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2007年秋 - 南アルプス・尾白川本谷


2007年9月1日(土)-4日(火)
場所
山梨県北杜市(旧・北巨摩郡白州町)/南アルプス北部
コース
9月1日
府中本町=竹宇駒ヶ岳神社…五合目小屋跡…尾白川黄蓮谷五丈ノ沢出合(泊)
9月2日
五丈ノ沢出合…黄蓮谷右俣…甲斐駒ケ岳…五合目小屋…五丈ノ沢出合(泊)
9月3日
五丈ノ沢出合…尾白川黄蓮谷出合…尾白川本谷…六合石室…甲斐駒ケ岳…竹宇駒ヶ岳神社(泊)
9月4日
竹宇駒ヶ岳神社=府中本町駅(解散)
参加者
K、H、中山
参考文献
07南アルプス・尾白川本谷の地図

3日目

2007年9月3日(月) 晴れ

五丈ノ沢出合…尾白川黄蓮谷出合…尾白川本谷…六合石室…甲斐駒ケ岳…竹宇駒ヶ岳神社(泊)

3日目コースタイム
五丈ノ沢出合3:40起床
5:40
尾白川黄蓮谷出合6:15
巨岩帯
1900m付近
7:35
7:53
30m大滝下9:20
二俣2200m付近10:00
10:23
奥の二俣2250m付近10:30
10:35
稜線六合石室西
2500m付近
11:25
11:52
六合石室12:00
甲斐駒ケ岳山頂13:14
13:38
七丈第一小屋14:28
14:40
屏風小屋跡15:01
刀利天狗15:27
15:40
横手分岐16:20
尾白川キャンプ場17:00
20:45就寝

 朝起きると晴れだった。計画通り尾白川本谷を登る。ただHさんは股擦れと体力の面から尾白川本谷を登らず、五合目、黒戸尾根を経由して竹宇駒ヶ岳神社に下山することになった。なので尾白川本谷に登ったのはKさんと私の2人である。

 テント、鍋等をHさんに預けて2人で出発。現在いるところは黄蓮谷なので、まず黄蓮谷と本谷の二俣まで下る。いきなり千丈ノ滝。右岸から下るが、水の流れる一枚岩の上を下る道で怖い。途中、巻きすぎてかなり怖い下降を強いられた。登る分には難しくなかったのだが。またあるスラブ滝の巻きではロープに頼りながらのトラバースでロープを握る手が痛かった。

 やがて黄蓮谷と本谷の二俣。水量比は1:1。尾白川本谷はナメから始まる。ナメ滝が4つほど続くが、黄蓮谷と違って傾斜が緩やかなので安心して登れる。昨日の黄蓮谷でスラブ不信に陥っていたが、少しその不信も解消できた。滝でないナメ床もありだいぶ雰囲気が違う。

最初の滝
9/1 尾白川本谷最初の滝。
ナメ滝
9/1 すべすべのナメ滝。

 右に枝沢が入ってきた後、8mほどのゆるいナメ滝が出てくる。下から見ると傾斜があるように見え、私は左から巻こうとした。しかし、後ろを歩いていたKさんは滝の様子を眺め右から登りだした。そしてKさんは簡単そうに登ってしまった。あっけにとられた私だが、意外に簡単そうなので私も直登したら簡単だった。どうも黄蓮谷で巻き癖が付いてしまったようだ。

河原歩き
9/3 いくつか滝を越えた後、平凡な河原歩き。
8mほどのゆるいナメ滝
9/3 8mほどのゆるいナメ滝を登るKさん。私はつい巻こうとしてしまった。

 ゴーロとナメと小滝の連続が終わると巨岩帯に突入する。ここまでの河原でも大きな岩はあったが、ここへ来て高さ5m以上の巨大な岩ばかりになる。水量は少ないが水流沿いに登るのは難しく、概ね右から巻く。巻きの途中でザラザラの斜面があり、ヒヤヒヤしながら登った。またトゲトゲの草があり、素手だったのでだいぶ痛かった。

巨岩帯入口
9/3 巨岩帯入口。
巨岩帯
9/3 巨岩帯の途中。こういうところは巻く。

 その巻きを終えて一本とる。右岸には一枚岩のスラブ。坊主中尾根の側壁である。上方から岩をなめるように水が落ちてきていた。沢の奥の左岸にはスベスベの岩壁が見え、烏帽子中尾根の側壁のようだ。このあたりに岩小舎がある(1.左岸側に岩小舎があり,3人くらいなら利用できる「関東周辺の沢」)はずだが見当たらなかった。

狭い谷
9/3 谷が狭くなってくる。
巨岩
9/3 巨岩の下を除くKさん。ここは巨岩の下をくぐって行った。

 巨岩の中をくぐり抜けたりしながら進む。やがて両岸ともスラブの開けたところに出る。きれいだが逃げ場がない。左側から西坊主ノ沢が落ちてきている。沢の落ちてきた岩陰に黄色のザックが落ちていた。ザックの形を保っているので中身は入っているようだ。ザックの持ち主は岩を登っているのだろうか。Kさんと近くにクライマーがいないか、きょろきょろ眺めたが見当たらなかった。

西坊主ノ沢
9/3 坊主中尾根を滑り落ちる西坊主ノ沢。
ザック
9/3 西坊主ノ沢出合に置いてあったザック。

 その西坊主ノ沢出合から沢の奥を見ると大岩が沢を塞いでいる。どうやって登るのだろう。近づいてみると大岩の下は2段の滝になっていた。下段にも岩がはさまり滝になっている。「関東周辺の沢」では2.ナメ状大岩滝と表現されている。この登りが一番苦戦した。ルートは2つ。水流沿いか右の岩壁を巻くか。水流沿いは木がはさまっているもののスタンスに乏しく、水も冷たい。右の岩壁は脆く、登れない。両岸とも高さ50mくらいのスラブのため大高巻きはできない。初め水流沿い、のちにKさんが右に岩壁を挑戦したがうまくいかなかった。

ナメ状大岩滝
9/3 ナメ状大岩滝。地味な割に手こずる。
ナメ状大岩滝
9/3 ナメ状大岩滝を登るKさん。

 結局、ザイルを落ちていた倒木に結びつけ、それを途中の岩の上に投げ込んでゴボウで登った。Kさんが空身で登り、2人のザックをザイルで上げた後、最後に私が空身で登った。登ってみると大して難しくなかった。引っかかっている木の枝がうまくスタンスになり簡単に登れた。投げた倒木を引っ掛けた岩の上も簡単に登れた。日が昇るまで寒くてみずに入れなかったために水流沿いに登れなかったようだ。どうも踏ん切りが弱い。

 大岩は下の空洞から這い上がった。意外にも広い空洞で岩がゴロゴロしている。それらの岩を抱きかかえるようにして登った。結局この大岩の滝で1時間くらいかかった気がする。

 その先も巨岩帯は続く。やっぱり水流沿いは難しいので左岸から巻きながら登る。一か所岩と岩の間のチムニーを登るところで空身で登った。ザックはシュリンゲでつり上げたが、チムニーにはさまり引き上げが難しかった。

二俣
9/3 二俣。左俣に30m大滝。
30m大滝
9/3 30m大滝全体。下部は容易。上部は滝に平行する右のルンゼを登る。

 巨岩帯が一息つくと奥に二俣が見える。左俣には滝が見える。近づいてみるとそれが30m大滝だった。下段は右から登る。傾斜は緩いので難しくない。上段を眺めると樋状の急な滝である。これを登るのだろうか。ナメ滝なので滑ったら下まで落とされる。落差は黄蓮谷・奥千丈ノ滝ほどではないが怖いものは怖い。右のルンゼを登ることにする。両側から迫った溝状の斜面で右側の花崗岩の斜面がもろい。崩れたザレが溝の下に溜まり扇状地のようになっている。上部には残置シュリンゲが見え、どうやらここが「関東周辺の沢」でいう「中段の溝上部がホールド細かく悪いので残置ピトン利用で登り」というところらしい。Kさんがフリーで少し登ってから戻ってくる。曰く「ザイルを出そう」。上部で残置シュリンゲがなく、難しいらしい。ザイルを出して再度の挑戦でKさんは無事上まで登った。溝を抜けてからもしばらく登るようで、ビレイ解除したときの残りザイルの長さは50m中10mほどだった。

30m大滝
9/3 30m大滝上部、右のルンゼ。ザラザラの斜面を残置ピンに頼りながら登る。
10m滝
9/3 30m大滝上の10mほどの滝。右からしばらく巻く。巻き道は明瞭。

 私も追いかけて登る。フリクションは弱く、残置シュリンゲを強く引っ張り登る。上部では残置シュリンゲがなくなるので適当なホールドをだましだまし使う。溝の上部で手詰まりになり、左のリッジに移動して滝の横を登り、上まで登りきる。なかなか怖い滝だった。でも滑落の怖さだけなら黄蓮谷の方が上か。Kさんはここの登下降で肘に擦り傷を負っていた。

二俣
9/3 二俣で一本。ひと張り張れるスペースがある。水汲みもここが最後。
左俣
9/3 左俣を登る。

 大滝の上で左に滝のかかった枝沢を分ける。本流の右には10mほどの滝。直登はできないので右から巻く。巻くが簡単には沢に下りられず、しばらく巻く。5分ほどの巻きで沢に出てすぐ二俣。水は少なく、ところどころで涸れている。左俣に花崗岩の砂利を敷いたひと張りほどのスペースがあり、そこで一本とる。振り返ると茅ガ岳か金峰山あたりが見える。とても天気がよい。右も左も急なガレの斜面だ。ここから標高2500mほどの稜線まで約300mの登りだ。黄蓮谷よりツメが短いのが救いだ。「関東周辺の沢」に従い左俣を登る。

ツメ
9/3 尾白川本谷ツメ。けっこう急。
樹林帯
9/3 最後は樹林帯。

 左俣のガレの斜面を登っていくと、5分くらいでまた右から沢が下りてきてそこで水が途絶えていた。ここで水汲み。今日は稜線に出てから山頂を経由して水のある七丈小屋まで距離があるので2リットル満タンに汲む。

 さらにガレ場を登っていくとガレ場が開けてくる。三俣くらいに分かれるので中俣を進み、途中で右俣にトラバースし、さらに右の樹林帯に突っ込んで登った。目立った踏み跡はない。ただ、西寄りの方が最低鞍部に出られるので、西の方を選んで登った。

 樹林帯から出るとそこが稜線だった。戸台川側は白いザレの斜面で展望がよい。正面に仙丈ヶ岳が見えた。しかし場所柄、北岳は駒津峰に遮られて見えず、八ヶ岳は樹林帯で見えなかった。ここでギアを外し、一休み。天気はよいが、尾白川本谷側から雲が出てきてだんだんくもりになってしまった。休んだところには葉の表と裏の葉脈に沿ってトゲの出ている植物が1本だけ生えており、よほど食われたくないんだなと感心した。

稜線
9/3 甲斐駒ケ岳〜鋸岳間の稜線に出る。Kさんの背後に仙丈ヶ岳。
稜線
9/3 稜線で一本。六合石室の少し鋸岳寄り。月曜日なので登山者がいなかった。

 甲斐駒ケ岳へ登る。現在地の標高2500mから山頂2967mまで標高差476mと中途半端な標高差だ。途中で休むかどうか悩む標高差である。コブを一つ越えて六合石室。道は岩の上についているところが多いのでいまいちハッキリしない。途中で高さ20mほどの鎖場の区間に出る。前にも通ったが、ここは下りのときどうやって下るのだろう。登りでも手こずるのに。その後も休みを取らず山頂まで。1時間20分の登りはつらく、だいぶバテた。

 甲斐駒ケ岳山頂にはおじさんがひとりだけ。天気は昨日よりよいが月曜日なので人は少ない。山頂のまわりは雲だらけで景色はいまいち。離れてしまったKさんを待っていると5分くらいで追いついてきた。2人でグレープフルーツを食べる。山頂には蝉がいてなぜか私のザックから離れようとしなかった。上昇気流に巻き込まれて山頂まで来てしまったのだろうか。鳴きもしないので何という蝉か分からなかった。

セミ
9/3 甲斐駒ケ岳山頂にいたセミ。
ガス
9/3 無事日暮れ前に尾白川キャンプ場に到着。

 山頂を離れて下山する。予定ではHさんがテント・鍋等を持って竹宇駒ヶ岳神社近くの尾白川キャンプ場にテントを張っているはずなので今日中に下らなければならない。出発時刻は13:38。山頂から竹宇駒ヶ岳神社までコースタイムは5時間40分(アルペンガイド10 北岳・甲斐駒・仙丈,1996)。コースタイム通りに下っても尾白川キャンプ場に着くのは19:20。ヘッドランプが必要になる時間だ。ヘッドランプで下るのは怖いのでできるだけ速く下ることにする。

 途中、七丈小屋、刀利天狗でそれぞれ一本とり、横手分岐より下では走って下った。結果、山頂から3時間20分、17:00ちょうどに尾白川キャンプ場に着くことができた。Hさんはすでに買い物を済ませて晩酌の準備が調っていた。濡れているものをそこら辺の大岩に広げて酒を飲んだ。月曜日でテントは私たちだけであった。はじめ外で飲んでいたが、気づかぬうちにさされていたらしく、その後しばらく足がかゆかった。

4日目

2007年9月4日(火) 晴れのちくもり

竹宇駒ヶ岳神社=府中本町駅(解散)

 この日は帰るだけ。7時頃起床し、道の駅はくしゅう、山梨銘醸(七賢の酒造)、シャルマンワインに寄り、名水公園べるがの温泉につかって帰京した。シャルマンワインには甲斐駒ケ岳の資料室があり、甲斐駒周辺の沢など大変充実した資料を置いていた。登山者は一見の価値があると思う。

おわりに

 南アルプスの沢を稜線まで登ったのはこれが初めてだったが、黄蓮谷も尾白川本谷も充実した遡行だった。

 2年前に登れなかった黄蓮谷に登れたのはうれしかった。ただ、滑りやすいスラブには辟易した。2年前は途中で引き返してよかったと思う。たぶん晴れていればだいぶ印象の違う沢なのだろうと思う。

 尾白川本谷にも登れてよかった。ザイルを2回出したものの、まだこちらの方が容易で2年前来るとしたら尾白川本谷の方がよかったと感じた。ひょっとしたらこれも天気のせいで印象が違うのかもしれない。


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