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2020年秋 - 神津島・天上山


2020年9月13日(日)
場所
東京都神津島村
ルート
黒島登山口…表砂漠…天上山三角点…ババア池…天空の丘…表砂漠…黒島登山口
参加者
中山、Y氏
参考文献

はじめに

 私は三宅島に2回赴任したことがあるが、他の島はあまり積極的に訪れたことがない。管内の御蔵島を除くと、大島、八丈島、父島、母島だけであり、それぞれ仕事で1回、遊びで0回から2回訪れている。

 新島と神津島に知り合いが赴任しており、島にいる間に訪れてみたいと考えていた。このコロナ禍で各島内の医療機関の状況を勘案すると島に行くのは避けるべきかもしれないと思いつつも、それぞれの知り合いに尋ねたところ、観光客来るな、という訳でもないことが分かった。そこで一度に新島と神津島に遊びに行くことにした。他にも声をかけたが、予定が合うのが私だけだったので1人で行くことにした。

 天上山は標高571.8mあり、神津島の最高峰である。花の百名山に数えられているらしい。神津島のパンフレットの多くに天上山が取り上げられており、赤崎遊歩道などの海だけでなく、山も観光の主力として宣伝しているように見える。実際、天上山では私たちのほかに3パーティーを見かけた。

 登山前日は新島から雨の中移動し、赤崎遊歩道や多幸湾を見せてもらった。三浦漁港から見上げる天上山は雲をかぶっており、中腹はザレ場になっていて、島らしい緑に覆われた山とは違った印象を受けた。

日帰り

2020年9月13日(日) 晴れのちくもり

黒島登山口…表砂漠…天上山三角点…ババア池…天空の丘…表砂漠…黒島登山口

コースタイム
黒島登山口8:34
黒島登山道8合目9:02
9:05
黒島登山道10合目9:12
表砂漠9:29
天上山三角点9:40
10:01
白鳥登山道10合目10:12
ババア池10:19
天空の丘10:32
表砂漠10:48
10:52
黒島登山口11:29

 前日まで予報はくもりであり、気温は高かったので、赤崎遊歩道で飛び込んで遊ぼうと考えていた。しかし、朝起きると青空で、宿からは天上山が見える。この晴れを逃す機会はないと思い、急きょ天上山に方針を変更する。朝ごはんを食べ終わったころ、Yさんに方針変更を伝え、了解を得た。

 Yさんの車で送ってもらい、ペットボトルのお茶を2本買った後、黒島登山口へ。道の脇に車を置き、登山者一覧に名前を書き込む。

神津島天上山
9/13 集落から見た神津島天上山。
黒島登山口
9/13 黒島登山口から登り始める。

 黒島登山道は地形図にジグザグが書かれている通り、つづら折れの急登だった。山の上の台地まで280mほどを登る。9月中旬は島では夏だし、風もなく蒸し暑い。標高は低いのに樹木はマツくらいでずっとひなただ。ただ、朝は快晴だったのに今は雲が出てきてときどき日陰になるのが幸いだった。ハアハアとあえぐようにして登る。幸い、1合目から10合目まで細かい区切りで標柱が立っており、少しでも進んだことを確認できるのはよい。またベンチが置いてあって休むのも容易だ。

キキョウ
9/13 たぶんキキョウ。花の名前は神津島村役場パンフレット「【天上山マップ】山頂詳細ガイド・天上山に行こう!」を見て判別した。以下同様。
シマシャジン
9/13 たぶんシマシャジン。

 途中、8合目で水を飲む。ところどころ、ソバナのようなすぼんだ花を見ることができ、休みがてら写真を撮る。上の方は露岩があってアルプスっぽい風景だ。

黒島登山道
9/13 見返れば集落が下に見える。
黒島登山道
9/13 見上げると松の中に露岩が見えアルプスのような雰囲気だ。
イズイワギボウシ
9/13 たぶんイズイワギボウシ。
名前の分からない花
9/13 名前の分からない花。

 10合目まで登り詰めると、台地の端部に立つ。ぐるりと見回すと天上山の上はポコポコと山があちこちにあり、複雑な地形だ。524m標高点の黒島展望台から下っている人が見える。

 三角点に向かう。黒島登山道とは異なり、背丈を超える樹林帯を抜ける。黒岩展望台の山の東側を巻き、裏砂漠への道を分けると樹林帯を抜け、白い砂浜のような岩場を下って表砂漠につく。

天上山
9/13 あちこちに山が見られる複雑な地形の天上山。
表砂漠
9/13 表砂漠に下る。

 表砂漠はテーブルとベンチが並び、休憩しやすい。白い岩砂漠の風景はさしずめ賽の河原といった雰囲気だ。少し水を飲んで三角点に登る。岩の道はわかりにくく、視界が取れていても足元だけ見ていてはペンキを見落とし、道を外れてしまう。ガスっていたら簡単に道を間違うだろう。社のある分岐を左に行き、三角点への分岐に入るとひと登りで天上山三角点に着いた。

天上山三角点
9/13 天上山三角点へ登る。
神津島港
9/13 天上山三角点から見下ろすと神津島港にさるびあ丸が入港する。

 天気はよく、足下には治山工事跡、神津沢を目でたどると集落と神津島港が見える。その奥には恩馳島が浮かんでいる。北の神戸山の方へ目を移せばさるびあ丸が神津島港へ向かってゆっくり航海しているのが見える。式根島、新島は手前の山で隠れてよく見えない。休んでいるとちびっこを連れたおじさんが白鳥登山口の方から登ってきた。せっかくなので2人の写真を撮ってもらう。

 山頂でさるびあ丸が神津島港に接岸するまでの様子を見てから出発する。せっかく登ったので北のババア池から南の裏砂漠までぐるっと回るのが目標だ。治山工事跡からは崩壊する急斜面の上部に埋まった堰堤のようなものが見え、看板によるとそれが大正15年から行われているというから驚きだ。機械も限られた中、どうやってあんな山の中にコンクリート構造物を作ったのだろうか。索道をかけたのかモノレールをかけたのだろうか。海辺にはトロッコを敷いた跡もあるし、昔の人はバイタリティーがある。

治山工事跡
9/13 神津沢源流部には埋まった堰堤のようなものが見える。大正15年から治山工事を行ったというから驚きだ。
不入ガ沢
9/13 不入はいらないガ沢という変な名前の涸れ池。

 不入はいらないガ沢という枯れ池の横を過ぎると白鳥登山口10合目。そこから尾根に上がると道はややヤブっぽい。先頭を歩くYさんはクモの巣にだいぶ引っかかったようだ。私もなんだか汗をかいたからか腕がかゆい。足元は刈られているので迷うことはないが、嫌な道を下るとババア池に出る。

白鳥10合目とババア池の間
9/13 白鳥10合目からババア池の間で山を乗っ越すときに何かにかぶれる。
ババア池
9/13 ババア池。ただの池塘。

 変な名前だが、調べると下記の通りだ。

 その昔、島のおばあさんたちがお正月の準備用に榊の葉を採りによく来たからことからババア池と名付けられた。

神津島観光マップ

 池という名前だが、池塘と呼んだ方が登山に慣れた人には分かりやすい。暑くて落ち着かないのでそのまま東へ向かう。台地の東側に出て三叉路から天空の丘へ登る。

 天空の丘は北側の風景がよく見える。式根島、新島、利島まで見えた。その先は雲がかぶっていて大島や伊豆半島は見えなかった。東に目を転じると雲をかぶった三宅島の裾野と御蔵島、三本嶽が並んで見えた。天上山を振り返るとあちこちに山があってどれが三角点峰か分からない。

 時計を見るとすでに10時半だ。11時半には下山し、シャワー、昼ごはんの時間を確保して13時半のジェットフォイルに乗りたい。裏砂漠は断念し、黒島登山口に下ることにした。

天空の丘
9/13 天空の丘から見た利島、新島、式根島。
黒島登山口
9/13 黒島登山口から急坂を戻る。

 天空の丘からは植物のまばらな道で若干道を踏み外す。すぐ本来の道に戻り、表砂漠に戻ってきた。ベンチに腰掛けて一休みする。Y君と2人でババア池の手前を通ってから腕がかゆいという話をする。ウルシのたぐいは生えていなかったと思うが、何の植物だろうか。暑いし汗でベトベトするので早く下ろうと話し、黒島登山道に戻った。

 黒島登山道は登りがキツかったが、下りもキツい。目の下に見える集落が下るにつれ近づいてくるが、ヒザに来る。登山口に着くころには足が震えるほど疲れていた。Yさんも疲れていたが、それ以上に半ズボンの足がかゆいらしくトイレに駆け込み足を洗っていた。

 Yさんの車でYさんの家に帰り、1人ずつシャワーを浴びる。エアコンの効いた部屋に入ると少しはかゆみもひくが、やっぱりかゆい。持ってきたムヒをお互い塗り、少し落ち着く。

 2人でAILANAという店で本格ハンバーガーを食べ、土産屋さんでおみやげを買って、神津島港13:30発のジェットフォイルで竹芝へ帰った。

おわりに

 雨の予報で島を訪れたので、天上山は冬にまた登りに来ようと思っていたところ、登れてしまったのは幸いだった。登りの急坂に比して山頂の平らかなれども複雑な地形は不思議な山であった。三角点からは白い神津沢の治山工事跡と青い神津島港に接岸するさるびあ丸を見られたのはよかった。

 登っている間は花の名前が分からずパシャパシャと写真を撮っているだけだったが、調べてみるといくつか分かって花の百名山を登ったという実感が湧いてきた。花の同定には下記のパンフレットを参考にした。

観光・イベント | 神津島村役場オフィシャルサイト パンフレットダウンロード 【天上山マップ】山頂詳細ガイド・天上山に行こう!
https://vill.kouzushima.tokyo.jp/travel/#traveltitle

 白鳥10合目とババア池の間で何かにかぶれてすぐかゆくなった。その後もじんましんのようなものが右腕から右脇、左前腕、右太もも、左ふくらはぎに広がり、1週間ほど続いた。毎日かゆいところにムヒを塗ってかゆみをおさえた。ウルシのたぐいも毛虫も見なかったのだが、何にかぶれたのかが分からないのが気持ち悪い。

 後日、Yさんにかぶれの正体が何かわかったら教えてほしいと伝えたら、チャドクガの成虫ではないかとのことだった。チャドクガにやられるのは初めてだが、幼虫は葉っぱの裏にいることがあるらしいし、なかなか避けられない。

(2020年9月16日記す)


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