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2007年春 - 奥多摩・浅間尾根


2007年3月3日(土)
場所
東京都西多摩郡檜原村/奥多摩
コース
武蔵五日市=払沢の滝入口バス停…時坂峠…浅間嶺…数馬の湯(温泉センターバス停)
参加者
中山、母
天気
くもり
参考文献
07奥多摩・浅間尾根の地図

はじめに

 2006年の年越し山行で槍ヶ岳北鎌尾根に登って凍傷になって以来、2ヶ月ぶりの山行である。

 病院から退院しても凍傷の病後を考えると山に行く気が起きず、土日になっては実家に帰りこたつで過ごす日々が続いた。

 しかし、ひと月ほどでそれも飽き、2月中旬から山手線徒歩一周、神田川に沿って自転車など山以外のすぐに中断できるアクティビティを行ってきた。受傷した指は完治していないが、包帯をとって生活に支障がない程度に感覚が戻ってきたので山に登ることにした。

 はじめに登る山は簡単なところがよいと考え、標高1000m足らずの奥多摩の浅間尾根に登ることにした。浅間尾根は私には珍しく奥多摩ではまだ登ったことのない山である。

日帰り

2007年3月3日(土) 晴れ

武蔵五日市=払沢の滝入口バス停…時坂峠…浅間嶺…数馬の湯(温泉センターバス停)

コースタイム
払沢の滝入口バス停9:30
時坂峠10:10
浅間嶺11:20
11:55
数馬の湯
(温泉センターバス停)
14:10
15:44

 7:30新宿西口に母と集合する。切符の話だが、この年の春の18きっぷはJR発足20周年記念で5枚綴り8000円、1枚あたり1600円と破格のため、今回文句なく採用する。新宿〜武蔵五日市は780円なので往復しても1560円だが、今回は帰りに千葉の実家まで戻るので元が取れる。

 ホリデー快速あきがわ1号に乗車。前6両のおくたま号に比べて人は少なかった。終点武蔵五日市で下車してバスに乗り換え。払沢の滝入口経由数馬行きのバスはかなり混んでいて30分ばかり立っていた。

 払沢の滝入口バス停で下車。私たちの他に10人ほど下車する。浅間尾根というと目立ったピークもなく人が少ないと思っていたのだが意外に多い。冬なので高山に行けないハイカーが浅間尾根のような簡単な山に集まってくるのかもしれない。私もその例に漏れないが。

 バス停にはトイレがあり、ここでトイレを済ませて出発。しかし、いきなり道を間違えてしまった。バス停からすぐ分かれる道を行くべきなのに、北秋川沿いの道を進んでしまった。北秋川を渡ってしまってから道を間違えたことに気づき、引き返す。正しい道を少し行くと払沢の滝と道が分かれる。払沢の滝は今回の目的ではないので浅間尾根へ続く道を辿る。

 しばらくで車道から分かれて登山道に入る。シャガなど植物の名前を母に教わりながら谷沿いの道を登って行く。10分ほどで時坂の集落。アルペンガイドによれば「とっさか」と読むらしい。地名に「時」なんて言葉を使うとは不思議な地名だ。急な斜面に張り付く集落で所々に家が点在している。斜面をジグザグに車道が延びており、家々を結んでいる。こんな斜面で飲料水をどうやって確保しているのだろうか。

時坂集落
3/3 時坂集落。いかにも山奥の集落。
福寿草
3/3 福寿草の群落。

 集落の中の道を歩いて行く途中、母が福寿草の群落を見つけた。黄色い花で群落の様子はタンポポに似ていた。街では1株ずつ売られていることもあるが、群落になっているのは珍しいらしい。母の感動の様子から見てよっぽど珍しいのだろう。残念ながら私にはその価値がよく分からなかった。

 時坂の集落の上端からまた登山道に入り、時坂峠に出る。ここは時坂と北秋川上流の宮ヶ谷戸を結ぶ峠のようだ。また峠には時坂側から車道が通じており、さらに浅間尾根に向かって続いている。この車道をたどって行く。車道の終点には峠の茶屋というありふれた名前の茶屋があり、休んでいる人がいた。

時坂峠
3/3 時坂峠。社があるが、人が多かったので先へ行く。
峰の茶屋
3/3 峰の茶屋。時坂集落から続く車道の終点。

 先を進む。徒歩だけの登山道になってまた茶屋があった。将軍が休んだとか何とか書いてあったが、戸が閉まっていて営業しているかどうか分からなかった。アルペンガイドに示された「瀬戸沢の一軒家」であろう。その後はもう茶屋はない。傾斜の緩い沢に沿って登り、沢のそばに立っている「飲料水」の看板で沢から離れる。尾根沿いの緩やかな道を登っていく。まだ11時前なのに早くも下ってくる人とすれ違った。ずいぶん早く出発したのだろう。

松生山
3/3 峰の茶屋付近から見えた松生山。
標高839mの十字路付近
3/3 標高839mの十字路付近。晩秋のような風景。

 やがて標高839mの十字路。稜線の北側に位置しており、北秋川の小岩の集落へ下る道、浅間嶺へ登る道、浅間嶺を巻いて西へ伸びる道に分かれていた。今回は浅間尾根を目的に来ているので浅間の名前を冠する浅間嶺に向かう。やっぱり緩い道を登って稜線に出る。稜線の東には松生山934mがあるが道はない。でも冬なら下草が生えていないので枯れ葉を踏みながら簡単に登れそうだ。西へ浅間嶺へと向かう。

 浅間嶺のピークは2つあるらしい。1つは地形図およびエアリアマップに示された903mピーク、もう1つはその東にあるアルペンガイドに示された浅間嶺である。後者は「浅間嶺」という看板のあるピークである。地図上では何とも書いていない後者のピークの方が展望がよく、なだらかでどこででも休めるのでここで休んだ。展望はよいところだが、遠くはかすんでおり、富士山は見えなかった。

 ちょうど枝の剪定をおこなっている人たちがおり、出発時に挨拶すると、ある柱の穴を覗いてみるよういわれた。「御前山」と書かれており、その上に人差し指くらいの穴があいている。意味が分からず覗いてみるとそこにはちょうど御前山の山頂が見えた。なるほど、御前山がどれかを示すための柱の穴だったのだ。確かにこれなら「あの三角形の山が御前山」「どれ?」「この方向」「分かんないよ」といった会話を完全に避けられる。見事なアイディアだと思った。

枝の剪定作業
3/3 「浅間嶺」という看板のあるピーク付近で枝の剪定作業を行う方。左奥は御前山。
浅間嶺休憩所
3/3 浅間嶺休憩所。

 看板のある浅間嶺を出発してコルに下りる。コルには立派な休憩所があり、北側の眺めがいい。水さえあればテントでも張りたいくらいだ。休憩所の横から道が延びており、登りきると地図で示された浅間嶺903mであった。山頂には社があり、周囲を囲うように低い榊の木が伸びていた。簡単にお辞儀して先を進む。

 その先は関東ふれあいの道からはずれるからか、道がはっきりせず迷いやすい。稜線に生える針葉樹には「へ」の下に「田」の字を配置した文字が黄色ペンキで塗られていた。屋号みたいに「やまだ」とでも呼ぶのだろうか。母と「山田さんの林だろうか」と話しながら下る。途中で尾根を間違いそうになりながらも浅間尾根を順調にたどる。迷いやすいからか人は全くいない。

急な斜面
3/3 ときどき急な斜面もある。
浅間石宮
3/3 浅間石宮。

 903m峰を下りきるあたりで右手に植林帯が現れる。看板によると昭和38年から40年に書けて今上天皇のご成婚記念で植林したらしい。12:20に人里峠。薄暗い針葉樹の中の峠で看板が一つ立っているだけである。その先はガレをいくつか横切るが、桟橋が造られているので簡単に渡れる。さらに12:35、911m峰と930.2m三角点峰との間のコルに浅間石宮がある。小さなお宮さんがあるのでお辞儀をする。中には何もなく、灯籠のように向こうまで穴があいている。もともとこういう形なのだろうか。

 9:40には930.2m三角点峰の南の肩に出る。一本杉(一本松)の標が立つところだが、エアリアマップの一本松は次の929m峰であり、どちらかの場所が違うようだ。なおいったいどれが一本杉なのか、あるいは一本松なのかは分からなかった。ただ大きな木の株だけがあったのでそれが一本杉か一本松だったのかもしれない。

一本杉(一本松)
3/3 一本杉(一本松)。どっちやねん。
サル石
3/3 サル石。

 929m峰の登りで北秋川の日向平、藤倉へ下る道を分ける。この道は25,000分の1地形図にもエアリアマップにも載っていないので廃道なのかもしれない。929m峰の先でサル石。立っていた看板によればサルの手形のついた大きな石らしい。なんとなくサルの手形に見えるくぼみはあったが確信が持てなかった。あちこちに小さいお宮さんと説明板があるので古くからの道なのだろう。数馬の湯に掲げられた地図には甲州裏街道と書いてあった。本当かどうかは分からないが、少なくとも北秋川と南秋川の間の交易路にはなっていたのだろう。

 908m近くに至ると北側に展望の開けた場所に出る。御前山と倉掛の集落がよく見えた。908m峰の少し南から尾根を下って数馬下の集落に出る。道をからんで下って行くと標高差の割に簡単に南秋川に出られた。

 都道を10分ほど上流へ遡って数馬の湯。数馬の湯の駐車場の脇には雪が少しだけ残っており、母と一緒に驚いた。山の上にはなかったのに谷間には残っていた。暖冬とはいえさすがに山にはわずかでも雪が残っているものらしい。あとは温泉で汗を流してバスに乗って帰った。バスはあちこちで人を集めて満員であった。

おわりに

 凍傷のリハビリにはちょうどいい山行であった。登り下りも少なく散歩道のような山であった。天気にも恵まれ、温泉にも浸かれのんびり過ごすことができた。

(2007年3月4日記す)


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