山ノ中ニ有リ山行記録一覧2005年山行一覧>南アルプス・尾白川黄蓮谷(敗退)[1/2]

2005年夏 - 南アルプス・尾白川黄蓮谷(敗退)[1/2]


2005年8月27日(土)、28日(日)
場所
山梨県北杜市(旧北巨摩郡白州町)/南アルプス
ルート
8月26日
新宿21:31=22:18高尾22:26=0:27長坂(泊)
8月27日
長坂駅=(タクシー)=尾白川林道ゲート…尾白川林道終点…尾白川河床…鞍掛沢出合…黄蓮谷出合…千丈の滝…坊主の滝巻き途中(引き返し)…千丈の滝上(泊)
8月28日
千丈の滝上…五合目小屋…横手駒ヶ岳神社=(タクシー)=日野春駅
参加者
栗山(B1)、永谷(M2)
参考文献
関連する山行

南アルプス・尾白川黄蓮谷の地図

はじめに

 はじめて黄蓮谷を知ったのは南ア・鋸岳に行ったとき。六合石室からか生駒に登り、黒戸尾根に下ろうとしたとき黒戸尾根の左からハーネスをつけた集団が目に入った。なんでも黄蓮谷を登ってきたらしい。それまで南アルプスの沢などほとんど知らなかったが、これをきっかけに南アルプスにもいくつか登る対象になっている沢があることを知った。

 黄蓮谷は南アルプス北部、甲斐駒ヶ岳の北を流れる尾白川の支流。黄蓮谷の右俣をつめると甲斐駒ヶ岳山頂直下に出るというダイナミックなルートだ。書籍「関東周辺沢登り50コース」では「上級」と示された難しいルートでもある。標高差が大きく、落差の大きな滝が続くためである。また冬になるとアイスクライミングをする人が左俣に入るらしい。

 先週上越・湯檜曽川本谷が思ったより簡単に登れたので、次はもう少し難しいところに登ってみようと黄蓮谷を選んだ。しかし、入渓してからこの沢を登るのに実力が伴わないことに気付き、敗退した。

 経緯は以下の通りである。五丈の沢出合でガイドブックのコピーを見るとこの先にある奥千丈の滝は登るのに4級上の難しさらしい(「関東周辺沢登り50コース」)。4級の滝は我々の実力で登れる壁ではない。行けるところまで行ってせめて奥千丈の滝を見て判断しようと先を進んだ。千丈の滝の上の坊主の滝まで行ったが、その巻きの途中、沢に戻るには懸垂下降が必要であるとガイドブックに書いてあり、懸垂下降してしまうと帰ってこられなくなるため、下山を決めた。なので奥千丈の滝はまったく見ていないし、奥千丈の滝を見て無理と判断して下ったわけではない。一言で言うと繰り返しになるが、この沢を登るのに実力が伴わないことに気付いたので敗退した。

0日目

2005年8月26日

新宿21:31=22:18高尾22:26=0:27長坂(泊)

 26日未明に台風11号が首都圏を通過。この日は晴れた。台風通過に伴い、沢の水量が増え、岩が不安定になっていることが予想される。でも甲斐駒は花コウ岩だから土壁もないし、崩れてはいないだろうし、天気はよさそうなので行くことにした。

 終電に乗って各自、長坂駅へ。長坂駅は尾白川に最も近い駅。隣の日野春駅よりも栄えていた。駅のそばで寝る。

1日目

2005年8月27日

長坂駅=(タクシー)=尾白川林道ゲート…尾白川林道終点…尾白川河床…鞍掛沢出合…黄蓮谷出合…千丈の滝…坊主の滝巻き途中(引き返し)…千丈の滝上(泊)

1日目コースタイム
JR中央本線長坂駅5:20起床
5:40
尾白川林道ゲート6:10
6:20
林道終点7:17
尾白川1310m付近7:25
8:00
鞍掛沢出合8:34
噴水滝下9:30
9:45
黄蓮谷出合10:46
11:16
千丈の滝下11:54
五丈の沢出合12:03
12:45
坊主の滝下13:00
坊主の滝巻き(敗退相談)13:15
13:30
五丈の沢出合上14:25
19:05就寝

 5時頃明るくなってから起床。駅前のタクシーの詰所に行って1台お願いする。すぐ出してくれた。「尾白川林道の終点まで」というと竹宇駒ヶ岳神社に連れていかれそうになった。「いや、日向山登山口の方」というと言わんとする場所が通じた。

 林道ゲートまで約30分。数台車の停まっている日向山登山口のすぐ先がゲートだった。最後は砂利道でタクシーの底が擦っている音がした。ゲートまで4570円であった。出発。

 尾白川林道を歩いていると前からオフロードバイクに乗った人がすれ違っていった。どこへ行ったのだろう。さらに後ろから軽トラックが追い抜いていった。ゲートをあける鍵を持っているのだろう。乗せてくれーとかいいながらとぼとぼ歩く。確かに車道だがけっこうでこぼこで普通の車では来られないだろう。やがて軽トラックが停められているところに出た。人はおらず、そばに先に見たオフロードバイクと同じような型のバイクが停められていた。バイク2台は2人組なのだろうか、それとも別々の1人なのだろうか。よく分からない。

 30分ほどでもう一つの日向山登山口。大きな滝がかかっているところで手前に休憩所のようなものがある。その横から道が出ていた。橋を渡る。しばらくで崩壊地。ガケ崩れのために道が見事になくなっている。おそるおそる踏み跡をトラバースしていく。トラバースを終えると尾白川の不動滝へと下る道が分かれていた。トンネルを一つ抜けると枝沢の右岸に沿って登っていく。さらにトンネルを2つくぐり車道終点についた。車道終点は広くもなく展望もなく壁があってそこで終わっていた。目的のよくわからない林道だった。

 林道終点から尾白川へと下る。笹の中の道でところどころロープが固定されている。ときどき滑りながら河原に到達。一本とり、沢タビを履いたりハーネスを着けたり。水量は多い。もともと多いのかもしれないし、ふだんより多いのかはわからなかった。水の色は緑色だった。周りの木々の緑を反映しているのか本当に水が緑色なのかはわからない。

 歩き始めてすぐ広い釜を持つ滝があらわれる。左から巻く。ここがいい滑り台なので栗山に滑らせる。天気はくもりでできれば水に浸かりたくない。栗山はなかなか見事なすべりを見せてくれた。

滑る栗山
8/27 尾白川に下りて最初の滝。栗山に滑らせてみる。天気はくもりで滑るにはいまいちの天気。
滑り台の次の滝
8/27 滑り台の次の滝。左から。上にフィックスされた残置ロープがある。

 滑り台の滝のすぐ上にまた別の滝。左から登る。一枚岩で私は滑ってずるずる落ちた。上部はフリクションで登るがけっこう恐い。残置ロープがあったのでこれを使う。他にもいくつか滝をかけながら鞍掛沢出合。鞍掛沢出合は広い河原になっているがテント場はなさそうだ。ときどき白い砂のようなザレが岩の間にあり、足跡があった。誰かが先を登っているらしい。

鞍掛沢出合
8/27 鞍掛沢出合。広いけどテン場はなさそう。
広い釜を持つ滝
8/27 広い釜を持つ滝。右から巻く。

 鞍掛沢を分けて最初の滝は2条階段状逆くの字の滝。ワイヤーがぶら下がっている。釜は小さいので左からへつり、あとはすたすたと登れる。その次は1枚岩の直瀑。右のバンド伝いに行くがスタンスがない。永谷君が栗山に行かせるがダメだったので飛び込まさせていた。右から巻き、道があった。そのあと広い淵を持つ滝があり、ここも永谷君が栗山に泳がせようとするが、流れに追い返される。右から巻き、道があった。滝が3つほど連続するところを高巻く。左のロープに伝って最初の滝を越え、次の滝の深い釜をのぞいてからさらに登る。あまり大きく巻くのが好きでないので小さく巻こうと努力するが、危ないところが出てきた。ザイルを出すかと思ったが、さらに高く登るとザイル出さずに巻くことができた。

 この沢は大きな滝が多い。奥多摩か丹沢の沢にこのサイズの滝があったら大滝の名をもらえるようなものが続々とあらわれる。淵も深く、奥秩父西沢渓谷七つ釜五段の滝より大きいものがいくつもある。整備すれば観光名所になるんだろうなと思う。また宮ノ浦川はこれよりスケールの大きな滝が続くのだろうなと思いをはせる。

 大きな高巻きを終えると大きな岩が沢の真ん中に鎮座している。右から抜けると深い淵になっており、5mほど泳いで左岸に取り付く。巨岩の下をくぐり、右から巻く。やがて遠くに水しぶきが見え、そこが噴水滝の下であった。

深い釜を持つ滝
8/27 深い釜を持つ滝。左から巻く途中。高く巻いた。
三連滝
8/27 噴水滝上の三連瀑。上段は右上へ逃げる。

 噴水滝の下で一本。噴水滝は遠くから見ると噴水のようだが、そばまで来るとあんまり吹き上げていない。せいぜい1mといったところか。それでも噴水滝の下の広い淵は磯の波打ち際のように波立っていた。下流側には岩壁がそそりたっており、その下で休んだ。岩壁からときどき水がポタポタ落ちてくる。天気はくもり。あんまりいい雰囲気ではない。

 噴水滝を発つ。噴水滝を左から越えると3つほどの滝を連ねる。同じ岩の延長で一枚岩を尾白川が削ったのだろう。自然の造型美に酔う。道はまっすぐ進めず、噴水滝の上で左岸に移り、少しずつ登り、高巻く。途中ルンゼを横切り、大きな苔むした岩の上を通過した。

数少ない登れる滝
8/27 数少ない登れる滝。このすぐ上も登れた。
黄蓮谷出合
8/27 黄蓮谷出合。左が黄蓮谷、右が尾白川本谷。

 そのあとはいくつか登れる滝とナメを越えて行く。滝もシャワークライミングだったり、広い釜をへつっていると足元が傾いてきてずるずる落ちて行くこともあった。ナメは平和にすたすた歩いて行く。途中3mほどの簡単に見える滝があったので、永谷君と栗山が取り付こうとしたが、釜の時計周りの流れに押し戻されて帰ってきた。何度か挑戦していたが、結局右から巻いた。

 やがて黄蓮谷出合。右の尾白川本谷の方が広い。永谷君曰く、北鎌尾根末端の千丈沢・天上沢出合に似ていると。左の黄蓮谷の岩の上で一本とる。ときどき日射しがさし、あたたかい。

 長く休んだあと、黄蓮谷へ歩き出すと滝が一つ。右の不安定な土壁から越える。そのあとはしばらく河原歩き。黒戸尾根に見るような苔むした岩が転がっている。一枚岩のところもあって栗山に流線に沿って歩かせる。

 やがて奥に滝が見えてくる。千丈の滝だ。ときどき日射しがあたって輝いて見える。そばによってその落差にしばし見とれる。ところどころ逆層があり、直登は難しそうだ。左から巻く。巻き道の入口が見つからず少しあせったが、水がしみ出ているあたりを登っていくと踏み跡らしいところに出た。すぐ小広いところがあって「黄蓮谷大龍神」と書かれた碑があった。ここはひと張りくらいできそうだ。一枚岩の上、苔が薄いところに水が流れており、道のようになっている。千丈の滝の急な傾きに比べてこの巻き道はずいぶんと緩やかである。手を使うことも少なく、すたすたと歩いていると千丈の滝の上部に出た。登り切ると五丈の沢出合。左は五合目小屋へ通じる五丈の沢、右は黄蓮谷。

千丈の滝
8/27 千丈の滝。左から巻き。道みたいなナメに沿って登る。そのまま巻いていると五合目小屋への廃道に吸い込まれる。
千丈の滝上部
8/27 千丈の滝上部を登る栗山。翌朝はここから日向山がよく見えた。

 五丈の沢出合でまた長く休む。ここまでいまいち乗り気でない永谷君と進むかどうか相談する。協議の焦点は「進むか戻るか」「どこで泊まるか」。ガイドブックの一つ「関東周辺沢登り50コース」を見るとこの黄蓮谷は登攀レベルが4級上。かなり難しい方であり、我々の実力とくらべるととても登れるものではない。一方で他のガイドブックでは3級だったりして判断が難しい。でも滝を見ないうちに行けないと判断して帰るのももったいないので、帰って来られる程度に進み様子を見ることにした。

 黄蓮谷を先へ進む。五丈の沢出合にかかる滝は右から巻き。傾斜の緩やかなよく踏まれた道を行くと、沢に戻るところで良好なテン場を発見。焚き火の跡もある。戻るならここに泊まるのがよいだろうと目星をつけて沢に下りる。

 大きな岩を越えながら歩いて行くと坊主の滝。大きく2段に分かれていてガイドブックの通り40mほどありそう。登れるシロモノではないねと右から巻く。はじめはイバラのある薮の中を行き、右のガレたルンゼを直登。そこそこ傾斜があり、戻れるかどうかは少し怪しいが登ってしまう。ある程度登ると傾斜が緩やかになり、左手の尾根に取り付く。尾根の下の方に取り付くとザレていて登りにくい。木の根をつかむ。その上は樹林帯であり、黒いビニルテープに従って歩く。やがて道がはっきりしなくなる。

 どこで沢におりるのかとガイドブックのコピーを取り出す。と、下るには懸垂下降が必要なようだ(「関東周辺沢登り50コース」)。そのまま巻いて行って二俣まで行くこともできるようだが、それについては懸垂下降が必要かどうかは書いてない。少なくとも真下に見える沢に下るには懸垂下降が必要である。もっとも下の沢は大きな滝をかけていて再度巻きになりそうだ。

 しばし考える。この時点で黄蓮谷の遡行は諦めていた。奥千丈の滝を見ようが見まいがおそらくは登れまい。問題はどこで引き返すかである。希望としては帰る前に奥千丈の滝くらい見ておきたい。しかし、奥千丈の滝に達するには懸垂下降が必要であり、懸垂下降をしてしまえば戻ることは難しい。なので、戻れる現時点で戻ることにした。正面の道がよく分からなくなってきていたこともある。適当に歩いて気がつくと戻れないような事態は避けたいのでやはり戻ることにした。

坊主の滝
8/27 五丈の沢(五合目小屋下の沢)出合。左が五丈の沢、右が黄蓮谷。右から巻き。途中にテント場あり。
坊主の滝
8/27 坊主の滝。右のガレたルンゼから巻き。

 敗退。おとなしく帰ることにする。退路は五丈の沢沿いの廃道を登り、黒戸尾根五合目小屋に達し、横手へ下る。

 坊主の滝ーガレルンゼ間の尾根からガレルンゼに移るところは登るところよりも安全なところを栗山が見つけそこを下った。登りにとったところよりも上方でピンク色のテープがついていた。ガレルンゼはおいてある岩を支点として栗山に懸垂下降させるが、ザイルが回収できない。見たところクライムダウンで下れそうなので永谷君がノーザイルで下ってしまった。ザイルを回収して下る。あとは難しいところもなく、五丈の沢出合上のテント場にたどりついた。

坊主の滝巻き
8/27 坊主の滝巻き。敗退決定。しっぽ巻いて帰る途中。
懸垂下降
8/27 坊主の滝の右のガレたルンゼを懸垂下降。ザイルが回収できずとまどうが、ザイルなしで下れた。
五丈の沢出合上
8/27 五丈の沢出合上にテントを張った。

 時刻は14:30なのでテントを張ったあと、永谷君が栗山に1対1でザイルの扱いを教える。16時頃切り上げ、メシを作って焚き火をした。天気図を書こうと思ったが、谷でラジオの電波が入らなかった。栗山にビールを冷やしておいてもらったら見事に1本流されており、ひんしゅくをかった。日が暮れてきてだんだん眠くなったので19:05就寝。

(2005年9月4日記す)


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