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2009年冬 - 北アルプス・剱岳早月尾根[2/2]


2009年12月26日(土)〜12月30日(水)
場所
富山県中新川郡上市町
ルート
12月25日
上野=急行能登(車中泊)
12月26日
滑川=上市駅=剣青少年研修センター=馬場島…松尾平…早月尾根1600m(泊)
12月27日
早月尾根1600m…1920.7m三角点…早月小屋…早月尾根2600m付近…早月小屋(泊)
12月28日
早月小屋(停滞)
12月29日
早月小屋…シシ頭…剱岳…シシ頭…早月小屋
12月30日
早月小屋…松尾平…馬場島…剣青少年研修センター=富山=越後湯沢=上野
参加者
K、Y、K、H、I、S、中山
参考文献

4日目

2009年12月29日(火) 快晴

早月小屋…シシ頭…剱岳…シシ頭…早月小屋

コースタイム
早月小屋3:00起床
6:22
剱岳13:00
早月小屋16:35
22:30就寝

 アタック日はばっちり晴れた。風も弱い。

 3時に起床する。出発時に私のピッケルとアイゼンが見当たらないというアクシデントに襲われるが、アイゼンは少し探して見つかり、ピッケルはあいたところを深く掘ると見つけられた。6:22に出発。九州大学に次いで出発する。

 おとといわかんをアイゼンに履き替えたところで、今日も足下を替える。そうこうしているうちに後ろから5、6人の集団が追いついてきた。今日は絶好の天気なので相当数のパーティーが山頂を目指すに違いない。

早月尾根
12/29 1日停滞したおかげか晴れた。
剱岳
12/29 早月尾根2470m峰から見た剱岳。

 急いでアイゼンを履き、先を急ぐ。おととい登った2550m付近までは簡単に登り、さらに先を進むと2614m峰を池ノ谷側から巻くところに出る。そこで先行する九州大学パーティーに追いつく。2614m峰を巻くと、池ノ谷側がのっぺりした斜面になる。偵察のときはトラバースして露岩の向こう側のルンゼを一気に上がった気がするのだが、淡雪のトラバースは雪崩を起こす可能性があり稜線沿いを登った。ここで九州大学を追い抜く。

早月尾根2500m付近
12/29 2500m付近を登る。
2614m峰
12/29 2614m峰直前。2614m峰を左から巻く。

 私がトップでしばらく登る。稜線沿いは雪の量が多いのだが、どこから登ればいいのか分からず直線に道を選んで歩いているとより雪の少ない方を後ろから指示される。Iさん、Kさん、Kさんとトップを変わりながら稜線沿いを登っていく。エボシ岩は私が怖じ気づき、Kさんに登ってもらった。振り返ると後続パーティーが行列になっている。2800m付近の池ノ谷側に枝尾根が伸びているところは斜面を直登する。偵察のときは雷鳥を見かけたが、天気がよいからか雷鳥は見あたらなかった。

早月尾根
12/29 2614m峰の上。ここで先行パーティーを追い抜く。
行列
12/29 エボシ岩の後ろにできた待ち行列。

 2800m付近を過ぎてシシ頭の登り。左手から巻きたいが傾斜がきつく、ところどころ山ひだが出ていて渡れない。右手からシシ頭頂上に登るが、その先の道が見当たらない。ごくせまいリッジ沿いに山頂に向かっていくが、その先のコルへはすっぱり切れ落ちていてバックステップでは下れそうにない。かといって懸垂下降する支点も見当たらない。結局、シシ頭山頂から池ノ谷側を懸垂下降しながらトラバースし、さらに1ピッチトラバースし、コルに出ることにする。道を探しているうちに狭いシシ頭の山頂に10人以上もの人が集まってしまった。

エボシ岩
12/29 エボシ岩を越えたところで確保するKさん。
ルンゼ
12/29 シシ頭を越えて最後のルンゼの登り。

 Kさんが懸垂下降する。途中1本では足りないのである程度登り返して2本で下る。後ろのパーティーから白ひげのおじいさんが覗き込んで「なんだあんなところまで下るのか」とひとり言を吐いて戻ってしまった。どうもこのタイミングで後続のパーティーがいくつか帰ったようで、このあとは富山大・金沢大混成パーティーしか山頂まで来なかった。行こうと思えば私が引き返した狭いリッジ沿いを詰めてもっと支点を探すか、ハーケンを打てば良さそうなものだが。

 Kさんがトラバースし、残置ハーケンに支点をとってそこからKさんが1ピッチトラバース。岩の基部は雪が深く、歩きにくい。トラバースのすぐ上に鎖が連なっていてどうやら夏はそこをトラバースするようだ。

 シシ頭東のコルに出るとあとは本峰への登りを残すだけである。すでに標高は平蔵のコルと変わらない。コルで強い西風に顔を洗われながらルンゼに取り付き、ルンゼを直上、早月尾根稜線に出たら右斜め上に鎖に沿ってトラバースし、傾斜が緩くなると別山尾根と早月尾根の合流点に着く。そこには合流点を示す標柱があり、ガスのときでも下る尾根を間違わないようにしている。

別山尾根・早月尾根合流点
12/29 別山尾根・早月尾根合流点の標柱が見えてきた。
剱岳山頂
12/29 剱岳山頂から振り返る。

 別山尾根・早月尾根合流点でトップを歩いていたKさんからザイル末端を渡され、山頂を先に踏ませてもらう。が、途中アイゼンが外れ、後ろから富山大・金沢大混成パーティーが追いついてきてあせった。結局私たちが先に山頂を踏むことができたが、時間差は1分ほどだろう。

ほこら
12/29 雪に埋もれた山頂のほこら。11月にはまだ雪で埋もれていなかった。(マウスオーバーで11月のようす)
富山平野
12/29 剱岳山頂から振り返ると早月川の奥に富山平野。

 剱岳山頂は快晴で最高の展望を望めた。北は猫又山、毛勝三山、白馬岳から鹿島槍、針ノ木岳へ至る後立山連峰。その右には八ヶ岳、富士山、南アルプス、手前には特徴的な形の槍ヶ岳、そして剱沢の向こうには別山、立山、室堂。東には大日岳がそびえていた。北東はまばらに雲が浮かんだ富山平野が広がり、富山湾の海岸線が見えた。冬の日本海側にしては異例とも言える快晴であった。風は少しあったが、吹き飛ばされるようなものではなく、ほどほどの風であった。カメラの電池が低温で電圧降下してしまうので温めながら何枚も写真を撮った。

剱岳山頂からの眺め
12/29 剱岳山頂から白萩川より北の稜線。赤谷山、猫又山が見える。
剱岳山頂
12/29 剱岳山頂から西側の眺め。五竜岳、鹿島槍ヶ岳など。
剱岳山頂からの眺め
12/29 剱岳山頂から南の眺め。剱沢の奥に立山など。
剱岳山頂からの眺め
12/29 剱岳山頂から下山する。

 Kさんのカメラで記念写真を撮ってから下山。来た道を引き返す。帰りも富山大・金沢大混成パーティーと連なりながら下る。途中、懸垂下降を1回行う。2600mくらいまで下るともう危険なところはなく、ザイルを回収して下った。すでに16時になっており、日が傾いて雲海が黄色く染まっていた。

ルンゼ
12/29 別山尾根と分かれてからルンゼをバックステップで下る。
懸垂下降
12/29 一カ所懸垂下降で下りた。

 この日は登頂祝いとあってかなり遅くまで起きて酒を飲んでいた。

早月尾根
12/29 スカイラインを歩く。
早月尾根
12/29 テントに戻るころには日も傾き雲海が黄色く染まり始めていた。

5日目

2009年12月30日(水) 晴れのちくもり

早月小屋…松尾平…馬場島…剣青少年研修センター=富山=越後湯沢=上野

コースタイム
早月小屋3:30起床
6:46
早月小屋
1600m
8:13
8:40
馬場島10:15
10:45
剣青少年研修センター11:50
12:10

 この日は天気がどうあれ下るだけ。天気は山側が晴れ、海側がくもりであった。この日もアタックした人がいると思うが、テントを出発したのは私たちが一番最初のようであった。

 下山しながら立ち止まり富山平野の写真を撮る。富山湾の海岸線がはっきり見え、越ノ潟の湾も見えた。途中、初日に幕営した1600m付近で一本取る。Kさんがヒザを痛めてゆっくり下っていた。この日は30日と年末押し迫った日であったが、登ってくる4パーティーとすれ違った。これから天気が悪くなると予報は告げていたのだが、12月30日から1月3日まで入山して晴天を狙うのだろうか。

 馬場島では以前都庁山岳部に所属していたJECCのYさんがおり、ちょうど県警に下山報告をしたところだった。聞くと小窓尾根を目指して27日から入山していたが、途中雪崩の跡があり、引き返したとか。今回天気はよかったが、その分雪崩が怖い。

 馬場島でタクシーを呼んでおき、剣青少年研修センター近くのゲートまで歩いてタクシーに乗って直接富山に出た。富山に出るころには雲行き怪しく、立山連峰は見えなくなっていた。富山で酒つまみを買い込み、特急はくたかと新幹線で帰京した。

おわりに

 年末の剱岳は初めてであったが、今年は天気がよく登頂できてよかった。

 タクシーもゲートまで入れ、トレースもあり、雪も凍っているところはなく、平年の早月尾根に比べて容易だったのではないかと思う。

 しかし2600m付近からはずっとザイルを出しっぱなしで、ところどころ岩場を乗り越えるのか巻くのか分からないところが多かった。その年の雪の量によってルートも変わってくるのではないかと思う。

 この年末18パーティーも入る早月尾根で1番最初に登頂することができてうれしいし、都庁山岳部のメンバーに感謝したい。

(2010年1月3日記す)


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