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2010年春 - 北アルプス・五竜岳〜剱岳[2/3]


2010年4月29日(木・祝)〜5月4日(火・祝)
場所
長野県北安曇郡白馬村・大町市・富山県黒部市(旧・下新川郡宇奈月町)・中新川郡上市町
ルート
4月28日
新宿=松本(泊)
4月29日
松本=大町=神城…白馬五竜エスカルプラザ=アルプス平=地蔵の頭…小遠見山…五竜山荘(泊)
4月30日
五竜山荘…五竜岳…東谷山東コル2320m(泊)
5月1日
東谷山東コル2320m…東谷山…東谷山尾根…仙人ダム(泊)
5月2日
仙人ダム…雲切尾根…南仙人山…仙人池…仙人山…池の平小屋(泊)
5月3日
池の平小屋…池ノ平山…小窓…小窓ノ王基部…三ノ窓…池ノ谷ガリー…池ノ谷乗越…長次郎頭…剱岳本峰(泊)
5月4日
剱岳本峰…早月尾根…馬場島=富山駅
参加者
K、H、中山
参考文献

3日目

2010年5月1日(土) 晴れ

東谷山東コル2320m…東谷山…東谷山尾根…仙人ダム(泊)

コースタイム
東谷山尾根2350m三ツ池上3:31起床
6:04
東谷山6:24
東谷山尾根2290m台地西端8:09
8:20
東谷山尾根2001m標高点7:35
東谷山尾根1780m鞍部9:18
9:40
東谷山尾根1824m標高点10:10
東谷山尾根1771.6m三角点10:23
東谷山尾根1647m標高点11:00
11:27
東谷山尾根1314m標高点12:39
13:00
東谷山尾根1109m標高点13:55
14:15
東谷山尾根1010m送電線鉄塔14:30
14:40
黒部川仙人ダム15:10
20:00就寝

 この日は東谷山尾根を下り、黒部川にかかる仙人ダムまで。

 昨日偵察した東谷山を通り、2297.3m三角点峰付近の台地へ至る。幕場を出発したときはガスが出ていたが、台地から下り始めるあたりでは青空が見え、日差しが強くなってきた。

東谷山
5/1 東谷山へ登る。背後には五竜岳が雲の合間に見え隠れする。
東谷山
5/1 東谷山から2297.3m三角点峰付近の台地を見下ろす(Mouseoverでルート表示)。
2297.3m三角点峰付近
5/1 2297.3m三角点峰付近の雪原を歩く。
地蔵の頭
5/1 2297.3m三角点峰付近台地から先の尾根を見下ろす。

 2297.3m三角点峰付近の台地から2001m標高点まではほぼ直線の急な下りでわかりやすい。南側東谷側に雪が積もっており見通しがある。下って一つピークを越えて樹林帯に入ってから2001m標高点に出る。2001m標高点も展望があるのだが、独立峰みたいになっており下る尾根がはっきりしない上、手前に樹林帯が茂っており下りだしの場所が分からない。誤って北西に伸びる尾根を下るが、10mほど下ってから気づき、登り返してトラバース。どこも急な斜面になっているので、どこから下るのかよく分からないが、ザイルを出して下れるところを下った。出たところは稜線の西寄りのルンゼであった。このルンゼはヤブもなく雪面が続いていたため、このまま下る。

2001m標高点
5/1 2001m標高点からの眺め。手前の木が邪魔で尾根が分からない。
2001m標高点
5/1 2001m標高点からの下り。餓鬼谷支流のルンゼを下る。

 標高1800m付近まで下るが、餓鬼谷支流の源頭は険しくトラバースは難しそうなので稜線へ登り返す。かなり急で息が上がった。稜線からぐるり回って1824m標高点手前のコルで一本とる。西側に剱岳が見えた。休むと少し寒い。

1824m標高点手前のコル
5/1 1824m標高点手前のコル付近で休む。
1771.6m三角点峰
5/1 右手に1771.6m三角点峰を見ながら左へ向かう。このあたりは平らで迷いやすい。

 ここから1824m標高点、1771.6m三角点峰を越えて1647m標高点まで下る。概して平坦な尾根で特に1771.6m三角点峰から1647m標高点まではなだらかで小ピークがあちこちにあるため現在地がつかみにくい。

 1824m標高点を越えても細かいピークがいくつかあり、1824m標高点は正確にわからなかった。そのうち緩い下りになって1771.6m三角点峰が見えた。三角点峰の左側の山との間のコルを越えて急な斜面を下る。このあとはできるだけ西側の台地の端に沿いながら下る。東側を歩くと東谷へ下る尾根へ引き込まれてしまうので注意して歩く。1647m標高点のあたりでちょうど台地の末端になり、そこで雪原が終わる。その先は笹などのヤブがつづいている。そこでひと休み。

1647m標高点
5/1 1647m標高点付近の台地へ下る。
1647m標高点
5/1 1647m標高点からヤブの尾根を下る。

 正面にはガンドウ尾根、雲切谷、雲切尾根、仙人谷、北仙人山に登る尾根と山ひだが並んでいる。計画では右端の北仙人山に登る尾根になっているが、黒い部分も見え、雪は少なさそうだ。代わりに雪の残る雲切尾根、仙人谷が魅力的だ。ただし仙人谷はあとで滝が見えたので雲切尾根を登ることにした。

仙人ダム
5/1 仙人ダムが見えた。
1647m標高点
5/1 イワウチワが咲いていた。

 1647m標高点からは枝尾根がいくつも分かれ、道がわかりにくい。1550m付近で黒部川側の枝尾根に引き込まれる。1314m標高点でひと休みした後、1200m付近で今度は東谷側の枝尾根に引き込まれる。ときどき仙人ダムが見えるのでその位置を参考にしながら尾根を探し歩く。1109m標高点あたりはイワウチワとカタクリがあちこちに見られた。アイゼンをつけたままだったので木をまたぐときに合羽のズボンを破いてしまった。私はアイゼンの歩行が苦手でだいぶ穴を開けている。

1109m標高点
5/1 1109m標高点で一休み。
送電線塔
5/1 黒部第四発電所の送電線塔。

 1109m標高点から尾根を少し下ると送電線塔に出た。黒部第四発電所から街まで通じる送電線だ。黒部川の上流側に黒部第四ダムから導水し地下で発電を行っている黒部第四発電所が見えた。こんな山奥のしかも山の中に発電所をつくるとは昔の人はかくも偉大なものかと畏敬の念を感じた。

黒部第四発電所
5/1 地下にある黒部第四発電所が見えた。
雲切尾根
5/1 明日登る雲切尾根(Mouseoverでルート表示)。

 送電線塔からの下りは南側にハシゴがあったが、それはハズレでハシゴの下で道がなくなってしまった。正解は北側で急だがところどころ土留めの階段と足掛けがあった。下りきると雪の溜まった日電歩道で仙人ダムの少し上流側であった。

送電線塔
5/1 送電線塔から下る。管理用の道があるが、あまりよくない。
日電歩道
5/1 日電歩道に幕営。

 日電歩道の上下流を探索するが、適当な幕営地がなく、送電線塔から下り着いたあたりで幕営することにした。幸い雪がたまっており、少し歩くと水も出ていた。明日は雲切尾根を登るが、ちょうど雲切谷から押し出されたデブリが黒部川にスノーブリッジを形成しており、渡れそうだ。Kさんが日電歩道に咲いていたフキノトウを味噌で炒めてフキノトウ味噌にしてくれ酒が進んだ。夜は仙人ダムの灯りが湖面に映り幻想的であった。

4日目

2010年5月2日(日) 快晴

仙人ダム…雲切尾根…南仙人山…仙人池…仙人山…池の平小屋(泊)

コースタイム
黒部川仙人ダム3:19起床
5:35
雲切尾根南斜面1300m7:25
7:45
雲切尾根1515m8:57
9:15
雲切尾根1629m標高点9:31
雲切尾根1800m10:14
10:27
雲切尾根2035m11:21
12:05
南仙人山2173.1三角点峰12:30
仙人池13:00
13:30
仙人山13:58
14:00
池の平小屋14:25
19:50就寝

 今日は雲切尾根を登り、南仙人山、仙人山を経由して池の平小屋まで。

 出発してすぐに雲切谷のデブリで形成された、黒部川にかかるスノーブリッジを渡る。ところどころ割れ目があるが、うまく迂回して無事黒部川を越えられた。少しだけ雪渓を登り、雲切尾根に取り付く。

スノーブリッジ
5/2 雲切谷のデブリで形成されたスノーブリッジで黒部川を渡る。
雲切尾根
5/2 雲切尾根南斜面の雪面を登る。

 尾根の末端から取り付くと潅木のヤブ。積雪を背負ってたわみながら生えているので、登るのに逆巻きで登りにくい。それでもしばらく歩くと雪面に出た。雪面はしばらく南側斜面についているので稜線に上がらず南側斜面を登る。標高1300m付近の広いところから急斜面を登り、稜線に上がる。急な上、雪面のあちこちに穴が開いているのでザイルを出して上がる。

標高1300m付近
5/2 標高1300m付近の広い雪面から稜線に上がる。
雲切尾根
5/2 雪とヤブの稜線を登る。

 細い稜線に出たらヤブ混じりの雪面を登る。途中、岩まで出てきてそこをトップで登ったのだが、だいぶ難儀した。もっともKさんが13年前に登ったときは雪が少なく、ヤブばかりだったそうだ。そこはHさんが雲切谷よりの雪面を登り、なぜかそこにあったハシゴからまた雪面を登っていた。地形図を見る限りこんなところに登山道なんかないはずだが、とみんなで話す。後にそれは雲切新道という2007年に拓かれた道ということがわかった(佐伯克美.仙人池・雲切新道.大特集 剱岳と新田次郎 第三部「コースガイド編」.山と渓谷.No.890. June. 2009. p80.)。

雲切新道
5/2 雲切新道のハシゴがあった。
標高1600m付近
5/2 標高1600m付近を登る。背後には五竜岳と昨日下った東谷山尾根。

 ヤブを越えると稜線は雪面に覆われる。一つシュルンドを越えてなだらかになってきた1515m付近で一本。振り返ると昨日下ってきた東谷山尾根が五竜岳までよく見える。唐松岳や鹿島槍ヶ岳、登るにつれ白馬岳も見えてきた。雪面を登っていくと1629m標高点。そこから少し下って南仙人山2173.1m三角点峰へ登る。途中、熊のような動物が下る足跡を見かけ、1時間以上並行して歩いた。また仙人谷に仙人湯の煙が見えたが、仙人湯小屋は見えなかった。

1629m標高点
5/2 1629m標高点で雲切尾根は左に曲がる。
雲切尾根
5/2 雲切尾根の雪の斜面を登る。見た目より急で単調。

 1515m付近からなだらかな広い尾根を登ること3時間と少しで南仙人山2173.1m三角点峰へ登り着いた。そこにはガンドウ尾根を登ったトレースがあった。誰か私たち意外にも黒部横断を行っているパーティーがいるらしい。少なくとも五竜岳、東谷山尾根、仙人ダムいずれでも登山者には会わなかったので鹿島槍ヶ岳から牛首尾根経由で黒部川に下り、ガンドウ尾根を登ったのだろう。3日ぶりのトレースだが、先を越されたようでなんとなくつまらない。

南仙人山2173.1m三角点峰
5/2 南仙人山2173.1m三角点峰でガンドウ尾根と合流。
仙人池
5/2 仙人池にはテントひと張。池は雪の下で、小屋は大部分が雪に埋まっていた。

 南仙人山からは小ピークを2つ越える。広い尾根が多く、また前方に剱岳が大きく見えるので何枚も写真を撮って歩いた。歩いてきた五竜岳もだいぶ遠い。仙人池に着くと池はすっかり雪に覆われ、小屋も屋根の一部しか見えなかった。2人組パーティーが写真を撮るために昨日からテントを張って滞在していた。聞くと昨日ガンドウ尾根から来たパーティーがいるとか。

池の平小屋
5/2 仙人山から池の平小屋のコルへ下る。正面は池ノ平山。
池の平小屋
5/2 池の平小屋のコルを整地し幕営。

 このあと仙人山に登り、池の平小屋のコルへ下った。池の平小屋はすっかり雪に覆われていて影も形もなかった。コルの平坦なところを掘削して水平面を作り、幕営した。正面の池ノ平山や北側の小黒部谷にはシュプールが伸びており、だいぶスキーヤーが入山しているようだった。テントを立てた後、池ノ平山を見ているとスキーヤーが5人ほど滑ってベースキャンプと思われる平の池のテントへ帰っていった。

 夕方には剱岳山頂が雲で一時かげったが、気温は高く快適な夜だった。


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