山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2015年山行一覧>南アルプス・大井川東俣[1/4]
大井川は南アルプスの間ノ岳に源を発し、駿河湾に流れる川である。上流部は南アルプスの中心部を流れ、間ノ岳から赤石岳を経て光岳へ至る山脈と白峰南嶺に挟まれている。畑薙第一ダムより上流は大きなダムも大きな滝もなく、ただ河原が続いている。「日本登山体系9」には南アルプスの大動脈ともいうべき大井川の本流を忠実に遡るルート。技術的な難しさはないので、中級者でものんびり南アの山深さを味わうことができる
とある。「関東周辺の沢」には赤石沢や明神谷などの支流が取り上げられており、本流は取り上げられていない。河原歩きに終始し、登攀要素が少ないためあまり遡行対象となっていないのだろう。
一方で、これほど日本アルプスに深く食い込んでいる川はあまりない。北アルプスなら黒部川だろうか。登山対象の山域を流れる河川として目を向けると興味深い川である。
大井川東俣を登る場合、いくつかのアプローチ方法がある。
前述の河川をたどるという考えに立てば1.が妥当だが、二軒小屋へ達するには小屋泊せねばならず、また左岸に林道のある河原歩きはあまりに冗長である。今回は東京からのアプローチに優れる2. をとった。白峰南嶺から大井川へ下る道は一般ルートとして伝付峠越えがあるが、下り立つのは二軒小屋であるから1. と大差ない。伝付峠より上流に、奈良田から一般ルートと池ノ沢の廃道を組み合わせれば白峰南嶺を越える道がつながるため、このルートを選んだ。また、パーティーの誰も農鳥岳に登ったことがなかったため、農鳥岳をめぐる沢を選んだ結果、大井川になったという経緯もある。
池ノ沢には名の通り池があり、昔のエアリアマップには池にキャンプ指定地の文字も見える。ネットでも写真を散見することができ、その幻想的な様子は一見の価値がありそうである。
結果として、奈良田を起点として広河内岳から池ノ沢下降、大井川農鳥沢遡行という沢登りのルート取りになった。沢登りとしてみると、困難な箇所もないためザイルや登攀具は持たずに沢タビだけ持って行った。
0日目 |
2015年7月31日(金) |
立川駅=奈良田駐車場(泊)
立川に10時に集合し、奈良田へ向かう。甲府南ICで中央道を降り、早川町へ。1時前に奈良田に着き、駐車場にテントを張る。他にも車が50台くらい停まっており、テントを張っている人もいた。どこかから犬の声が聞こえて騒々しいが、東京に比べて涼しいのですぐ寝た。
1日目 |
2015年8月1日(土) 晴れのちくもり |
奈良田駐車場…開運橋…大門沢小屋(泊)
奈良田駐車場 | 6:40起床 |
7:14 | |
1030m付近砂防工事現場 | 8:03 |
8:16 | |
小コモリ沢 | 8:43 |
大古森沢 | 9:07 |
9:25 | |
1460m峠 | 10:05 |
10:37 | |
1650m左岸 | 11:28 |
12:05 | |
大門沢小屋 | 12:13 |
17:30就寝 |
朝起きるとまわりは静かだった。昨晩張ってあった他のテントはなく、どうやら朝のバスで広河原へ向かっていったようだ。私たちは奈良田から大門沢小屋までのため、のんびりと出発する。
駐車場から見える奈良田橋を渡り、早川右岸の道を歩く。開運橋を渡って大門沢左岸の道を行く。入り口にパラソル立てておじさんが座っており、私たちの重そうな荷物を見てか、大門沢まで5時間くらいかかるよ、と教えてくれる。そこに登山届入れがあったので計画書を突っ込んでおく。
8/1 奈良田駐車場にはけっこうな台数の車が停まっていた。 |
8/1 砂防工事現場の間をぬって歩く。 |
大門沢左岸の道を行くと正面に堰が見えてきて、道の左手によしずで作った休憩所があったのでそこで休む。砂防工事のイメージアップで作っているようだ。水も引いてあってベンチもあり日陰で快適である。内側には南アルプスの地図や砂防工事の有用性が掲示されていた。
8/1 砂防工事のため付け替えられた登山道で大高巻き。 |
8/1 取水堰の横を通る。 |
砂防工事現場の間を仮の登山道が通っており、大門沢を2回渡ってダムの取水口らしき施設の横を通る。吊り橋を渡って右岸の道を行く。小コモリ沢は飛び石で渡り、大古森沢で一休み。日が上がってきて暑い。
8/1 取水堰の上で吊り橋を右岸に渡る。 |
8/1 大古森沢は丸太橋で渡る。 |
8/1 標高1400m付近の平らなところ。 |
8/1 1460mの峠のような箇所で一休み。 |
大古森沢から急登で平らかな台地に出て、さらに登ると1460mの峠のような箇所。材木を切り出していたのかワイヤーが散らばっていた。水の流れる歩きにくい道を歩き、河原に出て左岸に渡る。私の持っている25,000分の1地形図や日地出版の地図だと登山道はずっと右岸についているのだが、大門沢小屋の下流の右岸に崩れた跡を見たので左岸に道をつけたようだ。1時間歩いて休む。あとから気づいたが、そこは大門沢小屋から5分ほど下った地点だったので、下り客が不思議な顔をしていた。
8/1 丸太橋で右岸から左岸に渡る。 |
8/1 大門沢小屋に到着。 |
右岸に渡り返して5分ほど登ると大門沢小屋に到着した。小屋に1人あたり500円の幕営料を払って記帳する。前日の宿泊地と翌日の宿泊地を記入するので「池ノ沢小屋」と書くと小屋の主人が「池ノ沢行くのか」と少し驚いたようだった。まだ誰もテントを張っておらず、小屋の下の奥まったあたりにテントを張った。東側の景色がよい。
荷物の整理をして酒を飲んでいると5mmくらいの黒い虫がたくさん寄ってきた。脂が好きなのか肉を切った板やナイフに群がって尻をあげていた。気がつくと酒を入れたコップにも浮かんでいたりしてうっとおしい。初めて見る虫であった。白根三山を越えてくる人たちが多く、夕方にはテント場はいっぱいになっていた。寝入りは暑く、持ってきたシュラフカバーには深夜になってから入った。
ネットを見ていたらハネカクシという昆虫を見つけた。たくさん種類があるみたいだが、シリホソハネカクシに似ているように思う。