越後駒ヶ岳は新潟県魚沼地方に位置する標高2003mの山。中ノ岳、八海山と並び、越後三山の一峰であり、日本百名山の一つでもある。私にとっては7年ぶり3回目で、2000年秋に越後三山縦走を、2008年年末に大湯温泉から越後駒ヶ岳往復を行っている。
今回は島から帰って最初の5月連休であり、泊まりがけの登山に行きたいと思いながらも、体力、道具、テント生活に不安があり、長期の山行は見合わせようと思っていた。ちょうど軽めの泊まりがけを考えていたWさんと意見が一致し、越後駒ヶ岳に行くことにした。
登山口を駒の湯にするか銀山平にするか相談したが、銀山平だとガスに巻かれたとき下り道が分かりにくいだろうということで駒の湯からの往復にした。
0日目 |
2015年5月1日(金) |
新座駅集合=大湯温泉駐車場(泊)
5連休のうちの1泊2日なので、初日の夜に出発しようかと考えていたが、初日と2日目の天気がよさそうなので予定を前倒して金曜夜発にした。職場を定時に上がって家に帰る。
新座駅に集合し、関越道を北へ北へ走らせて小出ICから大湯温泉の駐車場まで。1時過ぎに残雪の多い駐車場に着き、テントを張って仮眠をとった。
1日目 |
2015年5月2日(土) 快晴 |
駒の湯…栗ノ木の頭…小倉山(泊)
駒の湯 | 5:42 |
6:26 | |
646m標高点 | 7:14 |
7:31 | |
栗ノ木の頭916m標高点 | 8:20 |
8:43 | |
1130m付近 | 9:28 |
9:46 | |
1150m付近水汲み | 9:56 |
10:05 | |
1270m付近 | 10:25 |
10:44 | |
小倉山 | 11:05 |
18:40就寝 |
駒の湯から登り始める。水を汲んでいなかった私はどこか沢がないかと探したが見つからない。駒の湯に一声かけて玄関先の水をもらう。
道行沢にかかる吊橋は板3枚幅のところ、板1枚しか置いておらず、しかも固定されていない。ワイヤーにつかまりながら渡るが、ザックが重く、ワイヤーの毛羽立ったところで手の甲を引っかかれてしまった。沢を渡るところはどこでも落ち着かない。
5/2 道行沢にかかる吊り橋を渡る。 |
5/2 夏道と雪のミックスの道。 |
道行沢を渡って雪面を登り始める。しかし尾根に取り付くと夏道。根っこの張り出した歩きにくい道を登る。646m標高点の下で広い雪面を登り、急な雪面を登ると646m標高点に着いた。そこで一休み。休んでいると西の方で雪崩の音がした。
5/2 イワウチワがたくさん咲いていた。 |
5/2 東側の雪溜まりを歩く。 |
646m標高点からはだいたい夏道を登る。歩いていると花をたくさん見かけるが、イワウチワ、カタクリ、ツツジ、ガマズミくらいしかわからない。ガマズミと思っていた花はどうやらムシカリ(オオカメノキ)というそうだ。中性花の有無で判断するようだ。モクレンみたいなのは何だろうと思いながら歩く。親に聞いたところ、モクレンみたいなのはどうやらコブシらしい。花がすぼんでいるのがモクレン、花が開いているのがコブシというそうだ。栗ノ木の頭916m標高点で休んでいたら単独行が降りてきた。ずいぶん早い時間だが、どこから下りてきたのだろう。暑いので日焼け止めを塗る。
栗ノ木の頭から二重山稜を登る。東側に雪が溜まっているので夏道が雪に埋まっているところは雪の上を歩く。登りが急になった1130m付近で一休み。尾根がやせていて休む場所があまりないが、人に会わないのでよかった。
5/2 カタクリが咲いていた。 |
5/2 1026m標高点を過ぎて急坂になる。 |
さらに鎖場を登ると、1150m付近で雪渓の下に水が流れている。ガスを1缶しか持っておらず水作りに不安があったため、ここで汲めるだけ水を汲むことにした。ザックを下ろし、コップを出して水を汲む。稜線で水が手に入ると思っていなかったので助かった。飲んでみると文字通りの雪解け水、冷たくておいしい。お代わりするとおでこが痛い。
5/2 |
5/2 道を歩いていると雪渓の下に雪解け水が流れていたので水汲み。 |
ペットボトルを水で満たし、雪渓を登り始める。尾根が合流する1270m付近まではこの急な雪渓が続く。年末に登ったときは背丈くらいのラッセルだった気がする。喘ぎながら東寄りを登っていると雪渓の切れ目に出てしまった。Wさんは西寄りにトラバースしていたが、私はめんどくさがって雪渓の切れ目に下りて藪の中をトラバースした。プラスチックブーツで潅木に登るとツルツル滑って結局時間がかかってしまった。
Wさんを追っかけて登り、尾根が合流する1270m付近に達する。もう今日の幕場の小倉山は見える位置だ。でも今日は小倉山にテントを張ると決めているし、時間はある。天気はよすぎて暑くてバテるし、ここで一休みする。
5/2 1270m峰から小倉山はもう少し。 |
5/2 平らかな小倉山に登り着く。 |
最後のひと登りで平らかな小倉山山頂に到達する。右手には越後駒ヶ岳がさらに高く、正面には荒沢岳が険しい。天気は最高によく、Wさんが守門岳や浅草岳、未丈ヶ岳、会津朝日岳、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳、日光白根山など多くの山を紹介してくれた。しかし、越後三山より北の山をほとんど知らないので全然わからない。風もないが、わずかに北風を感じたので南側斜面の藪のきわにテントを張った。平らな山頂なのでほとんど整地せずに水平面を得ることができた。テントを設営してもまだ12時前。水不足になりそうなので、鍋に雪を入れ放っておき、輻射熱で解かす。やることないし暑くて何もしたくないし寝不足なので昼寝。
14時過ぎに人の声で起きる。他に2パーティーがテントを張っていた。駒ヶ岳に向かう斜面をみると、百草の池の先の斜面に2人組が登っていた。ゴマ粒より小さい2人はほとんど動かないようで、この暑い中じゃバテるよなと話した。退屈なのでメシを作るが、16時過ぎにも2人はまだその斜面を登っているようだった。
5/2 小倉山山頂に幕営。他にも2張テントがあった。明日は正面の駒ヶ岳。 |
5/2 荒沢岳に月が昇る。 |
外に雪を入れて放っておいた鍋には水ができていた。メシはご飯と鍋。私が用意したが、2人分のメシの分量が分からず、鍋いっぱいの鶏鍋ができてしまった。何回かに分けて食べきった。ご飯でお腹いっぱいになってしまい、あんまり酒を飲まなかった。Wさんの白ワインを飲み、私が持ってきた雄山一はお持ち帰りになってしまった。AMラジオではNHKで東京都羽村市ののど自慢大会みたいなのを流しており、なんだか新潟まで来た感じがしなかった。
日が暮れる18:20に就寝。昼寝のせいかあまり寝付けなかった。暗くなってから風が吹き、外に置いた雪袋があおられてうるさかったので袋の口をしばっておいた。外は荒沢岳の上の方にだいぶ丸い月が出ていて明るかった。
2日目 |
2015年5月3日(日・祝) 快晴 |
小倉山…百草ノ池…駒の小屋…越後駒ヶ岳…小倉山…駒の湯
小倉山 | 3:00起床 |
4:37 | |
百草の池 | 5:18 |
5:30 | |
1790m付近 | 6:13 |
6:23 | |
駒の小屋 | 6:33 |
越後駒ヶ岳 | 6:55 |
7:17 | |
駒の小屋 | 7:28 |
小倉山 | 8:13 |
9:02 | |
1050m付近 | 9:45 |
10:05 | |
670m付近 | 10:43 |
11:19 | |
駒の湯 | 11:48 |
12:05 |
3時起床。朝は風が吹いていなかった。ラーメンを食べて、外にトイレに出ると月が駒ヶ岳の肩に沈むところだった。出発する頃にはヘッドランプがいらないほど明るかった。水、食料、アイゼン、ロープ、ハーネスなどを持ち、駒ヶ岳へアタックする。テントの張り綱を枝にしばって埋めておいたのだが、雪が解けて枝が浮いていたので再度埋め直す。
5/3 駒ヶ岳へ向かって歩き出す。 |
5/3 今日も風もなくいい天気。輝く尾根に春風はそよがず。 |
明け方にもかかわらず雪はカチカチになっていない。アイゼンいらずでザクザク進む。なだらかな尾根を歩いて行くと背後に太陽が昇ってきた。早くも雪面が輝き始める。百草の池と思われる場所で一休み。雪面が広がり池は見えない。昨日2人組が亀のようなペースで登っていた斜面の真下だ。どのくらい時間がかかるか分からないが、朝のうちなら日中の灼熱地獄よりはマシだろう。日焼け止めを塗る。今日も天気がよく、雲がないので方々の山が見える。
5/3 百草の池からの登り。標高差250mほど。 |
5/3 斜面を登るとだいぶ明るくなってきた。 |
例の斜面を着実に登り30分くらいで登りついた。吊り尾根を少し歩いて駒の小屋に登る斜面の下でもうひと休み。駒の小屋泊なのかもう下ってくる人もいる。小屋から駒ヶ岳山頂にアタックする人も見える。カッパの色もわかるのでそう遠くはなさそうだ。
斜面を登って駒の小屋。10人くらいの人たちが出発準備をしていた。小屋は相当混んだのではないだろうか。小屋の横では水がジャブジャブ出ていた。周辺は全部雪に覆われていて流水は見えないのだが、どこから引いているのだろう。オツルミズ沢源頭にパイプを埋めているのだろうか。
5/3 駒の小屋に登り着く。 |
5/3 越後駒ヶ岳の登り。オツルミズ沢源頭のルンゼは雪ではっきりしない。 |
駒ヶ岳山頂までの斜面を登る。年末にはオツルミズ沢源頭のルンゼが見えていたが、5月連休は雪がのっぺりくっついて、溝が見えない。南寄りの山に登るようにトレースをたどり、最後にトラバースしながら北側の本峰に導かれる。山頂は西側に雪が溜まってのっぺりしていて小高い山頂だけは雪がなかった。
5/3 越後駒ヶ岳山頂にて記念写真。 |
5/3 隣の八海山。左奥は苗場山だろうか。 |
6:55、越後駒ヶ岳山頂到着。天気がよく、西側の山並みも見える。あれが苗場山か岩菅山か妙高火打山かと話し合う。山頂には2人組がいたので記念写真を撮ってもらう。そのあとは他に人もおらず、山頂を楽しむ。駒の小屋に泊まった人はもう山頂を往復したので空いているのだろう。小倉山にテントを張っていた他のパーティーが登ってくるのを見て入れ替わりで下る。
5/3 越後駒ヶ岳から斜面を下る。 |
5/3 荒沢岳を正面に下る。 |
駒の小屋には5,6人の人がやっぱり出発準備をしていた。そういえばネット上ではスキーヤーの記録が多かったが、スキーヤーもシュプールも見かけない。5月になると雪渓に切れ目が出てきてスキーに向かないのだろうか。ザクザクと斜面を下り、山頂から小倉山までは1時間で到着した。
5/3 小倉山までの下り道はなだらか。 |
5/3 1270mからの雪面の下り。 |
小倉山に着いてテントをひっくり返し、底面を乾かしてからテントを畳む。ちょうどテントを張っているパーティーがいて、聞くと昨日駒の湯から登って1270m付近で幕営し、今日これから駒ヶ岳にアタックかけるとのことだ。もう日も高いし、昨日と同じ灼熱地獄ではないかと思うが、お気をつけてと声がけする。雪袋にまた水が少しできていたので水を汲み、テントをたたみ、駒の湯へ下る。
1270mからの下りの雪の斜面で西側に寄ってしまい、戸惑う。ピッケルを突き刺しバックステップで下った。そのあとの鎖場はプラスチックブーツには下りにくく、周囲の枝や鎖を引っ張りながら下った。夏道は木の根っこが出ていて歩きにくく、東側の雪が残っている斜面を選びながら下った。暑いので日陰を選んで休む。雪の上なら広いので休みやすい。登ってくる人もいたが、駒の小屋に泊まるのだろうか。ラジオを聴きながらダラダラと下り、吊り橋を渡って駒の湯に着いた。
5/3 |
5/3 シャクナゲも咲いていた。 |
大湯温泉に入り、いろりじねんで蕎麦を食べた。窓から駒ヶ岳が見えるとのことで見たら小倉山から駒ヶ岳が意外と遠く、よくまあ登り2時間半、下り1時間で行けたなあと話し合った。帰りの関越道は思ったほど混んでおらず、16時頃に新座に着いて解散した。
リハビリ程度の山を望んでいた私としては体力、テント生活ともちょうどよい山であった。道具も忘れ物もなく、プラスチックブーツも壊れることなく無事下れた。天気も暑いくらいに快晴で、風に吹かれて辛いということもなかった。道具もアイゼン、ロープ、登攀具の活躍の場はなく、ボッカになってしまったが、危険な箇所がなくてよかった。靴擦れもなく、鼻の頭が少し日焼けし、ほどよく疲れていい。ブランクがあったものの泊まりがけの残雪期でも登れるという自信をつけるいい山行だった。