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2009年秋 - 草津・長笹川ガラン谷


2009年10月3日(土)〜4日(日)
場所
群馬県吾妻郡六合村
ルート
10月2日
新座=道の駅六合(泊)
10月3日
道の駅六合=白根開善学校上林道ゲート…馬止め…取水堰…湯ノ沢出合…日向ガラン・日陰ガラン…白水沢出合(泊)
10月4日
白水沢出合…草津峠…鉢山…赤石山…ダン沢の頭…オッタテ峠…一ッ石…馬止め…白根開善学校上林道ゲート
参加者
K、中山、I
参考文献

はじめに

 前回剱岳に行って以来、休日は主任試験の勉強にあてるため、ひと月山をお休みしていた。9月27日日曜日に主任試験が終わり、晴れて山を再開した。10月最初の週ということで沢納めにいくつかの沢を探した。片品川中ノ岐沢北岐沢や薄根川川場谷、清津川サゴイ沢など行ってみたい沢はいくつかあったが、草津の長笹川ガラン谷に決めた。

 長笹川ガラン谷は上信国境、草津と志賀高原の間にある横手山に端を発し、長笹川、白砂川、吾妻川を経て利根川に流れている。流域界は横手山から赤石山を経てオッタテ峰までの間であり、この分水嶺は中央分水嶺でもあり、上信国境でもある。なおガラン谷の途中に湯ノ沢という枝沢があり、ガラン谷をGoogleで検索すると湯ノ沢の野湯の記事が多い。

 ちょうどカエデ、ナナカマド、ウルシ、ツツジなどが紅葉し始めており、山は秋の始まりであった。水の流れの上に赤いモミジという配置が随所に現れ、実に美しいものであった。また上流部では硫黄分が沢床に沈殿し、白く輝く滝が見られ、色彩豊かな沢であった。天気予報では土曜日は雨の予報だったが、雨は朝9時頃あがり、それ以降はくもりで雨が降ることはなかった。また気温も高く、10月の沢登りにしては暖かく快適な遡行であった。

0日目

2009年10月2日(金) 雨

新座=道の駅六合(泊)

 23時に新座に集合し、ガラン谷へ向かう。渋川ICで関越道をおり、草津方面へ向かう。日付変わって1時頃からラジオでは2016年のオリンピック開催候補地に立候補していた東京が落選したことを伝えていた。

 道の駅六合に到着。今夜は雨が降りそうなので小屋の下でテントを張って寝ることにする。

1日目

2009年10月3日(土) 雨のちくもり

道の駅六合=白根開善学校上林道ゲート…馬止め…取水堰…湯ノ沢出合…日向ガラン・日陰ガラン…白水沢出合(泊)

コースタイム
道の駅六合6:30起床
7:30
白根開善学校上林道ゲート8:10
9:10
馬止め9:48
車道終点10:00
キノコ沢出合取水堰
(入渓準備)
10:14
10:38
惣吉地蔵登山道11:45
12:05
湯ノ沢出合12:32
ピーコック遭難碑12:35
日向ガラン・
日陰ガラン上
13:20
13:32
黒ゼン通過13:46
14:02
宮手沢出合14:07
白沢出合14:18
白水沢出合15:00
20:00就寝

 6:30、明るくなってから起床。外は小雨が降っていた。車で出発し、小倉集落へ通じる道を上がる。小倉集落の上の白根開善学校をすぎてしばらくで林道ゲート。ゲートは閉まっていたのでここで車を降りて出発準備。が、準備していると雨が強くなってきた。車に逃げ込み、雨宿り。雨がやむまで仮眠。9時頃に雨が上がってきたので再出発。

 砂利道の林道を歩く。林道はさほど荒れておらず、ゲートさえ開いていれば通行は容易である。40分で馬止め。馬止めからは熊倉発電所ガラン取水口へ通じる道とオッタテ峠へ登る道とに分かれる。前者はこれからたどる車道で、後者は帰りに使う登山道である。この車道はものの1km足らずだが、地形図にもエアリアマップにも載っていない。ガラン取水口へ車道を歩いていくと右手にヤブっぽい道があった。これが惣吉地蔵へ通じる登山道だろうか。目の前に立派な車道があるので車道を行く。車道終点からは木で土留めされた階段が続き、15分ほどで取水堰についた。

 取水堰を右岸に渡り、河床におりたつ。硫黄分が多いからか河原の石は朱色である。そこの河原で入渓準備。ガラン谷は関東周辺の沢によれば特別な登攀用具の必要はないとのことであるが、思いもよらぬ滝があるかもしれないし、巻きに失敗する可能性もあるのでハーネス等装着する。堰から上流側を見ると左岸から滝をかけて枝沢が落ちてきていた。どうやらそれがキノコ沢のようだ。前日から降っていた雨の割に水量はさほど多くない。草津の近くなので水が酸っぱいかと思ったが、別に味は普通だった。でも腹を下しても困るので水はのみ込まなかった。

取水堰
10/3 取水堰から河原に下りたところ。奥の滝はキノコ沢。
幅広滝
10/3 8m幅広滝。左から巻く。

 歩き始めてすぐキノコ沢の出合を過ぎ、平凡な河原を歩く。見える稜線も低く、このまま1時間くらいで稜線にたどり着きそうだ。すぐ8m幅広く水量も多く見事な滝。左から巻く。左の岩壁の下の土の斜面を登る。雨の後だけあって足下は不安定である。木をつかみながら高巻き、滝の上に出た。

 8m滝の先はまた平凡な赤い河原。10分ほどで左からアマミズ沢が合流する。8m滝だけが特殊だったのか、その後は平凡な河原が続く。沢はくねくねと曲がっているが、目立ったものはなく現在地はよく分からない。ときどき硫化水素臭が鼻をつくが、さほど強い臭いではない。やがて大きな岩がゴロゴロした河原になり、ひとしきり登ると左岸に白ザレを認め、平凡な河原になる。8m滝から1時間ほどなのでここで一本とる。

赤い河原
10/3 赤い河原を歩く。
惣吉地蔵道
10/3 惣吉地蔵からの道。目立たないけど看板がある(赤矢印)

 平凡な河原だが、右岸近くに白い硫黄が溜まった水たまりがあった。上流からの硫黄が溜まったのだろうか。地図を持って現在地確認にやっきになっていると左岸に道のようなものが見られた。よく見ると看板もある。沢を渡って看板を見に行くとここが惣吉地蔵からの道の合流点であった。偶然道の合流点で休んでいたことになる。看板の上流川にはガラン沢、横手山とあった。横手山まではずっと沢登りになるが、登山ルートという認識なのだろうか。

 休んだ河原から少し上流で川の色が2色に分かれたところがあった。河原全体は酸化鉄のような赤い石ころで覆われているのだが、右岸は幅2mほどの帯状に白いシルトのようなものが沈殿している。かなり下流の瀬までこれらは混ざらずに2色を保っていた。不思議な河原だ。

 惣吉地蔵登山道からしばらくで峠ノ沢出合。峠ノ沢はヤブが覆っていて遡行しにくそうだ。

河原
10/3 河原の中に白い部分と赤い部分がある。
湯ノ沢出合
10/3 湯ノ沢出合。明治大学ワンダーフォーゲル部の看板がある。

 さらに峠の沢出合から15分で湯ノ沢出合。関東周辺の沢には出合付近にプレートだらけとあるが、木の陰に隠れているのかそんなにプレートは見られなかった。出合にわずかに上流側に見えた明治大学ワンダーフォーゲル部の昭和59年8月30日のプレートが目立っていた。湯ノ沢の温泉を目指す人はここから湯ノ沢の遡行を行なうのだろう。

 湯ノ沢出合から沢は右に曲がり、右手に黒い岩が現れる。この岩にイギリスの登山家ピーコック氏の遭難碑が埋め込まれていた。1938年1月に遭難死したということだから山スキーで谷に迷い込んでしまったのだろう。横手山からはゴフク平、ハギワ平と平らな尾根がガラン沢と長笹川の間に伸びている。草津に下りるつもりでこの尾根を下ってしまったら誤ってガラン沢に出てしまうのだろう。

 ピーコック遭難碑からしばらく赤い河原を歩いていくと正面奥に白い岩峰が見える。それが日向ガランのようだ。巨岩帯の手前には岩から水が流れ出すところがあり、水の流れの中に苔が生えていた。周囲は赤い岩だし、温泉かと思ったが冷たかった。

ピーコック遭難碑
10/3 ピーコック遭難碑の横を通り過ぎる。奥には日向ガラン。
巨岩帯
10/3 日向ガラン・日陰ガランの巨岩帯。意外に難しくない。

 日向ガラン・日陰ガランの部分は巨岩帯である。アリンコになった気分で岩の隙間の登れるところを探して登っていく。幸い登攀不可能な岩はなく、どこかしら登るところがある。沢が右に曲がるあたりで私は沢沿いを、KさんとIさんは左岸を高巻きした。私は巨岩帯を出るまであともう一歩のところまで来たのだが、泳がないと行けない淵があり、あきらめて来た道を引き返した。しかし、巨岩帯だけあってなかなか巻き道にあがれない。結局Kさん、Iさんと別れたあたりまでもどって登り返した。沢に戻るところには岩屋があった。岩屋は資材置きになっているのかブルーシートと木組みが残っていた。それなりに広いが、水平でないので泊まるには向いていないかもしれない。

岩屋
10/3 日向ガラン・日陰ガランの巨岩帯の終わりを右から巻くと岩屋がある。
黒ゼン
10/3 黒ゼン。一枚岩で直登は難しい。

 沢に出たあたりで一休み。ここからはまた平凡な河原歩き。赤くなり始めた木々を見ながら歩く。やがて黒ゼンに出る。黒ゼンは2条6mの滝。一枚岩で直登は難しい。少し戻って左手のガレを少し登り、そこから一枚岩のバンドをトラバース、滝の落ち口に出た。落ち口に下りるところが滝の下まで転がり落ちそうでちょっと怖い。2条6m滝の上には釜があり、左からへつる。釜の上は2段8mの滝になっており、これは簡単に登れた。

黒ゼン
10/3 黒ゼンを左のもろいガレから巻く。
黒ゼン
10/3 黒ゼン上の滝。釜を左から巻き、奥の2つの滝を登る。

 その後、宮手沢を左に分けると谷の幅は狭くなる。とはいえ登るのが難しいゴルジュではなく、これまでと同様の河原である。10分ほどで左から白沢が入ってくるのに出会う。白沢出合を過ぎても川幅の狭い沢が続く。黒い一枚岩に赤や黄色の落ち葉がちりばめられているようすは漆塗りの蒔絵か螺鈿を見ているようで、自然の造形の美しさに感嘆する。白沢から10分ほどで右岸に真っ黒の壁があった。そこから大岩のごろごろ転がる河原を通過し、また平凡な河原。ときどき正面西側に雲から太陽が顔を出し、水面がまぶしく輝いていた。ナメ滝を2つ越えると平坦な白水沢出合についた。

蒔絵のよう
10/3 白沢を過ぎると川幅が狭くなる。黒い岩に赤や黄色の落ち葉がはりつき蒔絵のようだ。
岩壁
10/3 黒い岩壁の横を通る。

 時刻は15時。行動を停止してもいい時間だ。一方で明日の行程は稜線まで約3時間、稜線に出てから下山まで6時間30分と非常に長い。明日の行程を考えると今日中にできるだけ先に進んでおきたい。が、白水沢出合には右岸に幕営適地があり、これ以上の適地はこの先あるかどうかわからない。そこで今日はこの白水沢出合で幕営することにした。水はガラン谷本流ではなく白水沢の水を飲用水とした。

ナメ滝
10/3 ナメ滝を越える。
白水沢出合
10/3 白水沢出合で幕営。

 薪を集め、幕営適地を整地し、飯の準備を行なう。6時頃に日が暮れ、風が吹き始めた。寒いので焚火を囲んで酒を飲む。空には夕方からうろこ雲が出てきて、夜には月明かりに照らされてぼんやりと浮かんでいた。ラジオは吾妻地方に霜注意報が発令されたことを告げていた。明日の朝は強く冷え込むに違いない。シュラフカバーだけ持ってきたKさんは不安なようすだった。20時就寝。

2日目

2009年10月4日(日) くもり

白水沢出合…草津峠…鉢山…赤石山…ダン沢の頭…オッタテ峠…一ッ石…馬止め…白根開善学校上林道ゲート

コースタイム
白水沢出合4:45起床
6:15
草沢出合6:29
熊沢出合7:06
鉢山沢出合7:15
横手裏沢・湯ノ沢二俣7:50
8:00
草津峠8:37
硯川分岐8:43
9:09
鉢山9:24
鉢山・赤石山最低コル9:57
10:08
赤石山10:55
11:14
湯ノ沢の頭11:47
ダン沢の頭12:20
12:42
オッタテ峠13:08
一ッ石13:26
馬止め14:00
白根開善学校上林道ゲート14:30
14:40

 4時半に起床する予定が、目覚ましを仕掛けた私が全く気づかず4:45にIさんが起きる。朝は寒かったが、霜が降りるほどではなく、笹に露がついている程度だった。Kさんも安眠したようだった。

 外は5時頃から明るい。テントの中で昨日のご飯の残りを食べ、ラーメン1袋を3人で分けて食べる。テントをたたんで6:15に出発。

 河床が赤い河原を登っていく。河床が赤いということは酸化鉄かなにか鉄の化合物が流れて沈殿しているのだろう。15分で草沢出合。本流も草沢もおだやかな流れだ。しかし本流は少し進むとゴルジュになっている。といっても難しいところはない。1カ所、大きな岩にはさまれた2mほどの滝があり、右の岩を登ると思うのだが、ホールドが細かく登れなかった。左からヤブを巻いた。ゴルジュの終わりのあたりで、3mほどの滝がありどうやって登るか考えるが、インゼルになっているのでもう一つの流れに沿って登った。そこからまた赤い河原を歩いていくと正面に白い壁が見えてくる。

巨岩帯
10/4 草沢出合先の巨岩帯。この滝が登れず左から巻く。
ナメ滝
10/4 ナメ滝。

 そこが熊沢出合。熊沢出合から先は水も河床も白くなってくる。淵は青く見える。途中、岩に白く湯ノ花がついたのか、まるで雪渓のかけらのように見える岩があった。石灰石でもこんなに白くないのではないだろうか。そこには志賀高原遭対協の看板が木に打ち付けられており、「あなたは遭難しています、すぐ戻って下さい」と書いてあった。沢登ってきたのに下るのかよ、と混乱するが、看板が上流側を向いていることから誤って沢を下っている人に向けてのメッセージだろう。

雪渓みたいな白い石
10/4 雪渓と見間違えた白い石。
志賀高原遭対協
10/4 志賀高原遭対協の看板。

 熊沢出合から10分で鉢山沢出合。鉢山沢出合は本流の左奥に枝沢が2段20mの滝をかけているのが見えるので分かる。鉢山沢出合から本流は谷が深く、一見するとこの先悪そうだ。しかしさほど難しいところはない。手前に青い釜を持つ2段8mの滝を左から登る。滝は水に含まれる硫黄分のためか真っ白に化粧していて美しい。

滝
10/4 鉢山沢出合を過ぎて白く美しい滝。左から登る。
倒木
10/4 白くメッキされたような倒木。

 そこから倒木があったり笹ヤブがかかったり少々荒れたところを通過すると河床いっぱいに白い硫黄が出ているところに出る。河床の石はすべて白く、倒木までも白くメッキされたようになっている。その少し先で白い河原の中に黒い水たまりがあるのを見つける。流れの澱んでいるところが黒い水たまりになっているのだが、硫化鉄化なんかだろうか。触ってみると墨汁のような液体で手に泥が残ることはなかった。でも全然温かくない。白いところと黒いところがある河原とは珍しい。

 白黒の河原の先が横手裏沢と湯ノ沢の二俣。白い硫黄らしきものは湯ノ沢から出ている。ここで一休みし、横手裏沢で水を汲む。関東周辺の沢では横手裏沢を詰めているが、今回車回収のため、馬止めに戻らなければならないので湯ノ沢から草津峠に出て赤石山を経て戻る。

横手裏沢・湯ノ沢二俣
10/4 横手裏沢・湯ノ沢二俣。左が横手裏沢、右が湯ノ沢。手前は白い河原。右岸にテントが張れそう。
倒木
10/4 湯ノ沢に入るとまず倒木くぐり。

 湯ノ沢に入るといきなり倒木で通れないところに出た。左の笹の斜面を登ろうとしたがダメで倒木の中を通り抜けた。すぐ10mほどの滝がある。傾斜は緩やかなので簡単に登れる。そのあと笹のヤブを抜けると沢は右に曲がり12mほどの滝。この滝も右手から簡単に登れる。ただ水が冷たい。そこを過ぎるとまた両岸から笹が覆いかぶさる。ふと上を見上げると「旧草津街道 →志賀高原・横手山方面」という看板が木に打ち付けられていた。どうみてもただのヤブっぽい沢にしか見えないが、昔は街道だったようだ。稜線が近そうなのだが、なかなか水も涸れず稜線にも出ない。

湯ノ沢
10/4 湯ノ沢には滝が2つかかっている。これは2つ目の滝。意外と右から簡単に登れる。
笹のトンネル
10/4 水が涸れて笹のトンネルを登る。

 また川床が白いところに出たりして笹のトンネルに入る。水はほとんどない。笹のトンネルの一番奥まったところにコンクリートで固められた堰が現れた。堰には角落しがかかっており、その先には水が溜まり、ろ格機が見えた。堰の上には鉄板が敷いてあるので中はよく見えない。とりあえずその堰の上に出ると横手山の方から道が続いているようだった。後で調べたが、どうやらこの道と水路は中電水路のようだ。横手山北側斜面に水路がひいてあり、ガラン谷支流の水を集めながら草津峠でトンネルを抜けて長野側の硯川へ抜けているそうだ。

中電水路
10/4 中電水路の堰。
階段
10/4 白ザレにつくられた階段を登る。

 人工物が出てきたところでやっと稜線かと思ったら、谷はまだ続き稜線は先だった。笹で覆われた源頭部を登り、白ザレに設置された階段を昇り、笹の中をトラバースすると草津峠に出た。峠には「この奥ガラン沢 登山道は行き止りと成ります。迷わぬ内に元に戻って下さい」とあった。そこからさらに笹ヤブの道をゆるく下ると横手山と鉢山を結ぶ登山道に出た。登山道に出たところには注意を促す看板がたくさんあり、工事用の「関係者以外立入禁止」の看板まであった。ただ登山道から見るとそこに道があることすらよく分からず、むしろ立ち入り禁止の看板がガラン谷入口を示していた。看板の注意事項はものものしいので以下に2つとも転記しよう。

草津峠

 渋峠を越える現在の車道は、昔から上州と信州の交易路であったが、危険なためこの草津峠を越える道が開かれました。しかし第2次世界大戦中は物資の輸送が中止され、荒れはてて使われなくなり、またこの奥のガラン沢は大勢の人が遭難しています。

警告

 この先は遭難多発地帯のガラン沢です。

 ガラン沢では、迷ったと思ったら沢を登って下さい。川を下って、麓の部落にたどりつくのは不可能です。本沢の水は鉱毒が入っており、飲めません。

志賀高原地区山岳遭難防止対策協会

志賀高原観光協会・志賀高原救助隊

 どちらも遭難が多いことを述べている。過去に事故がいくつかあったのだろう。沢の中にもいくつか看板があったし。関東周辺の沢では2級で特別な登攀用具の必要はないということだが、沢登りするつもりがなくて迷い込んでしまう人がいるのだろうか。

 登山道はあまり広くもなく日差しもないので少し歩いて硯川分岐で装備を解除する。幸い、硯川分岐にはベンチがあり、重宝した。天気は回復傾向にあり、日差しが暑い。硯川分岐からは長野側に40分下れば硯川のバス停。バスに乗りたくなるが、車は白根開善学校の上に置いたままなので赤石山を越えて車まで戻る。

草津峠
10/4 笹ヤブをトラバースして草津峠。
鉢山
10/4 鉢山にて現在地確認。

 運動靴に履き替え、鉢山に登る。鉢山は名前の通り鉢を逆さまにかぶせたような形の山。笹の中の木の階段の道を登る。思いのほか急な道である。登りきると平坦な鉢山山頂。エアリアマップには山頂に鉢池という池が表示されているが、ヤブが高く見えなかった。赤石山方面へ下る。下り始めると正面にこんもりした志賀山が見える。そのずっと奥にはスキー場のリフト乗り場のある山が見え、どうやら東館山のようだった。ポコポコといろんな山があり山の名前が分かりにくいが、スキー場のあるところを見ていると山の名前の判別ができる。

 刈り払われた笹の中、水の流れる道を下る。大沼池から登った来たらしい人にあった。今回の山行で初めての人である。下り着くと四十八池、大沼池への分岐。ここから赤石山への稜線は地形図には道が載っていないが、エアリアマップには忠右衛門新道という道が載っている。この忠右衛門新道を東にたどる。この先は赤石山を経てオッタテ峰まで概してなだらかな稜線が続く。距離の割に速く歩ける稜線である。

鉢山
10/4 鉢山の下りからみる赤石山(一番奥)。
大沼池
10/4 鉢山・赤石山最低鞍部から大沼池をみる。

 笹ヤブに覆われた平らな林を東へ歩く。木がまばらなので冬に山スキーしたら気持ちいいに違いない。平らなところから下ると鉢山と赤石山の最低鞍部。ちょうど大沼池が真下に見下ろせる。硫酸銅のような美しい青の水をたたえていてつい足を止めてしまう。そこからひと登りして平らな道を行く。群馬側からガスが出てきて長野側へ越えていく。幻想的で美しいが、道がないと迷いそうだ。2010m峰まで登ると景色が開け、正面に赤石山が見える。赤石山は南面に白い岩があり、手前はなだらかな斜面であった。やがてまた大沼池からの道が合流し、赤石山へ登っていく。先ほど見た白い岩の下のザレを階段で登ると赤石山であった。

 赤石山山頂は岩場で休むには少々狭い。けれど人が少ないのでその岩場で休む。はじめはくもっていたが、だんだん晴れてきて大沼池が見えてきた。歩いてきた稜線も見える。ところどころ黄色く色づいており秋が始まっているのが感じられた。これから行く先のオッタテ峰方面は樹木に遮られて見えなかった。休みながら横手裏沢で汲んだ水を飲むが、水が硫黄臭いことにKさんが気づいた。ポリタンの中をかいでみると確かに臭い。横手裏沢の二俣で汲んだときは気づかなかったのだが、横手裏沢の上流にも硫黄が出ているのだろう。山頂には野反湖へいたる道について警告の看板があり、獣道等を使用致しますと、魔のガラン沢に出る場合も有りますので絶対にコースを外れないようお願い致しますと注意書きがあった。「魔のガラン沢」という表現は初めて聞いたが、何だかすごく恐ろしげだ。

赤石山
10/4 岩場の赤石山山頂。
仙人池
10/4 赤石山東の仙人池。

 赤石山から下っていくと仙人池。200m2ほどのごく浅い藻の生えた池である。水は飲めない。笹原が刈り払われた道を下っていく。湯ノ沢の頭への急な下りではこの先の湯ノ沢の頭、ダン沢の頭がよく見えた。ガラン谷側は笹ヤブに覆われており、湯ノ沢・鯛ノ沢をつめて稜線にあがるのは大変そうだ。下り着いてから平坦な道を歩き、何となく登りになってくると尾根の南側を巻くようになり、湯ノ沢の頭。道は巻いているので休むところもない。

湯ノ沢の頭
10/4 赤石山の下りからみた湯ノ沢の頭。木々が黄色く色づいている。
湯ノ沢の頭
10/4 湯ノ沢の頭を過ぎて平坦な林の中を歩く。

 湯ノ沢の頭からの下り道はV字の小さな沢になっており、水が溜まっていた。周囲は笹が刈り払われているので、忍者みたいに駆け足で周囲の斜面を踏んで下る。そのあとはごく平坦な道を歩く。幅広に笹が刈り払われているのでどこか高原の散歩道のようだ。やがて南側に木がなくなり、笹だけになると視界が開け、ダン沢の頭の登り。ダン沢の頭は笠のような形をしていてまっすぐ道が付けられている。どうせなら南側を巻く道をつけてくれればいいのに。苦しい登りを終えるとダン沢の頭。ここで一休み。

ダン沢の頭
10/4 南面の木がなくなり笹だけになるとまもなくダン沢の頭。まっすぐで急な登り。
チンネ左稜線
10/4 一ッ石から見下ろした鷹巣ノ尾根。

 ダン沢の頭から笹原を下るとその先の小高山、大高山が見えた。笹原の中に道が見えて気持ち良さそうな縦走路だ。この先馬止めに下るが、地形図とエアリアマップの道が食い違っており、地形図は小高山・大高山のコルから天狗池を経て下る道、エアリアマップはその手前、オッタテ峠から鷹巣ノ尾根を下る道が載っている。オッタテ峰を越えてオッタテ峠に着くとエアリアマップの示す道が看板とともにあったのでその道を下る。

 鷹巣ノ尾根の道も笹の刈り払いがあり、歩きやすい。一ッ石のあたりは展望があってよいがずっと遠くに白根開善学校が見えてあまりの遠さにがっくりする。一ッ石の急な下りで親指の爪が痛く、これはのちのちはがれるなと感じる。植林の唐松林を下っていくと急に馬止めの車道に出た。

 あとは砂利道を下って白根開善学校の上に停めた車についた。帰りは花敷温泉の少し上にあるバーデ六合(大人1人400円)に寄って帰った。

おわりに

 はじめにと繰り返しになるが、雨が土曜日の9時であがり、あとは雨も降らず、気温も高く、快適な遡行であった。紅葉もみられ満足である。ガラン谷が遭難者の多い谷というのは行って初めて知ったが、沢の遡行にあたってはロープも不要で簡単である。

 水が硫黄を含んでいるので飲み水に注意しなければならないのが難しいところだろうか。私たちは白水沢で水を汲んだが、その水は飲んでみて大丈夫なように感じた。ただ鼻が硫黄に慣れてしまっていたのかもしれないので何とも分からない。また野湯好きには枝沢の湯ノ沢の遡行に人気があるが、ガラン谷には硫黄が出ているところがあるものの、温泉が出ているところはなかった。

 それと行程の組み方が難しい。電車バスで向かうのであれば前日までにJR吾妻線長野原草津口まで詰めておき、翌朝白根開善学校上のゲートまで詰めてガラン谷を遡行、沢中一泊で草津峠を越えて硯川からバスで長野あるいは草津に出るのがよいだろう。車で向かうのであれば私たちのとった白根開善学校上のゲートに車を置き、草津峠から鉢山、赤石山、オッタテ峰を縦走してゲートに戻ってくるのがよいだろう。前者は沢を詰めたあと40分で下山できるのが魅力だがバスの乗り換えが多く、帰るのに時間がかかる。後者は車が使えるが、帰りに5時間半の縦走があり下山が長い。一長一短である。

(2009年10月9日記す)


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