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2005年冬 - 西丹沢・大室山〜篭坂峠[1/3]


2005年1月8日(土)〜10日(月)
場所
神奈川県津久井郡津久井町、足柄上郡山北町、山梨県南都留郡道志村、山中湖村/丹沢
ルート
1月8日
JR中央本線藤野駅=神ノ川キャンプ場…鐘撞山…大室山…加入道避難小屋(泊)
1月9日
加入道避難小屋…白石峠…モロクボ沢の頭…畦ヶ丸往復…モロクボ沢の頭…城ヶ尾山…菰釣避難小屋(泊)
1月10日
菰釣避難小屋…油沢の頭…石保戸山…石棚の頭…高指山…切通峠…三国峠…三国山…大洞山…篭坂峠=JR御殿場線御殿場駅
参加者
中山(東工大ワンゲルM1)、荒井(東工大ワンゲルB2)、善養寺(千葉高山岳部2年)、鈴木(千葉高山岳部1年)
参考文献
「アルペンガイド11 丹沢」(山と渓谷社,2000)

西丹沢・大室山〜篭坂峠の地図

はじめに

 年末くらいから関東外周県境縦走をやりたくなってきた。めぼしい山を登り尽くしてしまい、県境の行きにくい山ばかりが残ってしまったこともあるし、それに何らかの価値を付加したいと思ったからだ。それで、冬でも行けて、三連休を活用できそうな所を探すと、この大室山〜大洞山の縦走と箱根外輪山の2つが候補に上がった。幸い2月のはじめにも三連休があったので、それを箱根外輪山にあてることにして、前者をやることにした。正月明けて最初の山行であり、ずっと富士山を正面に見て歩ける山が年明け最初に登る山としてふさわしかったためでもある。ちょうど年末に奥多摩御前山に行った時、個人山行で七ツ石山に行く千葉高山岳部に会い、善養寺君にどこかの山に呼ぶと言ったこともあり、彼らも呼ぶことにした。

 1月は月末に気象予報士試験を受けることもあって、この山行だけにとどめておいた。計画書は気象予報士試験の勉強がひと段落した1月5日頃に作った。ルートについては県境を歩くことが目的である以上、音久和から篭坂峠までと簡単に決まった。問題なのはアプローチだった。篭坂峠からは御殿場もしくは富士吉田へ1時間に1本程度走っていることがわかったので大丈夫だったが、音久和へはバスが1日2便しかない。しかも三ヶ木を6時台と15時台に出るもので、山に行くのに使えるものではなかった。地図を見ていると藤野駅から月夜野へのバスが昔あったらしく、ちょうど人数もまとまったこともあるし、タクシーを用いることにした。山行前日1月7日、タクシーを確保しておこうと思って藤野タクシーに電話したらタクシーの台数が2台しかないので予約は受け付けていないと言われた。仕方がないので、予約なしで行くことにした。

1日目

2005年1月8日

JR中央本線藤野駅=神ノ川キャンプ場…鐘撞山…大室山…加入道避難小屋(泊)

1日目コースタイム
JR中央本線藤野駅8:33到着
9:00タクシー発車
神ノ川キャンプ場9:35タクシー到着
9:41
530m峰10:10
10:27
鐘撞山900m11:27
11:54
1150m付近12:50
13:18
大室山1588m14:33
14:53
破風口(大室山・加入道山鞍部)15:35
加入道避難小屋16:06
20:00就寝

 面倒なので現地集合。ただ中央線の列車だけ指定しておき、私はお茶の水で千葉高生たちと合流した。眠かったが、結局しゃべり通しだった。菅井先生曰く、この行程だと2日目はだいぶ楽だなとか。私は今回善養寺、鈴木の二者の実力がわからず途中で下山する可能性も十分考えていたので、エスケープもできるわりと楽な行程にしたのだった。高尾で乗り換えると同じ車両に荒井がいた。簡単に挨拶する。荒井と千葉高生でけんかが起きないかどうかがささやかな不安材料だった。しかし、山に登ってみるとそれは杞憂に済んだ。高尾から窓の外に雪が残っているのが見えた。

 JR中央本線藤野駅到着。かなりの人が下車する。陣馬山にでも行くのだろうか。タクシーは1台もない。荷物分けたりトイレ行ったり水を汲んだりして20分ほど待つ。私がトイレに行っている間に1台来て中高年グループが乗っていったようだった。さらに待っていると次の列車が到着した。先をとられぬよう、タクシーの停車場に陣取る。10分ほどでタクシーが来たので、神ノ川キャンプ場までお願いする。運転手は知らなかったらしく、地図を出して説明する。

 藤野から月夜野までは山と川を横断する道で登ったり下ったり。このあたりはだいたい東西に尾根と谷が並んでいるので、南北に行くと変な道になる。20分ほどして道志川へ下る道に入ると、鈴木が車酔いしだした。どうすることもできないので、窓開けたらどうだとかアドバイスしながら待つ。やがて奥相模湖のダム堰堤を通過し、神ノ川林道に入ると道が凍っていた。神ノ川キャンプ場の入口で降ろしてもらう。6000円くらいだったと思う。

 タクシーを降りるとそこそこ寒い。すでに標高500mある。上着を一枚だしたり、しまったりしているとキャンプ場から犬が一匹現れる。キャンプ場で飼っている犬らしい。 出発しようとするとその犬が鈴木の股を嗅ぎ出す。ややおののくが、単に興味があるだけらしい。犬はキャンプ場の中を通り、橋を渡るところまでついてきた。橋を渡るところで荒井に「荒井は徒渉して」と注文してからかったりしながら渡る。

神ノ川キャンプ場で出発写真
1/8 JR中央本線藤野駅からタクシーで30分。音久和から凍った道を行くと神ノ川キャンプ場に着く。鈴木がタクシーで酔う。そしてキャンプ場の犬に股をかがれる。
神ノ川を渡る
1/8 神ノ川を渡って鐘撞山への尾根へ移る。

 この神ノ川キャンプ場から大室山までの道は25000分の1地形図に載っていない。ネットで調べるといくつかその資料が見つかる程度。道は何とかあるらしく、ただ大室山から下りにとると尾根がはっきりせず迷うらしい。私たちの場合、尾根を登りにとるので迷う心配はないだろう。大室山までの標高差は1100mくらいでまあ普通。

 神ノ川キャンプ場から橋を渡ると尾根まで笹に囲まれた緩やかな登りで、道ははっきりしている。雪はところどころに積もっている。すぐ尾根に出て、そのあとは稜線か神奈川県側を巻く道になる。530mピークを巻いたあたりで一本とる。せっかくなので千葉高生たちに現在地を探させてみる。どちらも分かっていなかった。鈴木にいたっては丹沢主脈の変な枝尾根を指していた。少し行くと道志川が見えるところで、対岸の形でどこだか分かるところだった。また登りはじめにもかかわらず、大室山が見えた。見る分にはそう遠くなさそうだった。

 しばらく行くと669m峰の手前で道が神ノ川側を巻きはじめる。これに沿って歩いていくとどうやら稜線には戻らないので、むりやり稜線に出ることにする。土がもろいので4人平行に並んで登る。結局私が一番速く、上の仕事道についた。この仕事道を戻るようにしていくと稜線に出たので、ここで後続を待つ。最初に荒井が来たので、この先稜線に道があるかどうかを見てもらう。あとの千葉高生たちを待つ間、地図を広げてみるとどうやら669m峰のあたりらしい。そのしばらく先まで登ったり下ったりの比較的楽な道だが、669m峰の次のピークを越えると、鐘撞山の登りになる。植林帯の展望もない道だ。雪がちらほら見られるようになり、やがて稜線全体が雪に覆われてくる。

大室山が見える
1/8 割と早くから大室山が見える。けっこう遠い。北側の尾根なので登りはじめから雪はあった。
鐘撞山で集合写真
1/8 鐘撞山で集合写真。ザックの上にカメラを置き、タイマーで撮った。左から荒井、中山、善養寺、鈴木。後方に大室山。

 そうやってたどり着いた鐘撞山山頂はやっぱり雪が積もった山頂だった。神ノ川側は木で覆われており、見えない。正面に大室山が見え、割と簡単に登れそうに見える。鐘があり、鳴らすといい音がした。何でも平家の落人がしたの長者舎に住んでおり、敵襲が来ると鐘を鳴らしたとか。雪が出て来たので各自スパッツをつける。千葉高生たちは6本爪アイゼンを付けていた。大室山までで唯一のピークであり、写真をとった。

 鐘撞山からは少々の下り。笹ヤブの中のやせ尾根を行く。すぐ934m峰に着き、そこから大室山への急登が始まる。植林帯で始めはジグザグのルンゼ状の道。道ははっきりしており、赤テープもある。赤ペンキで「大室山↑」と岩に書かれていたりもする。10分ほどで笹の生える稜線に出て稜線沿いに登る。左手に大きな露岩が見えると、雪の斜面で何となく緩い斜面である。北側から尾根が合流したと考えられるところで一本。

大室山への急登
1/8 鐘撞山から鞍部に下り、大室山への急登。一応赤テープ、赤ペンキがある。
秘密兵器レモン
1/8 秘密兵器と称して鈴木が取り出したのはレモン。山に登る人間の考えることは分からん。お互いに。この男、高1にしてこの冬に千葉から京都までチャリで行こうとしたが、浜松まで警察官に起こされて、家に帰された経験の持ち主。

 雪の上にザックを投げ出し、ザックに座る。鈴木が秘密兵器と称してレモンを取り出す。ナイフがすぐ出るところにあるらしく、切り裂いて食べ出した。疲れた時は酸っぱいものを食べたくなるというが、テン場に着いてから食べるもんではないだろうか。3個ほどの袋を持ってきているようだった。マンガ「ぼのぼの」のしまっちゃうおじさんの話で善養寺と盛り上がった。

 そこから緩やかな樹林帯の斜面が続く。神奈川側が植林、山梨側がかん木だ。1280m付近の傾斜が少ないところで神ノ川ヒュッテからの道を合わせる。一応小さな看板があった。ここからまた急な登り。木がまばらになり、昼過ぎのため南西向きの尾根を登ると、太陽が正面に見える。足跡はなく、バージンスノーを踏んで一歩一歩登る。斜面をジグザグに登る道。現在位置が分かりにくく、しかも急登が続くため、けっこう疲れる。何度か「これを登ったら大室山山頂だ」という感覚に襲われた。今考えたらコンパスを使っておおまかな進行方向を確認しておけばよかった。そんな道にやや呆れながら登っていくと尾根がやせてくる。かん木の急な登りを終えると山がだんだん丸くなってくる。なかなか山頂に着かない。自分のいるところより少しだけ高いところがある。やがて、大室山山頂に着いた。

大室山への急登
1/8 神ノ川ヒュッテからの道を合わせ、大室山への急登が続く。
大室山山頂で荒井
1/8 大室山山頂はときどきガスが来たりして寒かった。ちぢこまる荒井。実は雪のある山は初めて。

 いつのまにか雪が降り始めており、犬越路から風が雪を運んでくる。山頂はガスで歩を止めると、かなり寒かった。雪のある山が初めての荒井は寒くて小さくなっていた。私も素手だと寒かった。大室山山頂は山梨百名山の一つだった。地図を広げると加入道山までは1時間ほどであった。荒井は加入道山を「かいりやま」と呼ぶのかと思っていた。確かに音読みばかりの山の名前はめずらしい。「かにゅうどうやま」である。寒いにも関わらず、20分も休んでしまった。だいぶ時間も遅いので、加入道避難小屋へ向けて出発する。途中気象を心配しはじめる。

 大室山から1543m峰まではほとんど平坦な下り。大室山からしばらくで犬越路への道を分ける。1543m峰のあたりには檜洞丸にもあったような木道があった。木道の上に雪が固まり、滑りやすい。1543m峰から大室山・加入道山最低鞍部の破風口へ下る。急な下りで、破風口はV字状に切れ込んでいた。ここから加入道山へ登り返す。破風口で15:30。途中気象の可能性が高くなってきたので、荒井をせかすが、登りでスピードアップは難しいらしく、ゆっくり登る。登りが続き、前大室山で道志川大栗への道を分け、木の階段の下りに入ったところで16:55になった。荒井に途中気象してもらう。荒井に冷えないよう一枚上を着るよう言い、そのあとは鈴木を先頭に善養寺、中山の3人で加入道避難小屋へ向かった。分かれた直後、荒井は気象図を風に飛ばされていた。登り返してしばらく。小屋がなかなか見えず心配になると稜線の左下に加入道避難小屋が見えた。

加入道避難小屋
1/9 16:06加入道避難小屋着。残念ながら荒井は風の中途中気象とあいなった。加入道山山頂に位置し、水場、トイレなし。そのため人も少なく、我々で独占することが出来た。人も少なく、というか初日は人に会わなかった。
加入道避難小屋内部
1/9 加入道避難小屋内部。小屋の中は半分が板の間、半分が土間になっており、土間にはテーブルがある。布団もあり(写真左)、布団を使いつつ、小屋テンを実行する。暖かかった。これは翌朝の写真。

 加入道避難小屋はドアが2つあり、稜線側も谷側も開きにくかった。中は板の間と土間に分かれており、土間にはテーブルがあった。ふとんに枕まであり、快眠を約束できる小屋だった。とりあえず、中でやわらぎをつくり、ワカメスープを飲む。荒井が来るまでの間、鈴木はお湯をたいてる鍋を押さえ、善養寺と私はじゃがいもなどを切った。はじめは鈴木にじゃがいもの皮むきをやらせていたが、じゃがいも1個むくのにえらく時間がかかったので止めさせた。善養寺はたまねぎに泣かされていた。すきま風が入ってくるのでドアを閉めていたが、16:40ごろ荒井が寒い顔してドアを開けて現れた。荒井にやわらぎを飲ませながら、天気図を描いてもらい、そのあとはメシづくりの戦力として加わってもらった。だらだらとしゃべりながらメシを作る。ネタは鈴木が京都までチャリで行こうとして浜松でおまわりさんに捕まったこととか女の子は美しくなければならないという善養寺の意見とか、高校・大学の話とか2ちゃんねるの話題とか。最後のはあまりに下らなかったので、どんな話だったか覚えていない。人は来なかったので、ぜいたくにふとんをひいた上に小屋テンし、メシはテントの中で食べた。せっかくなのでメシを食べる時に「いち、に、さん、し、…」と例のかけ声をした。荒井と鈴木ははやばやテントにこもり、ファスナーを閉めてガスを空焚きしていた。寝るまでもだらだらして結局20時に寝た。

加入道避難小屋
幕営可能数山頂に2張くらい。
水場なし。下から担ぎ上げる。小屋前から大室山方向に道があるが、トイレ道ではなかろうか。
トイレなし。
収容人数7人+土間で5人くらい。
料金無料。
備考
  • 加入道山山頂に建つ。山頂だが、展望はあまりよくない。
  • 水がないので、下から背負う必要があります。その分、人は少ないので独占出来る確率は高いです。
  • 小屋の中に板の間と土間があり、土間にはテーブルがあるので、天気がどんなに悪くても中で料理が出来ます。
  • ふとんと枕があります。
  • ドアは北側と南側にありますが、どちらも立て付けが悪いです。

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