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2010年夏 - 北アルプス・薬師岳〜黒部五郎岳[3/3]


2010年8月6日(金)〜8月10日(火)
場所
富山県中新川郡立山町・富山市(旧・上新川郡大山町)・岐阜県飛騨市(旧・吉城郡神岡町)・長野県大町市
ルート
8月5日
新宿=快速ムーンライト信州乗車(車内泊)
8月6日
信濃大町=扇沢=黒部ダム…平ノ小屋…五色ヶ原(泊)
8月7日
五色ヶ原…越中沢岳…スゴ乗越小屋(泊)
8月8日
スゴ乗越小屋…薬師岳…薬師峠(泊)
8月9日
薬師峠…黒部五郎岳…三俣蓮華岳…双六岳…双六小屋(泊)
8月10日
双六小屋…鏡平…ワサビ平…新穂高温泉=松本
参加者
I、Y、O、中山
参考文献

4日目

2010年8月9日(月) 朝方くもり昼前晴れ、午後時々雨

薬師峠…黒部五郎岳…三俣蓮華岳…双六岳…双六小屋(泊)

コースタイム
薬師峠幕営地2:00起床
3:37
太郎平小屋4:00
北ノ俣岳北2576m峰4:56
5:08
北ノ俣岳5:36
5:40
中俣乗越6:35
黒部五郎の肩8:03
黒部五郎岳8:13
8:26
黒部五郎の肩8:35
9:00
黒部五郎小舎10:08
10:23
2620m峰11:09
11:20
三俣蓮華岳12:04
12:19
双六岳13:19
13:28
双六小屋14:08
19:10就寝

 夜中雨がパラパラと降ったが、強くは降らなかった。2時に起きてラーメンを食べ、早々テントをたたんで出発する。この日は双六小屋までの長丁場なのでこの日もOさんの荷物を3人で分けた。昨日の晩、今朝の食料がなくなったのでそれでも軽く感じた。暗い中をヘッドランプをつけて歩く。私たちより先に学生パーティーが出発していた。

 薬師峠からひと登りすると太郎兵衛平。平らな尾根を歩いて行くと太郎平小屋。立派な小屋が広い稜線に建っていた。右手に富山平野の灯りが広がっている。遠いがここも合併で富山市になったのか。続けて太郎山へ登る。木道が続いていて歩きやすい道だ。太郎山は非常に平らな山でどこが最高点か分からない。木道の途中で太郎山へ分かれる道があったが、今日は長丁場なので先を急ぐ。太郎山への道を分けると木道が途切れ、平原の中の道になる。明るければ気持ちよい道だと思うのだが、暗いと道が見えず不安になる。

 太郎山の鞍部から北ノ俣岳への登りにかかる。尾根沿いの道だが、ところどころ草のハゲたところを登る。気づくと涸れ沢みたいなところを登っていたりしてよく見ると横に正しい道が伸びていたりする。先に出発した学生パーティーを追い抜き、2,576m標高点でひと休み。

雨脚
8/9 富山平野に降る雨が見えた。
ハクサンイチゲ
8/9 北ノ俣岳のハクサンイチゲと黒部五郎岳。

 振り返ると富山平野に冬みたいな重苦しい雲が広がっている。その下には文字通り雨脚が地上に落ちているのが見える。みんな右下に掃いたように伸びているので北風が吹いているのだろう。目を行き先に向けると広い山容の北ノ俣岳と左手に赤木平が見える。

北ノ俣岳
8/9 北ノ俣岳で写真を撮る。
白山
8/9 白山と西の空に広がる朝焼け。

 ハクサンイチゲの咲くきれいな野原の横を登り、北ノ俣岳。だんだんと晴れてきて景色も見えてくる。天気予報の「朝はくもり、昼前晴れ、夕方ところにより雷、雨」という予報通りのようだ。はるか遠くに朝焼けを背景にして白山も見える。向かう先には黒部源流の黒部五郎岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳が、その奥には槍ヶ岳、笠ヶ岳が見えた。

黒部五郎岳
8/9 北ノ俣岳から黒部五郎岳へ向かう。
薬師岳
8/9 振り返ると広い赤木平と薬師岳。

 北ノ俣岳からなだらかな下りを歩く。赤木山を過ぎ、中俣乗越へ下る。北ノ俣岳、中俣乗越、黒部五郎岳の別名・中ノ俣岳と続くが、その名は飛騨側金木戸川の呼称に基づいているようだ。一方、中俣乗越には黒部川からは名渓・赤木沢が上がっている。このとき遡行者は見当たらなかったが、一度登ってみたいものだ。沢から上がってくる人はいなかったが、トレイルランのゼッケンをつけた人が小走りでかけていった。3人ほどみかけた。Iさんの話だと昨日もみたそうだが、どこからどこまで走るのだろう。

雲ノ平
8/9 中俣乗越付近から見る雲ノ平と周辺の山。
黒部五郎岳
8/9 黒部五郎岳の肩への登り。

 中俣乗越を過ぎて2,578m標高点の登りでひと休み。昨日、薬師岳の下りで痛めた足首が痛み始めるが、それ以上悪くはならなかった。2,578m標高点から少し下って黒部五郎岳へ280mの急登。下部はハイマツに覆われているが、上部はガレ場の中の道になる。黒部五郎岳の肩に着き、ザックを下ろして山頂へ向かう。Oさんはすっかり息が上がっていて下ろしたザックの上でひっくり返っていたが、登るよ、と言って一緒に山頂へ連れていった。

黒部五郎岳
8/9 黒部五郎岳にて集合写真。
黒部五郎岳
8/9 黒部五郎岳のカールに下り、三俣蓮華岳へ向かう。

 黒部五郎岳の山頂は人が多かった。黒部五郎小屋から登ってきた人が多いらしい。双六岳の向こうに槍穂連峰が見える。眼下にはカールと黒部五郎小屋。近そうに見えるが、1時間以上かかるようだ。気がつくとYさんが「あの山は何山、その向こうは何山」と知らない登山者に展望を解説していた。

コバイケイソウ
8/9 コバイケイソウの群落。
黒部五郎岳
8/9 黒部五郎岳のカールを下から見上げる。

 ザックを置いた肩に戻り、行動食のパンを食べる。腹を満たして出発。しばらく尾根沿いに歩き、途中からカールに下る。気がつくとコバイケイソウの群落がいっせいに花をつけて咲いていた。カールの中を歩く。カール上部に残る雪渓から水が流れ出している。ところどころ水が伏流していて水琴窟みたいだとIさんが言っていた。

黒部五郎小屋
8/9 Iさんがカナダみたいと評した黒部五郎小屋付近。
黒部五郎小屋
8/9 黒部五郎小屋から三俣蓮華岳への登り。急登。

 カールを抜けると樹林帯の道で歩きにくい。何度か草原にも出て1本、沢を渡り、急坂を登り返す。 黒部五郎小屋に近づくと広い草原とその奥に針葉樹の山が見える。Iさんが「カナダみたい」と評していて、マッキンリーに登ったこともあるYさんも賛同していた。

 黒部五郎小屋でひと休み。天気はすっかり晴れで日差しが暑い。ここで水を汲み、三俣蓮華岳へ向かう。いきなり急登で、岩の転がる道を登る。途中、「ゆっくりのんびりコース」と「岩ゴロゴロ急坂コース」と道が分かれ、すぐまた合流した。それが3回あった。なんとか2,661m標高点手前の2,620m付近でひと休み。

 休んでいると折立方面からヘリコプターが出てきて雲ノ平に寄った後、三俣山荘へ向かっていった。2,661m標高点を越えて三俣山荘への巻き道を分ける。三俣蓮華岳へはカール地形の上端みたいなところを登る。ヨツバシオガマ、ウサギギク、タテヤマリンドウなど花の多い道でもある。

三俣蓮華岳
8/9 森林限界を越えて三俣蓮華岳へ登る。
三俣蓮華岳
8/9 三俣蓮華岳山頂。ガス。

 着いた三俣蓮華岳山頂は残念ながらガスの中。展望はない。Oさんはザックの上でへばっていたがそれでも遅れることはなくついてきていた。Oさんに後ろをぴったりつけられたYさんもつらそうであった。

三俣蓮華岳
8/9 三俣蓮華岳から歩き始めると雨がパラパラ降ってきた。
ライチョウ
8/9 双六岳の山頂近くでライチョウを見かけた。

 三俣蓮華岳から双六岳へ向かう。下って登って2,854m峰。その辺りで天気予報どおり雨が降り始める。パラパラと降っては止むのでカッパを着ないで歩く。歩いている人の多くは立ち止まってカッパを着ていた。双六岳の登りではチングルマの花畑の中にライチョウを見かけた。そこからすぐ上が双六岳山頂であった。

双六岳
8/9 双六岳山頂で最後の一本。
双六岳
8/9 双六岳から平坦な尾根を歩く。

 ガスの山頂でひと休み。ここから双六小屋まではそう遠くない。双六岳から東へ舌のように伸びる尾根をたどる。平らで迷いそうであった。途中で北側の斜面に下る。そこに雪渓が残っており、慎重に通過する。下り着くと双六岳を巻く中道と合流する。その辺りで急に雨が強く降ってきた。こりゃダメだとカッパとザックカバーを出す。Iさんだけがカッパの上下を着て、他の3人はカッパの上だけを着たが、Yさん、Oさんは歩き始めてすぐ下もはき始めた。私は雨はすぐ弱まると踏んでIさんと双六小屋へ先に下った。

 双六小屋は広い小屋で南側の双六池付近にキャンプ指定地がある。双六小屋を通るのは3回目だが、双六小屋に泊まるのは初めてだ。幕営地に進み、Iさんとどこがいいか物色する。1ヶ所広いところを整地していたらYさん、Oさんに追いつかれた。Yさんの「下のほうが平らじゃない?」という言葉に従い、場所を移動してテントを張った。

 荷物をテントに突っ込み、Iさん、Oさんに幕営の手続きと水汲みをお願いした。この日は4日目だったのでレトルトのハヤシライス。調理も簡単なので時間もあり、酒を飲んだ。酒を飲んでいる間にも続々と人が到着して結局70張ほどのテント村になっていた。

5日目

2010年8月10日(火) くもり

双六小屋…鏡平…ワサビ平…新穂高温泉=松本

コースタイム
双六小屋2:00起床
4:01
弓折乗越4:51
5:10
鏡平山荘5:40
シシウド原6:08
6:15
小池新道入口7:17
7:23
新穂高温泉8:35
10:20

 この日は最終日。鏡平から小池新道を下り、新穂高温泉へ下山する。

 新穂高温泉から帰京するのにも時間がかかるので今日も2時起き。最終日で下りだけなのでOさんの荷物はOさんに持ってもらった。暗い中ヘッドランプをつけて出発。

 はじめはトラバース道。樅沢岳の南の尾根に向かって登っていき、途中から尾根沿いの道になる。うす明るくなってきても道はガスの中で夢のような縦走路だ。

 平らなベンチの置いたところを過ぎ、弓折乗越まで来るとガスが晴れてきた。みるみる左俣谷を挟んで槍ヶ岳の姿が見えてくる。右には穂高連峰のシルエットが見える。YさんもOさんも私も持ってきたカメラでたくさん写真を撮った。刻一刻と姿を変える山の姿は美しく、何枚撮っても違う表情であった。

槍ヶ岳北鎌尾根
8/10 弓折乗越から見る槍ヶ岳北鎌尾根のシルエット。
鏡平山荘
8/10 鏡平山荘の前を通る。

 朝のうつろいゆく風景に満足して鏡平へ下る。下り始めるとまたガスが上がってきて、私たちの周りはガスに包まれてしまった。美しい情景はものの30分ほどの間だけであった。池の散在する鏡平には鏡平山荘が建っている。山荘の前にはあまりきれいでない池が広がっていた。なおテント場はない。鏡平山荘の少し先に広いデッキのある池があり、おそらく槍ヶ岳が鏡のように映るのだろう。ただ槍ヶ岳はガスで見えなかった。

 あとは小池新道をたどりワサビ平に下った。新穂高温泉にバスが着いたのか、ずいぶんたくさんの登山者に会った。特にブブゼラをザックに横付けしている学習院の人たちが目立っていた。

小池新道
8/10 歩きやすく配置された石畳の道。
新穂高温泉
8/10 新穂高温泉に下山。

 新穂高温泉に着いて風呂に入る。2007年正月にはバス停前に無料の風呂があったはずだが、そこにはトイレしか見当たらない。代わりに中崎山荘 奥飛騨の湯というのができていたのでそこへ入る。ひとり800円だが、バス乗車券売り場にある割引券で700円になる。

 風呂に入り、10:20発の松本行きのバスに乗って松本に出て、普通列車で帰京した。

おわりに

 Oさんの体調不良という想定外の事態だったが、その分荷物を持ち、山行目的の「体力向上」は果たせたと思う。足首を痛めるという故障もあったが、その後特に痛むことはない。

 薬師岳も黒部五郎岳も山深く、あまり行く機会がないので今回行けてよかった。また花も多く、Iさんに花の名前をたくさん教えてもらった。少しでも多くの花の名前を覚えたいものだ。


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