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2007年秋 - 南会津・檜枝岐川下ノ沢


2007年9月15日(土)-16日(日)
場所
福島県南会津郡檜枝岐村/尾瀬周辺
コース
9月14日
東川口駅集合=西那須野塩原IC=会津駒ヶ岳登山口(泊)
9月15日
会津駒ヶ岳登山口…下ノ沢遡行…下ノ沢奥の二俣1720m(泊)
9月16日
下ノ沢奥の二俣1720m…駒の小屋…会津駒ヶ岳・中門岳往復…駒の小屋…会津駒ヶ岳登山口=七入駐車場…硫黄沢出合(泊)
参加者
H、Y、K、中山
参考文献
07南会津・檜枝岐川下ノ沢の地図

はじめに

 檜枝岐川下ノ沢は会津駒ヶ岳に端を発し、檜枝岐川、伊南川、只見川、阿賀野川を経由して日本海に流れている。「関東周辺の沢」によれば3級、東京から2泊3日(公共交通機関利用)の南会津入門の沢である。記録を書く段になって知ったが、日本百名谷の一つらしい。

 私はこの沢を全然知らなかったが、会津駒ヶ岳は登ったことがなかったので楽しみにしていた。登ってみて巻きが多く、ちょっとつらかった。

 はじめは2泊3日かかる中津川魚野川本流であったが、天候が悪そうだったため日帰り程度の沢2本を組み合わせることになった。

0日目

2007年9月14日(金) くもり

東川口駅集合=西那須野塩原IC=会津駒ヶ岳登山口(泊)

 23:00JR東川口駅集合。車に乗ってくるKさんが遅い。間違えて川口駅に行ってしまったらしい。30分遅れで出発。東北道で西那須野塩原ICまで。さらに国道をたどって檜枝岐に到着。下ノ沢沿いの車道を少し登って会津駒ヶ岳登山口に到着。時刻はすでに3時。駐車場の片隅にテント張って就寝。

1日目

2007年9月15日(土) 晴れ

会津駒ヶ岳登山口…下ノ沢遡行…下ノ沢奥の二俣1720m(泊)

1日目コースタイム
会津駒ヶ岳登山口6:15起床
6:58
竜ノ門の滝歩道入口7:11
7:30
1350m付近9:10
9:22
二俣10:05
10:42
奥の二俣(第三ゴルジュ上)
1770m付近
14:45
15:03
1820m付近15:15
20:30就寝

 夜は会津駒ヶ岳に登るらしい他の登山客がうるさかった。中には団体客もいたようだ。Yさんが起きてしまい、うるさかったと言っていた。私は眠かったので何度か起きたものの、あまり覚えていなかった。

 テントをたたみ、下ノ沢遡行にとりかかる。車を置いたところから少し下り、竜ノ門の滝へ向かう枝の車道に入る。すぐに車道は終点となり、「↑竜ノ門の滝 檜枝岐村」と書かれた看板で行き止まりになる。ここで入渓準備。準備していると地元の人だろうか、車が2台やってきて「これから沢登りか」と聞かれた。この人たちは遡行しないようだった。

 準備を終えて入渓する。沢は狭い河原状で水量が多かった。出水があったのか流木も多い。沢が左に曲がったところで木の橋を横切る。竜ノ門の滝への遊歩道のようだ。さらに沢が右に曲がってゴルジュになってくると竜ノ門の滝。しかし竜ノ門の滝手前の淵が通れず、竜ノ門の滝を見ることすらできない。へつりの達人、Kさんが行ってもダメだったのでさっさと諦めて右から巻く。

淵
9/15 竜ノ門の滝直前の淵をへつるKさん。結局へつれず。
竜ノ門の滝
9/15 竜ノ門の滝を右から巻く。

 草付きの斜面を登る。何となく人が歩いたような感じもあるが気を抜くと足下が滑る。トップで巻くYさんはすいすい登っていくが、後続はそうも行かずゆっくり登っていった。巻きながら竜ノ門の滝を眺める。2段に分かれており、下段が20m、上段が30mらしい。巻きながらだと全貌を眺めることができなかったのでもう少し小さく見えた。遊歩道の先からは全体が見えるのだろう。竜ノ門の滝の巻きも上部は土の斜面で木につかまりながら滑落しないよう注意して登った。小尾根を乗っ越すところも露岩を下り気味にトラバースするので怖かった。最後にルンゼ状の草付きを木につかまりながら沢に下りた。

竜ノ門の滝
9/15 竜ノ門の滝の巻き。少し不安定な踏み跡。
河原
9/15 竜ノ門の滝から上の河原歩き。

 そこから30分ばかり明るい河原歩き。日も昇ってきて気分が良い。5mCS二条滝の手前の滝でHさんが進めなくなるが、Kさんが空身で引き上げに行き無事登れた。5mCS二条滝の手前で一本。思いのほか日差しが強く、日なたが暑く感じるくらいだ。標高は1350m付近、「関東周辺の沢」では第一のゴルジュのすぐ手前だろう。

5mCS二条滝の手前滝
9/15 5mCS二条滝の手前の滝でHさんが手こずる。
5mCS二条滝
9/15 5mCS二条滝の手前で一本とる。右が5mCS二条滝。

 5mCS二条滝を左からへつるように登る。落ち口に登るところがちょっと苦しい。Hさんが一回退き、2回目にテープで引き上げてもらった。さらに5分ほどで水量の多い○2、15m滝大瀑(関東周辺の沢)。右壁を登る。ブッシュも近いのでつかむものもあり、見かけより容易に登れた。

 大瀑の上からはまた明るい河原が続く。Yさんは途中で浅いところでイワナを見つけ、手づかみで捕ろうとしたが逃げられてしまった。

15m滝大瀑
9/15 15m滝大瀑。右から簡単に登れる。
二俣
9/15 二俣で一本。岩をおこして川虫を探すKさん(右)。

 右岸に幕場っぽいスペースを見送り、二俣。合流部はインゼル状になり、右俣には奥に大戸沢岳の稜線が見える。これから登るのは左またである。ここで大休止。Hさんが持ってきた釣り竿を出して釣ってみる。はじめはKさんと私で餌の川虫取り、Hさんが釣る。30分ほど釣っていたが釣果なし。竿を持ったまま左俣を遡行する。

 竿はHさんから私にバトンタッチするが、私は釣りの経験がないのでどこでどのように釣ったらいいのか分からない。ところどころ深くなったところに糸を垂れるが一向に糸は引かない。4,5回やってみたがからっきしダメ。そもそもイワナがいないところで竿を出しているのか、糸の垂らし方が悪いのか知らないが、釣れる気がしなかった。第二のゴルジュが始まる淵でHさんにバトンタッチ。ちょっと狭いところで私含めて待つがここもダメだった。この先、ヤブ漕ぎで竿がこわれてしまい、結局何も釣れなかった。

淵
9/15 第二のゴルジュが始まる淵で竿を出すがやっぱり釣れず。上はトイ状15m滝。
8m滝
9/15 8m滝が登れず左から巻いた。

 竿をザックの側面にしまい、第二のゴルジュに入る。まず○3、トイ状15m滝&8m滝。15m滝は左側から登れるが、8m滝は上部で岩がかぶっており登れない。しかたないので左から巻く。思えばこの8m滝以降、半分ほどの滝を巻くことになった。「関東周辺の沢」には特に高巻きを強いられるような表現はなく、この日水量が多かったか、沢のようすが変わってしまったのだろう(関東周辺の沢の記録は1982年遡行)。結果、第二のゴルジュの下から奥の二俣まで4時間ずっと登り通しだった。

12mスダレ状滝
9/15 12mのスダレ状滝。左から入る枝沢を登って巻く。
2段?10m滝
9/15 2段?10m滝。2段には見えないが、場所から察するにこれが2段10m滝と思う。

 ヤブを漕いで8m滝の上に出る。すぐ4m滝だが、4m滝は右から簡単に登れる。続いて12mのスダレ状滝。右岸に流れる小さい枝沢から巻く。上部で一歩だけどスリップしそうなところがあり、ザイルを出す。Kさんに登ってもらい、次に私が登る。ザイルを出したのはこの1か所だけ。ビレイするKさんの横を通って道を探す。何となく道っぽいところを登り、トラバース、滑りやすい草付きを下って沢床ヘ。2段?10m滝は左から越え、第二のゴルジュ終了。右から見落としそうなくらい小さな枝沢が下ってきている。

 第二のゴルジュ終了から10分で第三のゴルジュが始まる。第三のゴルジュは10m程度のほとんどの滝を巻いた。最初の10m滝からいきなり巻く。左から巻く。沢がV字谷でなかなか下れず、30分近く巻いていたが大して進んでいなかった。

10m滝
9/15 第三のゴルジュ最初の10m滝。左から巻く。
10m滝
9/15 10m滝。右から巻く。

 次に8mほどの滝。これは珍しく登れた。右から登る。谷が左に曲がって10m滝。これは登れず、右から巻き。笹ヤブが寝ていてトラバースが難しく、どんどん上に登る。後続のYさんから「登り過ぎだぞー」という注意を受け、下りながらトラバース。何とか沢に戻る。

10m滝
9/15 10m滝を右のルンゼから巻く。踏み跡はなく、ヤブ漕ぎ。
10m滝
9/15 10m滝を巻き終えるとしばらく小滝が連なる。

 この後はしばらく2,3mの小滝を登る。2か所ほど淵が大きいものがあって腰まで浸かってしまった。Kさんはなんとか上からへつろうとしていたが、落ちて全身濡れるリスクを考えておとなしく腰まで濡れてきた。最後にゴルジュ出口の○5、10m滝。「関東周辺の沢」では「難しくザイル要」とあるが、登れなさそうなので左から巻く。今日4回目の巻き。ここの巻きは割とましだった気がする。よく覚えていない。

10m滝
9/15 第三のゴルジュ最後の10m滝。左から巻く。
奥の二俣
9/15 奥の二俣。右俣は10mの滝をかけている。左俣に進む。

 しばらくで奥の二俣。右俣は10mの滝をかけている。ここから左俣へ。左俣に入って12m滝の手前で一本。下の二俣以来の一本、高巻きも4回、計1時間以上こなしているのでだいぶ疲れた。しかし、この先にテン場を探さねばならない。12m滝は左から簡単に越えられ、この先目立った滝はなかった。途中でHさんから私に移った釣り道具は連続する巻きですっかりこわれてしまった。竿の先端は折れてしまい針は行方不明、川虫を入れる箱はふたがなくなってしまった。

12m滝
9/15 12m滝を登るYさん。
幕営
9/15 標高1820mで整地して幕営。

 12m滝の上は比較的平坦な沢になり、テント場を探しながら歩く。左に小さな流れを分けたあたりから両岸うろうろしながら歩くが適地が見つからない。そこから少し登った標高1820mのあたりを整地してテン場とした。テントを張るには狭いので河原の石を集めて組み上げ、近くに葉の大きな植物を刈って敷き、その上にテントを張った。快適ではないが、4人寝られるスペースができた。テントを立てていると夫婦と見られる2人組が私たちを追い越して行った。幕営道具はなく、ヘッドランプを使ってでも今日中に下るそうだ。

対ブヨ完全装備
9/15 対ブヨ完全装備を施すKさん。下界なら職質されますよ。
流れ
9/16 翌日細くなった流れを登る。まわりはヤブだが、流れの上は割と歩きやすい。

 テントの少し下で調理、たき火をしたが、まわりに草と笹しかなく、薪がなかなか見つからなかった。夕暮れ時、恐ろしい量のブヨに襲われた。Kさんは口のまわりをタオルで巻き、薄い色付きレンズのメガネをかけ、カッパを着て完全防備していたが、そのようすは完全な不審者だった。さらにKさんは目の前の空間でランダムに手を叩いており、何匹かしとめたようである。そのくらいブヨが多かった。たき火に火がついた頃から虫が少なくなった。たき火の煙のおかげだろうか、日が暮れたからだろうか。外で晩飯を食べ、テントで酒を飲んで寝た。10:30就寝。

2日目

2007年9月16日(日) 晴れ

下ノ沢奥の二俣1720m…駒の小屋…会津駒ヶ岳・中門岳往復…駒の小屋…会津駒ヶ岳登山口=七入駐車場…硫黄沢出合堰上(泊)

2日目コースタイム
1820m付近5:30起床
7:20
駒の小屋8:11
8:25
会津駒ヶ岳8:38
8:41
中門岳9:16
9:30
駒の小屋9:56
10:30
水場11:04
11:14
会津駒ヶ岳登山口11:56
12:17
七入駐車場13:00
13:20
硫黄沢出合堰上13:55
21:10就寝

 やや明るくなった5:30起床。岩を積み上げたところで寝ていたYさんは背中が岩角にあたって何度か起きてしまったそうだ。餅入りラーメンを食べてザックを外へ出す。袖に付いていた釣り針とテントの網戸?が引っかかり身動きが取れなかった。テントをたたみ出発。

 今日は下ノ沢を詰めて会津駒ヶ岳・中門岳往復して下山、その後、実川硫黄沢に移動の予定である。15,16,17日の3連休だが16,17日は天気が崩れるという予報で、この先実川硫黄沢に行くかどうかは様子見である。

 テン場の1820m付近からは滝もなくだいぶ細くなった流れを登る。両岸とも笹が生い茂っておりところどころ笹をかき分けながら登る。沢が狭い分、迷うことはない。1870m付近で右に枝沢を分け進む。1900m付近で水涸れ。水を汲む。ここから涸れ沢を登る。ところどころに木いちごが実をつけていて食べてみるが酸っぱい。口の中に種が残ることもあって私は好きになれなかった。対照的にHさんは見つけた木いちごを次から次へとほおばっていた。「酸っぱくないですか?」と聞くと「甘いものもあるかもしれないから」と手当たり次第食べていた。振り返れば那須あたりの山が遠くに見える。

木いちご
9/16 木いちごを食べながら登るHさん。
ツメ
9/16 下ノ沢最後のツメ。駒ノ小屋の下の木道に出る。

 2000m付近で幕営適地を見つけるが、水はなく、あんまりお勧めできない。結局、私たちが泊まったあたりが何とか整地して泊まれる最後のところだったようだ。

 最後に乾燥した湿地のような気持ちのよい斜面を登り、会津駒ヶ岳の登山道に出た。木道で歩きやすい。そこから少し登って駒の小屋。天気はよく、近くの燧ヶ岳、至仏山、上州武尊山、日光白根山、男体山、女峰山、帝釈山、田代山、那須岳が見えた。

 駒の小屋で一本。小屋の手前が三叉路になっており、それぞれ会津駒ヶ岳、尾瀬御池、檜枝岐滝沢登山口への道になっている。また池塘があるが飲み水にはならない。大して人もいないがこれから日帰り往復の人たちがたくさん登ってくるに違いない。ザックを置き、会津駒ヶ岳と中門岳を往復する。

装備解除
9/16 駒ノ小屋で装備を解除。
記念撮影
9/16 会津駒ヶ岳山頂で記念撮影。左からH、中山、Y、K。

 駒の小屋から会津駒ヶ岳、中門岳までは全線木道が敷かれていた。歩きやすいが、急な登りでは階段状になってちょっと歩きにくい。会津駒ヶ岳の山頂は少し登ったところだが、展望はいまいちである。写真を撮ってから、会津駒ヶ岳より標高は低いものの湿地帯の美しい中門岳へ向かう。

 会津駒ヶ岳から少し下ると樹林帯を抜け、平坦で草原のような中門岳への道が見えた。ここも木道なので歩きやすい。中門岳まで散歩道のような木道をのんびり歩く。ところどころスズランがあったが、どれもつぼみのままであった。中門大池の横を通って少し登り、中門岳。中門岳には池塘があり、池塘をぐるっと一周するように木道が作られていた。一周するが適当な休憩場所がないので、中門大池へ戻る。会津駒ヶ岳から中門岳までの間にはいくつか池塘があるが、中門大池はとりわけ大きい。湿地帯の割に虫もトンボくらいしか見つからず気持ちよく休めた。持ってきたグレープフルーツを食べる。こんな稜線にこれだけ大きな池塘があるところも珍しい。

中門岳
9/16 中門岳へ向かう。
中門大池
9/16 中門大池でグレープフルーツを食べる。

 駒の小屋へ戻る。稜線の東隣の沢は沢登りの対象となっている御神楽沢でそのようすを眺めたかったが丸い稜線からはよく見えなかった。駒の小屋へ戻る途中、朝、檜枝岐を出たらしい人たちとたくさんすれ違った。今日も下の駐車場はいっぱいに違いない。

 駒の小屋から檜枝岐滝沢登山口に下る。正面に見える山は帝釈山、田代山で福島県・栃木県境になっている稜線だ。いっぺん歩いてみたい。エアリアマップを広げてのんびり山座同定しながら1990m付近の湿地帯に下る。あとは樹林帯の下り。燧ヶ岳の長英新道のようなところどころ土のえぐれた道を下る。途中、水場で一本とり後は会津駒ヶ岳登山口の駐車場まで下った。駐車場に着く頃には暑くてすっかり参ってしまった。

 車に乗って次に登る檜枝岐川実川硫黄沢へ向かう。

おわりに

 下ノ沢は巻きが多く、正直なところあんまり楽しめなかった。果敢に直登すれば楽しいのかもしれないが、登れなさそうな滝が多く、結果、巻いてばかりだった。

 「関東周辺の沢」には「沢は明るく岩質も堅く、巻き道の踏み跡がしっかりとしており、…(中略)…更に源頭部のヤブこぎも少なく、お花畑周辺に飛び出るのも気分爽快」とあるが、少なくとも「巻き道の踏み跡がしっかり」とはしていなかった。入渓者が少なくなっているのかもしれない。

 ただ、ツメの気持ちよさは「関東周辺の沢」の通りであり、会津駒ヶ岳〜中門岳の草原地帯も相まって非常によかった。

(2007年9月19日~22日記す)


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