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2日目 |
2007年8月25日(金) 晴れ |
横沢出合先530m先…平七沢出合手前670m付近(泊)
横沢出合先530m付近 | 4:00起床 |
5:43 | |
カクネ沢手前 | 7:25 |
7:36 | |
カクネ小屋跡 | 7:50 |
7:55 | |
590m八久和川下降点 | 8:40 |
9:00 | |
小国沢出合 | 11:15 |
12:12 | |
小赤沢出合 | 12:55 |
13:15 | |
茶畑沢出合 | 13:50 |
14:01 | |
平七沢出合手前670m付近 | 15:55 |
19:00就寝 |
夜は晴れたものの、朝はくもりであった。この日はカクネ沢小屋まで巻き道を歩き、カクネ沢小屋先でいよいよ入渓する。遡行中には泳ぎも出てくるはずであり、これでもかという晴れがもっとも理想なのだが天気がくもりでは残念である。
昨日下ってきた枝沢を登り返す。道は判然としないが、ピンクテープがぶら下がっており一応道であることを示している。少し登るがどこからトラバースにかかるのか分からず、どんどん登って行く。あんまり登ってもしかたがないので木にしがみつきながらトラバースするが、すぐ枝沢にぶつかってしまった。けっこう深い枝沢なので渡ることができない。しかたなく枝沢に沿って下り、八久和川本流に出た。急な斜面であるが木をつかむことができ懸垂下降は必要なかった。出てみると出発地点から大して離れていない。少なくともこのわずかな区間は山を巻く道を探さずに沢沿いに歩いた方が良さそうだ。
枝沢を渡り八久和川沿いに行こうとするが、パーティー首脳の考えではカクネ小屋跡まで巻き道を行く予定なので後ろのKさんに呼び止められる。Kさんを先頭に枝沢と八久和川本流の間の小尾根に取りつく。取りついたあたりは踏み跡があったがすぐ道はなくなる。またどんどん高度をあげていく。急な斜面だが道が見つからないために5人バラバラに並びながら登った。はじめは私がKさんを抜いてトップを歩いていたが次第に一番後ろになってしまった。逆にせかされることがないので自分のペースで歩く。途中指2本くらいの太さのナメクジを発見し、気味悪ながら写真を撮った。しかし、比較物がないので写真を見ただけではサイズがよく分からない。後ろの葉っぱにピントが合ってしまったのも失敗だった。まあでもとにかく気持ち悪さはこの山行で見た生き物の中でピカイチであった。
8/25 赤テープはあるが道はよく分からない。 |
8/25 途中のトラバース。 |
50mほど登って道なき道をトラバースする。トラバース道の途中でKさんが水菜を見つけ刈り取っていた。それは今夜の豚汁の具の一つになった。現地調達というのもおつなものだ。私は釣りもしないし、山菜も採らないのでその感覚は新鮮であった。
斜面は急ではあるがなんとかトラバースできる。やや下り気味にトラバースしていくと道らしきものがあり、これをたどる。道は丸森山の山のひだを巻いて行く。途中地形図に載らない小さい枝沢をいくつか渡るが急に下るところが多く、けっこう危険である。そんな枝沢の一つで1回Kさんが滑落し、あわやという事態になったがKさんは比較的軽傷ですみ、山行を続けられた。その後、私も1回滑落してしまい、滑落の距離は10mほどとKさんより長い距離を落ちた。しかし私はほとんどケガなく、上で「ザイル出すか?」と聞かれたが小尾根から道に戻ることができた。途中で指2本くらいのサイズのナメクジごと枝に触ってしまい、どちらかというと滑落したことよりそっちの方がショックが大きかった。
私が登山道に戻ったあたりで一本。後から考えるとその私の滑落箇所はカクネ沢にだいぶ近いあたりであった。そんなつらいトラバースもやがて終わり、カクネ沢に出る。カクネ沢は谷が深く、トラバースしていても他の枝沢と間違えることはない。谷が深くても沢に下りることは容易で、トラバースに一区切りついたことにほっとする。カクネ沢に出たあたりは八久和川本流から100mくらいだろうか。カクネ沢から八久和川本流を見ると平和そうなので、ここから本流に出られるかもしれない。
8/25 カクネ沢に出たところ。八久和川の巻きでもこの横沢出合先→カクネ沢出合の高巻きが一番辛かった。 |
8/25 カクネ沢小屋跡。釣り師が入っていた模様。 |
予定ではこの先の台地にあるカクネ小屋跡から八久和川本流に入るのでカクネ沢を沢に沿って20mほど登る。すると左岸に踏み跡が見える。はじめは懐疑的に登っていたが登るにつれて踏み跡は明瞭になり、平坦地に出た。単に平坦になっているだけでなく丸く刈り払われたようになっていて絶好の幕営地である。カクネ沢も近いのですぐ水も手に入る。実際誰かが泊まった様子があった。たき火の跡、きれいに置かれたサンダル、2006年7月22日と今年製造のしょうが焼きのたれ。ひょっとしたら釣り人がここを拠点に釣りに行っている最中なのかもしれない。ここがカクネ小屋跡なのだろうか。
この後、地形図でも確認できるように八久和川右岸は平坦である。しばらくこの平坦な道を歩く。平坦だが若干のヤブがあり、このあたりで泊まるならカクネ沢から出た平坦地であろう。道がはっきりしないので案の定だんだんとばらばらに歩き始める。2つほど小さな枝沢を渡り、やがてある程度大きな枝沢を渡る。そのすぐ先にまた枝沢があり、いよいよ道が分からなくなる。そのあたりで八久和川本流に出ることにする。
八久和川右岸の台地は八久和川に向いた方が崖になっており、本流に下りるのが難しい。何カ所か下降点を探すがなかなか見つからない。枝沢沿いに下ると本流に出る際に滝がかかっているようなので下りられない。懸垂下降の可能性も出てきたのでみんなハーネスを装備する。最終的にKさんがルンゼからザイルなしで下るルートを見つけ、Kさんに倣ってみんな下った。けっこう危ない道であった。
8/25 カクネ沢小屋跡の先で八久和川に下りる。ザイルは出さなかったが、下降点探しに手間取った。 |
8/25 八久和川に下りたところ。ここから八久和川遡行スタート。 |
八久和川に出たところは広い河原であった。地形図では両岸とも崖記号が続くところであるが実際には両岸ともに斜面に木が生えており、ゴルジュという印象は受けない。ちょうど真南にまっすぐ河原が伸びているところで奥行き方向にも広々している。ここで一本とる。
いよいよ八久和川遡行である。丸い石のゴロゴロする河原を歩いて行く。川はゆったりと蛇行していてときどき徒渉する。水深はヒザくらいで徒渉は難しくない。右岸に長沢が入っているのを確認すると川は左に曲がる。そこはS字カーブになっており、左に曲がると右側は砂浜、左側は深い淵になっていた。肌色の砂が美しい。
8/25 八久和川に下りてから河原を歩く。 |
8/25 芝倉沢手前のS字カーブ。砂浜と淵が美しい。 |
左岸に芝倉沢を分けて最初の右カーブが深い淵になっており最初の巻き。この芝倉沢出合から次の顕著な沢、小国沢出合までが地形図で両岸崖マークが詰まっている通り、水量の多いゴルジュをこなして行く区間になる。途中、右岸で懸垂下降を一回。頼りない残置ハーケンで下るが、最後に下ったHさんでハーケンが抜けて少し落っこちたようだ。そのあとには広くて足がギリギリつかない淵を対岸まで渡る。ここが最初の泳ぎになったが、Hさんは場所を選んで泳がずに対岸まで渡った。
8/25 芝倉沢出合の先。川が狭くなる。 |
8/25 懸垂下降。本日一回目。 |
やがて狭いゴルジュとなり泳がずには渡れないところが出てくる。ここはKさんがライフジャケットを装備して空身で渡る。少し登ったところから勢いよく飛び込み簡単に対岸にたどり着いた。そこからみんなザックピストン法で対岸へ渡る。私はザックピストン法が初めてだったため、バランスがとれずひっくり返ってしまった。私はいつもザイルを付けずにザックを背負ったまま平泳ぎかラッコ泳ぎなのだ。
8/25 広くて足がギリギリつかない淵。 |
8/25 ライフジャケットを装備したKさんが泳ぐ。 |
渡ったところ大きな一枚岩の上で軽く休むと空から日差しが射してくる。泳ぐには適当な日だ。その後は泳ぐこともなくうまい具合にへつりながら進む。そして小国沢出合。小国沢出合は深い淵になっており、左から足場を探して渡る。私は右が簡単そうに見えたので右から行ったが、行った先が流れの速い瀬になっており渡るのに苦労した。この小国沢出合で一本。
8/25 小国沢出合手前。天気はよい。 |
8/25 小国沢出合でKさんが釣り竿を出す。 |
小国沢出合での淵で魚影が見えたことから釣り竿を持ってきたKさんとHさんが釣りを始める。やはり釣り竿を持ってきたHさんは昨日のテント場で竿を壊してしまったので残念ながら釣れなかった。Hさんもここ小国沢出合で釣りを初めてすぐ竿の先端を折ってしまい、やはり釣れなくなってしまった。残る竿はKさんだけ。Kさんはイワナに人影を見られないように姿勢を低くしながら小国沢の最初の小さな淵に向かった。他のメンバーは河原の砂利をひっくり返してイワナの餌になる川虫を捕まえたり、行動食を食べてのんびりしたりする。
やがてKさんの竿の先端が揺れたと思うと1匹釣り上げた。20cmほどのイワナである。私は沢登りに釣り竿を全く持って行かないので釣りの感覚が分からないのだが、自分のことのようによろこんでしまった。その後もKさんは小国沢でもう一匹やはり20cmほどのイワナを釣り上げていた。Kさんはそれらのイワナの腹を割いてわたとえらを取り除いていた。
8/25 Kさんがイワナを釣った。 |
8/25 小国沢出合先の淵。水が青い。 |
この小国沢出合は狭いながら3人用テントが1張りくらいできる砂地のスペースがある。ちょうど岩の間に挟まれていて狭いながらも風が入らず快適そうだ。岩にはなぜかリングボルトがすっかり錆び付いて残っており、なぜ打たれたのかがまったく不明だった。別に岩壁という訳ではないのだが、タープを張るためにわざわざボルトを打ったのだろうか。
小国沢出合からも深い淵が続くがどれも泳がずに何とかへつって行けるものが多い。泳ぎが好きな人はもちろん水流に沿って泳いで行けばよいが、私たちはむやみやたらと濡れたくないのでへつりルートを模索しながら歩く。川の岩は日に当たって白く美しく、その間を青い水がさらさらと流れて行く。そのようすは枯山水のようであった。高校のとき甲斐駒ヶ岳黒戸尾根で顧問の先生に言われた「山の風景が日本庭園の風景に似ているんじゃなくて、日本庭園が山の風景に似せて作ってあるんじゃないか」という言葉を思い出す。
8/25 深いところを渡る。水面が美しい。 |
8/25 小赤沢出合で一本。奥に見えるのが小赤沢。 |
やがて小赤沢出合。広い河原に小さな沢が右岸に流入していてそれが小赤沢であった。ここでKさんは再度竿を出す。釣っている間、他のメンバーはのんびり休む。しばらくしてKさんはまた1匹イワナを釣った。今日の釣果は小国沢で2匹、小赤沢で1匹、すべてKさんの手柄であった。
8/25 静かな水面。 |
8/25 茶畑沢出合。滝をかけている。 |
小赤沢出合からはそれまでよりも楽な河原が続く。のんびり楽しながら歩いて茶畑沢出合。茶畑沢は滝をかけて八久和川に合流している。茶畑沢は500mほど上流で戸立沢に分かれるが、こんな滝を越えた沢にも名前がついているということは昔マタギが入って行って名前をつけたのだろうか。Kさんはここでも竿を出すが、残念ながらイワナはひっかからなかった。
茶畑沢出合から20分ほどで大ハグラ石滝。「関東周辺の沢」によれば「大ハグラ石滝は左の壁をへつりで越えられる。滝の上は流芯を越えて飛び込む」とあり、見た目も左岸がハングしていて険悪そうだ。しかし、落差は1m以下で滝という印象は薄く、水量が少ないために水線沿いに簡単に突破できた。
8/25 大ハグラ石滝?どこかよくわからなかった。 |
8/25 懸垂下降2回目の次の登り。 |
茶畑沢出合から30分ほどでゴルジュ。左側から登って行くと過去に八久和川を登った人が懸垂下降したと思われるハーケンを見つける。5mほど懸垂下降して浅い釜を渡り次の滝を左の壁から登る。Kさんが空身でトライし、無事登ったのを見て後から続く。Hさんは懸垂下降中にエイト環がロックしてしまい、脱出に手間取った。それを見てKさんから「中山はゴボウで下りてこい」と言われた。懸垂下降のあとの滝の登りは簡単であった。
茶畑沢出合から約1時間で自然プール(名称は「関東周辺の沢」による)。右岸は白い斜めの一枚岩で左岸はプールに浮かぶ氷山のように岩がある。ここはまっすぐプールを泳いで行ってもよいのだが、右の浮かんでいる氷山みたいな岩の方から登れるのでここを行く。広げて傾けた扇のような岩から見るプールは青黒く対岸の白い岩と強いコントラストをなしている。いったい深さ何mあるのだろうか。この巻きの途中には狭いながら砂の溜まったところがあり、2人用テントなら張れそうだ。都合良く上からも枝沢が滝をかけて落ちているので水にも困らない。問題点をあげるなら増水時に逃げ場がないことだろうか。
8/25 自然プール。氷山が浮かんでいるようだ。 |
8/25 自然プール左岸の岩の上を歩くHさん。ひと張りくらいできそう。 |
傾けた扇のような岩の末端は崖になって行き止まりになっており、水面に下らなければならない。Kさんが空身、フリーで下れるかどうか確認した上で、Hさんが上で確保しながら下った。最後Hさんはフリーで下った。その先はすぐ深い淵になっており、Kさんが空身で泳いで最初の淵を突破する。さらにその先は川が折れ曲がっていて見えない。Kさんは左のカンテから巻きを試みようとするが、どう見てもその上は登れそうにない。「中山行ってみるか」というKさんの発言に応じ、私がザックピストン法でKさんのところに渡る。
Kさんのところに着いてみると、その先は右側の岩が覆いかぶさるような淵になっていて、覆いかぶさるところには丸い岩が挟まっている。淵には滝の白い泡が浮かんでいるが、そんなに深くなさそうだ。Kさんからライフジャケットを借り、私が空身で右側から突入する。見た通り淵は深くない。壁に沿って歩いて行き、丸い岩が挟まったところの内側を登る。よっこいしょ、といった感じで簡単に登ることができ、突破できた。後の人はKさんの突破した淵と私の突破した淵をそれぞれザックピストン法で突破、丸い岩の挟まったところをくぐり抜けてきた。時間のかかり具合から言ってここが今日の核心部だろうか。
8/25 自然プール先のゴルジュ。 |
8/25 平七沢出合手前670m付近で幕営。 |
時刻は15時を20分ほど回っている。そろそろテント場を探しながら歩く時刻である。できることなら平七沢出合の右岸台地にテントを張りたいが茶畑沢出合から平七沢出合までの間は顕著な枝沢もなく現在地確認が難しい。途中、ゴルジュなりにも河原を見つけ、そこでテントを張ることにする。わずかな砂地を整備してテントを張った。場所は平七沢出合手前670m付近である。
このテント場は蚊が多く、不快なテント場であった。たき火でイワナの塩焼きを食べられたのはうれしかったがみんな早々にテントに帰ってしまった。私は肌を出していた足首付近が集中的に刺され、下山した今でもかゆい。