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2015年夏 - 奥秩父・千曲川梓川


2015年7月18日(土)〜7月19日(日)
場所
長野県南佐久郡川上村
ルート
7月17日
立川駅=某所(泊)
7月18日
某所=町田市自然休暇村…唐松久保沢渡渉…梓川岩小屋(泊)
7月19日
梓川岩小屋…国師ヶ岳…梓川岩小屋…唐松久保沢渡渉…町田市自然休暇村=川上村ヘルシーの湯=信濃川上駅
参加者
中山、K、H
参考文献
奥秩父渓谷調査団「奥秩父・両神の谷100ルート」(山と渓谷社,1997)

はじめに

 梓川、といっても上高地を流れる梓川ではない。長野県川上村を流れる千曲川の支流である。奥秩父の国師ヶ岳から北へ流れ出し、梓山付近で千曲川に合流する。

 中ほどの唐松久保沢までは林道が伸び、それより上流も昔は登山道が国師ヶ岳まで通じていた。古いエアリアマップによると、標高2200m付近には梓川岩小屋があり、それより上は岩屋林道と呼ばれていたそうだ。手持ちの25,000分の1地形図には破線が載っているものの、現在の地形図には載っていないようだ。

 当初、中央アルプスの片桐松川に行こうと考えていたのだが、雨の予報で急きょ登る沢を変えた。沢の後に私以外の2人が小川山のクライミングに行くとのことで川上村周辺で探した結果、梓川にした。

0日目

2015年7月17日(金)

立川駅=某所(泊)

 台風11号の雨も昼にはやみ、東京はくもりであった。このままの天気でもつんじゃないかと淡い期待を抱いていたが、予報では土曜日は長野県雨。そのギャップにやきもきしながら家を出た。家を出てすぐヘルメットを忘れたことに気づく。雨で縦走にするかもしれないし、まあいいかと考える。

 立川に集合してから奥秩父の梓川への変更を提案する。片桐松川が増水して登れない場合、縦走に切り替えてもいいルートが思い浮かばなかったのが理由だ。梓川なら穏やかそうなので雨降っていても登れるだろう。

 中央道を小淵沢ICで降り、清里方向へ向かう。八ヶ岳高原ラインはひどいガスで曲がり道も多く、慎重に走る。他に走っている車もなく、少々不気味な道を行き、0時過ぎに某所に着いて寝た。

1日目

2015年7月18日(土) くもりのち雨

某所=町田市自然休暇村…唐松久保沢渡渉…梓川岩小屋(泊)

コースタイム
町田市自然休暇村7:47
8:04
1650mゴトウ沢付近8:56
9:18
唐松久保沢渡渉9:43
9:53
1890m壊れた丸木橋10:30
10:50
2020m付近国師のタルへの沢11:27
11:37
2180m二俣12:41
12:50
梓川岩小屋13:00
17:00就寝

 朝起きて梓山に移動する。町田市自然休暇村のすぐ先の砂利道が始まるところに駐車する。左手には林道地蔵線がアスファルト舗装のまま続いている。梓川の左岸伝いの道を歩く。小雨が降っていてカッパを着るかどうか悩む天気だ。途中、水道施設みたいなところの分岐は右へ。標高1600m付近の分岐は左へ。ゲートを巻いてすぐ橋を渡る。

 梓川を渡った後、すぐまた橋。私はこの2つ目の橋を梓川だと思っていて道を間違っていると思い込んでしまった。先行く2人を呼び止めて橋まで戻って調べたらこの2つ目の橋は地蔵沢であった。金網柵のある植林帯の中で一休み。

 金網柵を出てしばらくで細いゴトウ沢を渡る。「奥秩父・両神の谷100ルート」ではゴトウ沢を渡ったあたりで入渓することになっている。今回は雨なので極力巻き道をとる。ゴトウ沢沿いの道を道を登っていくと左手に壊れた作業小屋1。ゴトウ沢をぐるりと巻いて今度は唐松久保沢へ向かう。唐松久保沢の手前には分岐があり、白い木製の標柱には「左 林道、右 国師岳に至」とかすれた字で書かれていた。唐松久保沢には橋がなく、渡渉になる。増水しているように見える沢を沢タビに履き替えて渡る。

作業小屋1
7/18 ゴトウ沢沿いの作業小屋1。壊れている。このあと道がグニャグニャと曲がって高度を稼ぐ。
唐松久保沢
7/18 沢タビを履いて唐松久保沢を渡る。

 唐松久保沢を渡ってからしばらくでまたゲートがあり、「梓久保林道 中部森林管理局」の標柱と「梓久保国有林 東信森林管理署」という看板があった。標柱と看板は新しそうだが、誰向けの看板なのだろうか。道が崩れているから林業を営む地元の人とも考えにくいし、釣り人とわずかな登山客だろうか。ゲートがあってもずっと下にゲートがあるからあんまり意味ないのに。

 ゲートを巻いた後、もともと車道だったであろう道は荒れてくる。ところどころ山側から崩れてきていたり、道に胸くらいの高さの針葉樹が生えていたり。一方で満開のシャクナゲを近くで見ることもできた。

東沢
7/18 唐松久保沢の先にある梓久保国有林のゲート。
丸木橋
7/18 梓久保林道には針葉樹が生え始めている。

 唐松久保沢から25分で東沢。ここも派手に崩れていた。上流側から巻くが、帰りに見たら下流側から巻いた方が楽だった。東沢から10分ほどで標高1890m付近の丸木橋。明らかに車道とわかるのはここまで。丸木橋は朽ちていてとても歩けない。沢に降りて左岸に渡って休む。「水源林をつくる公団造林 梓久保造林地…」という幅1mくらいの看板が倒れていた。よけいなお世話だが「契約期間 昭和36年度から45年間」とか書いてあるから昭和71年つまり平成8年に地主に土地を返したのだろうか。

ゲート
7/18 東沢は道が崩れている。上流から巻いたが、下流から巻いた方が楽。
梓久保林道
7/18 標高1890m付近の丸木橋は朽ちていて渡れない。
丸木橋
7/18 丸木橋の上流側で渡渉する。
作業小屋2
7/18 作業小屋2も天井が壊れて中が水浸しだった。

 歩き始めてすぐ左岸に作業小屋2を見つける。天井は穴が開き、床には水が溜まっていて泊まれる環境ではない。まわりには捨てられた一斗缶が散らばっていた。

渡渉
7/18 踏み跡に従い左岸から右岸に渡渉。
梓川
7/18 右岸沿いの道を歩く。

 赤テープのある踏み跡をたどり右岸に渡る。踏み跡に従っていくとだんだん登ってきて白ザレに出た。右手にまた作業小屋3。これも天井がたわんでいるので壊れていそうだ。1933m標高点付近の沢を渡る。道はさらに高巻きながら地形図に載っている堰堤を越える。やがて開けた明るい枝沢に出る。ここで一本。梓川に下る下流側はナメになっている。2010m付近の国師のタルへ登る沢であろうか。

作業小屋3
7/18 標高1930m付近の倒木帯で壊れた作業小屋3を見かけた。
巻き道
7/18 左岸の巻き道はだんだん登っていく。
枝沢
7/18 巻き道の途中に枝沢。国師のタルに上がる沢だろうか。
枝沢
7/18 枝沢から巻き道は一段上がる。

 この枝沢を渡ると急な登り。乗っ越して沢に戻る。ここからは沢を渡りかえしながらの登りである。ところどころ赤テープか赤丸のペンキが着いているが、断続的なのでその間は目を凝らして踏み跡を探さねばならない。2090m付近は道は沢を離れて左岸の小尾根を乗っ越している。急な道を下り切ると2090m付近の二俣。雨のせいか流域の狭い左俣と本流の右俣の水量が1:1に見える。2090m二俣で右岸に渡りかえして台地の上を歩く。台地の上から左岸に白いザレを認める。雨はだんだん強くなり、私の古いカッパは濡れて中のシャツも濡れてきた。寒くなってきて二俣はまだかと焦ってくる。倒木帯を越えるところでは木の上ですっ転んでしまった。やがて2180m付近の二俣に出る。疲れたので一休み。

渡渉
7/18 渡渉しながらの登りになる。
標高2040m付近
7/18 標高2040m付近。
2090m付近の二俣
7/18 2090m付近の二俣。左岸から右岸に渡り返す。
2090m付近の二俣
7/18 2090m付近の二俣を渡ったあとは右岸の台地を歩く。
倒木帯
7/18 倒木帯で木に登ってすっ転ぶ。ザックから落ちたのでケガはなかったがパンツが濡れて意気消沈。下りは左岸を巻いた気がする。
2180m付近の二俣
7/18 2180m付近の二俣。奥から来た本流に右から流れる枝沢が合流している。右から流れる枝沢に入る。 

 2180m付近の二俣から本流ではない右俣に入り、少し登ったところの左岸に岩小屋があると調べたので探すことにする。見つけられるかどうか不安であったが、大岩を左から巻いたらそれが梓川岩小屋であった。岩小屋はドーム状のひさしになっていて高さは2m以上、幅は8mほど、奥行きは3mほど。雨が降っていても吹き込みさえしなければ濡れることはない。地面は砂礫のザラザラで平らである。雨だしここにテントを張ることにする。水は目の前の沢で手に入れられる。途中の作業小屋が軒並み壊れていたが、この岩小屋は自然にできたものなのか健在であった。

梓川岩小屋
7/18 枝沢に入って割とすぐに梓川岩小屋を見つけられた。
梓川岩小屋
7/18 梓川岩小屋に幕営したようす。広い。

 体がすっかり濡れてしまって寒く、着替えた。焚き火もできないので乾かせない。雨の日に沢に入るもんじゃないと痛感した。少々狭いテントだったので何度か足がつりながら晩飯を食べた。昨日の睡眠時間が短かったので17時に就寝。

2日目

2015年7月19日(日) 晴れ

梓川岩小屋…国師ヶ岳…梓川岩小屋…唐松久保沢渡渉…町田市自然休暇村=川上村ヘルシーの湯=信濃川上駅

コースタイム
梓川岩小屋3:45起床
5:20
国師ヶ岳6:50
7:13
梓川岩小屋8:03
8:18
2020m付近国師のタルへの沢9:23
9:40
唐松久保沢渡渉10:42
10:47
町田市自然休暇村11:30
12:00

 夜はシュラフカバーと濡れたシャツで寝るには少々寒く、姿勢を変えると背中や腰などどこかしら寒く感じた。何度か寝返りのために起きてはいたが、概ね眠れていたように感じる。3:45に起きたHさんに促されて起きる。外はまだ暗い。

 昨日の残りのご飯と豚汁を食べて、出発する。今日は国師ヶ岳を軽装でアタックし、岩小屋のテントを回収し、来た道を下る。

 岩小屋の前の黄色いテープに「国師岳」と書かれているのでそれに従い、枝沢沿いの道を歩く。東側から日差しがさしているので今日は天気が良さそうだ。古いエアリアマップにはこのあたりを池の平と書いているが、池はない。ただなだらかな地形に水が流れているので、一面に苔が広がっており、そこにたおやかな流れが落ちている。ときどきヌタ場は見つけるが、鹿の姿や鳴き声は見ない。フンは見たからどこかにいるのだろう。道もろくにないので田部重治のころの奥秩父はこんな感じだったのだろうかと思いをはせる。こういう平和なところは好きだ。

岩屋林道
7/19 岩屋林道を登る。はじめは岩小屋の前の沢伝いでそのうち水が涸れる。
岩屋林道
7/19 小尾根を乗っ越して梓川本流の左岸の上を歩く。

 やがて小尾根を乗っ越し、本流に戻る。しかし、道は本流が見えるか見えないかくらいの高さの左岸についており、判然としない。迷って沢に出た。沢が倒木で荒れてきて登れなくなるので、25,000分の1地形図の登山道にしたがい、ここから左岸の尾根に向かって登る。道は分からずヤブに突っ込む。シラビソのヤブに阻まれながら何となくヤブの薄そうに見える左手へ登っていく。まったく道のない斜面をただ登り、青空の近い左側へ巻いていくとやがて奥秩父主脈縦走路へ出た。ちょうど単独行の人が甲武信から国師へ向かっているところに出くわした。

梓川
7/19 踏み跡が見つけられず梓川に出たところ。
梓川
7/19 ヤブの薄いところを探しながら登ると国師ヶ岳の東へ2,3分のところに出た。

 縦走路に出て2,3分で国師ヶ岳山頂に出た。私にとっては初めての国師ヶ岳だ。車を持っていれば大弛峠から1時間足らずだが、車を持っていないと遠くて行かない山だ。南側の展望が開けていて目の前に北奥千丈岳、左手には黒金山から乾徳山に至る尾根、その奥には大菩薩、その右手には富士山が二重の笠をかぶっていた。単独行の人が去ると誰もおらず静かな山だ。

国師ヶ岳
7/19 国師ヶ岳にて私。朝日がまぶしい。後ろは北奥千丈岳。
国師ヶ岳
7/19 国師ヶ岳の看板の横から岩屋林道に入る。
岩屋林道
7/19 岩屋林道は国師ヶ岳北尾根のやや東側を下る。甲武信ヶ岳が見えるところがあった。
岩屋林道
7/19 標高2460m付近から尾根を離れて梓川に下る。

 20分間大休止を取った後、岩小屋に下る。国師ヶ岳山頂から北へ向かう赤テープがあるのでこれに従って歩く。尾根を外して隣の沢に下りちゃうんじゃないかと思ったが、すぐに道は折り返し、尾根の梓川側を稜線に沿って歩くようになる。途中、遠くが眺められるところがあり、甲武信ヶ岳と三宝山が見えた。道は2460m付近から尾根を外れて梓川に下る。赤丸ペンキと赤テープを探しながら下るとやがて沢の音が聞こえるようになった。道は沢が見えるか見えないかのところをとラバースしている。やがて尾根を乗っ越して池の平沢に出て梓川岩小屋に着いた。

岩屋林道
7/19 水が流れているところを渡る。そのうち梓川の沢音が右下に聞こえる道になる。
梓川岩小屋
7/19 梓川岩小屋のテントに帰り着いた。

 テントを回収し、沢を下る。登りでは現在地確認に自信がなく、雨で濡れて辛かったが、下りは正確に現在地確認をする必要もなく、晴れていて、水量も平水なので気楽に下った。国師のタルへ登る沢で1本休み、唐松久保沢で沢タビを靴に履き替え、11:30に町田市自然休暇村に着いた。途中、釣り師らしき3台の車を見かけ、休暇村付近は多摩ナンバーを中心として何台か車が通り過ぎていった。

 川上村で風呂を探し、ガソリンスタンドで聞いたヘルシーの湯に入る。村外の人も300円とずいぶん安い。診療所、健康福祉課、駐在さんなどと併設されているが、入り口には風呂の看板がなく、情報なしで風呂を探してもたどり着くのは難しい。温泉ではなさそうだが、安いし空いているし汗を流すのによかった。

 私は明日仕事の都合で家にいなければならないため、信濃川上の駅まで送ってもらい、小海線と中央本線に乗って帰った。KさんとHさんは小川山のクライミングのため、廻目平へ向かっていった。ラジオでは関東が梅雨明けしたと伝えていた。

おわりに

 先々週も今週も沢登りを計画したら梅雨に阻まれてしまった。沢登りを計画していて雨に降られると多くの場合計画変更を余儀なくされるから面倒である。それでも今回は雨でもまあまあ登れる沢でよかった。

 今回は沢登りなのか縦走なのか微妙なところではあるが、沢タビ履いたし、渡渉も多かったし沢登り扱いにしようと思う。「奥秩父・両神の谷100ルート」には国師ヶ岳に抜けるのならば2泊3日の日程が必要と書いてあるが、梓山のバス停から歩き、ゴトウ沢から忠実に沢を辿ればそのくらいなのだろう。ガイドの記載を見るとこの筆者は国師ヶ岳まで詰めているように読めない。岩屋林道を登ればひどい藪漕ぎにはならないのでもったいない。

 装備としては渡渉できる靴なら何でもいいと思う。沢タビが確実だが、濡れてもいいなら登山靴でもいいかもしれない。ザイルやハーネス等の登攀具は不要。道を外しても滝がないし、なだらかなので適当に巻ける。ルートファインディングは少々難しい。踏み跡を探す作業と谷の形や方角から現在地を推測する作業を同時に行う必要がある。正直、国師のタルを通じる沢がどこだか正確にわからなかった。

 急きょ決めた割にはまあまあ楽しめた。ただ雨だったので濡れて寒くて辛かったのも事実だ。沢自体は静かで穏やかでいいところなので、梓川岩小屋のある池の平は一面コケむしていて昔ながらの奥秩父がしのばれる場所である。晴れの日にのんびりと歩いてみたい。

(2015年7月20日記す)


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