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2006年夏 - 奥多摩・多摩川シダクラ沢


2006年6月3日(土)
場所
東京都西多摩郡奥多摩町/奥多摩
コース
JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=惣岳バス停…シダクラ沢出合…シダクラ沢遡行…大ブナ尾根…惣岳山…御前山…栃寄バス停…JR青梅線奥多摩駅
参加者
千葉高山岳部鈴木(3)
天気
くもりときどき雨
参考文献
06奥多摩・多摩川シダクラ沢の地図

はじめに

 去年、千葉高山岳部の現役の善養寺と鈴木と渡邊を連れて川乗谷逆川に行った。なぜそんなことをしたのかというと、私が高校のときは沢登りしたかったものの、技術もなく大学に入るまで諦めていたからだ。大学で沢登りを行うようになり、まがりなりにも身に付けた沢登りの技術で高校生を連れて行こうと思ったのだった。去年は沢登り体験をしてみたいと呼応するメンバーがいたため上記の三人を連れて沢登りをしたのであった。

 そして今年も同じように千葉高山岳部の連中を沢登りに連れて行こうと誘ったのだが、話に乗ってきたのは去年も沢登りした3年の鈴木だけ。残念だが、2度召集をかけてもらって鈴木しか来ないので諦めて鈴木と2人で沢登にいくことにした。2年生がいないと来年以降の沢登りの誘いが難しいのだがそれは来年また考えることにしよう。ただ、私が現役高校生だったときに思ったほど、今の高校生は沢登りに魅力を感じないのだろうかと世代間のギャップを感じた。8つほど歳が離れているしそれは仕方ないのかもしれない。単に私だけが沢登り好きだったのかもしれないが。

 場所は奥多摩の多摩川シダクラ沢にした。奥多摩は丹沢に比べて千葉から近く、行きやすいためである。そこで奥多摩で初級の沢を探し、見つけたのがシダクラ沢であった。まだ私が登ったことがなく、そこそこの人気(「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」で星3つ)なのが決め手になった。シダクラ沢だけだと日帰りであり、土日とも晴れなら2日とも山に行きたい私はさらにシダクラ沢源流の惣岳山を越えた南の沢も翌日に登ることにした。その沢が北秋川惣岳沢である。これも初級であり単独でも登れると判断したからだ。結果、ルートは多摩川から惣岳山を越えて北秋川へ、翌日北秋川から惣岳山を越えて多摩川へと往復のようなルートを計画した。しかし、実際には土曜日のくもりときどき雨という悪天に嫌気がさし、シダクラ沢を遡行した後その日のうちに帰ってしまった。

日帰り

2006年6月3日(土)

JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=惣岳バス停…シダクラ沢出合…シダクラ沢遡行…大ブナ尾根…惣岳山…御前山…栃寄バス停…JR青梅線奥多摩駅

コースタイム
惣岳バス停8:44
シダクラ沢出合8:55
9:13
出合4m滝9:41
550m付近10:35
10:50
二俣11:42
奥の二俣11:56
12:28
大ブナ尾根13:37
惣岳山13:30
13:55
境橋バス停15:37
JR奥多摩駅16:10
16:23

 翌朝5時半に起き、立川で鈴木に会う。奥多摩駅には8:23に着いてバスに乗り出発。バスは先発が鴨沢西行き、後発が丹波行き。丹波行きがすいていたので丹波行きに乗る。予想したとおりだが私たちが一番最初に降りた客になった。奥多摩駅から惣岳バス停までは10分ほど、そんなに遠くないためである。

 バス停で降りて青梅街道を離れ、多摩川へ下る道へ入る。惣岳神社の裏手に出て、そこから水平な道を多摩川の上流に向かって歩く。だいぶ切り立ったところに造った道だが、途中そんな狭い土地に公衆トイレがあった。惣岳のあたりはあんまり登山客もいないと思うのだが山に登らない行楽客が利用するのだろうか。その水平の道には小さな看板つきの棒切れが置いてあり、読んでみると「スケッチに使用していますので動かさないでください」とあった。スケッチに使うなら持ち帰ればいいのに、と鈴木と話す。5分も歩くと多摩川にかかる青い吊り橋が見える。渡るとだいぶ高いところを橋がかかっており、下に青い多摩川の水が見える。吊り橋をわたって左手へ下る道をたどっていくとシダクラ沢の出合に出た。

 シダクラ沢は何となく暗く、木が生い茂っていた。水量は多くもなく少なくもない。正面には最初の4m滝があり、ハングしているようにも見える。天気はくもり、気温はちょうどいいくらい、水温はやや冷たい。4m滝を片目に見ながら入渓準備。

惣岳バス停
6/3 惣岳バス停。多摩川に架かる橋を渡り、シダクラ沢へは10分。アプローチよし。
出合4m滝
6/3 出合4m滝。鈴木のトライ。

 出合の4m滝を見てみるとホールド・スタンスが水流の中にある。しかも上部は水流をもろに受けないと登れそうにない。とりあえず空身で取り付こうとするが飛び散る水滴が冷たく岩に触ることすらためらってしまった。鈴木も続いて試しに取り付くと、鈴木は岩をつかみ2歩ほど登った。私はいきなり濡れるのも嫌なのでもう巻くつもりだったが、鈴木に「ザイルあったら登る?」と聞くと試してみたいとのことなので私は右から巻いて上からザイルを垂らした。鈴木はハーネスがないのでシュリンゲで作った簡易なハーネスを用いる。滝自体はそう大きくないので見えるところからザイルダウンし、鈴木の挑戦が始まった。はじめは上段に達することなくいったん退却。2回目に上部の水流が強いあたりにヘルメットが見えた。水流がヘルメットにぶつかり、四方に飛び散っている。そこまで来られれば私のビレイ地点からもそう遠くない。水流を受けたままで少し止まったものの、無事登りきることができた。当然鈴木はびしょ濡れではた目から見ていても寒そうだった。しかし、本人はそんなに寒くはなさそうだった。

 最初の4m滝から5分で堰。上部に切り欠きがあり、そこから水が流れている。傾斜は緩やかなので登れそうだが、手前の淵が深いので左手の道に沿って登る。そのあとはしばらく平凡な沢で小滝がときどきある程度。平凡で暗いところは鳥屋待沢の下部にも似た渓相である。こころなしか水量もほぼ同じくらいに感じた。

 平凡でそんなに難しくはないのだが、鈴木は苦戦していた。今回鈴木は登山靴で遡行しているためだ。なぜ沢タビではなく登山靴かというと単に沢タビが用意できなかったためで、鈴木も年に一度くらいしか行かない沢のために5000円ほどの大金を出す気にならなかったからである。

小滝
6/3 下部の小滝。濡れながら快適に越える。ただし、登山靴の鈴木は苦戦する。
2段16mの滝。左から巻く。
6/3 取水堰。深さ40cm。ピカチュウの身長と同じらしい。

 堰から10分で今度は取水堰。深さは40cmで、鈴木からピカチュウの身長と同じであることを知らされる。どうでもいい知識が増えてしまった。堰のすぐ後に滑れそうなところがあったが、残念ながらそこは滑れなかった。その後鈴木は4m滝で濡れたのが寒かったのかカッパの上を着ていた。

 取水堰からまた10分で4m二条滝。上段と下段に分かれており、下段は右手からすたすたと歩いていける。上段も簡単で私は二条の真中あたりに取り付き、左に逃げ、鈴木は初めから左を登っていた。私は簡単だったが、鈴木は登山靴のせいもあって苦戦していた。そんでまた小滝をかける沢を登っていく。

 4m二条滝のあと15分ほどで仕事道が横切る。倒木に白いタオルが結ばれていたので気がついた。白いタオルであり、「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」の記述「目印に赤テープがつけられている」とは異なる。仕事道は左岸に下流側から現れ沢を渡っているがその先ははっきりしない。なんとなく沢に沿っているようにも見えるが、右岸沿いの道はあるのだろうか。仕事道の後は小さなゴルジュで右岸を小さく巻いていく。小ゴルジュのあとにすぐ2段6m滝。傾斜はゆるく別に難しくはなさそうだ。「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」も「東京周辺の沢」もこの滝がシダクラ沢でもっとも難しいように書いてあるが、少なくとも私にはシャワークライムを強いる最初の4m滝よりは楽だと感じた。

2段6m滝
6/3 2段6m滝。そんなに難しくなかった。
2段6m滝
6/3 2段6m滝を越える鈴木。

 その後は3mほどの小滝をいくつかかけながらのんびり歩く。ときどき倒木やツルが沢にかぶさっていてそれを避けるのがめんどくさい。途中で一本とる。地図を見て現在地確認をするが、沢がほぼまっすぐ南に伸びているのと、枝沢が確認できないのとでどこにいるのかよく分からない。休憩を終えて歩き出しても小滝と平凡な河原は続く。小滝を登るのは楽しいが、それが長いためやや冗長に感じる。

だいぶ登ってきたあたり
6/3 だいぶ登ってきたあたり。傾斜は急になってくるが難しい滝は現れない。
3mハング滝
6/3 3mハング滝。左からすたすた登れる。

 河原歩きを40分ほど続けた後で3mハング滝。すぐ手前に涸れ沢が左手から入っている。ハング滝は一見難しそうに見えたが、近づいてみると左手から簡単に登れる。ハング滝を過ぎると沢は傾斜を増し、滝も多くなってくる。4mほどの滝を次々と登っていく。どれもそんなに難しいものではない。だんだんと滝の向こう側が白く見えてきてやがてガスに巻かれてきた。ちょうど左岸に大岩のあるあたりである。

左岸に大岩のある滝
6/3 左岸に大岩のある滝。これも難しくない。
奥の二俣
6/3 霧のかかった林。奥の二俣にて。

 11:40、ハング滝から20分で二俣。ここは「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」も「東京周辺の沢」も右を指示しているので右へ。水量も半分になり、さして難しいところもなく奥の二俣に到着。ちょうどここで水が尽きるので各自水を汲む。鈴木は裸足+登山靴を靴下+登山靴に替えていた。登山靴はびしょ濡れなので30分ほどだらだらと休み乾かせるだけ乾かした。しかし、化学繊維でもないのでほとんど乾かなかったようだ。もっとも回りもガスで覆われていて、かつ気温が露点を下回っているのが明らかなので相対湿度100%であり、そう簡単に乾かないだろう。ガスに囲まれ天気が悪いと思いながら休んでいるとポツリポツリと木の葉から落ちてくる雨がある。天気は悪い方向になっているのかもしれない。もっとも私はガスで茫漠とした木々の重なりを見るのは好きなのでほとんど雨を受けずにこのような風景を見ることができたのはよかった。ただ雨が降ってきたのでもう当初の予定である翌日の惣岳沢は諦めることにした。こんな空模様では夜中に雨が降ってきそうだし、明日も晴れるとは限らない。その辺をマーフィーの法則と絡めて「今日帰るから明日は晴れるのか、くそう」などと話した。

 大休止を終えて歩き出す。前掲の2書籍を参考に奥の二俣を左に入り踏み跡を探すが見当たらない。右の小尾根に取り付くらしいので注意してみるが、よく分からない。右には直径50m高さも50mほどありそうな大岩があり、そのふもとは何となく道に見えたためこれをたどるが奥の二俣の右俣の上部に出てしまった。よく分からないまま大岩を右から巻き、小尾根に出るがやはり道ははっきりとしない。この辺でガイドブックに載っている「明瞭な道」を諦めこの小尾根を登ることにした。ところどころ石が安定しておらずずるずると落ちるが仕方がない。左手の尾根と合わさり、2回ほど平坦なところを過ぎ、やがて稜線が見えてきて大ブナ尾根にたどりついた。結局前掲の2書籍にかかれている赤テープや踏み跡は見られなかった。それでもヤブはなく、つらいのは傾斜と斜面の不安定性だけだったのでましな方か。

シダクラ沢のツメ
6/3 シダクラ沢のツメ。ヤブはほとんどないが、長く感じる。
大ブナ尾根に出たところ
6/3 大ブナ尾根に出たところ。惣岳山はすぐそこかと思っていたら意外と遠かった。

 大ブナ尾根に出てから左手へ惣岳山に登る。大ブナ尾根はおととし2004年12月に登ったことがあるがよく覚えていない。ただ急登が続く尾根だと覚えていた。急登は急登なのだが、途中1220m付近でピークにたどり着きいったん下るあたりはまったく覚えていなかった。何よりもっと惣岳山の山頂よりに出ると思っていたのが、思いのほか登りが長く、それまでのツメのしんどさもあいまってだいぶ疲れてしまった。意外と人が少なく下りの人2人しか見なかった。

 道が尾根の左側の樹林帯に誘導され、尾根が土の流出のために通行止めになっているあたりを過ぎてやっと惣岳山山頂。疲れた。山頂には人が1人おり、私たちが休み始めたらどちらに下りますかと尋ねられた。はっきり決めていなかったが御前山に登るか登らないかして一番近い栃寄に下りますと答えておいた。その人は私の返事を聞くとそうですか、といって御前山へ向かっていった。なお、惣岳山から北へ伸びるシダクラ尾根は「山道」という看板があり、ロープで安易に入れないようにしてあった。

 そのあとは靴を履き替えて御前山に行き、避難小屋の脇を通って栃寄へと下った。栃寄への下り道は歩いたことがなかったが、途中から車道が交錯し下る道が分かりにくかった。私たちはできるだけ迂回せずに下るよう山道を積極的に下った。途中、地図記号にある立派な滝があるようだったが、見当たらなかった。特に展望台みたいになったあたりがあってそこは何かを見るようになっていたのだが、ガスのためか足元に流れる沢しか見つからなかった。

 最後に車道に出てから青梅街道へと歩いていくと境橋バス停に着いた。バスは10分前に出発したあとで次のバスは40分待ち。待つのもかったるいので奥多摩駅まで歩くことにした。40分のんびり歩いて奥多摩駅に到着。6月になったからかヘルメットを持った沢登りっぽい人を何人か見ることができた。10分ほどの間に着替えてホリデー快速奥多摩号に乗り、立川駅で解散した。

おわりに

 予定通りに惣岳沢には行けなかったが、なぜか疲れた山行だった。単に1泊の荷物をしょっていったのが重かったのだろうか。2週間前の峰谷川坊主谷より標高差も小さいと思うのだが。何にしろ体力が少し減っているのかもしれない。トレーニングの意味をこめても1泊以上の山行に行っておいた方がよさそうだ。

 惣岳沢に行かなかったのは悪いことではなかったと思う。御前山からの下りでも雨に降られたし、ツェルトで泊まるには条件が悪かった。薪も濡れているから焚き火も難しいだろう。かつて未明に雨に降られて夜明け前に駅に下った真名井沢のことを考えると、正しい判断ではないかと思う。

(2006年6月3日記す)


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