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2016年秋 - 北アルプス・明神岳主稜[2/2]


2016年10月8日(土)〜10日(月・祝)
場所
長野県松本市(旧・南安曇郡安曇村)
ルート
10月7日
立川=松本(泊)
10月8日
松本=上高地…徳沢…パノラマ新道…涸沢(泊)
10月9日
涸沢…ザイテングラード…白出のコル…奥穂高岳…前穂高岳…某所(泊)
10月10日
某所…奥明神沢源頭のコル…明神岳…上高地=松本
参加者
L.中山、K
参考文献

3日目

2016年10月10日(月・祝) 雨のち晴れ

某所…奥明神沢源頭のコル…明神岳…上高地=松本

コースタイム
前穂高岳3:30起床
5:30
奥明神沢源頭のコル6:12
明神岳主峰7:01
7:20
明神岳2峰8:05
明神岳4峰・5峰間8:38
8:50
明神岳5峰9:00
カール状窪地9:15
標高2225m9:58
10:19
岳沢ー穂高7番看板11:00
上高地バスターミナル11:45
13:20

 標高が高く夜は寒かった。高山病もあってあまり眠れなかった。朝起きても頭が痛く胃が受け付けない。お茶と飴で食事を済ませた。Kさんがラーメンを食べているのを見て元気でうらやましいと思う。天気はよく星空がよく見えた。

 夜明けとともに出発する。稜線は奥又白池側がすっぱり切れ落ちているため、岳沢側を歩く。岩のがれ場が多く踏み跡を探しながら歩くが、迷いやすい。

明神岳
10/10 モルゲンロートに染まる明神岳。
前穂高岳
10/10 前穂高岳の下りは道が判然としない。
奥明神沢源頭のコル
10/10 前穂・明神岳の最低コルである奥明神沢源頭のコルに出る。
明神岳
10/10 明神岳前衛の小ピーク全景。2ピッチザイルを出す。

 奥明神沢源頭のコルに着き、明神岳に登る。明神岳の前衛の小ピークにあたる正面の壁はけっこう急だ。見上げると捨て縄も見える。しかし、岩は多く節理していて登るのは難しくなさそう。ザイルを出して登る。1ピッチ目30mほど。稜線沿いを私が登る。支点は少ないが、捨て縄になっている支点が何箇所かある。2ピッチ目20mほどはKさん。そこまで登ると尾根は緩やかになる。ザイルを回収して歩く。前穂高岳から見た踏み跡のようなところは実際踏み跡になっていた。主峰直下は岩場になっていて岳沢側を巻く。

明神岳
10/10 小ピークを越えて明神岳へ向かう。
明神岳
10/10 明神岳直下は岩場なので岳沢側から巻く。

 明神岳主峰には看板など目立つものはない。南北に長い山頂なので2峰よりで休む。岳沢からの風が強いので奥又白池側に腰を下ろす。ちょうど明神岳東稜を登ってくるパーティーが見えた。また、明神岳主稜を登ってくるパーティーが2つ見えた。こんなところを登るパーティーが他にいるのかと驚く。

明神岳
10/10 南北に長い明神岳の南よりで休む。
明神岳2峰
10/10 核心部の明神岳2峰。Mouseoverでルート表示。

 少し下って2峰の登りに取り掛かる。アルペンガイドによると明神岳主稜の核心部のようだ。

 二峰山頂に登らない場合はコルから岳沢側に下り、基部に走るバンド伝いに大きく巻く。山頂に立つには、コルから直接稜通しに急な岩場を10m登り、スラブ状フェースの下に出る。ここから左へ崩壊後の不安定なバンドを回り込み、頭上のもろい凹角を登って30mで稜上に出る。部分的に固定ロープは残置されているが、ロープによる確保が必要なピッチだ。岩場の崩壊は今も進行中で今後ルートが変化する可能性もある。

「ヤマケイ アルペンガイド 19 上高地・槍・穂高」(山と渓谷社,2000)P.102-104,次田経雄著「15 前穂高岳から明神岳主稜」
明神岳2峰
10/10 明神岳2峰1ピッチ目。稜線のやや左側を登る。
明神岳2峰
10/10 明神岳2峰2ピッチ目。奥又白池側の凹角を登る。

 ちょうど向こうから単独行氏が懸垂下降で下ってきていたので様子を見る。巻く場合のトラバースの踏み跡はよく見えない。コル上の30mのあたりに来て登ってきてよいと合図してくれたので左から登ることにする。1ピッチ目Kさん。ロープが右側の急なところにあったが、左手のスタンスの多い方を選ぶ。30mほどでピッチを切る。探せば支点も多い。私が登り始める頃に単独行氏が懸垂下降で下ってきた。2ピッチ目、凹角を私が登り始めるときには次のパーティーが2峰の頂上にいて、しびれを切らして稜線沿いの直壁を懸垂下降していた。2ピッチ目は階段状でホールドも多く、やさしい。稜線に出ると風が冷たかったので直前で確保する。岩が崩壊しているとのことだったが、それほど脆いとは感じなかった。出たところが2峰の南寄りであった。

明神岳3峰
10/10 鎌首をもたげたような明神岳3峰。岳沢側から巻く。
明神岳4峰
10/10 明神岳4峰と5峰。2峰を越えると道は比較的明瞭になる。4峰は稜線沿いを越す。

 2峰を過ぎると稜線歩きは穏やかになる。踏み跡もはっきりしてきて迷わない。鎌首をもたげたような3峰を岳沢側から巻き、南北に長い4峰は稜線沿いを歩く。4峰の下りで暑くなって一休みしていると5峰から主峰へ向かうパーティーがいた。5峰を岳沢側からトラバースし、山頂は踏まない。カール状窪地へ下るが、踏み跡が前明神沢よりについていたため、途中で少し引き返す。

明神岳5峰
10/10 明神岳5峰は直下の岩根を岳沢側から巻く。
カール状の窪地
10/10 カール状の窪地はテントが張れそうである。

 カール状窪地は実際窪地になっていて、幕営した跡もある。水さえあればいいテン場だと思う。目の前に六百山、霞沢岳、上高地を挟んで焼岳、乗鞍岳が見えるようすは最高の展望台である。カール状窪地では5峰を日帰り往復する単独行の女性と行き違い、変わった人がいるもんだとKさんと話す。

 カール状窪地からしばらく下ると樹林帯に入る。尾根は複数に分かれ、しかもどの尾根も急だ。ガスが出ているとルートファインディングが難しい。ナイフリッジに出るとロープがフィックスされているが、これまた急で下りにくい。枯れ木に頼っても壊れそうだし、落っこちたら相当下ってしまいそうだ。冬にアイゼンをガリガリ言わせながらロープ出して下るのも一苦労だろう。

ナイフリッジ
10/10 カール状の窪地を過ぎてもナイフリッジがあり気が抜けない。
明神岳主稜
10/10 下りはずっと急で木の根や枯れ葉で滑る。

 いやらしい岩場を下って2225mのコルのようなところで一休みする。朝から来ていたカッパやハーネスを脱いで楽になる。ただしザックは重くなる。やっと私も高山病が抜けて食べられるようになった。

 その後も迷いやすく、木の根や枯れ葉で滑りやすい道が続き、間違えてはもう1人が道を探して下った。笹ヤブをつかんで下るような場所もある。ひどく長く感じる下り道だが、最後に倒木帯が出てきてこれは道がわからん、と焦る。しかし倒木帯を抜けてみると岳沢の登山道に出た。そこには7番が表示された看板があった。

岳沢の登山道
10/10 岳沢の登山道に出た。
明神岳
10/10 梓川から見える明神岳。

 あとは登山道を下るだけ。パラパラと登山者が登ってきて3連休3日目の晴れに入山する人がうらやましいと話しながら下る。河童橋の手前では穂高連峰がよく見えてKさんとあれが5峰4峰3峰と指差呼称する。よく見る割に今までよくわかっていなかった明神岳の土地勘ができたのはよかった。上高地バスターミナルに着いてから日帰り湯を聞いて上高地アルペンホテルに入りに行く。河童橋周りには1,500円から2,000円もするランチの看板が並んでいたが、日帰り湯は600円と良心的であった。

 13:20発のバスは観光バスみたいな車両ではなく、路線バスの車両であった。睡眠不足だがいまいち眠れなかった。新島々で乗り換え、松本で買い物して臨時のあずさ56号に乗って帰京した。

おわりに

 9月3連休も雨だったので今回もどうなるかと思ったが、雨が降ったのは1日目の昼から2日目の昼までだったのでそこそこ行動できてよかった。明神岳主稜は初めて歩いたが、岩登りありルートファインディングありのまとまったバリエーションルートだった。注意点としては以下の通り。

 偵察の目的である慶応尾根、前穂北尾根、下降路候補の涸沢岳西尾根、明神岳主稜のうち、前穂北尾根以外は概観することができた。以下に冬季に登った場合の所感を述べる。

 慶応尾根は冬季の取り付き点がわからない。奥又白谷の雪崩の恐れがあるだろうから夏道をたどるのは難しい。最上部の堰堤を越えてから奥又白谷を渡るのだろうが、どこだかわからなかった。1798m標高点を巻いて登りたい。

 前穂北尾根は今回登っていないので何とも言えない。ただ冬の装備を背負って登るのはかなり大変だろう。

 涸沢岳西尾根は思いの外、明瞭なので視界が取れていれば下りに迷うことはなさそうだ。また奥穂高岳山荘の冬季小屋が使えるのは魅力だ。ただし、前穂から奥穂までの吊尾根が長く、前穂山頂から2日間の晴天が約束されないと踏み込む気にはなれない。

 明神岳も稜線歩きが長く、前穂山頂から2日間晴天がないと下るのは難しそうだ。前穂北尾根が登れれば核心部の2峰の岩登りは登れるだろう。ただ、下部の尾根が枝分かれするためルートファインディングが難しい。またナイフリッジが急なためザイルはなかなか外せなさそうだ。

(2016年10月15日記す)


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