山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>北アルプス・薬師岳〜黒部五郎岳[1/3]
薬師岳は北アルプスにある標高2,926mの山、黒部五郎岳は同じく北アルプスにある標高2,839mの山である。北アルプス北部は黒部川を挟んで左岸と右岸に主稜線が伸びている。左岸は黒部五郎岳から薬師岳の稜線が連なり、その先は立山、剱岳となり、北方稜線となって富山平野に落ちている。今回はその黒部川左岸の山々を歩いた。なお、薬師岳も黒部五郎岳も日本百名山に選ばれている。
今年は都庁山岳部の新人合宿としてIさんがリーダーで北アルプスの縦走を計画した。2008年、2009年と合わせて南アルプスの縦走をこなしたので、次に4泊5日ほどの行程で北アルプスとなった。ルートはIさんがいったことのない薬師岳から雲ノ平、笠ヶ岳の縦走になった。当初計画は以下のとおりである。
東京からアプローチするので黒四ダムから入山、平ノ小屋経由で五色ヶ原へ上がり、薬師岳を縦走した後、いったん黒部川に下り、雲ノ平へ。鷲羽岳、三俣蓮華岳をつなぎ笠ヶ岳を登って下る計画であった。
実際にはメンバーのOさんが調子を崩したため、雲ノ平はやめて高低差の少ない黒部五郎岳に変更、笠ヶ岳をやめて鏡平から新穂高温泉へ下った。詳細は上記ルートを参照願いたい。
私はこのあたりを歩くのは2002年の黒部川上ノ廊下以来、8年ぶりである。薬師岳から三俣蓮華岳までの稜線からは上ノ廊下から源流にかけて見下ろせ、要所要所で上ノ廊下を思い出すことができた。
0日目 |
2010年8月5日(木) |
新宿=快速ムーンライト信州乗車(車内泊)
新宿から白馬行きの快速ムーンライト信州に乗って信濃大町へ。Oさんと私は新宿から乗り、YさんとIさんは立川で乗車。車内で合流する。電気の消えない明るい車内ではやばや就寝。
1日目 |
2010年8月6日(金) 晴れときどきくもり夕方一時雨 |
信濃大町=扇沢=黒部ダム…平ノ小屋…五色ヶ原(泊)
扇沢 | 5:40 |
7:30 | |
黒部ダム | 7:45 |
御山谷出合北 | 8:45 |
8:56 | |
御山谷 | 9:05 |
御山谷出合・中ノ谷出合間水場 | 10:00 |
10:15 | |
中ノ谷出合 | 11:25 |
11:32 | |
中ノ谷出合・平ノ小屋間 | 11:45 |
11:56 | |
平ノ小屋 | 12:15 |
12:38 | |
1630m | 13:27 |
13:38 | |
1760m | 14:07 |
14:17 | |
刈安峠 | 14:42 |
14:46 | |
1970m | 15:03 |
15:11 | |
2160m | 16:00 |
16:17 | |
2330m | 17:03 |
17:08 | |
五色ヶ原幕営地 | 17:35 |
20:30就寝 |
信濃大町駅について予約していたタクシーに乗車し扇沢へ。扇沢で6:30のトロリーバスに乗ろうと思ったら、その便はなく次の7:30で黒四ダムへ向かう。15分ほどで黒四ダム到着。黒四ダムでは夏休みだけあって観光放水していた。ダムの堰堤を歩き、左岸に渡る。ここから黒部ダムに沿って平ノ小屋まで左岸を歩く。
天気は晴れで暑い。大半は樹林帯だが、ときどき沢に出るとジリジリと日が照りつけて暑い。御山谷の手前の日陰でひと休み。黒四ダムから平ノ小屋方面へ向かっているパーティーは私たちのほかに2パーティーほどおり、ヘルメットをザックにつけた人がいたので話しかけたら上ノ廊下と言っていた。これだけ暑ければ沢がいいだろう。2002年の黒部川上ノ廊下のときも暑かった。
8/6 黒部ダム左岸の道。沢を巻くために階段を上下する。 |
8/6 中ノ谷出合。日差しがジリジリと暑い。 |
御山谷を渡り、黒部湖左岸の道を歩く。途中、沢が滝となって落ちているところでひと休み。Oさんが遅れ始めたので荷物を分けた。さらに1時間で中ノ谷出合。なかなか日陰が見つからず、中ノ谷出合を少し過ぎたところでひと休み。Oさんが寝不足と風邪気味を訴え、パーティーの計画遂行に迷惑をかけたくないとひとりで黒四ダムに戻るというが、まだ1日目で2時間ほどしか歩いていないので、みんなで諭して平ノ小屋へ進む。
平ノ小屋まで15分ほどのところでOさんの足がつり、Yさんと2人でていねいにストレッチする。それでも5分ほど歩いてまた足がつってしまった。今度は狭いところだったので、私がOさんの荷物も背負って平ノ小屋へ先行、YさんとIさんでOさんの足のようすをみてゆっくり歩いてきた。
8/6 Oさんの足がつったのでYさんの指導でストレッチ。 |
8/6 平ノ小屋。 |
平ノ渡しの船着き場に着くとすでに12時の渡しは出発していた。今回は平ノ渡しに乗らないが、なんとなく残念だ。船着き場から急な階段を登って平ノ小屋につく。ここで水を補給し、後続を待つ。思ったより早くOさんは追いついてきたが、小屋の影でぐったりとしていた。平ノ小屋から五色ヶ原の登りは長く急なのでできるだけOさんの荷物を減らして他の3人に配分する。
平ノ小屋から五色ヶ原へははじめはヌクイ谷沿いの平坦な道を行く。ヌクイ谷沿いと行っても谷はずいぶん下で木々に隠れて見えない。だんだんと登り坂になってきてジグザグの刈安峠の登り道になる。途中で1本とり、歩き出すとまたOさんの足がつる。屈伸してまた出発。
8/6 平ノ小屋からヌクイ谷に沿って五色ヶ原へ登る。 |
8/6 五色ヶ原への登り。 |
刈安峠についた時点で14:42。Oさんのペースに合わせるとまだまだかかりそうなので、テントを持っているIさんと鍋を持っている私で先行する。とはいえ荷物を分けたIさんも私もヘロヘロで、休んではYさん、Oさんに追いつかれるようなペースで登った。
刈安峠から五色ヶ原はなだらかな登りで、途中平坦なところもある。標高1,950m付近で電波塔のようなものの横を通り、1,970m付近のヘリが止まれそうな広いところで休む。水があればここで休みたいくらいだ。途中振り返ると針ノ木谷にかかる虹が見えた。2,200mくらいからはときどき平坦なところが現れ、チングルマが咲いている。場所によっては呆けたチングルマもある。
2,362m標高点からは平坦になり、花も多い。でもイワカガミくらいしかわからない。遠くには今日泊まる五色ヶ原キャンプ指定地もあり、その奥には立山と見紛う獅子岳がそびえ立っていた。途中、道を間違えたらしく、涸れ沢みたいなところを歩いて五色ヶ原キャンプ指定地に到着。振り返ればYさん、Oさんと10分くらいしか離れていなかった。
8/6 五色ヶ原へ出たところ。 |
8/6 五色ヶ原キャンプ指定地。 |
五色ヶ原キャンプ指定地は広く、100張ほど張れそうだ。実際に張ってあったのは20張ほどであった。小屋からは遠いものの、キャンプ指定地の水場、トイレもあり快適だ。テントを張り始めたら小屋から人がやってきてテント場代を徴収していた。ひとり500円であった。外で飯を作り始めるが、雨が降ったりやんだりでバタバタしながらであった。そんな天気が幸いしてかまた虹を見ることができた。結局テントの中で飯を食べ、持ってきたビールを開け、20:30に寝た。
2日目 |
2010年8月7日(土) くもりときどき晴れ |
五色ヶ原…越中沢岳…スゴ乗越小屋(泊)
五色ヶ原幕営地 | 3:00起床 |
4:50 | |
五色ヶ原山荘 | 5:09 |
5:20 | |
鳶山 | 6:03 |
6:07 | |
越中沢乗越 | 6:50 |
越中沢岳北2400m | 7:00 |
7:15 | |
越中沢岳北2545m | 7:50 |
7:57 | |
越中沢岳 | 8:03 |
越中沢岳・スゴ頭コル | 9:12 |
9:22 | |
スゴ頭 | 9:42 |
9:58 | |
スゴ乗越 | 10:50 |
11:15 | |
スゴ乗越小屋 | 12:00 |
17:40就寝 |
昨日は遅かったので3:00に起床。テントをたたむころ、周囲はガスで覆われていた。木道をたどって五色ヶ原山荘へ向かう。五色ヶ原山荘は3階建ての大きな建物で、建物の前には出発を待つ人たちが準備していた。
五色ヶ原山荘から越中沢岳を越えて薬師岳へ向かう。しかし、またOさんが、昨日もテントであまり眠れなかった、気管支が狭い持病を持っているが薬を忘れた、ひとりで戻りたいと言う。しかし薬師岳の縦走もこれからというところなのでまたみんなで諭す。ひとりで返すことはできないのでエスケープするなら室堂に出るが、その場合は全員で行かなければならないなどと話す。一方、Oさんが戻り道として「昨日の平ノ小屋から船が出ている」と言い、その船が黒四ダムまで連れて行ってくれると考えているような節だったので、それは針ノ木越えの渡しだと言ったが分かっていないようだった。「行くよ」となし崩し的に説得し、薬師岳方面へ連れていくことができた。気管支が狭い点は私のぜんそくの薬で何とかした。
8/7 チングルマとハクサンイチゲの広がる五色ヶ原を歩く。 |
8/7 五色ヶ原山荘で朝もやの中、月のように上がる朝日を見た。 |
五色ヶ原山荘から五色ヶ原の平を抜けて鷲岳方面へ登る。木道の整備された歩きやすい道だ。振り返ると霧に覆われた草原に朝日が昇ってきている。その奥は雲海が広がり、得も言われぬ美しさだ。五色ヶ原という名にふさわしく花が多い。ウサギギク、ハクサンフウロ、イワギキョウ、クルマユリ、ダイモンジソウ、ハクサンイチゲ、ウメバチソウとIさんに名前を教わりながら歩く。鳶山まで木道は続く。ガスはとれそうでとれず、鳶山の東側は常願寺川上流の崩壊地になっているのだが、ガスで見えなかった。
8/7 日が昇り、五色ヶ原のガスがみるみる消えていく。 |
8/7 鳶山へ登る。 |
ガスの中の鳶山で一本とるが、すぐ26人のツアー客が追いついてきたので出発する。鳶山から越中沢乗越まで下って越中沢岳の登り返し。登り返しでしばらく木道を登るとひらけたところに出る。ここでひと休み。昨日今日でOさんの持っている晩、朝、昼の食料を優先的に食べてOさんの荷物を軽くする。魚肉ソーセージやゼリーなど重いものをたくさん食べた。やがて26人パーティーが追いついてきたので出発。
ガスの中、緩やかな斜面を登る。気がつけば私たち4人パーティーの後ろに26人パーティーがぴったりついていて大行列となっていた。しかし越中沢岳まであと10分足らずというところでOさんが遅れてきたので、そこでOさんの荷物を分ける。パーティーとしてのスピードを重視し、シュラフや防寒着などOさんの個人装備も接収し、カッパと水くらいを残す。そこで休んだので26人パーティーが休んでいる越中沢岳は通過。
8/7 越中沢岳の登り。後ろに26人パーティーがぴったりついていて大行列となった。 |
8/7 越中沢岳の下りに岩場がある。 |
越中沢岳からの下りでガスが晴れ、すぐ下にスゴの頭が見えた。その先には雲ノ平、笠ヶ岳が遠く見えたが、薬師岳や赤牛岳は雲の中で見えなかった。急な下りで足場が悪く、なかなか進まない。特に1箇所ある鎖場は慎重に足元を見ないと下れず時間がかかった。しかしそれはすぐ後ろを歩いていた26人パーティーも同様でもっと時間がかかっていた。
8/7 越中沢岳の下りの岩場。26人パーティーが渋滞していた。 |
8/7 越中沢岳から下り、スゴの頭へ登る。 |
越中沢岳とスゴの頭との間のコルで休む。私はザックの底部に突起があり、腰があたって痛いのでそこでパッキングをし直した。一番下に入れていた鍋の取っ手が腰に当たっていたので据え直す。しかし再パッキングしていたら26人パーティーに追いつかれ、何持ってるだの、重さは何キロだの質問攻めにあったのでさっさと出発した。
コルから20分の登りでスゴの頭。黒部川上ノ廊下に突き出た展望台となっており、金作谷出合の河原や黒部五郎岳が見えた。暑いこともあってOさんがザックに座って燃え尽きたポーズをとっていた。スゴの頭からスゴ乗越へ下る。これも急な下りで歩きにくい。26人パーティーの前について歩く。ところどころ岩の出ているところではOさんのダブルストックを預かりながら下る。
8/7 スゴの頭から越中沢岳を振り返る。けっこう急な下りだった。 |
8/7 スゴ乗越でひと休み。 |
下りきってスゴ乗越。ここからスゴ乗越小屋まではあと少し。でも日差しも暑いのでゆっくり休む。乗越にはアオノツガザクラの大きな株があり、珍しいとIさんが言っていた。去年、大学の後輩が上ノ廊下からのエスケープにこのスゴ沢を使ったらしいが、よくまあうまく雪も大きな滝もない沢を選べたものだ。
スゴ乗越からスゴ乗越小屋までは小山を一つ越える。小山にはニッコウキスゲが咲いており、写真をとりながら歩く。ちょうど黒部川を挟んで薬師見平の向かいにもあたっている。だんだんOさんが遅れてくるが、IさんがついているのでYさんとさっさとスゴ乗越小屋へ向かった。
8/7 ニッコウキスゲの咲く道を歩く。 |
8/7 スゴ乗越小屋で幕営。外で飯の準備。 |
スゴ乗越小屋のテント場は五色ヶ原ほど広くなく、すでに7張ほどが張られていた。テントを持っていたのはIさんだったのでテント場を整地してしばらく待つ。10分ほどでバテバテのOさんがやってきたので、付き添ったIさんからテントを受け取り、幕営した。
スゴ乗越小屋はテント場から1分ほど薬師岳方面へ向かったところにあり、小さな小屋であった。五色ヶ原にある2つの小屋の人を全部収容するとしたら、富士山の小屋くらいギュウギュウ詰めだろう。Oさんはテントで眠れなかったので小屋泊すると言ったが、小屋の方が人で狭いのでやめたほうがいいと説得し、まだ夜まで時間があるからテントの中で寝かせた。
スゴ乗越小屋に着いたのは12時。まだ早いので外で飯の支度をしながら酒を呑む。五色ヶ原にもいた外国人さんから「lunch or dinner ?」と聞かれたりした。海藻サラダが好評で2回分用意したが、2回分作ってしまった。ビールとワインと日本酒でよく酔っ払い、カレーライスを食べて17:40に早々寝た。しかし、夕方になっても暑く、22時頃まで眠れなかった。