山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>北アルプス・五竜岳〜剱岳[3/3]
北アルプス・五竜岳〜剱岳[2/3]←|→千葉県・九十九里町真亀〜旭市飯岡
5日目 |
2010年5月3日(月・祝) 快晴 |
池の平小屋…池ノ平山…小窓…小窓ノ王基部…三ノ窓…池ノ谷ガリー…池ノ谷乗越…長次郎頭…剱岳本峰(泊)
池の平小屋 | 3:00起床 |
5:10 | |
池の平山 | 6:30 |
2500m懸垂下降 | 6:50 |
7:40 | |
小窓 | 9:00 |
9:15 | |
小窓尾根合流点 | 9:56 |
10:04 | |
小窓ノ王基部 | 10:51 |
三ノ窓 | 11:30 |
11:53 | |
池ノ谷乗越 | 12:25 |
12:54 | |
長次郎のコル | 13:22 |
13:35 | |
剱岳 | 14:21 |
20:50就寝 |
この日は池の平小屋から剱岳山頂まで。
テントをたたむときには剱岳の左肩に下弦の月が残っていた。朝一番で池ノ平山に登る。500mの急な登りだ。
5/3 テントをたたむときには剱岳の左肩に下弦の月が残っていた。 |
5/3 池ノ平山の登り。 |
しばらく登ると昨日平の池へ下っていたスキーヤーのシュプールにぶつかる。朝のうちで雪も締まっているし、ジグザグの方が歩きやすいのでシュプールをうまく使って歩く。
5/3 仙人山から朝日が昇る。今日も天気がよさそうだ。 |
5/3 池ノ平山山頂付近。割と平ら。 |
池の平小屋から1時間20分で池ノ平山。池ノ平山は東西に長く、わりに平坦な山頂である。正面に小窓尾根から小窓ノ王に連なる稜線が屏風のように連なっている。鞍部の小窓は手前の稜線で見えない。しばらく下ると懸垂下降1箇所が出てくる。残置してあるシュリンゲを使って下降。Kさんと私が下るが、Hさんは池ノ平山の登りから遅れていてなかなか姿を現さない。そのうちブナクラ谷から縦走してきたという3人パーティーがやってきて先に下っていった。白ひげの目立つ人を含むパーティーで曰く単独の人なんて見ていないとか。待つこと50分、ようやくHさんが姿を現し、懸垂下降を終えた。
5/3 小窓ノ王をバックに懸垂下降。 |
5/3 もう2回懸垂下降で小窓へ降り立つ。 |
そのあと急な斜面が続くので私とKさんでザイルを結んでコンテで歩く。懸垂下降ポイントに出たらすでに3人パーティーが稜線沿いを懸垂下降していたので、我々は小窓雪渓側から下った。いったん岩の末端に生えた潅木でピッチを切り、もう1本懸垂下降。その先は私だけ確保されながらバックステップで下り、Kさん、Hさんはフリーで下る。小窓に下り立つころには3人パーティーを抜き返していた。
5/3 小窓から池ノ平山を振り返る。 |
5/3 小窓から小窓尾根へ登り返す。 |
小窓で一休み。小窓には雪を均してテントを張ったあとが5張りほどあり、休む場所は広い。急登で遅れ気味のHさんから水1リットル、酒1リットルを預かる。
小窓から小窓尾根へ上がる。トレースがついているので辿るだけだが、けっこう急である。稜線にたどり着いたところで軽く休む。日差しが強く、日焼け止めを塗り直す。ここからは稜線伝って小窓ノ王まで歩く。正面の山をゆっくり登っていると後ろから「アワワワ」という猿の鳴き声のような呼び声が聞こえた。どうもどこかの山岳会のコールのようだったが、一瞬こんな雪山に猿が?と驚いてしまった。
5/3 小窓ノ王手前のピラミッドみたいな形の山を登る。 |
5/3 小窓ノ王基部から三ノ窓へ下る。 |
小窓ノ王手前のピラミッドみたいな形の山を登り、Kさんとザイルを結んでいると、後ろから小窓尾根を登ってきたパーティーに追いつかれた。すれ違いざま「また会いましたね」と言われて気づいた。昨年の年末にも馬場島で会ったJECCのYさんだった。KさんとHさんは先程の「アワワワ」コールがYさんによるものと気づいていたみたいで、それは都庁山岳部のコールだった。知らなかった。Yさんたちは馬場島に車をおいて小窓尾根を登り、剱岳本峰を登ったあと、スキーで馬場島に戻るようだった。
ピラミッドみたいな形の山を登り、小窓ノ王の基部に達する。そこから池ノ谷側を三ノ窓へ下る。雪の状態がよく、前に小窓尾根に来た時のように懸垂下降でなく、バックステップで下れた。とはいえ私は下手なのでKさんに確保されながらスタカットで下る。
5/3 小窓ノ王基部の池ノ谷側をトラバース。 |
5/3 三ノ窓。チンネを登っている人がいた。 |
三ノ窓に着くとそこにはテントが6張立っていた。テント跡の平坦地も含めれば一時は最大10張は越えていたのではないかと思う。チンネよりの大きなテントには人が集まっていてチンネを眺めていた。よく見るとチンネ左稜線のT5上に小さな登攀者が見えた。おそらくテントの人たちと同じ山岳会の人なのだろう。テントにはJCCと書かれていた。
三ノ窓からは五竜岳と鹿島槍ヶ岳がよく見えた。黒部川をはさんで五竜岳は遠く、あの頂上から歩いてきたかと思うと感慨深い。記念写真を撮った。
5/3 池ノ谷ガリーの登り。 |
5/3 池ノ谷乗越から池ノ谷ガリーを振り返る。北方稜線がよく見える。 |
三ノ窓から池ノ谷ガリーを登る。夏はガラガラの岩場、春はカチカチのクラスト状の雪面だが、今年は登山者が多くトレースがしっかりしていて階段状だ。一昨年は滑落の恐怖に怯えながら登ったが、今回はかかとまで踏めるので息を継ぎながら歩けるし、キックステップもさほど強くなくていい。三ノ窓から池ノ谷乗越まで30分ほどで登れてしまった。
池ノ谷乗越で先行したYさんたちと休む。ここから長次郎の頭、長次郎のコルを越えて剱岳本峰まで歩く。小ピークをいくつか越えるが、稜線のてっぺんに沿ってトレースが付けられておりバランスを崩すと池ノ谷、長次郎谷いずれかに滑落しそうでこわい。風が弱くて助かった。
5/3 八ツ峰を背景に長次郎の頭へ向かう(Mouseoverで地名表示)。 |
5/3 長次郎の頭を越えれば剱岳本峰は近い。 |
長次郎の頭から長次郎谷を回るように急な道を下ると長次郎のコル。剱岳本峰から下ってきたパーティーとYさんたちが休んでいた。Yさんたちはザックをここに置いて本峰を往復し、長次郎谷をスキーで下るようだった。のぞき込んだ長次郎谷はけっこう急で、ゲレンデスキーしかしたことのない私には危なさそうだった。でもシュプールはたくさんあり、この好天の連休で相当数のスキーヤーが下っているようだった。
5/3 長次郎のコルから本峰への登り。 |
5/3 剱岳本峰頂上。ほこらは雪の下のようだ。 |
長次郎のコルから最後の急斜面を登る。滑落しそうな私のためにザイル出して登る。登りきったあたりでザイルをたぐっていたら本峰を往復してきたYさんたちと会った。挨拶して記念撮影して帰る。そこから2段ほど丘みたいな斜面を登り、剱岳本峰山頂に着いた。
山頂は細長く、広くもなく、ギザギザの一峰で山頂という感じがしない。加えて山頂のほこらも見当たらない。天気はよく、西側馬場島側にガスが沸き起こっているものの、東側は展望が望めた。北から南にかけて、白馬岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、燕岳、常念岳、笠ヶ岳、薬師岳まで展望できた。槍穂高は立山に隠れてしまいよく分からなかった。南側を見れば手前から別山尾根、剱沢、別山、天狗平には雪の大谷で有名な立山黒部アルペンルートの曲がりくねったバス道路が見えた。
5/3 別山尾根方面を眺める(Mouseoverで地名表示)。 |
5/3 剱岳本峰頂上にて五竜岳を背景に筆者。 |
時間もいいころなので山頂に幕営する。少し長次郎谷側に戻ったあたりを整地しテントを張った。西側から風が出てきて日差しがあっても寒かった。夜は剱沢のテント村の灯りと室堂平の灯りが美しかった。
6日目 |
2010年5月4日(火・祝) ガスのちくもり |
剱岳本峰…早月尾根…馬場島=富山駅
剱岳 | 3:00起床 |
5:15 | |
早月尾根2605m | 7:15 |
7:31 | |
早月小屋 | 8:06 |
8:43 | |
松尾平 | 10:03 |
10:10 | |
馬場島 | 10:35 |
11:18 |
この日は早月尾根を馬場島まで下るだけ。1日くもりだった。交通の便のよい黒四ダムに下る案もあったが、黒部横断という目的を考えたとき黒四ダムに戻るのは変じゃないかということで馬場島に下ることにする。
5/4 早月尾根を下る。ガスが濃く、迷いそうになる。 |
5/4 早月尾根には下山者がたくさんいた。 |
視界のない、西風の吹く稜線を下り、別山尾根と分かれ早月尾根に入る。ガスの中、トレースを見失わないように慎重に下る。あとで聞いた話だが、5月1日に早月尾根2880m付近で表層雪崩があり、1人が滑落、死亡したそうだ。Kさんと私がザイルをつなぎ、コンテで下る。Hさんはそれと前後しながら下った。標高2700m付近で珍しく、滑空するライチョウを見かけた。残念ながら着地地点は分からずカメラに収めることはできなかった。
2605m付近で一休み。振り返ると続々と山頂から登山者が下ってくる。昨晩はどこに泊まったのだろう。朝早く長次郎のコルか池ノ谷乗越を出発したのだろうか。登るパーティーも1パーティーいた。
5/4 早月小屋から下はガスがとれた。 |
5/4 馬場島にはサクラが咲いていた。 |
早月小屋にたどり着くとテントはひとつだけ。5連休3日目で1日目2日目は快晴だったので目的を果たしてみんな下ったのだろう。私は靴擦れができはじめたのでばんそうこうを当てた。あとは各自勝手に馬場島に下った。私だけ松尾平経由で下りしかも迷ってしまった。KさんとHさんは松尾平を経由せず直接白萩川に下り、林道を歩いてきた。白萩川にはフキノトウがたくさん咲いていたらしい。雪の状態がよかったので早月小屋から馬場島まで2時間足らずで下れた。馬場島に下り着くと、Kさんが荷物の整理をしていたので私も整えた。馬場島にはキャンプをしている家族連れが多かった。
馬場島からは富山へ直接タクシーで出た。料金は12,000円のところ、10,500円ということだった。富山に出て観音湯で一風呂浴び、普通列車で越後湯沢に出てから新幹線で帰京した。
黒部横断という5泊6日の長旅を無事こなすことができてよかった。今年は残雪が多く、5月の連休も天気がよかったため、五竜岳から剱岳まで達することができた。登攀要素が少ないからかKさん、Hさんは少々不満そうだったが、登攀が苦手な私にはちょうど良かった。
以下、黒部横断にあたってトレースのなかった東谷山尾根と雲切尾根について気づいたこと。