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2016年秋 - 北アルプス・明神岳主稜[1/2]


2016年10月8日(土)〜10日(月・祝)
場所
長野県松本市(旧・南安曇郡安曇村)
ルート
10月7日
立川=松本(泊)
10月8日
松本=上高地…徳沢…パノラマ新道…涸沢(泊)
10月9日
涸沢…ザイテングラード…白出のコル…奥穂高岳…前穂高岳…某所(泊)
10月10日
某所…奥明神沢源頭のコル…明神岳…上高地=松本
参加者
L.中山、K
参考文献

はじめに

 冬に前穂高岳北尾根を計画している。5月10月に登ったことがあるが12月に登ったことはない。このため、偵察を行うことにした。

 取り付きとなる慶応尾根、北尾根そのもの、下降路の候補である涸沢岳西尾根、明神岳主稜の4つを対象に偵察を行った。慶応尾根は無雪期にはヤブ尾根なのでパノラマ新道から観察することにした。

 記録のタイトルをどのように付けるか迷ったが、初めて歩いた明神岳主稜を冠することにした。

 穂高連峰の東面を仰ぐ梓川沿いのプロムナードを明神付近まで来たとき、対岸に覆いかぶさるようにそびえ立つ岩峰群が明神岳である。

「ヤマケイ アルペンガイド 19 上高地・槍・穂高」(山と渓谷社,2000)P.102,次田経雄著「15 前穂高岳から明神岳主稜」

 上高地から近い山だが、登山客の多くは槍ヶ岳や穂高岳へ向かい、明神岳を訪れる人は少ない。私自身も明神岳東稜を登った1回しかない。一方で前穂高岳から尾根続きであり、積雪期の下降路の候補にもなっている。

 雪の安定しない年末年始から3月までは、北尾根を忠実にたどって戻るのが一般的だが、明神岳を越えて南尾根から上高地に下ったり、奥穂高岳経由で西穂高岳への縦走や涸沢岳西尾根を下ることもできる。

遠藤晴行編「ROCK & SNOW BOOKS アルパインクライミング」(山と渓谷社,2001)P.79

 一般ルートに飽き足りない人には注目に値するバリエーションルートであると思う。

0日目

2016年10月7日(金)

立川=松本(泊)

 特急あずさの最終列車に乗って松本に向かう。松本駅の自由通路で寝ている人たちがいたのでその隣にシュラフを広げる。歯ブラシと割り箸を忘れたので近くのコンビニに買いに行った。明日の朝の松本電鉄の4:45発の臨時列車があるのかどうか改札前の時刻表では把握できず、次の6:31でも涸沢までは行けるので寝坊することにする。第一、眠い。

1日目

2016年10月8日(土) くもりのち雨

松本=上高地…徳沢…パノラマ新道…涸沢(泊)

コースタイム
上高地バスターミナル8:22
8:46
明神9:29
9:40
徳沢園10:21
10:34
新村橋10:43
奥又白池分岐11:30
11:45
2150m慶応尾根乗越12:25
12:43
屏風のコル13:30
13:40
涸沢14:22
19:40就寝

 隣の集団に遅れて5:30頃に起きる。集団は6時前に改札に入っていった。大糸線だろうか。松本電鉄を待つ間、Kさんは駅前の松屋まで牛丼を食べに行っていた。朝から元気でうらやましい。私はみどりの窓口前でザックに座って寝ていた。

 松本電鉄に乗りよく眠る。新島々でバスに乗り換えまた眠る。沢渡などで他に客を乗せていた。上高地バスターミナルで下車すると少し寒い。出発前にサンダルから靴に履き替えたり、水を汲んだりする。天気はくもり、雨が降る見込みである。パノラマ新道を登る予定だが、雨が降ったら横尾経由で登ろうかと話す。

 明神までにサルが5匹ほどいたが、珍しくボス猿っぽいのもおらずおとなしくしていた。写真を撮っている人が何人かいた。また遊歩道沿いの法面工事を行っていて、仮の遊歩道が梓川よりに付け替えられていた。徳沢までは人が多い。徳沢で休んでいてもツアーの15人くらいの客が横尾方面からやってきて混雑していた。

 新村橋まで行くと橋に何人かがいる。3連休ともなるとパノラマ新道も人が多いのかと驚く。橋を渡って治山運搬路を行くと途端に人はいなくなる。歩きながら杖代わりの枝を探して歩く。パノラマ新道の入り口には看板があるもののわかりにくかった。看板の文字は消えており、下にある細い棒にパノラマ新道と書かれていた。

新村橋から見る慶応尾根
10/8 新村橋から見る慶応尾根。上部は雲に隠れている。
奥又白沢堰堤
10/8 パノラマ新道の出だしは奥又白沢沿いである。

 パノラマ新道に入ると奥又白谷に沿った道になる。時々樹間から堰堤が見える。堰堤の上に機械があってセンサーらしきものが下を向いていた。Kさんがあれは何?と聞くので、出水した時の水位計じゃないですか、超音波式のやつ、と適当に答える。道沿いには4人ほどの慰霊碑があった。若い学生の碑もあってなんとも言えない気持ちになる。

奥又白池分岐から慶応尾根の乗越を見る
10/8 奥又白池分岐から慶応尾根の乗越を見る。
慶応尾根登り
10/8 慶応尾根の乗越へ登る。

 奥又白池の分岐で休む。ちょうど水が流れていて汲むのを忘れていたのでよかった。奥又白池への道ははっきりしない。慶応尾根を仰ぎ見るが雲がかかっていてよく分からない。パノラマ新道がどこを越えているのかも見えない。北尾根8峰の方へ伸びる険悪なルンゼを見てあっちじゃないよな、と話す。屏風のコルから下ってくる人が来てなんとなく登る方向がわかる。

慶応尾根乗越
10/8 慶応尾根を乗越す場所。コルではない。
パノラマ新道
10/8 パノラマ新道は沢の上部を巻きながら登っていく。

 奥又白池分岐から涸れ沢の奥又白谷を渡って慶応尾根へ上がる。道の岩は大きくゴロゴロして歩きにくい。慶応尾根2154m標高点の北のコルに出ると雨が降ってきたのでカッパを着る。尾根を少し回った樹の下で休む。慶応尾根への取り付き点に赤布などがついているかと思ったが見当たらなかった。下から仰ぎ見ると慶応尾根はどんどん高度を稼いでいてだいぶ急だ。登るにつれ道は急になり、ジグザグが増える。

屏風のコル
10/8 屏風のコルに着く。涸沢側の風が強いのでコルの手前で休む。
パノラマ新道
10/8 屏風のコルからパノラマ新道はしばらく前穂高岳北尾根をたどる。

 屏風のコルに出ると涸沢側の風の音が強い。ビビってコルの手前で休む。とはいえ雨が降っていてあんまり落ち着いて休めない。しばらく前穂高岳北尾根沿いに進み、トラロープがかかっているところでトラバース道になる。パノラマ新道は岩場を切り開いたような道で雨の中歩くと滑りそうなところが続く。パノラマという割にガスのせいで涸沢の景色は全く見えない。やがて涸沢ヒュッテが見えてきて横尾からの道と合流した。

パノラマ新道
10/8 前穂北尾根からトラバース道に入ると岩場が続く。雨の中だと怖い。
涸沢
10/8 涸沢のキャンプ場に到着する。

 涸沢キャンプ場にテントを張る。初めは道の奥穂よりに張ったが風が強く諦める。道の横尾側に少し落ち込んだ形のテント場を見つけそこなら風を少し避けられそうなのでテントを張る。2011年に10月3連休に来たときはテントで混雑していて幕営に困ったが、今日はそれほど多くない。それでも50張くらいあるだろうか。水を汲んでテントにこもっていると何やらメガホンで放送している人がいたが風のせいで全然聞こえなかった。涸沢小屋の裏手の沢が滝になっていて雨が強いのがよくわかった。雨は強くなったり弱くなったりで明日の予定の前穂高岳北尾根は難しそうと思いながら就寝した。

2日目

2016年10月9日(日) 雨のち晴れ

涸沢…ザイテングラード…白出のコル…奥穂高岳…前穂高岳…某所(泊)

コースタイム
涸沢5:55起床
9:08
ザイテングラード取付10:05
10:19
白出のコル
穂高岳山荘
11:15
11:25
涸沢岳11:37
白出のコル
穂高岳山荘
12:02
12:26
奥穂高岳12:51
13:10
吊尾根最低コル14:00
紀美子平14:16
14:38
前穂高岳15:15
20:10就寝

 朝方、雨は強く起きる気にならない。明るくなる6時に起きる。飯を食ったり地図を眺めたりのんびりして過ごす。ラジオで聞く天気予報は午前中に雨が上がりそうなので今日の行動を考える。ザイテングラード経由で奥穂、前穂に行くことにする。持ってきたガスが少ないので小屋の売店をのぞくと売っていた。800円と高いが買う。9時に雨が小止みになりテントをたたみ出発する。たたんだテントをザックに詰めているとNHKから取材を受ける。出発準備を終えているKさんが対応する。どこへ登るのかとか登山の経験とか聞かれ、最後になぜ山に登るのかと聞かれていた。謙虚な気持ちになれるから、と答えていたが、インタビュアーは不思議そうな感じであった。

涸沢
10/9 雨が小止みになった9時に出発する。涸沢小屋の横の沢は滝になっていた。
ザイテングラード取付
10/9 ザイテングラード取付へトラバースする。

 涸沢小屋の前を通らない道を通ってザイテングラードへ向かう。パノラマルートというらしい。涸沢小屋からの道を合わせてトラバースする。見下ろす涸沢には雪がない。2011年に10月3連休に来たときは雪の上にテントを張ったものだ。ザイテングラード取付で休む。雨はやみ常念岳が見えるが、穂高岳の雲は取れない。雨のおかげで比較的人の少ないザイテングラードを登る。荷物が重い私はゆっくりと登った。

ザイテングラード道
10/9 ザイテングラードを振り返る。雲が上がり、常念岳もときどき見える。
白出のコル
10/9 白出のコルに到着する。

 白出のコルについてザックを下ろす。年末に前穂高岳に登ったあと、涸沢岳西尾根を下る可能性を考え涸沢岳に登る。尾根に上がると西風が強く防寒着を着なかったことを後悔する。私は涸沢岳西尾根を登ったことがないが、下りなので尾根が分かれて正しい道を下れないかが心配であった。涸沢岳に着いてみると尾根はかなり明瞭で分岐もない。250m下ったところに蒲田富士が見えた。蒲田富士を少し下れば樹林帯なので風は避けられそうだ。

涸沢岳西尾根
10/9 涸沢岳西尾根を俯瞰する。
穂高岳山荘
10/9 穂高岳山荘から奥穂高岳方面を眺める。3連休にしては人が少ない。

 白出のコルに戻って冬季小屋の入り口を確認する。前は涸沢岳よりにこんな建物があっただろうかと思う。穂高岳山荘に水をもらい出発する。白出のコルから穂高岳へは梯子があって連休は混雑するが、今日に限っては空いている。奥穂高岳に着くと部分的にガスが取れてジャンダルムがよく見えた。風を避けて涸沢側の平地で休む。

奥穂高岳山頂
10/9 奥穂高岳山頂にて私。
前穂高岳と明神岳
10/9 奥穂南稜の頭から見る前穂高岳と明神岳。

10/9 奥穂南稜の頭から見る明神岳の拡大。
前穂高岳北尾根
10/9 前穂高岳北尾根3・4のコルから前穂高岳までの核心部。

 吊尾根を下り始めると南稜の頭でガスが取れる。前穂高岳や明神岳主稜が見えるので観察する。明神岳の手前に踏み跡のようなものが見え、意外と人が歩いているのかと驚く。ガスが取れて風が弱くなり、暑いので吊尾根最低鞍部で防寒着を脱ぐ。奥穂から前穂までは最低鞍部で半分と思っていたが、紀美子平までは15分と短かった。紀美子平で休むと風が北や南から吹いてきて寒い。到着した時には何人かいたが、時間も遅いからかみんな下ってしまった。

吊尾根
10/9 吊尾根最低鞍部付近から紀美子平へトラバースする。
紀美子平
10/9 紀美子平には何人かいたが、しばらくしたらみんな下山してしまった。

 前穂高岳に登る。180mの登りが急でテントや水を背負っているためつらい。テントの留めに使えそうなハイマツの枯れ枝を拾って歩く。前穂高岳につくと西風が強い。ザックを置いて北の端に行き、北尾根を偵察する。と言っても目の前の2峰に隠れてよく見えない。慶応尾根は北尾根から派生してよく見えるので観察する。やっぱりどこで奥又白谷を渡るか取り付き点が問題である。

明神岳
10/9 紀美子平から前穂高岳への登りの途中で見た険悪な明神岳主稜。
前穂高岳北尾根を俯瞰
10/9 前穂高岳山頂から北尾根を俯瞰する。

 場所を少し変えて幕営する。周囲に石で風除けをした幕営跡を見つけ、テントを張る。標高が高く、息切れがするので意図的に息を吐く。そのおかげか夜のうちは頭痛もなく、酒と晩御飯を楽しめた。しかし、寝付きになると鼻呼吸では息切れして追いつかず、なかなか寝付けなかった。


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