゴルジュになっており、上流側には面蔵滝があった。ひどく狭い廊下で幅は3mほど、深さは15mほど。廊下の行き止まりが面蔵滝になっており、山にナイフで切れ込みを入れたようになっている。廊下の上の際から廊下を覗き、面蔵滝は左から簡単に越える。滝はほとんど直瀑であり「奥秩父の谷100ルート」には5級とか書いてあるが、これは果たして登れるか疑問である。また水量は少なく、この水流がこれだけの岩を削ったとも考えにくい。どうやってできたのだろう。

 面蔵滝を越えると頭の上に白く大きな建造物が見える。山の中にかなりの違和感を感じさせる。これが雁坂トンネルの排気孔である。排気孔の右に滝があるが、これは左のルンゼから巻く。ルンゼを少し登り、排気孔基部のコンクリート壁の下を右の滝の方へトラバース、滝に近づいたら薮の中の踏み跡を直登する。

 直登して出るとそこは排気孔の下の台地であった。作業に使ったらしく、5坪ほどのスペースが平らにならされている。テントを張ることもできるが、アザミが多く少しうっとおしい。「奥秩父の谷100ルート」には「現場の中にはトラックが置いてあって」という記述があり、トラックが走れそうな林道を期待したがどこにもそんな平らなところは見当たらなかった。どうやってトラックを搬入したのだろう。水晶谷詰めないで林道を歩いて帰ろうぜという甘い期待は打ち破られてしまった。

 また「排気孔というからにはトンネルの真上に違いない」と話したが、エアリアマップ、地形図両方で見ても水晶谷と雁坂トンネルの交差点はあまりに西に寄りすぎていて水晶谷・古礼沢二俣から1時間でたどり着ける距離ではない。したがってこの排気孔はトンネルから垂直に建っている訳ではなく斜めに孔が掘られているのだろう。なおこの排気孔はGoogleマップのサテライト画面からも確認することができ、それによれば標高1350mあたりである。Googleマップのサテライト画面では「秩父の山奥に建つ秘密の建物」といった雰囲気であり、知らない人が見たらUFOでも見つけたのではないかと思うだろう。

滝と雁坂トンネル排気孔
6/25 滝と雁坂トンネル排気孔。滝は登らず左の排気孔に出る。
10m滝
6/25 10m滝。左から巻く。

 ほどほどに休んで出発。元々少なかった水流は歩き始めてとうとうなくなってしまうが、左から枝沢が落ちてくるあたりで復活する。その後排気孔から15分ほどで10m滝。直登する気も起きず、左から巻く。左側には残置ロープが垂れていた。10m滝を越えて沢は右へ曲がり、2段8mほどの滝。右から登れそうだが、途中シャワークライミングになる。水を避ける傾向にあるKさんとやはりシャワークライミングをしたくないHさんは右から巻き。私は直登してみた。しかし、最後の一歩が出ず、セミになってしまった。岩にしがみついた状態でKさんたちが巻きを終えるのを待ち、シュリンゲで引っ張ってもらった。少しすべる岩だったのも辛かった。すぐ上は3連のナメ滝になっており、1段目を登った後、うまく行けない。しかたなく左手から高さ2mほど懸垂下降。なんだかめんどくさいが仕方がない。

 そのあと15分ほどで水が涸れ、ゴーロを歩くようになる。1540m付近の沢が左へ大きく曲がるところである。左岸に暗い滝がかかっており、そこで水を汲むかどうか検討する。Hさんは「枝沢に水があるくらいだから、この上でまた水が復活するよ」と主張、私は「でももし水がなかったら、詰めで失敗して3時間くらい薮漕ぎだったら」と不安がり、リーダーのKさんを困らせた。結局水は汲まずに歩く。後から考えるとこの左岸の暗い滝は雁坂小屋に通じる枝沢の一つ下流の枝沢だったのではないかと思う。崖になっていて、とても登れない滝であり、1540m付近の崖記号とも一致する。

 その後雁坂小屋へ通じる枝沢があるはずだが、私たちはそれに気づかず本流を進んで行った。一つに水流が復活して水の心配が一時的に消えたこと、もう一つに「東京周辺の沢」に3段25m滝の上流側に雁坂小屋へ通じる枝沢が示されていることが理由である。ここまで3段25m滝とおぼしき滝は見ていないのである。

ゴーロ
6/25 ゴーロ。水が涸れる。
3段25mの滝
6/25 3段25mの滝。

 小滝をかけながら快適に登って行くと3段25mが見つかった。水も少なく涸れそうな割に立派な滝で、一見して3段25mと判別できる滝であった。下段、中段は簡単に登れる。上段はちょっと怖い。Kさんがトップで確保されながら右から登って行く。ちょっと見た感じだと難しそうだが、Kさんはゆっくりと確実に登って行った。セカンド以降はまとめて登るのが都庁山岳部のやり方らしい。中間はただザイルにカラビナをかけるだけのランニングビレイだったので、私はビビりセカンドをHさんに譲った。私はラストで確実に確保されながら登った。

3段25mの滝上部
6/25 3段25mの滝上部。ザイルを出して登るKさん。
水晶谷のツメ
6/25 水晶谷のツメ。

 3段25m滝を登り終えるとまたガレで水がなくなり、沢が逆S字状に曲がる。沢が左に曲がるあたりに右からガレ沢が下ってきており、これを使って稜線に出ることにする。水を汲み少し休む。

 ガレ沢は水はなく少し登ると谷の形も怪しくなってきた。右の笹の斜面に獣道を見つけこれをたどる。また緩い谷状の地形を登り、わずかに開けたところを右へトラバースして小尾根に出る。小尾根には踏み跡があり、踏み跡をたどって稜線にたどり着いた。踏み跡と言っても傾斜はきつくしんどいのは変わらなかった。

 遅れたKさんをほったからかしにして出てきた稜線はガスで覆われ虫の多いところだった。稜線は広く広がっており、道はその水晶谷側にトラバースするようについていた。私たちはこれが黒岩尾根のどこかで雁坂小屋の下だと思っていたのだが、後で雁坂小屋に出たところから考えると奥秩父主稜線雁坂峠〜水晶山間の2072m峰付近だったようだ。もっとも人がまったく歩いていなかったので水晶山から雁坂峠を経由せず、雁坂小屋へ向かうトラバース道だったようだ。

奥秩父主稜線雁坂峠〜水晶山間の2072m峰付近
6/25 奥秩父主稜線雁坂峠〜水晶山間の2072m峰付近。ツメ上がったところ。

 虫がうっとおしいのでさっさと着替えて下り始める。HさんとKさんは運動靴であった。黒岩尾根の下りはけっこう道が悪く運動靴では歩きにくかったのではないかと思うが、2人のペースは決して遅くなかった。途中で雁坂小屋を通り、我々が黒岩尾根に出たのではなく奥秩父主稜線に出たことに気づく。予定では雁坂小屋に出るはずだったので若干遠回りしたことになる。

 黒岩尾根は人もおらず部分的に整備されており長かった。上部は桟道が整備されていて歩きやすいが道が尾根の水晶谷側を巻き始めるとところどころ崩れやすいところもあり、早足では歩きにくい。途中途中でふくろ久保かつら久保、何とか尾根、アセミ峠など看板は充実している。この道は25,000分の1地形図とも異なる道でエアリアマップの道が正しい。尾根沿いの従前の道はおそらく廃れてしまったのだろう。

 途中強い雨に降られながらも林の中でそんなに濡れることはなかった。ずっと尾根の巻きで現在地がつかめなかったが、途中にある「豆焼橋まで何km」「雁坂小屋まで何km」という看板が参考になった。半分を過ぎたアセミ峠で一本。ベンチもあって休みやすい。峠という名前はついているが鞍部ではなく枝尾根を乗っ越すところであった。下り続けて「豆焼橋まで1.8km」「雁坂小屋まで6.4km」の看板のところで水晶谷側に下っていく踏み跡があり、これが釣橋小屋跡への道ではないかと推測した。

 そのしばらく後で林道終点に出るのでこの林道をたどって豆焼橋へ戻る。旧来の尾根道は滝川豆焼沢出合まで下っているが、この道は見つからなかった。林道は轍もなく比較的新しい。途中工事現場も通り、舗装が土からアスファルトになると雁坂トンネルの発電施設が現れた。どうやらここで軽油を入れて中の電気を点けているらしい。排気孔といい雁坂トンネルの裏舞台を垣間みた山行になった。

 発電施設のあと豆焼橋に出て国道140号を渡り、車を置いた出会いの丘に戻る。銀マットを座席に敷いて少しでも衣服の臭さが車のシートに移らないようにする。途中で温泉に入り、中央道経由で帰京した。談合坂SAと小仏トンネルの間で渋滞があり、府中本町に着いたのは20時頃であった。

おわりに

 滝川水系は奥秩父でも行ったことがなく、奥秩父の沢を知るためにも一度は訪れたいと思っていたところであった。今回こうやって強いメンバーと一緒に行くことができ、うれしい。

 滝川水晶谷は行ってみるとそんなに難しくなく、水に濡れることをいとわなければ簡単に登れる沢であった。流程も長く沢旅と呼ぶにふさわしい沢である。下は水量が多く、上は普通の沢として楽しめるのもよい。とにかく満足できた。

 今度は槙ノ沢や滝川右岸仕事道などを歩いてみたいと思う。

(2006年6月26-28日記す)


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