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2005年夏 - 奥多摩・小袖川


2005年7月3日(日)
場所
東京都西多摩郡奥多摩町・山梨県北都留郡丹波山村/奥多摩
ルート
JR青梅線奥多摩駅=小袖川バス停…小袖川遡行…石尾根…七つ石小屋…鴨沢バス停=JR青梅線奥多摩駅
参加者
中山(M2)

奥多摩・小袖川の地図

はじめに

 この小袖川は東京都と山梨県の県境となっている。県境縦走を行うにあたって小袖川を遡行するかどうかは大きなポイントとなる。県境に幅を持たせるのであれば小袖川右岸の鴨沢から七つ石山に至る道を歩き、鴨沢〜七つ石山の県境区間を歩いたとすることができる。一方、厳密さを求めるのであれば、まさに県境である小袖川を遡行する必要がある。ここで登山道と沢登りのどちらをとるかという選択が、「県境」という定義にどこまで忠実になれるかという意思表示につながる。

 で、私は後者をとった。もし私が沢登りをしていなければ諦めて鴨沢〜七つ石山の道を歩いて県境とするだろうが、私にはいちおう沢登りの経験がある。登れるのに登らないという選択肢はない。したがってここを今年の夏の間に登ろうと決めていた。

 本当は6月くらいに計画していたのだが、カゼひいたり他の沢登りの予定で伸ばし伸ばしになっていた。前のときは菊地と2人で行こうと思っていたが、私がカゼひいたため永谷君が代わりに小袖川に行ったのだった(参考:2005年度山行一覧)。天気予報が雨を伝える週末、一人で山に行くことにした。本音としては一人で山に登り、気持ちの整理をつけたかったというのが目的である。幸いその目的は達せたように思う。

 また予定では前日の土曜日に行こうと思っていたのだが、土曜日は4時半起きのところ、5時過ぎに起きてしまった。予定が完全に狂ってしまったのでその日は10時まで寝ていた。その土曜日は寝ているばかりで何もしなかったので日曜日こそ山に行こうと奮起して実際に山に登った。

日帰り

2005年7月3日

JR青梅線奥多摩駅=小袖川バス停…小袖川遡行…石尾根…七つ石小屋…鴨沢バス停=JR青梅線奥多摩駅

コースタイム
JR青梅線奥多摩駅8:23
8:30
小袖川バス停9:08
入渓点9:18
9:31
小袖大滝10:05
10:15
小袖集落下10:25
小袖鍾乳洞10:40
10:45
取水堰11:00
荒れたワサビ田11:10
950m右から涸沢出合11:28
1090m二俣11:47
1150m付近12:05
12:12
石尾根に出る13:05
13:08
七つ石小屋13:18
13:23
小袖乗越14:00
鴨沢バス停14:15
14:47

 朝、4時半に起きる。夏至を過ぎたものの朝は明るい。列車を乗り継ぎ、奥多摩駅へ。天気はあまりよくないにも関わらず丹波行きのバスはけっこう混んでいた。

 鴨沢の一つ手前、小袖川バス停で下車。若干、車酔いする。帰りのバスの時刻を控えてから小袖川に沿う車道を歩き出す。始めは鴨沢の集落の中だがすぐ両側がけの道になる。途中どうしても便を足したくなり、ガードレールを乗り越えて用を足す。その際、草のとげが刺さり、かぶれてしまった。今回の山行での負傷は靴擦れとこのかぶれだけである。

 ガードレールが左にカーブし、駐車スペースが2台分あるところで沢に下る。道はなく、スニーカーだと滑る。下に堰が見えたので避けるようにトラバースして沢に出た。小さな河原で沢タビを履き、着替える。他に誰もいない。

小袖川入渓
7/3 車道が左に曲がるところから小袖川に降り立ったところ。特に道はない。
荒れた沢
7/3 小袖川はところどころ倒木があり、荒れている。

 歩き始める。小袖川は初級の沢で滝が少なく、河原歩きが多い、そして長い。そういう想像通りの沢だった。滝は小袖大滝だけだと思っていたが、小袖大滝まではさしたる滝はなかった。その代わり、小さな廊下状のところがあったり、倒木が多かったり。まあ総じて河原歩き。

 やがてゴルジュの中に入る。逃げられないので不安になる。左に曲がるとそこには立派な小袖大滝があった。黒々とした壁に直瀑をかけている。見たところどこも登れなさそうだ。少し戻って巻き道を探すが、見上げる限り険しそうだ。小さく巻くのが良さそうなので滝の下に戻り、左の土壁にとりかかった。滝の壁の方に取り付くと細引きが垂れていた。落ち口に下りようと思ったが難しい。少し上を登って滝の上にたどりついた。

 そこは右から枝沢が下っているところだった。少し水を飲み、地図を開くがどこだかよく分からない。ただ小袖集落よりは下だ。続けて歩き出す。

小袖大滝
7/3 ゴルジュに入ったと思うと現れる小袖大滝。左から巻くと細引きが2本かかっていた。
小袖集落下
7/3 小袖集落下。現在建物は小さな納屋があるだけで平坦地があるだけ。

 小袖大滝から10分で小袖集落の下に出る。最も下流側に青いトタンの納屋があるだけで他に建物はない。あるのは昔建物があったことが想像できる平坦地だけである。小袖川でも平和なところである。平坦地の道も使いながらスピードをあげる。

 小袖集落を過ぎるとゴルジュがあり、深そうな釜を持つ滝が現れる。ここは右からへつる。替えのパンツを忘れたこともあってあんまり濡れないように歩く。

 さらに沢が右に曲がるところで右の岩のくぼみから水が流れ出しているところに出る。これが小袖鍾乳洞かと思って見に行くが、ただのくぼみで奥はなかった。しかも水は上流からひいているパイプがここから漏れているようだった。苔で滑って臭い思いをするというおまけ付きで戻る。そこから見えるあたりの右岸に大きな壁がある。何か看板があると思ったらそこに小袖鍾乳洞の入口があった。しかしその入口は鉄の門で閉ざされている。何か問題があったのだろう、立ち入り禁止と書いてあった。ちょっとのぞいてみたかったが残念、諦める。

釜のある滝
7/3 釜のある滝。右からへつる。
小袖鍾乳洞
7/3 小袖鍾乳洞。立ち入り禁止らしい。

 しばらく河原歩き。ところどころパイプが空中を通っている。どうやら上の取水堰からひいているパイプのようだった。左岸に平坦地があり、ここで一本とりたくなるが、心を鬼にして歩き続ける。最初の一本は3時間、12時まで休まないと決めていた。休むとそのまま自分との対話に入ってしまいそうで恐かったのもあるし、単に午後から雨という天気予報に合わせた行動でもあった。

 ときどき小滝をかける小袖川を遡行する。いくつかの滝は直登できるし、いくつかの滝は巻く。稚魚を放流しているので釣ったら返して下さいというはり紙があった。やがて取水堰。コンクリートで出来ており、登ることはできない。左から巻く。貯水槽があり、堰の上には取水槽があった。堰の上は平坦であった。

取水槽
7/3 取水槽。堰があると思うと取水槽があった。飲用にしていたのだろう。
二条滝
7/3 二条滝。巻こうかと思ったが、右からシャワークライミングするのが最も簡単だった。

 二条滝があった。右から登れるが水量が多く、シャワークライミングになる。巻こうと思ったが適当なところが見つからない。仕方ないので右から濡れて登った。まともにシャワークライミングしたのはここだけだと思う。

 もう滝という滝はないだろうと思いながら歩くが意外と多い。直登できないものも多く、ときどき迷う。でも一枚岩で歩きやすい河原もあり、歩は進む。 標高950mの二俣と思われるところを過ぎる。左から涸れ沢が下っている。大きな船のへさきのような岩を見て1150m二俣。右から滝をかけて枝沢が合わさっている。8mほどの滝があり、左のルンゼから登る。12時も近く、体も疲れてくる。右足のつま先を枝に引っ掛け思いっきりこける。12時に釣り人を見つける。釣り糸をたらしながら少しずつ登っている。挨拶すると驚かれた。そこから大岩のゴロゴロする河原を5分歩き、一本とる。

立派な滝
7/3 立派な滝。左から巻く。
二俣
7/3 二俣。水が少なくなってくると水量比1:2くらいの二俣が多くなってくる。水量が多い方を選んで登る。この二俣のあとしばらくで水は尽きる。

 水量はなかなか減らない。ぼりぼりとおかきを食べながら現在地を考えるが、やっぱりよく分からない。分かるのは小袖集落より高いところだということ。ここまで3時間、そこそこ飛ばして歩いているのでそこそこの場所にいると思うのだが。あと1時間くらいで石尾根に出たいと思いながら、でもこの水量を見ると難しそうだと思った。ペットボトルに水を汲んで出発。

 だんだんと傾斜が出てきて、歩いていても息があがる。倒木も多い。沢も枝沢が増えてくるが水量の多い方を選んで登っていく。枝沢を分けた分だけ水量も減ってきてやがて水が尽きる。そこはガレ場の末端であった。岩が安定しておらず登りにくい。木のあるところを選んでがむしゃらに登っていく。やがてササヤブに突き当たる。傾斜は登っていくごとに急になっていき、場所によっては登れない。できるだけササヤブの薄いところを選んで登る。なんとなく獣道になっているところを見つけこれをたどる。それでも笹を掴んで登る。ときどき方位磁針で向かっている北を確認しながら登る。最後は笹を掴んで足で押さえ付けて登るようになる。もう知床のハイマツ漕ぎといっしょだ。こんなの1時間と登っていられない、とくじけそうなそのとき登山道にひょっこり出た。

小袖川のツメ
7/3 小袖川のツメ。急な傾斜のガレ場。
石尾根に出たところ
7/3 石尾根に出たところ。七つ石小屋に向かう。

 道はただの道の途中で山腹を絡む道だ。周りをガスが覆っていた。あまりのギャップに周りをきょろきょろとしてから七つ石小屋に向かって出発。すぐ石尾根の稜線を歩くようになる。だんだんと登り調子になってくると左に七つ石小屋への下り道が分かれていた。小走りに下る。七つ石小屋上の鷹ノ巣山方面に向かう分岐を過ぎて七つ石小屋に到着。

 沢タビを脱ぎながら考える。あの鷹ノ巣山方面に向かう巻き道はどこへ向かうのであろう。私は小袖川を登ってきたので途中でその道に出るのではないか、でも気がつかなかった。幾何学的にそれはあり得ない。 山の表面が2次元的な広がりでない場合にのみそれはあり得るが。たぶん見落としたのだろう。靴に履き替えて準備万端。メモ帳を見ると控えたバスの時刻は14:39。現在時刻は13:23。歩きだと1時間では下れないので走って下ることにする。

 しばらく人はおらず快調に飛ばす。七つ石山を巻きブナ坂に至る巻き道の分岐で人を追いこしてから堂所を駆け抜ける。水場のあたりで脇腹が痛くなってきたのでペースを落とす。小袖集落に至るまでの間に若者6人ほどのパーティーを見かけた。ヘルメットを持っていたことを考えると唐松谷か大雲取谷を登ってきたのだろう。小袖川は遡行対象としてはあまり有名ではない。小袖集落を過ぎてかなり速いことに気がつく。が、普通のスニーカーで走っていることもあってつま先が靴擦れしてきた。車道に出てから走るのをやめ、歩き始めた。七つ石小屋から小袖乗越まで37分。普通に歩いたら1時間はかかるところだ。満足しながら歩くが、靴擦れが痛い。15分後鴨沢バス停についた。14:15。14:38のバス出発まで余裕の到着だった。

 トイレで着替え、バスを待つ。ほかにボーイスカウトの子供達が多く、いい意味で騒がしかった。バスは10分近く遅れてやってきた。バスは1台しか出なかったため、ぎゅうぎゅうなまま奥多摩駅にたどりついた。ホリデー快速奥多摩号に飛び乗り山行終了。ゆっくり寝て家に帰った。

(2005年7月3日記す)


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