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9月の三連休、季節的に遠くの沢に行ける最後の機会なので、人を探して甲斐駒ヶ岳尾白川黄蓮谷、湯檜曽川本谷、荒川入川真ノ沢のいずれかに行こうと考えていた。結局人が集まらず、うち一人でも行けそうな荒川入川真ノ沢に行くことにした。
甲武信ヶ岳周辺の地形をおさらいしておくと、甲武信ヶ岳はその漢字が示すように「甲斐(現:山梨県)」「武蔵(現:埼玉県・東京都)」「信濃(現:長野県)」の三国の境に位置する山。流域の観点から見ると、甲府盆地を流れる富士川笛吹川、秩父を流れる荒川、善光寺平を流れる信濃川千曲川と、そうそうたる河川の分水嶺にもなっている。信濃川はもちろん新潟市で日本海に流れているため、日本海と太平洋との分水嶺の一端にもなっている。なお信濃川と荒川の源流点はこの甲武信ヶ岳にあるが、富士川の源流は南アルプス鋸岳にある。登路は多く、尾根沿いならすべての県境から登ることができる。川沿いには千曲川沿いに登山道があるが、荒川、富士川笛吹川沿いには登路はなく、沢登りの対象となる。私はこれが4度目の甲武信ヶ岳になるが、1回目は春合宿で戸渡尾根を登り雁坂峠へ抜け、2回目は笛吹川ヌク沢を登り鶏冠谷右俣を下降、3回目はこの2ヶ月前に笛吹川東沢釜ノ沢を登り戸渡尾根を下った。このようにいくらでもルートを設定できる山である。
今回行く荒川入川真ノ沢は荒川の源流に当たる。私が一人でも行けそうと判断したのは真ノ沢林道という廃道がそばを通っているためだ。また、釣り師が多く入っているのでさほど難しくないと考えたからだった。一人だから縦走も考えたが9月も中旬、もう今年の沢もそんなに登れないと分かっていたのであえて沢に行くことにした。ただ、初めての沢単独行なので、柳小屋で一泊、真ノ沢で一泊の計画を立てていた。
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2004年9月18日 |
西武池袋=西武秩父…お花畑=三峰口=秩父湖=川又…赤沢谷出合…柳小屋(泊)
川又バス停 | 13:20 |
13:35 | |
登山道入口 | 14:20 |
取水堰 | 14:50 |
赤沢谷出合 | 15:00 |
1546m峰南尾根あたり | 15:55 |
16:40 | |
柳小屋 | 17:25 |
19:30就寝 |
さて計画してみるとえらく遠い。池袋から秩父に出て、秩父鉄道に乗り換え、秩父鉄道終点三峰口駅でバスに乗る。終点秩父湖でまたバスに乗り換え。終点の川又で下車。そこから4時間の歩きで真ノ沢出合にあたる柳小屋に着く。そしてバスの本数が少ないためにかなり遅くに家を出ることになった。
秩父湖バス停までほとんど睡眠に費やし、終点で下車。ここに来るのは和名倉沢に行って以来3年ぶりだ。降りてみると一回り小さなバスが待っていた。運転手はおらず、そばの小屋で休んでいると話し掛けられた。いわく運転手らしいが格好などは普通のおじさんだった。川又の方に行く人は月に一度くらいしか乗らないらしい。みんなマイカーで来るのだろう。
定刻まで待ってバスに乗り、出発。客は私一人、貸切である。川又まではずいぶんと狭い急な道を行く。秩父湖ができてからの道だからあまり広い道が作れなかったのだろうか。川又の少し手前で栃本関所の前を通る。秩父と信濃川上を結ぶ十文字峠道の関所である。川又バス停に着いてみるとずいぶんと道が広い。1998年塩山へ抜ける雁坂トンネルができたときに道も整備したのだろう。
バス停には立派なトイレがあり、ここで水を汲むこともできる。バスの運ちゃんはホースの水でバスを洗い出した。私は靴紐を締めなおして出発する。少し歩くと雁坂トンネルへ向かう太い道を分ける。滝川と入川の合流点にあたる。ここでは右の入川を行く。車道は続く。数軒家があったが、道も狭く狭い斜面に張り付くようにあり、だいぶ不便なのだろうなと思った。
9/18 川又バス停。西武秩父で秩父鉄道に、三峰口で西武バスに、秩父湖で秩父鉄道バスに乗り換えてやっと着いた。私ひとりで貸し切り状態だった。 |
9/18 赤谷沢出合まで森林軌道跡を歩く。 |
何度か道をカーブしていくと釣り場があった。川又までのバスやそこからの道からは想像できないほど人と車が多かった。入川も釣りがしやすいよう整備されており、人の声が多かった。釣り場の終わりに駐車場があり、たくさん車が並んでいた。より上流へ入っていく釣り師たちはここから歩き始めるのだろう。また車道を歩いていると東大演習林の看板が目立った。和名倉沢の帰り、二瀬尾根を下ったときにも見かけたので、荒川源流のこの辺一帯が東大演習林なのだろう。
釣り場からしばらくで車道は沢に下る道を分けて、斜面をからんで登りだす。最初のカーブで柳小屋に向かう道を見つけ、下ると先ほどの沢沿いの道といっしょになった。
入川沿いの股ノ沢林道は古くは伐採した木を運ぶ軌道だったようだ。枯れ葉の下に軌間の狭い軌道が見えている。ときどき広いところでは待避線があったりする。甲武信ヶ岳戸渡尾根下部でも和名倉山二瀬尾根でもこのような使われなくなった森林軌道があった。おかげでそこそこ広い道を下ってくる人とすれ違わずに歩くことができる。
股ノ沢林道は川又バス停からずっと左岸沿いで右岸に渡ることはない。途中、道の下にテントが張れそうな平らなところがあった。青い水を湛えた取水堰を見ると、やがて赤沢谷出合。道が崩れたようにガレになっており、周辺の地図を示した看板があった。ちょうど柳小屋の方からおじさんが下ってきており、聞くと柳小屋まではまだかなりありそうだ。しかも今日は三連休初日とあって、入っている人が多いらしい。できれば小屋で寝たかったが、2日目は真ノ沢で寝るためにツェルトも用意してきたので、ツェルトで寝ることにしよう。
赤沢谷を渡り、道は赤沢谷沿いに登っていく。真ノ沢への道を見落としたかと不安になるころ、道は分岐に出る。直進する道は地形図に示されているように赤沢谷に沿って登っていくのだろう。もう一つの道は柳小屋へ向かう道である。
この柳小屋への道も尾根をからんで登っていく。沢に下りるのかまた不安になる。途中雨が降ってきたのでザックカバーをかけた。そのあたりは道が判然としなかった。登っていき、やがて尾根を乗り越すが、そのあたりは広かったらしい。メモにはそう書いてあるが、休んだわけではないので覚えていない。 時間もかなり遅いので極力休まないで歩く。が、途中で16時になったのでしかたなく狭い道の真ん中で気象図をとった。20分の間、幸い人は通らなかった。しかし、歩き始めてすぐ人が2人来た。往復とは考えなかったので十文字峠から下ってきたのかと聞いたら、日帰り往復で釣りに来たらしい。他の人もザックがあまりに小さいところを見ると、日帰りで釣りがほとんどらしい。釣り師が多いとは聞いていたが、柳小屋に着いてみるとそれ以上ということが分かった。
道は沢の上の方についており沢のようすは見えない。ところどころ岩っぽいところを巻いたりもする。17時をまわり、さすがにもう人に会うことはない。山腹をからむ道はどこを歩いているのかちっとも分からない。「川又から4時間ではないのか、13:30に出たからあともう少しだろう」ともう弱気になりながら歩く。金山沢を過ぎて左岸に沢が3本集中するあたりは地形が特徴的だったのでそこでやっと現在地確認ができた。そして柳小屋に着いたのは17:30。何とか日暮れ前に着くことができた。それでも下山する日以外にこんなに遅くまで歩いたのは初めてだった。
9/18 柳小屋。釣り人たちで満杯だった。17:30に着いたものだからすっかり暗い。 |
9/18 小屋から80mほど上流に登ったところにツェルトを張りました。 |
柳小屋は人でごった返していた。小屋をのぞくと人はほとんどいない代わりに荷物が多い。みんな外でまだ釣っているようだ。左に真ノ沢林道の釣り橋を分けると、焚き火を囲んで晩飯を始めている人が多かった。メニューはもちろん釣ったお魚。そんなパーティーが2つ。歩いていると大きなイワナを持って歩いている人とすれ違った。人はたくさんいたのでツェルトを張れるところを聞くと少し先にテント一つ張れるくらいの小広いところがあると教えてもらった。話している感じだと、ここにいる人で釣り竿を持ってきていないのは私だけのようだった。この辺の沢に入る人は柳小屋泊まりの人も日帰りの人も釣りを目的に来ており、純粋に山登りないし沢登りに来ているのはかなり奇特なようであった。
言われたあたりでツェルトを張り始めると、もっと奥の右岸に渡ったところに広いところがあるという。あんまり安定しない河原だったのでそっちに引っ越す。沢タビを出して沢を渡りすぐ見つけられた。柳小屋も見えず、道もなく一人で気楽なところだ。ツェルトを張るともうだいぶ暗かった。ツェルトに潜り首だけ出して米を炊く。炊きながら地図を見ていたらコッヘルをひっくり返し、落ち込む。
寝る前に地図とガイドブックのコピーを見て、明日行く真ノ沢のおさらいをする。柳小屋で聞いたパーティーは明日、甲武信ヶ岳を往復するといっていた。しかし、ガイドブックには真ノ沢は前夜発一泊二日とある。沢の中で一泊しないと甲武信ヶ岳にはたどり着けないのではないだろうか。私も甲武信ヶ岳までだが途中までかも、と言ったら向こうは途中で帰るのかと驚いていた。私の計画ではこの柳小屋で一泊したあと、真ノ沢でもう一泊、その翌日は甲武信ヶ岳を登って西沢渓谷に下る予定である。うーん、登りに一泊二日かかるところを1日で往復してしまう釣り師とは沢屋よりよっぽど強いんではなかろうか、と恐れ入った。私も釣り師と勘違いされたが、まったくもって恐縮である。そんなことを考えながら寝付いた。
幕営可能数 | 3張りくらい。小屋の80mほど上流右岸に1張り、股の沢分岐の手前右岸に2張り。前者は沢を渡り、後者は真ノ沢林道を使った方がいい。 |
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水場 | 真ノ沢。 |
トイレ | たぶんない。 |
収容人数 | 10人ってところだと思う。 |
料金 | 無料。 |
備考 |
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