山ノ中ニ有リ山行記録一覧2016年山行一覧>北アルプス・朝日岳

2016年夏 - 北アルプス・朝日岳


2016年8月26日(金)〜8月27日(土)
場所
富山県下新川郡朝日町・新潟県糸魚川市/北アルプス
ルート
8月26日
北又小屋…イブリ山…朝日岳…五輪尾根…某所(泊)
8月27日
某所…蓮華温泉=平岩駅
参加者
L. 中山、K
参考文献
アルペンガイド14「立山・剣・白馬岳」(山と渓谷社,1994)

 2016年夏 - 北アルプス・黒部川黒薙川北又谷(敗退)から続く。

はじめに

 朝日岳は白馬岳の北方にある標高2,417mの山である。白馬岳から栂海新道を歩く人が途中に踏むことが多いだろうか。他に北又小屋からイブリ尾根を登るルート、蓮華温泉から五輪尾根を登るルートがある。今回は県境を横断するようにイブリ尾根を登り、五輪尾根を下った。

 朝日岳に登るのは18年ぶり2回目。高校2年生のときに白馬岳から栂海新道を目指したが、私が大雪渓でゲロ吐いたり、朝日小屋で顧問の先生が風邪ひいたりしてイブリ尾根を下った。ゲロ吐いたのは高山病によるものだったので、イブリ尾根を下るときは元気だったが、急な尾根を下った記憶は残っている。

 このルートを設定した経緯については前項の北アルプス・黒部川黒薙川北又谷(敗退)を参照のこと。

1日目

2016年8月25日(金) 晴れのち雨

北又小屋…イブリ山…朝日岳…五輪尾根…某所(泊)

コースタイム
北又小屋3:00起床
5:08
二合目940m6:00
6:14
五合目1300m7:17
7:35
八合目1630m8:24
8:39
イブリ山9:04
9:10
夕日ヶ原上端10:08
10:22
朝日小屋10:43
11:00
朝日岳11:54
12:08
吹上のコル12:29
五輪尾根2095m12:54
13:07
花園三角点水場13:54
花園三角点14:05
カモシカ坂1680m14:16
某所14:50
20:10就寝

 朝日岳を越えて蓮華温泉を目指す。ダムへアプローチする道からコンクリートの急な階段を下り、吊り橋を渡ってイブリ尾根に取り付く。ここから1750mもの急登である。前に下ったときはやはり急で疲れた記憶がある。

北又谷吊り橋
8/26 吊り橋を渡ってイブリ尾根に取り付く。
イブリ尾根五合目
8/26 イブリ尾根五合目には水場がある。

 荷物が重くて歩きはゆっくりになる。Kさんが先行し、私が追いかけ、1時間に1回の休みで追いつくという展開になった。二合目でヘロヘロになりながら追いつくと北又谷の向こうに定倉山が見えた。さらに五合目で追いつくとKさんは水を汲みに行っていた。2分ほどだというがまだ水はあったし、少しでもザックの重量を減らしておきたかったので水は汲まなかった。八合目まで登ると富山平野の一端と日本海が見えた。ラジオを聴きながら歩いているKさん曰く、東北から能登半島にかけて寒冷前線がかかっているとのこと。天気は今のところくもりだが崩れる可能性がある。

イブリ尾根八合目
8/26 イブリ尾根八合目からは小川と富山平野の端が見えた。
ミズバショウ
8/26 イブリ尾根の所々にあるぬかるみには大きなミズバショウのようなものが生えていた。
ゴゼンタチバナ
8/26 ゴゼンタチバナが赤い実をつけていた。
イブリ山
8/26 イブリ山から朝日岳方向を眺めるが雲の中に隠れている。

 八合目から30分弱でイブリ山に登頂する。ここで初めて朝日岳方面の眺望がひらける。ただし、稜線は雲の中だ。恵振谷がまっすぐ朝日岳と長栂山の間に向かって伸びていた。イブリ山からはしばらく木道があって歩くのが楽だ。鎖場を通過し夕日ヶ原に出る。30分ほど草原地帯を歩くことができ、気持ちいい。赤い猫じゃらしみたいな花がたくさん咲いていて印象的であった。「この赤い猫じゃらしみたいな花、何て言うんですかね」とKさんに問うと「赤い猫じゃらしなんじゃない」と無粋な返事が返ってきた。帰ってから調べてみたらイブキトラノオではないかと思う。夕日ヶ原上端の木道の真ん中で休む。登山者に会っておらず木道の真ん中で休んでいても邪魔にならなかった。

イブキトラノオ
8/26 夕日ヶ原にはイブキトラノオがたくさん咲いていた。
夕日ヶ原
8/26 振り返ると夕日ヶ原には蛇のように木道が続いていた。

 休んだところから20分ほどで朝日小屋に着く。小屋の前では石を並べて何か工事をしていた。Kさんからビールを買ってくるようお遣いを申し付けられ買いに行く。350ml缶が600円であった。水も汲んでザックが重くなる。立派な小屋でテント場も広いが、平日の午前だからか宿泊客は見なかった。

朝日小屋
8/26 朝日小屋に到着する。
朝日岳
8/26 休んでいる間に朝日岳の雲が取れた。

 朝日小屋を出発する。水谷のコルから1段登ると池があって、全長2cmくらいの手足の生えたおたまじゃくしがいた。Kさんに知らせるとサンショウウオではないかとのことであった。サンショウウオの写真は撮ったことがないのでカメラに収める。登り始めるとヘリが南の方からやってきて朝日小屋を旋回して柳又谷の方へ下って行った。遭難者でも探しているのだろうか。

サンショウウオ
8/26 水谷のコルの先の池にサンショウウオがいた。
キイチゴ
8/26 キイチゴ。苦い。

 道には木苺がなっていたので食べたが苦くて食べられなかった。道の右手に朝日小屋の水場を認め、だんだんと傾斜が緩やかになる。しかし高いところは常に見えており本当に山頂まで1時間で着くのかなと思ったが、1時間で着いた。

ライチョウのヒナ
8/26 ライチョウのヒナ。鳩くらいの大きさでかわいい。
朝日岳
8/26 朝日岳にて私。

 山頂の直前にライチョウの親子を見かける。はじめに岩の上に立つ親を見つけたが、よく見ると道に鳩くらいの大きさのヒナが2羽いた。親がハイマツに逃がそうと焦っているようだが、ヒナはもたもたと歩いていた。おかげで近くでライチョウの写真を撮ることができた。

 到着した朝日岳山頂はガスっていて何も景色が見えない。山頂まわり100mくらいしか見えない。東風が吹いてきて寒い。休んでいる間だけカッパを着る。人もいない。

雪渓
8/26 朝日岳を北へ下り始めると雪渓が残っていた。
白いトラノオ
8/26 白いトラノオのようなものがたくさん咲いていた。

 吹上のコルへ下る。下り始めると右手に雪渓があった。8月末でも雪が残っているとは降雪が多いのだろう。草の生えていない殺風景な尾根を下ると吹上のコルについた。エアリアマップの50分に比べてずいぶん速く着いた。

五輪尾根
8/26 五輪尾根が下っていくのがよく見えた。手前の谷の白高地沢もなだらかそうだ。
吹上のコル
8/26 吹上のコルには名の通り富山側から強い風が吹いていた。

 五輪尾根を進む。新潟側に下ると風はやみ、途端に暑くなる。尾根の南側を巻く木道の道で多くの沢を渡る。途中には湿地帯もあり、せせらぎの音と相まって美しい。ここへきて登ってくる登山者2人組に会う。本山行初めての登山者である。すれ違ってから少し広い沢に出てここで休むことにする。

 湿原地帯を過ぎてからの巻き道はあまりよくない。小さな登下降を繰り返し、沢と尾根を巻きながら歩く。樹林帯に入ると五輪の森の看板がある。樹林帯を抜けると草地の尾根となり、花園三角点の湿地帯が見える。下り切ると水場に出る。土に鉄パイプが刺さっていて水が流れ落ちている。飲むと冷たい。水を少し汲んで時計を見ると午後2時近い。天気は夕方にかけて雨の予報だが、ここでのビバークは風にあおられるおそれがある。先へ進むことにする。

五輪尾根
8/26 湿原の中を歩く。
花園三角点
8/26 花園三角点の湿原が見えてきた。

 花園三角点を過ぎると木道は急になる。カモシカ坂の入り口で大粒の雨が降ってきたのでカッパを着る。樹林帯に入ると雨は若干和らぐがそれでも本降りだ。急な箇所が終わったあたりでカッパズボンも履く。エアリアマップより速く白高地沢橋に着いた。すでに大雨の状態で水も濁っている。時刻は3時、雨は一晩続くようだしここでビバークすることにする。

 白高地沢本流は濁流が流れていたが、傍流は濁っていなかった。橋は高いところにかかっており増水時でも渡れそうだ。雨は止まずときどき弱まる程度である。北又谷を進まなくてよかったね、と話す。Kさんがテントの上にタープを張ってくれたので前室代わりになってよかった。ここも虫が多く、北又小屋でもらった蚊取り線香をつけたが虫は集まってきた。3日目のペミカンでカレーを作ったが、キムチに似た酸味がある。たくさんは食べられず残して寝た。

2日目

2016年8月27日(土) 雨

某所…蓮華温泉=平岩駅

コースタイム
某所4:37起床
6:21
瀬戸川〜兵馬ノ平1260m7:10
7:17
蓮華温泉8:12
11:00

 夜も雨が降り続け、テントの端っこは水たまりができていた。テントはゴアライトだがテントに接していた肩はしっとりと濡れていた。昨日の残りのカレーライスを食べるが、酸味が増しているようで3口くらいでやめた。

カモシカ坂
8/26 カモシカ坂の下りで雨に降られる。
白高地沢橋
8/27 濁流の白高地沢を渡る。

 雨の中テントをたたみ、出発する。白高地沢の濁流を橋で渡り、ひょうたん池の横を通る。だいたいは尾根を巻く道だが、ときどき小尾根を歩いたりして現在地の分かりにくい地形だ。蓮華温泉から朝日岳に向かう2人組を見かけた。こんな天気で朝日岳へ向かう人がいるとは驚きだ。

沢
8/27 蓮華温泉へは沢を渡る。
瀬戸川
8/27 瀬戸川を渡る。

 瀬戸川を渡って小沢を渡るところで便意を催し小休止する。兵馬ノ平への登り道は急でときどき滑る。道がゆるく下ると兵馬ノ平に出た。季節によってはアヤメが咲いているそうだが、咲いている花ではトリカブトしか分からなかった。尾根を登り、鉱山道を分けるとテント場があり、何張りか張っている様子であった。砂利道を歩いて蓮華温泉に到着する。

兵馬ノ平
8/27 兵馬ノ平には木道が整備されていて歩きやすい。
蓮華温泉
8/27 蓮華温泉に到着する。

 バスの時間を調べると11時。まだ時間があるので温泉に入って休むことにする。1人800円。お湯は熱く、長風呂には適さない。食堂でだらだらと過ごし、11時前に濡れたザックを背負って雨の中バス停へ向かう。平岩駅までのバスは運賃1210円と荷物代310円であった。客は他に5人ほど。1時間ぐうぐうと眠りながら平岩駅まで乗っていた。

 平岩駅には飯を食べるところはなく、Kさんは日帰り湯に浸かり、私は周囲を一周して駅に戻ってきた。行動食を食べて空腹を紛らわせる。糸魚川に出て北陸新幹線か、松本に出て特急あずさかの2択は後者にした。2人とも中央線沿線で帰りやすく、新幹線に比べて安価で、南小谷発の特急あずさ26号に確実に座れるためだ。ビールを飲みながらときどき雨の降る車窓を眺め帰京した。

おわりに

 予定していなかったが、朝日岳に登れたのはよかった。イブリ尾根も五輪尾根も花が多く、花の名前を知っていると楽しめそうなコースである。ただ1日で北又小屋から蓮華温泉に到達するのはかなり大変だ。荷物が日帰り装備なら可能かもしれない。

(2016年8月28日記す)


山ノ中ニ有リ山行記録一覧2016年山行一覧>北アルプス・朝日岳

inserted by FC2 system