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2005年夏 - 奥秩父・大荒川谷[1/3]


2005年7月16日(土)、17日(日)
場所
埼玉県秩父市(旧秩父郡大滝村)・山梨県山梨市(旧東山梨郡三富村)/奥秩父
ルート
7月15日
大岡山=目黒=池袋=飯能=西武秩父駅(泊)
7月16日
西武秩父駅…お花畑駅=(秩父鉄道)=三峰口駅=(西武バス)=秩父湖バス停=(秩父鉄道バス)=川又バス停…入川観光釣場…赤沢谷出合…金山沢下降点…金山沢遡行…ゴンザの滝上(泊)
7月17日
ゴンザの滝上…小荒川谷出合…中の二俣右…奥の三俣左…2180m雁坂嶺西破風山最低鞍部…中ノ沢下降…ナメラ沢下降…久渡沢下降…雁坂トンネル山梨側出口…新地平バス停=(山梨交通バス)=JR中央本線塩山駅
参加者
中山(M2), 澤(B1)
参考文献

奥秩父・大荒川谷の地図

はじめに

 7月の3連休。海の日が第3月曜日と決まってから3連休になった。カレンダーを見ると5月の連休以来の3連休である。3連休とくれば3日間かけないと行けない山に行くというのが私のスタンス。どこか考えた。上越の沢はあんまり行ったことがないので行きたいが、7月いっぱいは谷に雪が詰まっているため難しい(cf.2002年湯檜曽川本谷)。というわけで奥秩父の荒川側の沢にターゲットをしぼった。荒川流域の沢はアプローチが遠くて今まで避けていた所がある。しかし、3連休ならばアプローチの長さも大して問題にならない。

 荒川流域の沢で行ったことがあるのは大洞沢和名倉沢入川真ノ沢だけである。調べてみると、大洞沢井戸沢、滝川水晶谷、この金山沢大荒川谷などおもしろそうな谷がいくつかあることがわかった。はじめ入川流域が入渓点が遠いので避けて、滝川水晶谷を考えていたが、同行者の澤から「どうせなら沢の下降もしませんか?」と言われ、考え直した。どうせ1年生に沢の下降を経験させておくならこれはちょうどいい機会である。そこで滝川水晶谷の近くで下降できる沢を探してみた。

 見つかったのは山梨側の笛吹川久渡沢ナメラ沢である。途中で登山道があるため、比較的短い行程で下ることができ、調べると初級なので下るのに技術的な問題はなさそうである。また山梨側の方が秩父側に比べて交通の便がすこしはよいこともあるし、私がナメが好きなのでここを下ることに決めた。

 しかし、滝川水晶谷だと稜線に出てからしばらく縦走路を歩かなければならない。そこでナメラ沢に下るのに縦走をしなくてすむ沢を探したら入川金山沢大荒川谷が見つかった。入川流域はバス停からしばらく歩くが、稜線を歩くよりはいいと思い、ここに決めた。というわけで予定は荒川入川金山沢大荒川谷遡行、笛吹川久渡沢ナメラ沢下降になった。

 メンバーは澤だけで2人だけになった。ちょうど松原さんがカヌーを出したので1年生にとってはどちらかを選ばなければならない状況にあったのだ。栗山、辛島、植松がカヌーを選び、澤が沢登りを選んだ。

0日目

2005年7月15日

大岡山=目黒=池袋=飯能=西武秩父駅(泊)

 20時ころ研究室を出て部室へ。出発の支度をしている澤と合流し、出発。部室を出るときに隣の渓友会の酔っぱらいに声をかけられる。大荒川谷に行くって言ったけど知らないんだろうな、彼らは。

 目黒から意外とすいている山手線に乗り、池袋で西武池袋線に乗り換え。急行飯能行きは混んでいて立ちだった。飯能からの西武秩父行きもボックス席は全て埋まっており、しばらく立っていた。澤は終点まで立っていた。

 終点西武秩父駅で下車。今日はここに泊まる。秩父鉄道お花畑駅に至るアーケードの下で寝る。終電で来た人たちにだいぶ見られていた気がするが、寝ようと努力する。シュラフカバーでも寝付くときは暑かった。

1日目

2005年7月16日

西武秩父駅…お花畑駅=(秩父鉄道)=三峰口駅=(西武バス)=秩父湖バス停=(秩父鉄道バス)=川又バス停…入川観光釣場…赤沢谷出合…金山沢下降点…金山沢遡行…ゴンザの滝上(泊)

コースタイム
川又バス停8:08
8:16
登山道入口9:04
9:06
赤沢谷出合9:40
9:44
赤沢谷沿いの道
・十文字峠道分岐
10:00
10:12
金山沢下降点11:07
金山沢出合11:25
11:57
1160m右から枝沢13:05
13:20
ゴンザの滝下13:40
ゴンザの滝上台地13:50
18:35就寝

 夜中、地元のヤンキーがうるさいのか駅前の通りでクラクションが鳴っていた。朝起きたとき、澤の言うことには救急車も通ったとか。6:00起床。支度をして秩父鉄道お花畑駅に向かう。6:36発三峰口行きに乗車。乗った車両には沢登りらしいヘルメットを持った集団がいた。ロングシートで足を伸ばして寝る。終点三峰口で起きると集団はおらず、その車両には澤と私しかいなかった。

 三峰口7:13発秩父湖行きの西武バスを待つ。バスは我々だけだったような気がする。秩父湖で降り、今度は川又行きの秩父鉄道観光バスに乗り換え。やはりバスは我々だけ。前に入川真ノ沢に行ったときも私一人だけだった。終点まで寝て過ごす。川又で下車。やっと長いアプローチが終わる。

 トイレで用を足し、少量の水を汲んで出発。できるだけ澤に判断させながら歩く。澤は地形図を見ながら正しく判断して進んでいく。雁坂トンネルへ向かう国道140号線を分け、砂利道を歩く。やがて入川観光釣場。3連休初日ならたくさんマイカーが停まっているだろうと思ったら、ほとんど車はなかった。みんな明日日曜日に天気が崩れると踏んでいるのだろうか。やがて車道が折り返すようになったところで十文字峠への道に入る。澤が前を歩くとけっこう速い。ここから登山道に入り、赤沢谷出合まで歩く。赤沢谷出合までは森林軌道跡を歩く。前に歩いたときは風情のあるいい道だと写真をとりながらのんびり歩いた。今回は澤がかなりとばすのであんまり楽しんでいる余裕もなく、赤沢谷出合にたどりついた。速ければ速いほど行程は進むのでよいのだが、体力的にアップアップだった。

 赤沢谷出合に着いて入川本流の様子を見る。予定はここから入渓なのだが、見たところ水量が多い。赤沢谷出合のすぐ下の発電所の堰の下では水量は少なかったが、堰の上は多い。そこで次善の策である十文字峠への道をしばらく歩き、途中で金山沢出合に下ることにした。「奥秩父・両神の谷100ルート」には入川本流の左岸の近くに道があるように書いてあるが、見つからなかった。十文字峠への道は金山沢左岸に沿って少し登り、橋を渡ると尾根にグイグイ上がっていく。だいぶ入川から離れたところで赤沢谷に沿って水平に歩く。やがて、道は赤沢谷に沿っていく道と柳小屋を経て十文字峠へ至る道とに分かれる。澤のハイペースに合わせて来てバテそうなのでここで一本とる。というか、とらせてもらう。

 寝不足がたたったのか、単に体力がないのか、けっこう体調が悪い。この先場合によっては引き返すことも考える。とりあえずペースを落とそうと思い、私が先を歩くことにする。ゆっくりゆっくり歩を重ねる。しばらく斜面を登ってから尾根を乗り越す。乗り越すあたりで単独行の人とすれ違った。釣り人だろうか。3連休初日に下るのはなぜだろう。そのあとは斜面をトラバースするだけの道。前の真ノ沢のときはほとんど地図を見なかったため、どこを歩いているか分からなかった。今回は下降点を探さなければならないので枝尾根を乗っ越す際に慎重に地形図で現在地確認を行った。やがて金山沢出合に至るとおぼしき1546m峰南尾根に至る。「<十文字峠|川又> 環境庁・埼玉県」と書かれた看板のあるところである。

 澤に先頭を歩いてもらう。踏み跡があり、赤テープもあるので下るのにそんなに不自由しない。しかし、澤はあんまりそんな経験もないのでけっこう迷う。後ろから見ていると道が見えるもので、ときどき「あっちにテープあるぞ」と修正しながら歩く。今回の山行の目的は「澤の判断能力を鍛える」。1年生には重荷だと思うが、とことん澤に判断してもらうつもりだ。

十文字峠道から金山沢出合へ
7/16 十文字峠道から金山沢出合に下っていく。踏み跡はあった。
金山沢出合
7/16 金山沢出合。

 金山沢出合に出る。降り立ったところはちょうど入川本流と金山沢が分かれる所だった。「金山沢」と読めるアルミの板が打ち付けられていた。水量は赤沢谷出合で見たときと同様けっこう多い。沢タビを履いて水の中に入ってみるとけっこう冷たい。あんまり泳ぎたくない温度だ。ヘルメットつけたり、ハーネスつけたりして出発。

 はじめはただの河原だが、右に曲がるあたりからゴルジュになる。滝はせいぜい3mほどだが、釜は深く滝を直登する気が起きない。さっそく右から小さく巻く滝があったが、とっかかりがつかめない。澤に私の肩に乗って先に登ってもらう。そんでテープで引っ張ってもらう。「だから沢は一人で来たくないんだよな」。私の独り言に澤も納得したようだった。

 赤沢谷出合では体の調子が悪かったが、金山沢に入って一気に元気になった。楽しいからそんな調子もどこかへ消えてしまった。河床を忠実にたどる澤の横を、倒木に乗ってすたすたと越えていったりする。

 やがて岩に濡れた足跡を認める。誰かが入渓しているみたいだ。釣り人だったら通り過ごすのが面倒だなと思いながら行くと、ただ休んでいる3人組にあった。釣り人かどうかは分からないが、そこでは釣り竿を出していなかったので通り過ごすのに問題はない。簡単にあいさつする。3人組の一人「今日はどこまでですか」、私 「特に決めていませんが、3時くらいまで歩いて適当なところで。小荒川谷(出合)よりは下です。ここ初めてなんで」、3人組の一人「私達も初めてですよ」てな感じ。

他のパーティー
7/16 水量の多い谷を登っていく。手前は澤、後ろは別の3人パーティー。
河原で一本
7/16 ところどころ深い所があり、水も冷たい。ここも右から巻いた。

 ゴルジュは続く。滝はなんて事ないのだが、泳がないと滝にとっつけない所が多い。澤がすり足で滝に近寄っていったが、ずるずる滑っていってとうとう泳いだ滝もあった。そこは左から巻いた。私達が通過してすぐ3人組がやってきた。左からルンゼの下っている滝は左から巻いたが、下降点がない。ザラザラの斜面をトラバース、岩の斜面に尻をついてずるずると下った。そこがこの日一番の難所であった。

 そしてゴルジュを抜け、しばらく河原が続く。沢が直線になっており現在地確認しやすい。ちょうど地形図に「金山沢」と書いてある1150m付近だった。ナメがあったので滑れるかどうか試すが、でこぼこして滑れない。直線のどんづまりは右から枝沢が下っており、本流は左に曲がっている。ここで一本。「奥秩父・両神の谷100ルート」には河原に三角形の岩があると書いてあったが、見つからなかった。

ゴンザの滝
7/16 ゴンザの滝。直登はできない。右から巻く。(「東京周辺の沢」では10mゴンザの滝○2)
ゴンザの滝中段の釜
7/16 ゴンザの滝中段の釜。深そう。巻き道からのぞいた。

 休んだところから20分でゴンザの滝。金山沢に入って最初の立派な滝だ。2段で上段はハングしており、その釜は深い。直登はできず、右から巻く。とりあえず写真を撮ってから巻く。トップを務める澤は巻きの入口が分かりにくいようだったが、なんとなく踏み跡が見えたのでつい指示した。登っていくと巻き道は確かになり、滝上段の釜を足元に眺めるようになる。直径6mといったところだろうか。水面は黒く、深い。思わず「ほーっ」とため息が漏れる。ある程度登ると下の方に下るように赤テープがあるが、何か危ない。さらに上を見ると踏み跡は上に続いていた。ゴンザの滝上の滝もいっしょに巻いて河床に降り立つ。懸念したほど悪くなかった。

ゴンザの滝巻き道
7/16 ゴンザの滝巻き道。比較的しっかりしていた。下は中段の釜。
ゴンザの滝上の台地
7/16 ゴンザの滝上の台地。右岸に幕営に適した所がある。後ろは別の3人パーティーのタープ。

 ゴンザの滝を無事やり過ごすと、目の前の右岸には幕営に適した草地が見える。とりあえず行ってみると我々のテントは十分張れそうだ。ここでテントを張るかどうか澤に考えさせる。ここでテントを張れば確実なところで寝ることができる。しかし明日進む距離は多い。先を進めばテント場があるか分からない。結局「ここでテントを張って早めに寝て体力を回復しましょう」という澤の意見に納得し、ここにテントを張った。

 テントを張ると都合よく雨が降ってきた。強い雨ではないが、この先降り続きそうな空模様だ。グッドタイミング。テントに入ってやわらぎを作って飲み、飯の支度をする。私がカレーを担当するが、若干のお湯をこぼしてしまい、へこむ。15:30ごろに飯ができ、気象の前に食べてしまう。そんなころに3人組がやってきた。2時間ほど差がついていた。どこかで釣りをしていたのかもしれない。

 飯食ってから澤は天気図を描き、私はたき火の薪拾いを行う。天気図を書き終わった澤の見解によると、明日は今日と同じようなくもり空らしい。どう転ぶか分からないこの天気なので不安である。雨が降ったら1日は停滞できるが、降り続けたら下るしかない。天気図は描けていたが、私の貸したボールペンの出が悪かったようで、何度も書き直した跡があった。

 テントの外に出てたき火を行う。メタ燃料や紙屑を使って30分ほど格闘するが、火がつかない。どうしてもつかないので諦めてテントに入り、持ってきたビールを飲んだ。今まではたき火大臣永谷君がたき火を起こしていたので、私が独力でたき火を起こす機会はほとんどなかった。やはり技があるのだろうか。沢パーティーとしてたき火ができなかったことにへこんだ。なお、1年生の植松はボーイスカウトのとき、角材とナイフとマッチ3本で火を起こすという荒行を行っているらしいので、私が伝えなくても大丈夫だろう、と自分をなぐさめた。澤もたき火を楽しみにしていたようで2人でへこんでいた。対照的に隣のテントからは煙りが立っていた。18:35就寝。


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