山ノ中ニ有リ山行記録一覧2006年山行一覧>朝日連峰・八久和川[4/5]

2006年夏 - 朝日連峰・八久和川[4/5]


2006年8月24日(木)〜28日(月)
場所
山形県鶴岡市(旧東田川郡朝日村)/朝日連峰
コース
23日
新宿発快速ムーンライトえちご乗車(車内泊)
24日
新潟=村上=鶴岡=(大和交通タクシー)=八久和峠…八久和ダム湖岸道…高安沢出合…ハキダシ沢先490m八久和川徒渉…横沢出合先530m(泊)
25日
横沢出合先530m…カクネ小屋跡…590m八久和川へ下降…小国沢出合…平七沢出合手前670m付近(泊)
26日
平七沢出合手前670m付近…岩屋沢出合…呂滝…830m付近(泊)
27日
830m付近…中俣沢・西俣沢二俣…中俣沢・東俣沢二俣…S字雪渓…狐穴小屋(泊)
28日
狐穴小屋…以東岳…オツボ峰…大鳥小屋…泡滝ダム=(トラック)=朝日屋旅館=(トラック)=新落合バス停=(落合タクシー)=鶴岡=村上=新潟=快速ムーンライトえちご乗車(車内泊)
29日
大宮駅着解散
参加者
K、K、H、H、中山
天気
24日曇り、25日晴れ、26日晴れ、27日曇りのち霧、28日曇りときどき晴れ
参考文献
06朝日連峰・八久和川の地図

4日目

2007年8月27日(日) 曇りのち霧

呂滝先830m付近…狐穴小屋(泊)

コースタイム
呂滝先830m付近4:40起床
6:08
中俣沢・西俣沢二俣6:50
中俣沢・東俣沢二俣7:00
7:12
950m付近9:45
10:04
980m滝手前11:00
11:08
S字雪渓上14:00
14:15
連瀑帯上15:45
15:59
狐穴小屋17:00
21:10就寝

 朝起きてメシの準備をしているといろんなものに穴があいているのが分かった。インスタントラーメンの袋、コーヒーの袋、あとから分かったがサラミの包装などである。どれか一つだけならパッキングの際に潰れて穴があいたと解釈できたがこれだけたくさんにもなると何か動物の仕業と考えられる。しかし、夜中物音を聞いた人もおらず「八久和の魔物(仮称)」のしわざとして恐れることにした。

 今日は八久和川の核心部、中俣沢遡行である。この先、出合川は西俣沢と東俣沢をを分け、本流である中俣沢に名前を変える。「川」から「沢」に名前を変える通り、ここからは単に水量が減るだけでなく、本格的な沢登りの技術を要する沢となる。八久和ダム湖畔からここまで水平距離20kmで標高差は400mだが、ここから源頭の狐穴小屋までは水平距離3kmで標高差は670m。雪渓も現れてくるだろうし、今日は苦労すると思われる。その予想はほぼあたり、テント場出発は6時、狐穴小屋到着は17時と11時間行程になった。

 もう釣りができるのもあとわずかだけ。Kさんは最後のチャンスを生かすためパーティーに先んじて出発した。テント場を出発してから沢はゆるゆると左にカーブして行く。正面の尾根の向こう側が西俣沢なので、尾根の尽きるところが中俣沢・西俣沢の二俣だが、正面の尾根はだらだらと続く。水量はだいぶ減ってきているもののところどころ深い淵があり、へつりも多い。沢がやや右に曲がり、白い一枚岩の広がる河原になると間もなく中俣沢・西俣沢の二俣である。テント場から約40分であった。

中俣沢・西俣沢の二俣
8/27 中俣沢・西俣沢の二俣。深い淵。
中俣沢・東俣沢の二俣
8/27 中俣沢・東俣沢の二俣。

 中俣沢と西俣沢はほぼ水量比1:1である。西俣沢は以東岳の東側を流域としており、流域面積は中俣沢より大きい。しかし八久和川遡行の記録はどれも中俣沢を遡行しており(例えば「日本百名谷」「朝日・飯豊の沢」など)、中俣沢が本流と一般に認識されているようだ。ここからは水量も減り傾斜も大きくなるので、いよいよ川登りから沢登りと言った雰囲気になる。

 西俣沢を分けてから中俣沢・東俣沢の二俣まで、25,000分の1地形図では両岸崖マークが続く。川幅は狭くなるものの、泳いだり滝が出てきたりするわけではなく、しばらくで中俣沢・東俣沢の二俣。水量比は中俣沢:東俣沢=4:1といったところだろうか。支流の東俣沢はガレた感じで水が少ない。地形図を見る感じだと等高線の間隔は中俣沢より広いのでエスケープに使えそうだが実際のところはどうなのだろう。本流の中俣沢は滝をかけており、ここが魚留めの滝(固有名詞ではなく魚が越えられないという意味で)と考えられる。Kさんはそこで竿を出すが昨日と同じく釣れなかった。

中俣沢の魚留めの滝
8/27 中俣沢の魚留めの滝。
魚留めの滝の上
8/27 魚留めの滝の上は比較的おだやか。

 魚留めの滝は水流の右側を越える。シャワークライミングになるが、まだ朝7時と寒い。魚留めの滝の上は左に曲がっているので、魚留めの滝のように簡単に登れる滝が続くのかと思いきや沢は意外と平坦に、しかし着実に高度をあげながら続いていた。まわりは木が生えているものの背の高い木はなく、上越の沢と雰囲気がよく似ている。歩いて行くと一枚岩のナメ滝があり、快適に登る。

 そんな沢を楽しんでいると淵が。まだ朝で天気はくもり。水の中には入りたくない。巻きは草付き斜面のトラバースになるのでよくない。しかたなく泳ぐことにする。今日は滝が続くのでKさんがリードする場面も多いと思い、この辺でパーティーに貢献すべく私がリードする。しかしその淵を越えてまたすぐ泳ぐ淵が現れ、さっきリードを立候補した私はご指名を受けてしまって続けて泳ぐことになってしまった。その後のゴルジュの3mほどの泳ぎはKさんが泳いでくれた。

泳ぎ
8/27 泳ぎ。くもりで寒い。
2段10mの滝全景
8/27 2段10mの滝全景。

 そして2段10mの滝。水流沿いはつるつるで流れが強くとても無理だが、左壁は水平方向に筋が入っており登れそうだ。1段目までは簡単にたどり着ける。そこから壁を眺めると何とか登れそうだ。左端はブッシュなので木をつかむこともできる。ここはKさんがリードして全員左壁を登った。3級といったところか。

2段10mの滝を登る
8/27 2段10mの滝を登る。
私だけ淵を右から巻いたところ
8/27 私だけ淵を右から巻いたところ。みんな左から巻く。

 その後の沢は先ほどまでと同様、深い淵を連ねている。淵に入らぬよう注意しながらへつっていく。天気は依然としてくもり。途中標高950m付近で一本とるが、休むと少し寒い。1カ所淵を巻くところで私は右を行き、残置ハーケンにシュリンゲをかけてがんばってトラバースしたがみんな左からトラバースしてしまい、何だか損した気分になる。でもそこにハーケンが打たれていたということは昔は左側が深くてトラバースできなかったのだろう。

 依然として上越を思わせる明るい沢が続く。もう少し天気がよければ淵を次々越えて行くのは楽しいのだが、なにぶん少し寒いので泳ぎは避けたい。水の中に落っこちないように注意しながらへつりを繰り返す。Hさんは残念ながら1回水の中に落ちてしまった。

崩れたスノーブリッジ
8/27 崩れたスノーブリッジ。
スノーブリッジ
8/27 スノーブリッジを上から越える。

 3mほどの一枚岩の白い滝を左から越えると崩れた雪渓が散らばるところに出る。これまで白い岩を何度も雪渓ではないかと遠目に見ていたが、ここへ来て本物のスノーブリッジの登場である。雪渓が出てくるとさすがに冷たい水の中に入る気は失せてしまい、心は巻くことばかり考える。その後スノーブリッジも登場する。スノーブリッジを越えた先は深い淵になっており進めないのでスノーブリッジの途中に開いた穴からブリッジの上に出る。斜面に足を置き、雪渓の縁をホールドにしながらカニ足でトラバースし、河床に下りる。雪渓の縁は粒子の細かい泥で汚れており、河床に下りてから汚れた手をゆすぐ。

7m2段の滝
8/27 7m2段の滝。登れず左岸から巻く。
7m2段の滝の巻き
8/27 7m2段の滝の巻き。

 スノーブリッジを越えて沢は小さく右に曲がり、その曲がり角に左から枝沢が下っている。曲がった先には深い淵を持つ7m2段の滝が控えていた。雪渓出現後は水も冷たいわけで、例え水が温かかったとしても泳ぐ気は起きない。この滝はスノーブリッジ近くまで戻り、左岸のルンゼを使って高巻いた。踏み跡はないが、木と笹をつかみながら滝の上に下りることができた。

崩れた雪渓
8/27 沢に戻って崩れた雪渓。
5m滝
8/27 5m滝。右から簡単に登れる。

 このあたりから滝が連続し、地図上での移動速度が鈍ってくる。7m2段滝を巻くとすぐ崩れた雪渓が出てくる。ここは慎重に乗り越す。雪渓を乗り越すとすぐ5m滝。滝は両岸迫った奥にあるが、手前の右壁から簡単に登れる。5m滝の上は広い釜と砂地を持つ7m滝。砂地は整備すればテントが張れそうだ。ただし増水したとき逃げ道がないのが難点だ。ここはKさんがリード。とりあえずライフジャケットを着てザイル着けて釜の左からへつって偵察する。その間私たちは簡単な休憩をとった。「簡単な」というのは偵察で泳がずに滝にとりつくことが分かったから。Kさんは滝のそばまですいすいとへつっていき「行けますよ」と判断を下した。休憩しながらザイルほぐしたりしていた私たち後続は慌てて出発準備。Kさんについて行く。滝までは浅い所をつないで歩け、滝も傾斜が緩く簡単に登れた。

広い釜と砂地を持つ7m滝
8/27 広い釜と砂地を持つ7m滝。
6m滝
8/27 6m滝。ザイル出して右から登る。

 7m滝の上が5m滝。ここも傾斜が緩いので左から簡単に越える。5m滝の次は左から小さい滝のような枝沢を合わせて6m滝。Kさんがリードし、水流にそって右から越える。次にKさんが登るが、Kさんのルートは水流から右に3mほど離れたルートだった。上の方で進退窮まりそうだが、Kさんはさすがに経験豊富とあって軽々と越えてみせた。そのあとHさん。Hさんの登りに妙に時間がかかる。下で待っているHさんと私は何に時間がかかっているのか不思議に思っていた。Hさんが登った後、私が登る。Kさんルートを通ったがスタンスが少なく恐かった。

 6m滝を登ってみてなぜHさんで時間がかかっていたのか分かる。6m滝の上は幅2mくらいのゴルジュが長さ10mほど続いており、とても入れない。そこで右からKさんがトラバースするルートを作っていたのだ。岩と草の生え際を忍び足で歩く。Kさんがザイルを伸ばしてくれているものの、滑ったらゴルジュの釜に落っこちる。ここは慎重にトラバースした。

幅2mくらいのゴルジュ
8/27 6m滝の上で幅2mくらいのゴルジュ。
5m2段の滝
8/27 5m2段の滝を登るKさん。Kさん(奥)のアクロバットな登りで何とか越える。

 トラバースを終えて後ろを振り返るとこれまでに比べて稜線が低い。逆に言えば標高を稼いでいる様子が分かる。ゴルジュの先は5m2段の滝。これが意外に苦戦する。左端にガバホールドがあり、そこから登れそうだがあともう一つホールドが足りない。一人を残してショルダーで登り、最後の人はゴボウで登るくらいしか思い当たらない。周りは草付きの急斜面で巻くとしたら相当な高巻きになる。この行き詰まった事態を打開したのはKさんであった。Kさんは左端のガバホールドに頼らずその1m右から取り付き、さらに1m右にトラバース、そこから直上して滝を越えた。だれも気がつかなかったルートをアクロバットに越えて行くKさんの姿は今回の山行で敢闘賞ものとなった。この5m2段の滝はKさんが上の岩にザイルを巻き付けみんなゴボウで登った。越えた誰もがKさんのクライミング技術に感心していた。

雪渓S字状のはじまり
8/27 雪渓S字状のはじまり。ただし雪はない。奥の5m滝が登れず右から巻く。
雪渓S字状の溶け残り
8/27 5m滝を巻く。途中で見た雪渓S字状の溶け残り。

 5m2段の滝の上で沢は右に曲がる。ここが雪渓S字状(「関東周辺の沢」による)の最初のカーブであるが、雪渓はない。正面に5m滝があるだけでその先は左に曲がって見えない。この5m滝はKさんが偵察したところ登れないとのことだったので右から高巻く。左岸の草付きからヤブに突入し、しばらく登ってトラバース。ヤブの中の木は冬の雪の重みで水平方向に枝を伸ばしており、ヤブをかき分けながらというより、木をまたぎながら越えて行く。ヤブ漕ぎの途中でヤブの間からではあるがS字雪渓の全容が掴めた。次の左カーブに大きな雪渓がつまっており、その周囲も草付きで人を寄せつけない。仮に下りきったとしてもその先の雪渓を越えるのは困難そうだ。

S字雪渓の溶け残りの下
8/27 懸垂下降でS字雪渓の溶け残りの下に出る。
S字雪渓の溶け残りの上
8/27 Hさん「ここ下るの?」Kさん「うん」。雪渓S字状の溶け残りの上を越える。

 いったんヤブから出て比較的傾斜の緩い草付きをトラバースし、ヤブの中のかん木に支点をとって懸垂下降する。場所は左カーブの始まるあたりで雪渓の下。50mザイル1本で足りるかどうかあやしかったので各メンバーの装備である長いシュリンゲをつなげてザイルを下ろした。幸い50mザイル1本でギリギリ足りる距離であり、約1時間ぶりに沢に戻りつく。続く雪渓は30mほどのスノーブリッジになっており、私は下から行けそうだなと思っていたが、最初に懸垂下降を終えたKさんが上から越えることを確認し、上から越えた。最後に右カーブを終えてS字雪渓を終える。右カーブには5mほどの滝がかかっていたがこれは簡単に越えられた。あとから振り返ってみると6m滝からこのS字雪渓のあたりがこの八久和川中俣沢の核心部であった。

雪渓S字状の溶け残りの下
8/27 上流に連瀑帯が見える。「いくら何でもあれは登らないだろ」と話す。
S字雪渓を越える
8/27 S字雪渓を越えると登れる滝が続く。

 S字雪渓を越えてから一本とる。時刻は14:00。長い高巻きもありけっこう疲れてくる。この先はしばらく何とかなりそうだが、奥まった所に直列に5段程の直瀑が見える。「あれがガイドブックに載ってる連瀑帯じゃないよな」「いくら何でもあれは登らないだろ」と話す。1時間後にはその連瀑帯を登ることになることも知らずに一息ついていた。

 そのあと二俣までは比較的楽であった。5mくらいの滝を次々と越えて高度をあげて行く。途中でテントひと張りできるかできないかの草地があり、それを指摘するとKさんが「誰か力つきた人達が泊まったかもしれないね」と縁起でもない発言。私が驚くと「いや、時間切れで狐穴小屋にたどり着けなかった人たちがいたかも、って意味」と訂正された。

 二俣までの間、6mくらいの滝があり、そこだけは右から高巻いた。私がザイルつけないですたすた行ってしまったらそこは確保があれば助かる所だったので、Kさんがザイルつけて登ってきた。そこはKさんが確保してみんな越えてきた。ルートは小さく巻かずに沢から離れるようにいったんかん木のヤブにつっこみ、かん木をつかみながら滝の落ち口に下りるようとった。

中俣上流の連瀑帯
8/27 二俣から中俣上流の連瀑帯を望む。ここを登る。
Hさんと右俣。
8/27 ちなみに右俣はもっとヤバい。滝に雪が詰まっている。Hさんと右俣。

 そこからすぐ二俣。二俣のすぐ手前で左手からも小さな沢が合流しているので三俣とも解釈できる。とはいえ水量と規模からいって真ん中の沢と右の沢が左の沢を圧倒している。真ん中の沢は下から見ていた通り何段にも連なる連瀑帯であり、Kさんは「連瀑帯っていうより10段200mとかの方が表現として合っているよね」と述べていた。右の沢は雪渓があり、さらに2段100mくらいの滝が続いている。右の沢の上段にいたっては雪が詰まっていて登攀は不可能である。真ん中の沢と右の沢との間にも水流があるが水流は細かった。あとで地形図で見るとどうやらこの細い水流が本当の右の沢であり、2段100mくらいの滝はただの壁らしい。

 二俣から真ん中の沢の連瀑帯に突入する。なみいる滝達を越えて行く。5つほど8mほどの滝を越えるがとうとう登れない滝にぶつかり右から巻く。ここには水の流れた跡だろうか、踏み跡のようなものがあり割と簡単に巻くことができた。巻きの途中、大きな岩にぶつかるのでそこで沢に戻る。そのまま左側に渡り10mほどの滝を小さく巻く。わずかに水が流れていてヌメっていたので、私が勝手に登ったあとHさんを確保するために下からザイルを出して投げてもらった。

登れない滝
8/27 登れない滝。右のヤブから巻く。
右岸に渡る
8/27 ヤブを脱出した後、右岸に渡る。

 その上は稜線が低く見えたのでいよいよ連瀑帯も終わりかと思ったが、もう2段、それぞれ10mほどの滝があり稜線は遠かった。上の10m滝は右のヤブから巻いて沢に戻り一本。そこからは滝は見えず平和そうな沢が続いているように見えた。時刻は16時。あともう一歩といった所だ。とにかく今日の核心部は越えたはずなのでほっとする。

連瀑帯上部
8/27 連瀑帯上部。左から登りさらに右のヤブを巻く。
連瀑帯を越えた後
8/27 連瀑帯を越えた後。おだやかな沢になる。

 その先は上越のナルミズ沢みたいな平坦なツメを期待したのだが、意外と高度差があり滝も出てくる。水量はもうわずかなのに淵は深いものがいくつかあった。出発して少しで右カーブした後、緩い左カーブが続く。途中いくつか小さな沢が右から滝をかけて落ちてきていた。と、雪渓があらわれる。上から巻くがみかけより傾斜が強く、また草付きに移るところがけっこう恐かった。一人だけ下からくぐったHさんは簡単に登ってきていた。この時点で私はけっこう疲れていた。何でもないような4mほどの滝が現れ、すぐ前をいくKさんとHさんが真ん中のルートを登ろうとしていたので、私は待つのを避けるため右の水流沿いに取り付いた。一段登ってホールドを探すときにぐらついてしまい、滑落してしまった。落ちたのは3mくらいで転がりながら落ちた。2日前の八久和川の巻きでカクネ沢手前で滑ったのよりずっと痛い。左肘と左手の甲を負傷してしまった。右手と両足は無事だったので左手を使わないようにして登る。滑落したあとは疲れながらも慎重に登ったが、心は「狐穴小屋はまだか」と焦燥していた。

4mほどの小滝が続く
8/27 4mほどの小滝が続く。私が転げ落ちた滝。
雪渓を越える
8/27 雪渓を越える。草付きに下りるのが怖い。

 私がこけた滝からしばらくで沢にビニールシートの切れ端などゴミが見られるようになってきた。小屋は近そうだ。周囲はガスが出てきて目指すべき稜線は見えない。最後に沢は右に曲がり、スノーブリッジの片側だけ残ったようなところを越えて草付きに取り付き、登って行くと狐穴小屋近くの木道に出た。八久和川源流の水は狐穴小屋の飲み水にも使われており、もう見えるところに狐穴小屋があった。

中俣沢をツメるKさん
8/27 中俣沢をツメるKさん。ヤブ漕ぎなしで狐穴小屋に出られる。
狐穴小屋に到着
8/27 狐穴小屋に到着。

 狐穴小屋到着17:00。左腕を負傷したこともあり、今回の山行で最も疲れた日であった。狐穴小屋は素泊まりだけの営業小屋でこの日は管理人がいなかった。2階建ての1階に宿泊者がすでに1人おり、私たちは2階に入った。結局八久和川の遡行では全く人に会わず、ここでの宿泊者が入山して最初に会った登山者であった。水洗トイレもあって快適な小屋であった。この日は階下に人がいたこともあって歌唱厳禁の飲み会になったが、話し声がうるさいらしく下の人に何度か注意された。

 負傷した右腕はあまりに痛かったので骨が折れているんじゃないかと心配して下山した翌日、病院で見てもらった。念のためレントゲン写真を撮った結果、お医者さんに「非常に健康で標本にしたいくらいです」と言われてしまい、湿布を処方されて終わってしまった。人間のカラダって意外と丈夫だなと知らされた山行になってしまった。ちなみに私は骨折とか脱臼とかしたことないので、たぶん骨折とか脱臼はこれより痛いんだろうなと思う。


山ノ中ニ有リ山行記録一覧2006年山行一覧>朝日連峰・八久和川[4/5]

inserted by FC2 system