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3日目 |
2007年8月26日(土) 晴れ |
平七沢出合手前670m付近…呂滝先830m付近(泊)
平七沢出合手前670m付近 | 4:35起床 |
6:35 | |
平七沢先687m付近 | 7:20 |
7:35 | |
岩屋沢出合 | 8:10 |
720m付近 | 8:20 |
8:53 | |
770mコマス滝下 | 10:00 |
10:22 | |
800m偽呂滝下 | 11:25 |
11:40 | |
呂滝下 | 12:35 |
12:42 | |
呂滝先830m付近 | 13:20 |
22:00就寝 |
この日は昨日に比べてかなり寒かった。シャツ1枚にシュラフカバーで寝ていたので0時頃から寒くて何度か起きた。隣のHさんがなぜか温かく近寄って温かさを奪い取りながら寝た。寝ながら、まだ標高670mほどなのにこれから先どんなに寒くなるのだろうか。今回うっかりしていて着るものが山シャツ1枚、カッパ、シュラフカバーしか持ってきてない。この先の夜が不安で仕方がなかった。
朝起きて出発の準備をしていると足下に蚊が20~30匹群がっていた。ギャーとか言いながらせかせか準備する。ゴルジュの中なので明るくなるのも遅く、蚊も多いようだ。
準備ができた人から出発する。トップのKさんに続いてHさんが出発する。Kさん、Hさん、私も続いて歩き始めるが、すぐHさんが川中でう○○をしているのを発見する。私を筆頭に上流で便を足すことを非難するが、Hさんは尻が洗えていいじゃん、と話がかみあわない。私は人の下流で便を足すことはかまわないが、人の上流で便を足すのはモノが下流に流れてくるのでやめてほしいと言っているのだが。
出発してから15分ほどで平七沢出合。出合までの間に1回淵を右から巻く。出合の手前の右岸には砂が堆積した幕営適地があった。3本の木が石で支えられて立っており、ここにタープを張ったと思われる。平七沢出合は広い河原になっており、日差しが明るい。今日も泳ぎに適した日になりそうだ。
8/26 平七沢出合。右岸に平七沢が流れ込む。 |
8/26 687m付近。右岸に小さな沢が流れ込む。 |
「関東周辺の沢」によると平七沢出合から八久和川は出合川(いでやがわ)と名を変える。でも水量はあいかわらず多く、あんまり違いは分からない。平七沢出合を過ぎて30分ほどで687m付近。左岸から小さな沢が合流している。川虫を捕っていたKさんがサンショウウオを発見していた。その後、淵があったので左岸から巻く。なかなか下降点が見つからず、300mほど水平移動してから小尾根を下って河原に下りた。
8/26 淵を左岸から巻く。巻き終わり。 |
8/26 岩屋沢出合の先で一本。 |
その巻きから20分ほどで岩屋沢出合。岩屋沢は出合川に合流するところで2つに分流しており、はじめの合流点は出合川の分流に見えた。岩屋沢出合の先に出合川を横断する道があるはずだが、私は急に便意を催しパーティーに遅れてしまい、一心不乱に追いかけていたので探すことができなかった。私が用を足している間にKさんは左岸に赤テープがぶら下がっているのを見つけたらしい。この道はオツボ峰から天狗角力取山に続いており、ここから八久和川を遡行するパーティーもいるらしい。地形図には橋が載っているが、橋は遠い昔に流されたらしく、影も形もない。岩屋沢出合からすぐ、川が右に大きく曲がるあたりで一本とる。
8/26 オツボ沢出合手前で淵。左岸から巻く。今日一番の高巻き。 |
8/26 オツボ沢出合の高巻き。 |
そのあとしばらく河原歩き。今日はまだ泳がない。オツボ沢出合手前で淵を発見。そこは右から巻く。ここが今回の山行一番の大高巻きになった。比較的明瞭な踏み跡を登って行き、急に下り着くとオツボ沢。オツボ沢は地形図の通り、出合川に合流するところに滝をかけており、沢沿いに出合川には戻れない。巻き道をさらにたどる。巻き道はオツボ沢を離れ、テント場みたいなところを通り過ぎてから出合川沿いに巻く。途中から道は不明瞭になり、歩きやすいところを歩く。だいぶ高巻いてから沢に懸垂下降なしで下る。下り着いた出合川は何となく水量が少なくなった気がするがそれでもまだ「沢」というより「川」という区分が似合う水量だ。
水の中に入らないようにうまく巻いて歩いて行くが、とうとう泳ぎポイントが出てくる。Hさんが先行し、短いザイルを出してKさんとHさんを運ぶ。Hさんはザックの浮力を当てにせず、左腕をザックの肩掛けに通したままザックを引っ張りながら平泳ぎしていた。「なにしてんの、Hさん」というみんなの驚きの声にも関わらず、Hさんは平然としていた。そのようすにHさんはHさんに「都庁のトビウオ」という異名を与えていた。
8/26 ザックの浮力に頼らず、ザックを引っ張りながら平泳ぎするHさん。 |
8/26 コマス滝手前で一本。奥にコマス滝。 |
そんな風に泳ぎも楽しみながらコマス滝に達する。コマス滝手前は広い淵と砂州が伸びており、休みやすいのでここで休む。右岸にウシ沢を分けて狭いゴルジュになり、沢はクランク状に曲がっている。クランクの2つ目の曲がり角に淵が見え、滝のしぶきが見えた。滝本体は見えない。滝下の淵まで行けば登路が見えるのかもしれないが、ここは「関東周辺の沢」に従い巻く。巻き道はウシ沢を少しさかのぼり、適当な左カーブからヤブに突っ込み滝上に下りる。みんな巻いているらしく道は明瞭で簡単に巻けた。
8/26 コマス滝は手前のウシ沢から巻く。 |
8/26 トップで泳いだHさん。後続を引っ張る。 |
その後も水量の多い沢を越えて行く。ところどころでけのびしたり、泳いだりする。特にコマス滝から30分のところにあった大きな倒木のかかる淵ではHさんがザイルを引いて泳ぎ、後の4人を引っ張り上げる活躍があった。
コマス滝から1時間で偽呂滝。手前の直径30mほどの大きくて深い淵があり、来るものを拒んでいる。資料によって呂滝の定義が異なるらしく、ここでは25,000分の1地形図の表記に従う。この滝は地形図の呂滝より下流にあるので偽呂滝と呼ぶ。地形図以外の文献では「関東周辺の沢」の呂滝が地形図の呂滝と一致する。「手前に右岸から枝沢が流れ落ちる」という記述から地形図の呂滝の位置にある滝と一致する。
8/26 偽呂滝。深い淵をたたえている。右から泳いで取り付く。 |
8/26 呂滝。コマス滝同様、右岸の沢から巻く。 |
一方で「朝日・飯豊の沢」では写真から判断するにこの偽呂滝を呂滝として扱っている。「すぐに役立つ沢登り読本」でも「大プールを従え堂々としている」「ザイルをつけてプールを20mほど泳ぎ、釜の右壁に取りついて突破するのも可能だ」という記述からこの偽呂滝を呂滝として扱っている。この偽呂滝は滝の上で左に曲がっているが、地形図の呂滝は滝の上で右に曲がっているので、この滝は地形図の呂滝ではないと分かる。遡行しているときは地形図の呂滝が出てくるまではこの滝を「暫定」呂滝として考えるが、「関東周辺の沢」やインターネットの情報による、枝沢を使って呂滝を巻くという方法と、どこにも枝沢のない現地の様子が明らかに異なりルートに迷う。
8/26 呂滝の位置図(この地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(大井沢)を使用したものである。) |
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どうやって登ったらいいだろうかとここで休憩を兼ねてルート探索。私は左に巻き道らしきものを見つけたが、Kさんは直登を狙っていた。結局「行け、中山」ということで私が空身で泳いで滝を直登することにする。ルートがあるのかどうか懐疑的なまま浸水する。泳ぎ着いて流れに逆らいながら滝に近づいて行き、右から岩が多いかぶさったあたりに取りつく。そこから水に上がり、直上してトラバースした。取りつく前はルートが見えなかったが、取りついてみるとスタンスも広く簡単であった。
続いて他の人をザイルで引っぱり滝側に引き寄せ、各自で登ってもらう。全員渡りきってから滝の落ち口を渡り、遡行を続ける。
この呂滝の手前の滝を登ってから30分ほどで地形図で示された呂滝。河原の奥まったところに斜めに流れる滝が見える。偽呂滝で苦戦したのでここで一本とる。呂滝のすぐ手前に沢が左から入ってきており、この枝沢を使ってコマス滝同様左カーブからヤブに入り呂滝を巻いた。ここもコマス滝同様道はしっかりしていた。「すぐに役立つ沢登り読本」によればこの滝は弁天岩滝という名称で巻きに使った沢は湯ノ沢というらしい。
今日は中俣沢に入る手前で適当な幕営地を探しそこで泊まるので、呂滝を越えるともう難所はない。もちろん時間のある限り進んでおきたいが、中俣沢に入ってしまうと幕営適地がほとんどないためその手前で幕営するのだ。
呂滝から20分ほどで左岸に幕営に適した砂地を見つけ、そこにテントを張ることにする。上流側に右から尾根が伸びているが、現在地はよく分からない。翌日のタイムから推定すると呂滝と中俣沢・西俣沢二俣の中間地点のようだった。
8/26 呂滝から20分くらいの砂地で幕営。 |
8/26 稜線が近くなってきた。明日はいよいよ稜線の狐穴小屋まで。 |
テントを張ってから薪を集め、Kさんは釣りに、私はたき火でジャージを乾かしにと各自好きな行動をとる。私は新品のジャージ(\1000)をたき火で焦がして穴をあけてしまった。Kさんは2時間ほど釣りに行っていたが、残念ながら魚はかからなかった。昨日より魚影が少ないことを考えると、岩屋沢出合の登山道を使って八久和川に入渓する釣り師が多いようだ。どうも私はたき火で乾かすのが苦手だ。去年も北ア・北鎌沢出合で沢タビのフェルトを焦がしてしまった。ここは虫も少なく夜の晩酌を十分に楽しんで寝た。