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2020年夏 - 丹沢・玄倉川小川谷廊下


2020年8月22日(土)
場所
神奈川県足柄上郡山北町/西丹沢
ルート
新松田駅=玄倉バス停…穴ノ平橋…小川谷廊下遡行…東沢出合…穴ノ平橋…玄倉バス停=新松田駅
参加者
中山、S氏、O氏
参考文献
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はじめに

 倉沢谷本谷の帰りに3人で「次どこに行く?」という相談をした。8月中ならまだ暑いから同じような濡れる沢がいいだろうという意見をもらって考えた。ボルダリング仲間とはいえ、S君とOさん2人はハーネスを持っていないし、ザイルワークを知らない。普通ザイルワークが必要となる沢登りを、ザイルなしで登れる沢は限られているし、不測の事態を考えると私が登ったことのある沢から選ぶしかない。考えた結果、西丹沢の小川谷廊下を思いついた。過去に3回行っており、ザイルを使わなくても登れるはずだ。

 自分の記録を読むと、2004年に懸垂下降でザイルを使っている。2011年にはそこを残置シュリンゲで下っているようなので何とかなるだろう、ダメなら尾根を登るか沢を下るかしようと考える。

日帰り

2020年8月22日(土) 晴れ

新松田駅=玄倉バス停…穴ノ平橋…小川谷廊下遡行…東沢出合…穴ノ平橋…玄倉バス停=新松田駅

コースタイム
玄倉バス停8:10
8:15
穴ノ平橋9:13
9:24
5mCS滝9:50
10:00
ワナバ沢出合10:27
10:36
裏側くぐれる3m滝10:45
大岩10:49
ヒエ畑沢出合11:04
大コバ沢出合11:19
石棚の下11:30
11:38
大デッチ沢出合12:09
東沢出合12:38
12:49
穴ノ平橋13:55
14:04
玄倉バス停15:00
15:08

 青梅線、中央線、横浜線、小田急線を乗り継いで新松田に向かう。奥多摩と違って丹沢は今の住所から遠い。それでも歳のせいか熟睡することなく乗り換えて定刻通りに新松田駅に着いた。

 予定通り7時15分新松田駅発玄倉経由西丹沢ビジターセンター行きバス集合。往復乗車券を買うと180円安くなるのでバス停脇の券売所で購入。バス停には10人ほど並んでおり、登山者が多い。座席に座れ、居眠りしながら玄倉へ向かう。

 玄倉で下車したのは途中で乗ってきた10人ほどの中学生くらいの集団と我々だけであった。中学生くらいの集団は下車すると早々どこかへ消えて行った。キャンプなのだろうか。私たちは日差しを避けるために閉店した店のひさしの下で財布などをしまう。

 暑い日差しの中、1時間歩く。玄倉川沿いの道に入るとすぐチェーンのゲートがあり、許可車しか入れないようだ。途中、分岐で迷ってスマホを取り出し、YAMAPで現在地を確認する。玄倉川にかかる橋を渡り、小川谷沿いの道を行く。橋を1つ渡ると傾斜は道は急になり、暑さも相まって疲れてくる。途中単独行2人と草刈り作業の3人を追い抜いて穴ノ平橋に着く。

 入渓準備を済ませ、着替えと靴を橋の下において出発。入渓点を知らない私は穴ノ平橋から沢を下ることにしている。6つほどの堰堤のうち、上2つほどははしご等がなく、下れそうな斜面を見つけて歩く。あとの堰堤ははしごを伝って下った。押し出した土砂が堆積していて荒れている印象を受けた。

穴ノ平沢
8/22 穴ノ平沢の堰堤を6つほどはしごを伝って下る。
3m滝
8/22 3m滝で先行パーティーに譲ってもらう。

 小川谷に合流してから歩くと最初の滝。広い河原とゴルジュを隔てる門のような滝だ。7人ほどのパーティーが最初の滝に取りついている。少し待つのか、と思いザックを下ろす。カメラのレンズに水滴が残って写真がもやもやする問題を解決するべく、今回買ったのがシュノーケル用のマスクくもりどめ。これを取り出し、レンズに1滴垂らしていると「お先にどうぞ」の声。あわててくもり止めをしまう。

 最初の滝は水流の右手を登る。Oさんが膝を突きながら登り、S君がサッと乗り越える。

 次の5mCS滝が核心部だった。チョックストーンの右側はいまは水流がなく、正確にはチョックストーンと呼べない。また、以前は倒木がかかっていたのだが、倒木がなく足がかりにできない。残置シュリンゲもない。ショルダーで私が下になり、Oさんに上がってもらうが、手がかりがなく登れず。そのうちに追い越した7人パーティーが追いついてきて、若い男性にも私の肩に乗ってもらう。しかし登れず。ベテランのおじさんが正面のクラックの残置ハーケンにあぶみをかけ、若い男性に登ってもらうがうまくいかない。そのうち若い男性が左手のチョックストーンとの隙間で「ここジャムききますよ」と笑顔で教えてくれた。内壁でもハンドジャムを使ったことが乏しい我々3人は反応に困った。その若い男性は自分で言い出した通り、ハンドジャムをきめておじさんに支えられながらも大岩との間からずりずりと登ってしまった。

5mCS滝
8/22 核心部だった5mCS滝。
5mCS滝
8/22 先行パーティーに手伝ってもらって5mCS滝を登る。

 若い男性が下にいたおじさんからお助け紐を受け取り、残置ピトンにシュリンゲをかけてお助け紐を固定、おじさんが登って行った。若い男性からは我々3人がお助け紐を使って登っていいとありがたいお言葉を頂いたので甘えて登らせてもらう。あぶみと紐を頼りにすると大して苦労することもなく登ることができた。お礼を言って先を行く。「いやあ難しかったねえ」「助かったねえ」と感想を述べながら歩く。

6m滝
8/22 6m滝を水流右の階段状から登る。
2段7mの滝
8/22 2段7mの滝は水流の左手を登り、バンドを左へ登る。見た目ほど難しくない。

 6m滝は水流の右の階段状を登る。見た目ほど難しくない。2段7mの滝は左側に乗ってみると見た目より広いバンドがあり、簡単に登れる。1箇所よさそうな滑り台があって、3人それぞれ滑って楽しむ。

滑り台で遊ぶ
8/22 滑り台で遊ぶ私。
6m滝
8/22 6m滝は右から巻く。

 その後も明るい河原を歩いていくとカメラの調子が悪い。ワナバ沢出合で休憩を取らせてもらう。カメラの電池を入れ替えると無事写真が撮れるようになった。ついでに腕時計もリセットされていたのでこれも現在時刻に直した。そうしている間に2人は出発準備が整い、ザックを背負っているのでおにぎりを1つほおばり早食いする。

 3m滝は左のチムニーから。6m滝は右から巻く。2004年には懸垂下降している巻きで、今回の核心部かと考えていた。2011年にはザイルを使わず沢に戻っている。2011年の経験から今回はザイルを持っていない。登ってみると岩に捨て縄のついたリングがあったが、ごく小さなルンゼをまたげばその先で階段状に下ることができた。心配は杞憂に終わった。

巻き終わり
8/22 巻き終わりは階段状の岩を慎重に降りる。
くぐれる3m滝
8/22 3m滝はあまり濡れずにくぐれる。左からも右からも登れる。

 巻き道からくぐれる3m滝が見える。左から登るんだろうと思いながら2人を先に行かせるとS君は左から、Oさんは滝をくぐって右から登った。右側は外傾していて登れないかと思ったが、取り付いてみるとそんなこともなく容易に登れた。複数のルートから登れる滝は面白い。

 明るい河原を進むと大岩。水量は多くなく、今年も大岩の下をくぐれそうだ。昔はこれ登ったんだけど、とS君に登らせると恐る恐る登って帰ってきた。左側の岩との間に穴があり、落っこちそうだ。大人しく大岩の下をくぐる。くぐってから大岩の裏側を見ると岩が欠けて穴になっているように見えた。

大岩
8/22 大岩の上のようすをのぞくが向こう側へ降りられなさそう。
大岩先の廊下
8/22 大岩をくぐると美しい廊下。

 大岩の先で沢は右に曲がり、廊下状を呈する。左に曲がるとすぐ河原になる。

 大岩から10分ほどでヒエ畑沢出合。左から細い滝をかけて水が落ちている。その先が石棚のゴルジュの入り口。気温が高いので積極的に水の中に入る。

 ゴルジュに入って最初の4m滝が少し難しい。足がつかない淵が手前にあり、滝は右から左へ落ちている。Oさんは水線沿いを泳いで行って水流の右を登って行った。S君は水線より少し上のバンドを伝って登った。私はOさんのルートで行こうとしたが、足を乗っけるところが見つからない。諦めてS君のルートで登った。どこに足乗っけるの、とOさんに聞いたら乗っけるところないという返事だった。写真を見ると膝も使って登っていた。

石棚のゴルジュ4m滝
8/22 石棚のゴルジュ4m滝はバンドを伝って登った。
石棚のゴルジュ5mほどの滝
8/22 石棚のゴルジュ5mほどの滝は水量があって立派。

 その後もゴルジュ内は清冽な流れが続く。5mほどの滝は右から登る。2番手のOさんが落ち口の通過で時間がかかる。水流に足を置いては離しているので、どうやら水流にスタンスを探しているが、落ち口で踏ん切りがつかないようだ。そのたびに水が跳ね上げられ、ちょっと下がってと言われる。そんなヤバいのかと思いながら最後に私が登るとなんてことはない、水流に足を置かずに登ることができた。

石棚のゴルジュ5mほどの滝
8/22 石棚のゴルジュ5mほどの滝の上部が高度感がある。
石棚
8/22 石棚でカメラのバッテリー交換と先行パーティー待ち。

 その先で大コバ沢出合が垂直に近い滝で合わさっている。ここで今度はカメラのシャッターを切っても写真が撮れなくなってしまったため、石棚の下で休みにさせてもらう。幸か不幸か石棚には先行パーティーがとりついていたので、その待ち時間も兼ねる。休みながら我々バスの1便で来たのになんでこんなにパーティーが先行してるんだろうねえ、朝早く車で来て玄倉に停めて来たのかねえと話す。

 石棚は左から。先行パーティーの踏み跡もよく見えて石の段々を登っていく。1段高いところがあったが、ホールドはしっかりしている。登り切ると石棚の上にもう1つ滝があって、これも高巻く。小さく巻こうとするといいバンドが見つからず、大きく巻くと残置ロープで下れた。

石棚の登り
8/22 踏み跡に従い石棚を登る。
こわれた堰堤
8/22 こわれた堰堤が出てきたのでそろそろ遡行は終わり。

 石棚を越えるとまた河原となり、難所と言えるところは少ない。先ほどの石棚の4人の先行パーティーを追い抜く。ぬるぬるした溝状のところをキャッキャッとはしゃぎながら登ったり、緩い二条の滝は面白そうなところを選んで登る。

 ちょっとした廊下に入り、右、左と曲がるとハラハラと黄色い葉っぱが花吹雪のように舞い落ちてきた。その美しい光景にOさんと足を止める。いいカメラだったらいい写真撮れたんじゃない、とOさんに言われるが、残念ながら1万円未満のレンズに水滴のついたカメラでは葉っぱは写らなかった。

 大きな淵を持つ3mの滝を水流の右から越えると小デッチ沢出合。すぐ上に大デッチ沢も出合っており、名前の通り大デッチ沢の方が水量が多い。廊下状の沢を登っていくと、欠けた堰堤が見えた。沢の最後を告げるオブジェクトだ。そろそろ終わりなので楽しんでくださいと言うとOさんは積極的に水に浸かった。

 出口の8m滝はOさんが右から取り付くが、中間部から手を出せず戻ってくる。S君が取り付くとOさんよりさらに進むが、あ、やばい、という落ちそうな言葉が聞こえてきたので、Oさんが急いで左から巻いて先回りしてシュリンゲで引っ張り上げた。私は最後に左からタラタラ巻いた。

 欠けた堰堤をくぐれば河原が広がる。東沢出合に出れば遡行はおしまいだ。さて、帰りの仕事道にどうやって登ったかなと右岸を見るが、けっこうな崖である。しばらく河原を登っていくと堰堤が見えた。右岸に2人の人影が見えて帰り道もわかってほっとする。水流が2つに分かれ、インゼルになっていると思ったら、間違えて東沢を登っていたので引き返す。

8m滝
8/22 8m滝でセミになるS君。助けに行くOさん。
仕事道
8/22 仕事道をたどって帰る。大デッチ沢への下りで道に迷った。

 先ほど見えた堰堤を左から巻くと踏み跡を発見。これだろうとここで一休み。踏み跡をたどると台地状の囲いのある空間に出た。この囲いは覚えているが、この先がよくわからない。河原から人影が見えたんだから台地の端っこを歩くのだろうと思い、囲いと囲いの間の踏み跡を歩く。その先、ちょっとあやしいトラバース道に入り、コルに出る。私たちの通った踏み跡よりしっかりした道が一段上に通じていた。その先も白いザレのトラバースでちょっとあやしいがこれだろう、とたどる。

 しかし、小尾根に出たところですっかり道が見つからない。しょうがないから小尾根を少し登るが、ピンクテープ1つがあるものの踏み跡ははっきりしない。下ってトラバースしている踏み跡を見つけなんとか大デッチ沢に下れた。今までこの下り道の途中で迷った記憶がないので少々焦った。雨が降っていたら道が見つけられなかったかもしれない。

 その後は巻き道ははっきりしていて、ときどき沢に降りたときは少し周りを見渡せば下り道が見つけられた。迷い時間も含めて1時間強で穴ノ平橋に戻ることができた。橋の下においた着替え等を回収し、靴を履き替える。右足から血が出ていて驚くが、ヒル本体が見つからない。ジャージをめくっても見つからず、あんまりかゆくもない。OさんとS君はヒルには噛まれていないようだった。

 来た道をタラタラを歩く。穴ノ平沢を使わず直接小川谷に入渓する道を探したが見つからない。現在地を調べようとウエストポーチからiPhoneを取り出したらうっかり落として画面が割れてしまった。買ってまだ1年も経っていないのによりによって画面側が地面に当たるとは運が悪い。貼っていたフィルムも効果がなかった。

 予報では午後から雨だったが、気のせい程度の雨がぱらつくだけだった。玄倉川橋が見えると遠雷が聞こえた。丹沢湖はだいぶ水位が低いようで、玄倉川橋のあたりは広い河原で子どもたちが浮き輪に乗って流され、キャッキャッという声が谷に響いていた。

 15時に玄倉バス停に着いて時刻表を見ると15:06のバスがある。特に調べもしていないのにこんなにいいタイミングで来るとは思わず、トイレや着替えを手早く済ませる。3分ほど遅れてきたバスは席が8割ほど埋まっていて、玄倉で乗った我々3人は着席できた。

 帰りの道は混雑しており、集落のある県道を通るバスは国道のバイパスとの合流点で毎回5分ほど待たされていた。しびれを切らせた人は谷峨駅のバス停で下車していた。我々は急いでもないし、と座ってうつらうつらしていた。結局玄倉から新松田駅まで定刻通りなら43分のところ、1時間10分ほどかかっていた。

 帰りは臨時休館の鶴巻温泉弘法の湯に替えて、東海大学前駅の秦野天然温泉さざんかに入った。初めてだったが、駅から小高いところに建物が見えるので方角はわかる。ニフティのクーポンで850円が750円になったので画面の割れたiPhoneを示した。温泉施設のレストランは営業時間を終えていたので、駅への途中にあった、登山客は最初の1杯ビール無料というラーメン屋で打ち上げて解散した。

おわりに

 東京で気温35℃の予報通り、暑い日であり、びしょ濡れになっても寒くなかったのでよかった。

 結果として核心部となった5mCS滝は難しくて、帰りにラーメン屋で打ち上げていたときもどう登ったらいいか議論した。ほかのパーティーが来てなかったらいろいろ試してみたいとか、とりあえず空身で挑戦したいとか、ブレーメンの音楽隊みたいに3段のショルダーにしたらとか、クライミングジムに通うS君にハンドジャム極めておけとか。

 他は冷や汗かくような場面もなく、ただ水と戯れることができて楽しかった。3人の実力的にもザイルがほしい場面はなかった。

 ジョワイユ12MEGA PIXEL 防水デジタルカメラのレンズの水滴の問題はシュノーケルマスクのくもりどめはあまり効果がないことが分かった。塗って伸ばして濡らすとムラがあってもやもやするし、何度か水に浸かるとくもりどめが落ちてしまう。この問題を解決するにはもうちょっとお金出していいカメラを買った方がいいのだろう。

(2020年8月23日記す)


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