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北アルプス・剱岳本峰&八ツ峰VI峰Aフェース魚津高ルート←|→長笹川ガラン谷
4日目 |
2009年9月5日(土) ガスのち晴れ |
熊ノ岩…長次郎谷右俣…池ノ谷乗越…池ノ谷ガリー…三ノ窓…チンネ左稜線…池ノ谷乗越…熊ノ岩(泊)
熊ノ岩 | 2:30起床 |
4:30 | |
池ノ谷乗越 | 6:32 |
6:48 | |
三ノ窓 | 7:25 |
チンネ左稜線取付点 | 8:27 |
8:40 | |
ピナクル上 | 11:10 |
T5 | 12:37 |
チンネ頂上 | 15:00 |
池ノ谷乗越 | 16:05 |
16:22 | |
熊ノ岩 | 17:00 |
21:10就寝 |
この日は晴天の予報。早く起きてチンネ左稜線へ向かう。ルートは長次郎雪渓右俣から池ノ谷乗越に出て、池ノ谷ガリーを下降、三ノ窓に出てからチンネ基部を巻きチンネ左稜線に取り付く。
長次郎雪渓に出るところでアイゼンを装備。腹の調子が悪いのか2度もトイレに行く。朝のうちはガスが出ており、長次郎雪渓右俣から池ノ谷乗越へ登るルートで迷う。黒い大岩の上を見たが急なガレで諦め、少し下ってルンゼ状のガレの右側を登る。道はあまりよくなく、途中でハーネスを装備。ルンゼを渡って池ノ谷乗越から伸びる雪渓の末端にたどりつく。そこでまたアイゼンを履き、雪渓を登った。上部で雪渓はなくなるので右手からガレに取り付いた。岩の基部に踏み跡が見えるのだが、そこまでのアプローチでガレを落としており、Kさんに「危なくて見てらんない」と言われてしまう。
9/5 熊ノ岩から見た池ノ谷乗越。(前日撮った写真、マウスオーバーでルートが出ます) |
9/5 池ノ谷乗越への登り。 |
池ノ谷乗越でプラスチックブーツ、アイゼン、緊急時のツェルト、ガス、食料をデポし、チンネ左稜線へ向かう。ガレた池ノ谷ガリーを下る。急で崩れやすいが、踏み跡を探しながら下ればさほど崩れない。去年小窓尾根のときにも登ったが急な斜面である。下りながらあれがチンネだろうかと岩場を見ながら歩くがよく分からなかった。ゆっくりと池ノ谷ガリーを下り、やがて三ノ窓に出た。
9/5 ガレた池ノ谷ガリーを下る。 |
9/5 三ノ窓からチンネ左稜線基部へトラバース。 |
三ノ窓にも熊ノ岩と同様何張か張るスペースがあったが、ここにはテントはなかった。三ノ窓から見る三ノ窓雪渓は途中で2つの谷に分かれており、左は小窓雪渓へ、右は三ノ窓雪渓へ落ちていた。間は三ノ窓尾根のようだ。雪渓の上の際をトラバース。また雪渓が出てくるのでガレを下って下から巻く。踏み跡ははっきりせず崩れやすくて歩きにくかった。チンネはガスに覆われており、上部はときどきガスが晴れて望むことができた。
チンネ左稜線の基部に着き、登攀準備を行なう。
1ピッチ目。30m3級(長さ、等級はクライミングジャーナル編集部編「クライミング・ガイドブックス 日本の岩場(下)」を参考にした)。中山リード。はじめにルートを間違える。10mほどで登れなくなり、ランニングビレイをつかんで下る。もっと右だった。改めて凹角を登る。ガバホールドだが、スタンスが見当たらず少々つらい。1ピッチで30分ほど時間をかけたため、これ以降Kさんがリードすることになる。
9/5 チンネ左稜線1ピッチ目。凹角を登る。(マウスオーバーでルートが出ます) |
9/5 チンネ左稜線2ピッチ目。 |
2ピッチ目。20m4級。テラスを左にずれてフェースを登る。凹角沿いのクラックにホールドをとって登る。
3ピッチ目。10m3級。フェースを登る。左側に寄ってから右へ斜上。登ったあたりで支点が少なくルートがよく分からずピッチを切る。
4ピッチ目。30m3級。フェースを登る。支点が少なくルートが不明ながらも登る。
9/5 チンネ左稜線4ピッチ目。フェースを登る。 |
9/5 チンネ左稜線6ピッチ目。トラバースし、ルンゼを登る。 |
5ピッチ目。20m3級。右手の岩を越える。ピナクル上に続くルンゼが見える。
6ピッチ目。50m3級。トラバースしてルンゼに入り、ガレたルンゼを登る。草付きを登ってピナクル上に出る。Kさんがルート図を落とすが見つかった。
9/5 チンネ左稜線6ピッチ目。草の生えたルンゼを登り、ピナクルの上に出る。 |
9/5 チンネ左稜線7ピッチ目。日差しの当たるハイマツ混じりのフェースを登る。 |
7ピッチ目。50m3級。日差しの当たるハイマツ混じりのフェースを登る。
8ピッチ目。30m2級。7ピッチ目の続き。乾いたフェースを登る。ピナクルの林立するリッジの1峰目に出る。となりのクレオパトラニードルが本当に針のように鋭い。その先に八ツ峰の縦走ルートが見える。
9/5 チンネ左稜線8ピッチ目。乾いたフェースを登る。左の鋭峰はクレオパトラニードル。 |
9/5 チンネ左稜線8ピッチ目から見下ろした三ノ窓雪渓。 |
9ピッチ目。40m3級。次のピナクルを右から巻いてその次のピナクルへ凹角を直上する。凹角に入ったり出たりしながら登る。けっこうきびしく、背中やヒザを使ってしまう。出るとT5の少し手前。三ノ窓側は日陰で寒い。
9/5 チンネ左稜線9ピッチ目。ピナクルを右から巻いてその次のピナクルへ凹角を直上する。 |
9/5 チンネ左稜線10ピッチ目T5上。核心部のハングを登る。私はシュリンゲをつかんでA0で登った。 |
10ピッチ目。40m5級。核心部のハングを登る。支点はたくさんある。私は全然登れず、ハング部分はシュリンゲをつかみながらA0で突破した。狭いところでピッチを着る。
11ピッチ目。40m3級+。リッジを登る。ピナクルを一つ越えてピッチを切る。
9/5 チンネ左稜線11ピッチ目。続くピークを乗り越える。 |
9/5 チンネ左稜線11ピッチ目。三ノ窓雪渓を背景に登る私。 |
12ピッチ目。30m3級+。リッジを登る。
13ピッチ目。20m2級。中山リード。ドーム状のリッジを登り、右手の小さなテラスでピッチを切る。
9/5 チンネ左稜線14ピッチ目。岩を右から乗り越えるとチンネ頂上は近い。 |
9/5 チンネ左稜線14ピッチ目。チンネ頂上到着。 |
14ピッチ目。50m2級。Kさんリード。リッジを登り、ピナクルを右から巻き、チンネ頂上付近では稜線左側を行く。
チンネ頂上についた喜びも早々、すぐ下る。チンネから三ノ窓の頭との間のコルに出て休む。支点があったので確保しながらKさんに池ノ谷ガリー側のルンゼを下ってもらう。ルートは池ノ谷ガリー側に出てトラバースし、そこから懸垂下降であった。休んだ後、そのルートをたどり、40mほどの懸垂下降で池ノ谷ガリーに出た。そこでザイルを回収し、池ノ谷ガリーを登ってデポのある池ノ谷乗越に出た。熊ノ岩は見えないが、ここまでくれば熊ノ岩のテントは遠くない。
9/5 懸垂下降で池ノ谷ガリーに下りる。 |
9/5 池ノ谷乗越を越えて長次郎谷右俣を下る。 |
デポを回収し、雪渓とガレ場を下って熊ノ岩に戻った。土曜日だからか熊ノ岩にはテントがほかに3張増えていた。私たちは夜歌ってうるさいので少し離れたところにテントを移動した。
この日は行動時間が12時間半と長く、疲れた。しかし熊ノ岩に泊まるのもこの夜まで。チンネ左稜線にも登ることができ、酒を飲んで就寝した。
5日目 |
2009年9月6日(日) 晴れ |
熊ノ岩…長次郎谷…真砂沢ロッジ…ハシゴ谷乗越…内蔵助平…黒部ダム=扇沢=立川
熊ノ岩 | 4:00起床 |
6:00 | |
長次郎谷出合 | 7:00 |
7:10 | |
真砂沢ロッジ | 7:33 |
7:36 | |
1740m水場 | 8:08 |
8:14 | |
ハシゴ谷乗越 | 9:22 |
9:44 | |
内蔵助平 | 10:41 |
10:56 | |
旧日電歩道 | 12:14 |
12:24 | |
黒部第四ダム | 13:26 |
13:35 |
昨日は遅く寝たので4時に起床。明るくなってからテントをたたみ、下山する。長次郎雪渓を下っていると13人くらいの大集団が登ってきていた。この土日から熊ノ岩に定着するのだろうか。
真砂沢ロッジでKさんは足下をプラスチックブーツから運動靴に替えていた。私はプラスチックブーツが重荷なのでそのまま休まず先を歩いた。剱沢に架かる橋を渡り、涸れ沢を登る。行きにも休んだ水場で一本。さらにゆっくりした足取りでハシゴ谷乗越についた。ハシゴ谷乗越でKさんを待つ。Kさんは20分後ほどに現れた。何でも剱沢にかかる橋に気づかず近藤岩まで行ってしまったとか。私もだいぶ歩くのが遅い方だが、真砂沢ロッジから近藤岩まで往復2時間半の道のりである(時間はエアリアマップによる)。わずか20分の差で現れるKさんに驚いた。
9/6 八ツ峰VI峰を背景に長次郎谷右俣を下る。 |
9/6 観光用に放水する黒部第四ダムが迎えてくれた。 |
ハシゴ谷乗越から黒部第四ダムまでの道は長かった。2008年5月の連休のときは雪の上を歩けたので速かったし、眺めもよかったのだが、夏は足下見ながら歩かなければならず、展望もなく倍くらい時間がかかった。ときどき単独行の人が黒部第四ダムからやってきていた。
内蔵助平と旧日電歩道で休みを入れて黒部第四ダムにたどりつく。ダムの放水の写真を1枚撮ったところでカメラの電池が切れた。ちょうどいいタイミングだ。あとは急な坂道を登り、トロリーバスの乗り場についた。帰りは観光客でいっぱいのバスに乗車し、扇沢に戻った。
扇沢からは大町温泉に寄り、汗を流した。豊科ICから高速道路に乗り、帰京の途についたが、日曜日とあって小仏トンネルから笹子まで37kmの渋滞に遭い、家に着いたのは23時だった。翌日は夜勤だったので疲れた。
天気予報の割に登攀中は雨に降られることなく登れてよかった。私の登攀レベルではCフェース劒稜会ルート、Aフェース魚津高ルートがちょうどいいくらいのレベルであった。チンネ左稜線は個々のピッチがそれなりに難しいだけでなく、大きいためにルートファインディングも必要であり、難しかった。それでも登ることができてよかった。
また黒部第四ダムから熊ノ岩までの行き帰りで荷物が重くバテてしまった。体力がないのか、パッキングが下手なのか、背負い方が下手なのか原因はよく分からないが、あまりにつらいので何とかしないといけないと思う。
(2009年9月24日記す)