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2006年春 - 奥多摩・三頭山北西県境尾根


2006年3月18日(土)
場所
東京都西多摩郡奥多摩町・檜原村/奥多摩
コース
JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=深山橋バス停…庄の指…三頭山北西県境尾根…入小沢ノ峰…三頭山…三頭の大滝…都民の森バス停=数馬バス停=(西東京バス)=JR五日市線武蔵五日市駅
参加者
辛島(1)
天気
晴れ
06三頭山の地図

はじめに

 3月には祝日が1日ある。春分の日、21日である。今年は春分の日が火曜日にあるため、残念ながら3連休ではない。それでも土日2連休なのでどこか山に行きたい。まだ3月なので沢登りには早いため、県境縦走を進めることにする。奥秩父三国山以南で登っていないのは奥秩父三国山〜甲武信ヶ岳、小菅川〜三頭山〜奥多摩三国山の2区間。小沢峠〜飯能の成木尾根は先週片付けた。2連休なので1泊2日で前者をやりたいのだが、前夜発、しかも間違いなく雪が多いので準備に時間がかかる。そこで後者の小菅川〜三頭山〜奥多摩三国山を考える。これならば三頭山避難小屋で一泊すれば確実にこなせるし、前夜発にもならない。それでこれを計画していたのだが、実は18日土曜日に飲み会の予定があることを思い出す。なので1泊2日は無理である。行くのをやめるかどうか迷ったが、結局前半部分の小菅川〜三頭山を日帰りで登ることにした。メンバーにはワンゲルに声をかけた結果、辛島が来ることになった。

日帰り

2006年3月18日(土)

JR青梅線奥多摩駅=(西東京バス)=深山橋バス停…庄の指…県境小菅川徒渉地点…三頭山北西県境尾根…入小沢ノ峰…三頭山…三頭の大滝…都民の森バス停=数馬バス停=(西東京バス)=JR五日市線武蔵五日市駅

コースタイム
JR青梅線
奥多摩駅
8:23
8:30
深山橋バス停8:58
県境小菅川徒渉地点9:26
9:45
三頭山北西県境尾根
880mに出る
10:35
10:45
三頭山北西県境尾根
970m
10:50
11:00
入小沢ノ峰11:35
三頭山12:12
12:45
三頭の大滝13:24
都民の森バス停13:40
14:10
数馬バス停14:25
JR五日市線
武蔵五日市駅
15:30
15:55

 8:30奥多摩駅発臨時鴨沢西行きバスに乗って深山橋バス停で下車。本当なら小菅行きのバスに乗って庄の指か金風呂でおりればよいのだが、あいにく小菅行きは7:30発と早く、始電でも間に合わないため鴨沢西行き(本来の便は丹波行き)に乗った。小菅行きと鴨沢西行きの分岐点となる深山橋から県境のある庄の指までは2km。30分なら充分歩ける距離なので深山橋から歩くことにした。

 深山橋で降りたのは私たち2人だけ。周りを見ても先発の丹波行きで降りた人はいないようだ。深山橋から登る山には奥多摩湖南岸の三頭山ムロクボ尾根と奥多摩湖北岸の赤指尾根、大寺山から鹿倉山への縦走があるが、赤指尾根はマイナーなのでこれを登る人はまずいない。三頭山に関しては奥多摩湖南岸から登る一般ルートにムロクボ尾根とヌカザス尾根の2つがあるうち、現在はムロクボ尾根しか使えないのでもう少し降りる客がいそうなものだが、いなかった。ヌカザス尾根からのルートが使えない理由は現在奥多摩湖の水位が下がっており、奥多摩湖を渡るための小河内神社のドラム缶橋が取り外されているためだ。

三頭橋とヌカザス山

↑三頭橋とヌカザス山

 深山橋を渡り、東に三頭橋を分ける。三頭橋からの車道は月夜見山を経由し都民の森ヘ通じている。小菅川に沿う国道139号線を歩く。すぐ下には奥多摩湖上流の水面が見える。水面より上の岸は土や岩盤が見えており、ダムの水位が下がっているのがよく分かる。正面の高い山は地図で見ると入小沢ノ峰のようだ。15分ほど車道を歩くと静水面は流水に変わった。ダム湖の堆積した土の上に水が流れている。水はコーヒー牛乳の色で汚い。湖岸は両岸ともガケになっており、登るのも下るのも難しそうだ。しかし庄の指を過ぎ県境の工事現場につくと何とか下れる斜面が現れた。昨年の夏、大寺山下山後、様子を見に来たときは対岸との間にロープを張り、切った気をこちら側に運んでいたのだが、今日は河床でショベルカーが動いている。やはり工事中なのだろうか。まあここは川を徒渉するだけなので横をちょっと通してもらえばいいだろうと小菅川へと下降する。

小菅川渡渉

↑小菅川渡渉

 下りついた左岸の河原はショベルカーの通路となっているようで上流にも下流にも幅の広いキャタピラの跡があった。ショベルカーは私たちが下っている間に下流に移動してしまったので、特にとがめられることはなかった。ここで靴と靴下を脱ぎ、川を徒渉する。川の深さは足首程度、川幅は5mほど。十分徒渉可能な深さだ。辛島がすぐ準備して渡りはじめる。水に入って3秒ほどはそんなに冷たくない、大丈夫だと言っていたが、10秒ほどで渡り切ると冷てえと述べていた。私も追って渡ると始めは冷たく感じないのだが、対岸に渡る時には動けなくなるほど冷たかった。右岸に移ってまた靴を履く。足を拭くタオルを辛島に持ってくるよう告げていたのだが、私は自分の分を忘れていたので辛島からタオルを借りた。靴を履いている間、対岸を釣り師が上流から下流に歩いていたのを見た。玉川本流の丹波川に比べて人は少なそうだが、やはり釣り人は入るらしい。なお、この地点に地形図には橋があると私は思い込んでいたのだが橋はない。てっきり実際には橋はなくなってしまい、地図にだけ橋が載っているのだろうと思っていたが、あとでこの橋のようなマークは県境のマークの一部であることに気付いた。「橋があるはずなのにないよな」と辛島に話しながら自分で気が付いたのだった。にしてもややこしいマークである。

都県境尾根取り付き部

↑都県境尾根取り付き部

 靴を履いて県境尾根を眺める。小菅川に落ちるところはかなり急な土の斜面で取り付きにくい。下流側の砂防ダムのある沢を少しだけ登り、木の根をつかんで何とか登る。10mほど登ると水平な整備された道があり、驚く。砂防ダムへの仕事道かもしれないが、それにしては古くからありそうなよく踏まれた感じの道である。ひょっとしたら国道ができる以前の小菅村へ通じる道なのかもしれない。地形図を見返してみると丹波の地図には小菅川右岸に道があるが、下流側奥多摩湖の地図には道がない。もう廃道扱いということだろうか。そこからさらに尾根を登る。始めは急で木を掴みながらでないととても登れないが、登り始めて1分ほどで何にもつかまらず何とか登れるくらいの傾斜になる。さらに登っていくと何となく踏み跡のようなものも見える。正面の針葉樹林帯に向かって登っていくとまた水平方向の道を見つける。道といっても踏み跡程度、そう見えるだけで道ではないかもしれない。さらに登ると右手の針葉樹林帯の尾根と合体し、針葉樹林帯を歩く。右手の沢には青い人工物が見え、誰かが林の管理をしているようだ。尾根を合わせてから踏み跡ははっきりし、鹿の足跡も見られる。途中途中に東京都の標も埋めてあり、仕事道であることが分かる。右手の沢の上部の斜面は腰ほどの高さの葉のないかん木が生い茂っており、トゲのある木も混じっている。なので踏み跡を選んで登る。地形図でも見えるように県境尾根は緩やかに左に曲がっていき、玉川右岸尾根と合流する。何とか急登をやり過ごし、この玉川右岸尾根880m付近に達する。

玉川右岸尾根880m付近

↑玉川右岸尾根880m付近

 たどりついた玉川右岸尾根は岩の出たピークであり、木の合間から玉川の向かいの小焼山が見える。三頭山らしき山も奥に見えたが、今から考えると三頭山西の神楽入ノ峰だろう。ピークにはやはり東京都の標があり、玉川右岸尾根には踏み跡があった。尾根の下側も上側も道があるようだ。ここは眺めがよいので一本とるにはよいのだが、1時間歩いていないのであと少し歩いて一本とることにする。ここからは傾斜もなだらかで木も切った跡がありだいぶ歩きやすい。地図が変わる標高970m付近で一本とる。すぐ下は小菅川からはっきりしない尾根を合わせており、広くなっている。テントなら30張りくらいできそうだ。

標高970m付近の平坦部

↑標高970m付近の平坦部

 風でからだが冷えないように上着を着る。10分休んだのち出発。次は入小沢ノ峰か行けるようなら三頭山まで行きたい。入小沢ノ峰へは急登だがときどき傾斜の緩いところがある。25000分の1地形図には玉川から今いる県境の玉川右岸尾根に登る道が載っており、地図上ではこの道は県境の尾根が急登になる手前の標高990m付近で尾根と合流しているが見あたらない。見あたらないと思いながら急登が始まり、歩いていると右下の玉川から立派な道が来て尾根で折り返して右奥へ登っていっている。標高は急登が始まってしばらくということから1050mから1100mといったところだろうか。もし、この標高の推定が正しいならこの立派な道は25000分の1地形図の道とは異なる道である。地形図に載っている玉川沿いの道は廃れ、この道に付け替えられたのかもしれないが、単に地形図に載っている道を見のがしたのかもしれない。ここまで登ってきた玉川右岸尾根は一部ヤブがうるさいところがあったが、この道はよく整備されていてもはや仕事道のレベルではなかった。一般登山道のレベルである。この道はエアリアマップ奥多摩には載っていないがなんだろう、東京都水道局の水源巡視路だろうか。そしてこの立派な道は何度か折り返すように私たちが登る尾根と交わった。その回数は確か3回。3回交わってからそれでも尾根を直登し、入小沢ノ峰に達した。

玉川から登ってくる道

↑玉川から登ってくる道

 左からヌカザス尾根が合流し、右手のピークに看板があった。看板には私たちの登ってきた方向を指して金風呂とあった。尾根伝いに金風呂に下れるのかもしれないし、途中で例の立派な仕事道に乗り換えて玉川沿いに下るのかもしれない。入小沢ノ峰の看板の前に立つと正面に三頭山が大きい。大きいが、標高差はさほどではない。ここからは一般登山道であり、三頭山へ登るメジャールートの一つであるが人の気配はなく、依然として静かな山である。もし予定のルートが思いのほか登りにくく、13時までに三頭山にたどり着けないようだったら入小沢ノ峰でムロクボ尾根を下って下山する予定だったが、時刻は11:35で三頭山までせいぜい1時間なので三頭山に向かうことにする。時刻はあとの飲み会の都合だ。

入小沢の峰

↑入小沢の峰

 入小沢ノ峰から三頭山に向かう。しばらく下り道となる。下りきると玉川右岸尾根で何度か交わった仕事道が合流する。看板には「仕事道」とあり、どこへ達するかは書いてなかった。歩きやすい尾根道をしゃべりながら歩く。鞍部のあたり、西側山梨側は平らなところがあり、テント張れそうだと話す。ほぼ水平な道を歩き終えると鶴峠への巻き道が分岐する。ここから三頭山の登り。しばらく歩くと雪が現れた。1000mくらいから雪があるかと考えていたが、入小沢ノ峰1302mでも雪は見あたらず意外と雪は少ないと感じていた。ここで見られた雪も1,2cmの残雪でとても足が埋まるようなものではない。まだら模様の雪を踏みながら歩く。右手鶴峠へ通じる尾根には斜面に雪が見られ、滝のように見えた。雪も三頭山山頂が近付いてくると道にも目立つようになり、木の葉の下にアイスバーンがあってすべりやすい。しかし、それもわずかで三頭山山頂に出た。

三頭山山頂

↑三頭山山頂

 これまで全く人にあっていないにもかかわらず、三頭山山頂には6パーティ15人ほどいた。ここまで全然人に会っていなかったため、てっきり2,3人くらいしかいないだろう、ひょっとしたら誰もいないかもと思っていたらだいぶ人でにぎわっていたので驚いた。おそらくみんな南側の都民の森から登ってきているのだろう。それならば標高差も300mほどで済む。ベンチを探しそこで大休止。南から風が吹いてきてそこのベンチがあいていたわけが分かる。寒いのですぐ上着を着た。休んでいるとしばらくしてくもっていたはずの南西方向に富士山が見え感動した。今年初めて山で富士山を見た。大岡山からも冬で天気がいいときは富士山が見えるので何度か見ているが、やはり山から見た方がよく見える。東京より近いこともある。

 帰りは都民の森を通り、三頭の大滝経由、都民の森バス停まで。約1時間。まず笹尾根を南に下り、ムシカリ峠まで。階段が続き歩きにくい。ものの5分くらいだが腹が立った。ムシカリ峠から三頭山避難小屋を往復する。三頭山に来るのは高2以来6年ぶり3回目だが、避難小屋も同じだ。久しぶりに見た避難小屋は変わっておらず、中も広くて快適そうだった。ただ、太陽電池と小さな風車が見え、配線を見るに中で何か電気を使っているようだ。雨量計か気温の自動計測でもしているのだろうか。

三頭沢の残雪

↑三頭沢の残雪

 避難小屋を出てムシカリ峠に戻り、三頭沢沿いに下る。都民の森ではこの道にブナの路という名前がつけられている。下り始めてすぐ避難小屋の水場が見えたが、雪が埋まっており水が流れているかどうかは確認できなかった。のんびりと三頭沢左岸の道を下り、左から道を合わせると何度か沢を渡るように道がつけられている。沢の水はくせがなくおいしい。山の様子は木々が葉を落とし秋と同じ風景だが、谷の雪渓から水が流れているようすは春を感じさせる。やがて三頭ノ大滝に着いた。周りは休めるよう公園地化されており、トイレもある。滝の下部には滝を見るための吊り橋がかけられており、じっくり滝をおがむ。落差は30mほどあるが多段であり簡単に登れそうだ。そのあとは廃れたようなけやきの路経由で車道に出てすぐ都民の森入口に着いた。13:40着、全行程終了である。

 バスは14:10発。その間売店を見たりして過ごし、バスにのって下山した。バスは数馬〜都民の森間は無料であり、重宝する。数馬で武蔵五日市行きのバスに乗り換え、ぐうぐう寝た。武蔵五日市の駅に着く頃にはバスは満員になっていた。武蔵五日市駅で解散。辛島は南武線経由なので来た列車にすぐ乗り、私は新宿へ行かなければならないので次のホリデー快速に乗って帰った。

おわりに

 終わってみると目的の県境尾根をすべてたどることができ満足である。岩が出ていたり、急すぎて登れないところがあって全部はたどれないと踏んでいた。それは先週の成木尾根縦走で県境尾根をたどるのがかなり難しいと感じたためで、今回はそう迷うことがなくてよかった。小菅川の徒渉も気にしていたポイントであるが、水量が少なく比較的簡単に渡ることができた。スピードも速く、結局休憩2回だけ(玉川右岸尾根970m付近、三頭山)で歩いてしまったので、なんだかあっさり終わってしまった。そこにやや物足りなさもあるものの、あとに予定があったわけでたぶんベストの時間割だっただろう。

 あと奥秩父三国山以南の県境で残っている区間は奥秩父三国山〜甲武信ヶ岳、三頭山〜奥多摩三国山となった。それぞれ次の春までには登ることだろう。というのはそろそろ沢登りのシーズンが始まるので、そうなれば沢登りにかかりっきりになるので。

(2006年3月20日記す)


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