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2006年春 - 奥多摩・峰谷川坊主谷


2006年5月21日(日)
場所
東京都西多摩郡奥多摩町/奥多摩
コース
JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=峰谷バス停…三沢集落…坊主谷遡行…鷹ノ巣山避難小屋…鷹ノ巣山…鷹ノ巣山避難小屋…奥集落…三沢集落…峰谷バス停…峰谷橋バス停=(西東京バス)=JR青梅線奥多摩駅
参加者
単独行
天気
晴れ
参考文献
06奥多摩・峰谷坊主谷の地図

はじめに

 引っ越して最初の土日。土曜日は転入届を出しに三軒茶屋まで自転車で行った。予報ではこの土日雨だったのだが、この土曜日晴れたため自転車で行くことができた。その晴れっぷりというと夏を思わせる暑さで自転車こいでいてかなり暑い。あまりの暑さに予定の入っていなかった翌日日曜日に沢に行くことにした。場所ははっきり決めておらず土曜日の夕方に決めた。決めた場所は交通便利な奥多摩の初級で登っていない沢、峰谷川坊主谷である。私は峰谷には行ったことがなく、決めるまであんまり知らなかった沢である。しかし「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」によれば「渓流釣り目的の入渓はかなりあるようだ」し、珍しく昭文社山と高原地図の冊子にも紹介の載っている沢だし、ヤブこぎなしだというのでここに決めた。

日帰り

2006年5月21日(日)

JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=峰谷バス停…三沢集落…坊主谷遡行…鷹ノ巣山避難小屋…鷹ノ巣山…鷹ノ巣山避難小屋…奥集落…三沢集落…峰谷バス停…峰谷橋バス停=(西東京バス)=JR青梅線奥多摩駅

コースタイム
峰谷バス停8:25
8:28
坊主谷橋8:57
9:11
幅広3m滝9:37
900m付近滑り台10:06
2段16m滝下10:15
中ノ谷出合10:40
10:52
1090mはしご11:20
半球状6m滝11:25
水道施設11:35
シダノ沢出合
1200m
11:45
11:53
1490m二俣12:14
12:20
1550m水場12:27
鷹ノ巣山避難小屋12:35
12:38
鷹ノ巣山12:53
13:12
鷹ノ巣山避難小屋13:44
三沢集落15:05
峰谷橋バス停15:40
15:42

 日曜日朝起きると4時であった。まだ早いと思って寝ると今度は5:20。5時の予定が大きく崩れる。あえて行かないという選択肢もあるので空の様子を見ると晴れそう。すぐ出発する。

 奥多摩駅に着いてみるとうまい具合に休日は午前中1本しかない峰谷行きのバスがあったのでこれに乗る。終点峰谷まで立ちが出るくらい込んでいた。それだけ鷹ノ巣山は人気の山ということだ。しかし沢装備の人はおらず、沢屋では私だけの入渓のようだ。車道沿いに歩き、三沢集落で茂窪谷へ入る。茂窪谷にかかる暗い滝を見ながら歩くこと15分ほどで目的の坊主谷に着いた。坊主谷には橋がかかっており、右岸に車を1台置くスペースがある。そこで着替え。ここにいる間車も人もやってこなかった。よっぽど人の少ないところらしい。

標高770m付近
5/21 標高770m付近3m滝。左から巻く。
840m付近の7m滝
5/21 840m付近の7m滝。右から巻く。

 沢装備に着替えて出発。はじめは平凡な河原。標高770m付近まで水平距離500mほど河原は続く。10分ほどで右岸にガレがある。その上部を見るとガードレールらしき白いものが見えたのでどうやら地図に載っていない道路があるらしい。標高770m付近で沢は右に直角に折れ曲がる。そこには急峻なゴルジュが控えていた。最初の3m滝はシャワークライミングで何とか越えられそうだが、その後がよく分からない。ガイドブックに従い左のガレから巻く。登るにつれ踏み跡ははっきりしてきたので割と簡単に沢に戻ることができた。

苔むしたきれいな滝
5/21 苔むしたきれいな滝。
2段16mの滝。左から巻く。
5/21 2段16mの滝。左から巻く。すぐ上で左に曲がって3段(?)10mの滝。

 その後、動かないカエルを見つけたり、滑ると少し痛い滑り台を見つけたりしながら歩いていく。840m付近の7m滝はガイドブックどおり右から小さく巻く。そして核心部2段16m+3段10m。その手前の6m滝はシャワークライミングを強いられた。温かい日とはいえシャワークライミングは寒い。2段16m滝の下で少し震える。2段16m滝はハング気味で2段とも登ることができない。「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」に従い、左手のガレから小さく巻く。2段目からは踏み跡があり容易に登れる。そして今回一番やっかいだった上段ゴルジュ状の10m滝。滝の右側にルートが見えるし、残置ロープもぶら下がっているのだが、落ち口へのトラバースを見ると高度感が強い。技術的に難しくはないが、落ちるのが怖くていけなさそうだ。それ以前に残置ロープのあるところまで行って戻ってこられるかもあやしい。単独行してしまったと思った。誰かにビレイしてもらえればそう怖くはなさそうなのに。しかもこの滝は上もゴルジュのようで巻くことが難しそうだ。戻るのもおっくうだし、進退窮まる。仕方がないので1枚写真を撮っておそるおそるとりつく。下から見た予想通り、ロープのあるところまでは簡単にたどり着いた。その先も難しくなさそうだ。バンドを登っていくが、水流に足を置くところは一歩が出ない。いったんロープのあるあたりまで戻り、気を落ち着けてホールドを確認しながら何とか通過した。

3段(?)10mの滝
5/21 3段(?)10mの滝。右のバンドから落ち口に向かってトラバース。私にとっては坊主谷の核心部だった。
中ノ谷出合
5/21 中ノ谷出合。左が中ノ谷。すぐ上にワサビ田がある。

 この10m滝は「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」には「3段10m滝と、続く樋状のナメ滝を快適に越えると」としか触れられておらず、昭文社山と高原地図にいたっては紙面の都合か何も書かれていない。普通はそんなにビビらずに登れるのだろうか。私にとってはこの滝が核心部であったのだが。

1090m付近の古びたはしご
5/21 1090m付近の古びたはしご。
半球状の黒い岩盤の6m滝
5/21 半球状の黒い岩盤の6m滝。左から登る。

 登りきってから動悸が激しい。やっぱり沢登りは複数で登るものだと再認識した。核心部を越えてからしばらく歩いて中ノ谷出合。一本とる。水量比は1:1。中ノ谷にはワサビ田が見えた。中ノ谷を分けてからは沢は平凡になり、ときどき荒れたワサビ田が現れる。1090m付近に古びたはしごを見つけ、道を探すが見つからない。そのすぐあとに半球状の黒い岩盤の6m滝。左から簡単に登れるが、少し滑った。そして右手に白い林業用モノレールのようなものが見え、鹿か何かの落石に驚く。しばらく歩くと水道のための水槽がある。どうやら先ほど見えた白い林業用モノレールのようなものはこの水を運ぶパイプのようだった。しかし、その水道施設の近くでみごとなうんこを発見しへこんだ。水道施設より下流だったのは幸運というか何というか。この水道は浅間尾根末端、奥集落最上部の水槽につながっていると思うのだが、実際はどうだろうか。水道施設は1150m付近、奥集落最上部の水槽は1050m付近なので自然流下で水を引くことができるはずである。奥集落最上部の水槽は坊主谷側にパイプがあったのでそう予想するが、実際は分からない。

水道のための水槽
5/21 水道のための水槽。奥集落へ続いているのではないだろうか。
シダノ沢出合
5/21 シダノ沢出合。水量はほとんどなし。

 またしばらくで1200m付近のシダノ沢出合。一本とる。だいぶ水量は減り、これまでも1度水が涸れた。もうすぐにでも水がなくなりそうだ。それでもこの沢の上部には鷹ノ巣山避難小屋の水場があるはずなのでそう簡単に水は涸れないはずだが。一本とって休んでいると石の下からグーグ、グーグ、ゲーゲ、ゲーゲとカエルの鳴くような音がする。ほとんど水はないのだが、カエルが石の下にいるのだろうかと石を掘り返してもカエルはいない。カエルを直接つかんだら嫌なので棒っ切れで石をひっくり返すがいないし、いた形跡もない。水が河原を流れる際にそんな音がするのだろうか。なんか天狗にばかされたような気になりながらもなんか怖いので先を急ぐことにする。

坊主小屋沢源頭
5/21 坊主小屋沢源頭。登山道から振り返る。
鷹ノ巣山避難小屋水場
5/21 鷹ノ巣山避難小屋の水場。坊主小屋沢の源頭は小屋の水場であった。

 シダノ沢出合から地形図上では急な登りだが、これまでとそんなに変わらない傾斜だ。いまさらながら沢登りとは急な傾斜を登るものだと思う。そしてシダノ沢出合から20分で最後の二俣。何となく右の方がヤブが少なさそうなので右を選んで登るとこれが正解だった。両岸笹ヤブがせまってきてあせるがだんだんごみが増えてきて避難小屋の水場に出た。水場の直下ではみかんゼリーを発見、賞味期限内だったので回収した。水場ではパイプから水がちょろちょろと出ている。少し水を汲むが水量は少なく水位はなかなか増えない。700mlほどになったところで出発する。避難小屋からは人が来ており記録をつけていた。今日はじめて山で会う人だ。結局沢では釣り人を含めて人に会わなかった。避難小屋へ歩いていくと最後の二俣の左俣の源頭を通った。笹ヤブで覆われていて誤ってこちらに来ると大変である。

 すぐについた鷹ノ巣山避難小屋では若者2人が同じパーティーと思われる若者1人にザイルの扱い方を教えていた。でもヘルメットとか見えなかったが、沢登りだったのだろうか、それともこの辺に岩登りのゲレンデがあるのだろうか。せっかくなので鷹ノ巣山に行くことにする。

 鷹ノ巣山に登り始めてすぐ南側の景色が開けるところがある。ちょうど坊主谷の源頭にあたるので写真を撮る。ここから鷹ノ巣山まで前後したおじさんは昔頻繁に沢に登っていたそうで少し話をした。鷹ノ巣沢はみんな大滝まで登って仕事道を下ってくるのが普通だとか。どうやら鷹ノ巣沢の詰めに正解はないようだ。山頂は人が多かったが、沢屋はいなかった。少し残念。しばらく休む。休みながら元・沢屋のおじさんとお話をする。昔はこの辺の谷はだいたい登ったとか、上越に行ったとか。東沢東のナメ沢はフェルト足袋ではなく、とび職の履いている裏がゴムの地下足袋の方がフリクションが効くとか。ついでにそれとなく沢登りは単独行で登ると危ないと諭された。今回10m滝で実際ひとりで来て失敗したと思っているのでその忠告は身にしみた。今度は誰かと一緒に行こう。ついでに下る道でいい道はないかと聞く。すると水根沢林道を薦められた。確かにスニーカーで下るなら尾根沿いの道はつらいし、水根のバス停ならバスも多い。それはいいと水根山へ下る。

 しかし、水根山手前で「すでに水根山を過ぎている」と勘違いし、看板をよく見ずに水源林道から石尾根を西へと逆走してしまった。尾根に出てみるとそこは水根沢林道西の尾根の榧ノ木尾根ではなく鷹ノ巣山避難小屋であった。ここまできていまさら水根沢林道に下るのもかったるいので峰谷へと下ることにした。峰谷バス停の時刻は知らないが、バスがなければ奥多摩湖まで下ればよいと考えた。

石尾根から見た坊主小屋沢
5/21 石尾根から見た坊主小屋沢。左は浅間尾根。
奥集落最上部神社
5/21 奥集落最上部神社。左の道は坊主谷の水道施設に続いているのだろうか。

 浅間尾根を下る。鷹ノ巣山避難小屋からすぐでマウンテンバイクの人たちに会う。もう14時近いがいま登っていて大丈夫なのだろうか。でも自転車だから下りは1時間もあればすぐなのだろうか。浅間尾根は下っていると意外と人が多く、バスが期待できる。木々も若い緑色で美しい。のんびり、しかしそこそこのスピードで下る。道自体はよく歩かれていてスニーカーでも歩きやすい。1060m付近で社2つと鳥居2つに水槽を見つける。ちょうど道が尾根から離れ奥集落に向かっていくところだ。水槽のあるところは坊主谷側に道が伸びており、立ち入り禁止になっている。ここが坊主谷の水が奥集落の飲み水に使われていると推測する理由である。この立ち入り禁止の道を行けば坊主谷の水道施設に行けるのかもしれない。とはいえそこは行き止まりなので行ったところで嬉しくも何ともないが。

 奥集落に出てから数台の車とそれに乗って運転の準備をしている登山者を見かける。浅間尾根に人が多いと思ったが、みんな車で来ているのだろうか。だとしたら人の多さはバスが近い証拠ではない。少しあせる。奥集落の中は車道がつづら折になっており、そのときどきに民家がある。住んでいる人の様子を見るとワラビをとっている人がいたり、子供が遊んでいたり。下っていくと誤って民家の行き止まりに出てしまう。そこでは住んでいる人が車を洗っており、その人に山道を聞いた。その道に従っていくとうまい具合に三沢集落に出た。

 三沢集落からまた車道歩き。出発点の峰谷バス停に出るが、バスは16:08、現在時刻は15:05。1時間待つのはかったるいので奥多摩湖まで出ることにする。なお、峰谷へ行くバスは朝、私が乗った便と、この16:08のバスの2便だけであった。車道歩きをしながら登り尾根の登山口を探すが治山工事をしていてどうやら登れなさそうだった。登り尾根は榧ノ木山から峰谷へ下る尾根。雨降谷で小便をしていたら黄色いヘビを見る。珍しいと思ったので写真を撮りたかったが、ヘビ君はすぐ逃げていってしまった。峰谷バス停から峰谷橋バス停まで35分、やっとこさバス通りにたどり着く。時刻表を見ると都合よく2分後にバスが来る。トイレに寄りたかったが、それは諦めてバスに乗る。奥多摩駅でもホリデー快速おくたま号に乗れ、接続よく帰ることができた。

おわりに

 10m滝の直登は怖かったのでやっぱり沢登りは複数人で行った方がいいと思った。下りであっても道を間違えないよう、よく地図を見ること。この2点が反省点だ。坊主谷自体はバス停からも遠くないし、ヤブこぎもないし、小さくまとまっているのでよかった。

(2006年5月21日記す)


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