山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>北アルプス・五竜岳〜剱岳[1/3]
黒部横断とは北アルプスを流れる黒部川を横断することである。登山者にとっては積雪期に長野県大町側から後立山連峰を越え、黒部川を渡った後、さらに立山連峰を越えて富山平野に下ることをさす。
ルートは山スキーであれば針ノ木峠とザラ峠を越えるのが一般的なようだが、山スキーでない場合は剱岳を経由するものが一般的である。大町側から黒部川までは、五竜岳から東谷山尾根を下り仙人ダムに下るルートや、鹿島槍ヶ岳から牛首尾根を下り仙人ダムへ下るルートなどがある。仙人ダムから剱岳までは、坊主山から北仙人尾根を登るルート、雲切尾根を登るルート、ガンドウ尾根を登るルートなどがある。いずれも仙人山へ達するので、仙人山からは池ノ平山経由あるいは源次郎尾根経由など各自の力量に応じて剱岳に登る。
今回は白馬五竜スキー場…五竜岳…東谷山尾根…仙人ダム…雲切尾根…仙人山…池ノ平山…剱岳…早月尾根…馬場島というルートをとった(上ルート図参照)。
今年は残雪が多く、5月の連休も天気がよかったため、無事五竜岳から剱岳まで達することができた。
0日目 |
2010年4月28日(水) |
新宿=松本(泊)
新宿から松本行きの最終の特急あずさ35号に乗って松本へ。松本駅の改札前で銀マットを敷いて就寝。
1日目 |
2010年4月29日(木・祝) くもり |
松本=大町=神城…白馬五竜エスカルプラザ=アルプス平=地蔵の頭…小遠見山…五竜山荘(泊)
神城駅 | 7:53 |
9:22 | |
白馬五竜エスカルプラザ | 9:50 |
10:18 | |
アルプス第一リフト上 | 10:39 |
一ノ背 髪 | 11:35 |
11:52 | |
小遠見山 | 12:15 |
中遠見山 | 12:50 |
12:57 | |
大遠見山 | 13:50 |
14:06 | |
西遠見山 | 14:53 |
15:07 | |
五竜山荘 | 16:41 |
21:00就寝 |
松本駅にて5:30起床。3週間前に行った五竜岳と同じ大糸線の列車で神城駅に着く。神城駅では本降りの雨が降っており、山もガスがかかっていた。このため、しばらく神城駅の待合室で雨が弱まるのを待つ。雨宿りの間にどこか温泉でも行こうかなどと話すが、近くに温泉はなく待合室にあった観光地図などを眺めて過ごす。その間に水を汲んでいたHさんがポリタンを落とし、フタが割れてしまう。仕方ないので持っているペットボトルで2リットル分確保し、ポリタンは廃棄した。
1時間半ほどで雨は弱くなり、白馬五竜エスカルプラザへ歩く。テレキャビンとアルプス第一リフトの片道切符1,400円を買い、スキー場最上部へ。雨はやんだが、曇り空は変わらず。前回見えた五竜岳の武田菱は見えない。
地蔵の頭を東側から巻くようにしてスキー場を歩き、鞍部から小遠見山へ通じる尾根へ取り付く。いきなりの急坂である。前回はたくさんの人が取り付いていたが、今日は黄色いカッパの人がひとり下山してくるだけである。先頭を歩くHさんが話しかけられ、何でも唐松岳まで縦走のつもりできたが途中で雪庇の様子が分からず戻ってきたとか。確かに途中の雪庇みたいなところからトレースがなかった。このあと黄色いカッパの人は私たちの後をついてきていたが、小遠見山のあたりで引き返していったようだ。
「一ノ背 髪」の看板のところで一休み。だんだんと青空が出てきてときどき五竜岳も見えた。小遠見山を過ぎて、すこしずつHさんが遅れてくる。中遠見山、大遠見山でひと休みし、西遠見山の登りにかかる頃にはまたガスが出てきた。手袋を出す。天気が悪いからか、さきほどの黄色いカッパの人のあとは誰も人がいないしトレースもない。前回とは大違いだ。
西遠見山から急な登りで白岳の下を通って五竜山荘に着いた。五竜山荘に着く頃にはすっかりガスで西風が強く、かなり寒かった。私たち以外に登山者がいないにもかかわらず、小屋からは発動発電機の音がしていた。どうやら小屋番の人は入っているようだ。Kさんが素泊まり6,300円だったと言っていた。小屋のそばに幕営する。整地しようと思ったら私が預かったスコップの柄と刃をつなぐ金具が見当たらない。しかたないので金具なしでスコップを使い、整地する。その後も金具は見つからず、笹の茎や針金で留めた。
少々寒いテントで21時就寝。
4/30 アルプス第一ペアリフトで白馬五竜スキー場上端に上がる。 |
4/30 遠見尾根をたどる。一時は天気がよく、五竜岳も見えた。 |
2日目 |
2010年4月30日(金) 雪一時晴れ |
五竜山荘…五竜岳…東谷山東コル2320m(泊)
五竜山荘 | 3:36起床 |
6:20 | |
G2 | 8:09 |
8:20 | |
五竜岳 | 8:55 |
9:20 | |
東谷山尾根2530m | 10:09 |
10:20 | |
東谷山尾根2350m3つ池上 ホワイトアウト待機 | 10:39 |
11:00 | |
東谷山尾根2350m3つ池上 幕営待機 | 11:05 |
13:43 | |
東谷山 | 14:00 |
東谷山尾根2280m 引き返し | 14:25 |
14:35 | |
東谷山尾根2350m三ツ池上 | 15:17 |
18:50就寝 |
この日の朝は天気がよく、テントをたたむときには五竜岳へ至る稜線も見えた。しかし稜線伝いに登っていくに従い、稜線の上部はガスに覆われてきた。
4/30 テントを出る。朝は晴れていた。 |
4/30 半分雪をかぶった五竜山荘。昨日は遠見尾根から登ってきた客はいないはず。 |
G0に達したときにはすっかりガスの中であった。ガスで先の様子が見えないこともあり、ザイルを出してG0を越える。G2の登りは大して急ではなかったのでザイルを出さなかったが、ピーク付近ではザイルを出した。G2で五竜山荘から2時間近く登ってきたこともあり、ここが五竜岳山頂ではないかと考えるが、看板等は見当たらず、ガスのためこれから下る東谷山尾根も見当たらない。休んでいる間に一瞬ガスが切れてさらに高いところが見えた。五竜岳はまだ先とわかりまたガスの中五竜岳へ出発した。
4/30 五竜岳G0の登り。 |
4/30 五竜岳G2の登り。 |
急な登りののち五竜岳の頂上に達した。鎖場もあったが、鎖はすっかり雪にうもれていた。五竜岳の山頂自体は細長い平らな山頂で、標柱が1本立っているだけだった。ガスで何も見えず、KさんとHさんを待つ。
4/30 五竜岳山頂。まわりはガスで何も見えない。 |
4/30 山頂近くにライチョウがいた。 |
五竜岳山頂でひと休みし、東谷山尾根を下る。東谷山尾根は黒部川支流の東谷と餓鬼谷に挟まれた尾根で、いくつか平坦なところを数えながら末端の仙人ダムまでつづいている。名前のある山は東谷山だけであとは三角点が2つあるだけである。五竜岳山頂から×の書かれた岩の方向へ進む。ガラガラとしたあまり歩きやすくない尾根を下る。といっても北側には雪がついているので割に岩は安定している。下りの途中でライチョウを見かけた。前回は真っ白なつがいだったが、今回はだいぶ茶色の混じった1羽のライチョウだった。
4/30 岩の出た東谷山尾根の稜線を下る。 |
4/30 東谷山尾根2438m標高点へ下る。 |
2748m標高点で東寄りの尾根をとり、2438m標高点へ下る。ピラミッドの一辺のような単調な尾根を下る。下ってくると暑くなってきたので一枚脱ぐ。
下るにつれガスはどんどん濃くなる。標高2350m付近は尾根が細いためガスに巻かれていても歩けたが、その下になると尾根が平坦になり、とうとう雪面とガスの境目もわからなくなってきた。地形図上で3つ池があるあたりだ。何も特徴のない雪原で登っているのか下っているのかもわからない。周りは真っ白だが、真っ暗闇を手探りで歩くような感覚だ。典型的なホワイトアウトに陥っていた。
4/30 標高2350m付近でホワイトアウトに陥る。 |
4/30 ガスが切れないので幕営。 |
幸い気温は高く、風も弱いのでザックを下ろしてしばらく休む。まだ鞍部には達していないようなので空身で歩いてみると1分ほどで鞍部に出る。その先は新雪がナイフリッジのように積もっているが、先が見えず怖くて進めない。どうしようもないのでここに幕営することにした。
わりに平坦な斜面なので簡単に水平面を作ることができた。テントに入って飯の支度を始める。水作りが終わり、豚汁ができてきたころ、テントの外を見ると空が明るくなっていた。稜線は視界が開け、次の東谷山が見える。
4/30 幕営してから3時間ほどするとガスが晴れ、東谷山が見えた。 |
4/30 東谷山から先の2297.3m三角点峰付近の平坦地。正面の針葉樹の列に沿って進む(Mouseoverでルート表示)。 |
東谷山の先、2297.3m三角点峰付近にルートのわかりにくい平坦な台地があるので、そこまで目印を立てに行く。東谷山までは狭い稜線を行く。南側東谷側から巻けないかと思ったが、そこそこ急なので東谷山に登った方が速そうだ。東谷山へ登ると2297.3m三角点峰付近の平坦地が見える。しばらく稜線伝いに下り、台地に出ると針葉樹が線状に並んでいた。地図を見るとこの針葉樹の線に沿って出たあたりが東谷山尾根の続きのようだ。読みは合っていて、針葉樹の線が終わり、2297.3m三角点峰横の小ピークを越えて雪原の端まで歩くとこの先の稜線を見下ろせるところに来た。
4/30 2297.3m三角点峰横の小ピークを越えて雪原の端まで歩くとこの先の稜線を見下ろせるところに来た。 |
4/30 偵察を終え、幕営地へ戻る。 |
ここで幕営地に引き返す。そこら辺の木の枝を折って雪面に挿し、要所要所で赤布をつけながら歩く。行きは地図を見ながらだったので50分ほどかかったが、帰りは40分ほどでテントに帰れた。ときどき強い風が吹いたり、北側の餓鬼沢側にガスが舞ったりしたが容易にテントに帰りつけた。
この日の晩は突発的に風が強く吹き、少々寒かった。また出発時にタオルを落としたらしく、この日以降タオルを使えなかった。