山ノ中ニ有リ山行記録一覧2005年山行一覧>上武国境・三国山〜赤岩峠[2/2]

2005年春 - 上武国境・三国山〜赤岩峠[2/2]


2005年5月3日(火)、4日(水)
場所
長野県南佐久郡川上村・群馬県多野郡上野村・埼玉県秩父郡大滝村/西上州
ルート
2日
大岡山=二子玉川=溝の口=(南武線)=立川=(中央本線)=高尾=(中央本線)=小淵沢(泊)
3日
小淵沢=JR小海線信濃川上駅=(川上村営バス)=梓山バス停…新三国峠…三国山…ガク沢頭…滝谷山…ブドー沢の頭(泊)
4日
ブドー沢の頭…帳付山…天丸山…倉門山…六助のコル…赤岩峠…小倉沢集落=秩父鉄道影森駅
参加者
単独行

上武国境・三国山〜赤岩峠の地図

2日目

2005年5月4日

ブドー沢の頭…帳付山…天丸山…倉門山…六助のコル…赤岩峠…小倉沢集落=秩父鉄道影森駅

2日目コースタイム
ブドー沢の頭
1658m三角点峰
3:00起床
4:30
1609m峰の少し先
(カメラ捜索)
5:00
5:15
帳付山5:45
5:54
馬道のコル6:40
天丸山分岐6:52
6:56
天丸山7:05
7:28
天丸山分岐7:40
7:50
六助のコル8:38
1510m峰9:17
9:38
ワイヤー塔のあるコル9:50
1443m峰10:18
1493m峰10:50
赤岩峠10:58
11:05
赤岩岳11:25
11:38
赤岩峠11:51
11:54
小倉沢集落12:32
南天山北面12:45
秩父鉄道影森駅13:46
14:14

 シュラフを持ってきたら意外と暑くて脱いだ。朝3時起床。インスタントラーメンを食べてから外を見るとまだ暗い。さすがに明るくならないと踏み跡を見つけづらいので、シュラフに入ってもう少しまどろむ。ここまでで使用した水は約3リットルであった。まだ5リットルある。余裕を持って行けそうだ。

 4時を過ぎると明るくなる。急いで仕度をし、4:30出発。だいぶ夜も白み、ヘッドランプ無しでも歩けるくらいになった。まずは1609m峰に向かう。少し北へ進み諏訪山への尾根を左に分け、右の稜線に入る。何となく諏訪山への踏み跡が見えた。しばらく笹の中の踏み跡を行くと1609m峰。1609m峰からは笹ヤブがなくなり、暗い樹林帯にツツジとシャクナゲを混ぜた道になり歩きやすい。稜線も明らかに左に曲がり、地形図との対応もとりやすい。

 少し行くと東側の展望が利くところに出る。岩の尾根で赤岩尾根っぽい。ちょうど赤岩尾根のあたりから日が昇り始めていた。逆光と分かっていながらシャッターを押す。このあたりは腰を落として足を下ろすようなところもある。少し下ると帳付山と見られるピークが現れた。写真を撮ろうと思うとカメラがない。あせる。記録として貴重なデータたちが失われてしまう。ザックを置いてポケットやザックにはカメラがないことを確認してから急いで戻る。幸い最後にカメラを取り出したのは5分前、ちょうど日の出の時刻を5時と確認した後だったのでさほど離れていないはずだ。日の出の写真を撮った所まで戻るが、カメラはない。稜線からおっこっていないか下のほうも丹念に調べながらザックの場所に戻る。なかなか見つからない。ザックの近くまで来て足元の小枝に黒いカメラのソフトケースがぶら下がっているのを見つける。どうやら、かがんで下ったとき、ポケットに入っていたカメラのひもを小枝が釣り上げたようだった。ほっとしてザックのところに戻る。ロスタイムは15分といったところだった。

 1609m峰から帳付山までの間は岩峰が多く、登りにも下りにも巻きを強いられる。ザックを背負いなおしてからも群馬側の赤テープにしたがって下り、次は大きな岩が稜線に沿っているので左から岩の基部を登っていった。これを登ってもまだ帳付山ではなかった。意外とニセピークが多い。このピークを越えると次は笹に覆われたコル。また道がない。笹をかき分け登っていくとやがて笹はなくなりただの暗い樹林帯になる。地形図に示されたとおり70mを登ると東西に長い帳付山についた。道の真中に出てしまってどちらに行けば山頂なのかわからない。とりあえず左に行ってみると帳付山の看板が見つかった。

ブドー沢の頭に張ったツェルト
5/3 ブドー沢の頭1658.1m三角点峰に張ったツェルト。
1609m峰を過ぎて夜明け
5/4 1609m峰を過ぎて夜明け。右手に赤岩尾根と八丁尾根が見える。このあとカメラをなくして大慌てする。

 ザックを下ろして一休み。ここからは山と渓谷社のアルペンガイドや昭文社のエアリアマップにも道として載っており、安心して歩くことができる。がけになっている北に目を向けると木々の間から西上州の山が見える。ブドー沢の頭で尾根を分けた諏訪山も見えた。これからいく天丸山のほうはよくわからない。

 適当に休んで出発。しばらく行くと天丸山がよく見えるところに出る。奥穂〜西穂間のジャンダルムのような形をした山だ。見ると登れるかどうか不安になる。ジャンダルムには行ったことがないし。その先、南側の展望が得られるところがあり、ブドー沢の頭や滝谷山から南天山へ続く尾根を見ることができた。始点となった三国山はもうどれだかわからない。ところどころ岩峰で直登したり巻いたりするが、道ははっきりしているし、ロープもついていたりして今までに比べるとずっと歩きやすい。やがて南の枝尾根のところに出ると、看板があり、ちゃんと迷わないようになっていた。よく考えると指導標は三国峠で「三国山・御巣鷹山」の看板を見て以来だ。

帳付山山頂
5/4 帳付山山頂。東西に細長い山頂。上武国境稜線はここで北から東に折れ曲がる。
天丸山
5/4 ジャンダルムのような天丸山。稜線から少し離れた所にあり、往復した。

 岩峰を右から巻くようにして下ると馬道のコル。きれいに整備されたコルで北へ社壇乗越への道が分かれている。少なくとも馬道の入口はしっかりした道に見えた。埼玉側は笹が生い茂り道は判然としない。さらに倉門山に登り返す。岩峰を一つ右から巻き、登りつくと天丸山分岐。天丸山は国境稜線から群馬側に離れておりここにザックを置いて往復する。今回の山行の途中で唯一国境稜線を離れる。

 天丸山への尾根は緩やかに下っていき、やがて天丸山の南壁に達する。見上げるような壁だ。さてどこから登るのだろうと見回すと白くて太いロープが固定されている。その岩溝から登るようだ。登ってみるとそんな壁はずっと上まで続いている。ところどころロープがあり、登るのにはそう困らない。上の方に来ると山火事のためか、火山灰のような砂があり、滑りそうで怖い。最後に看板があり、天丸山山頂にたどり着いた。

馬道のコル
5/4 馬道のコル。左が天丸山分岐、右が帳付山、奥が埼玉県、手前が社壇乗越に至る馬道。
ツツジと1510m峰(右)
5/4 ツツジと1510m峰(右)。六助のコルへの下りにて。

 天丸山の山頂は過去の山火事のためだいぶ眺めはよいが、それでもいくつか木は生えており、よく見えるのは西の諏訪山・八ヶ岳方面、北の榛名山方面、少しずれると東の野栗沢のあたり。南の方は見えなかった。東側、赤岩尾根P1の1589m峰の北の1377m峰から北西に伸びていく尾根が顕著だった。去年間違って下りそうになった尾根だ。せっかくなのでタイマーで自分の写真を撮ったり、八ヶ岳を撮ったりする。が、山頂で3枚撮ったところでデジタルカメラの調子がおかしい。壊れたか、と思ったがレンズの出入りが遅い。ファインダーのLEDの反応からすると電池切れらしい。残念ながら持ってきたOlympus mu-30 DEGITALは専用の電池なので電池交換はできない。しばらく電池を休ませたら撮影できるかと思ったがやはりダメだった。時刻も7時だし、誰か登って来ないか待っていたがこれもやはりダメだった。一人さびしく山頂を辞す。

 急な南壁は無事下ることができた。でもロープがなかったら難しかっただろう。穂高のジャンダルムは鎖場があると聞いたが、名に聞くジャンダルム、きっとこれより難しいのだろう。ザックを置いた天丸山分岐に戻りまた水を少し飲む。地形図を見るとここから倉門山まで70mの登り。途中二重山稜の北側を歩き、倉門山1572m峰にたどり着いた。ここまでは大山と天丸山を合わせて登る人が多いようでまったく迷うようなところはなかった。

 倉門山を過ぎると赤テープは大山へ向かうよう群馬側へ急に下っていく。つい引き込まれたが、地図を見直して国境稜線へ進路を取り直す。倉門山から六助のコルへはあまり人がいないらしく、また道は分かりにくくなる。ここからはアルペンガイドには紹介がなく、エアリアマップには所要時間の書き込まれていない赤い破線が書き込まれ、途中に「道不詳、岩場あり」とある。次の1540mピークからは南側に枝尾根が伸びており、迷いやすい。ピークに登ると焼岩が見え、地図と照らし合わせることができる。

 そのあとは大きな岩峰を赤テープにしたがって南の埼玉側から巻く。しばらく岩の基部を巻くがやがてテープもなくなり、道もなくなる。この先、稜線は南に急カーブするので少し下ってみるが、道はない。前方に見える槍ヶ岳のような山を大ナゲシと見立てて現在地確認するが、何かおかしい。少し登りかえしながらトラバースすると現在地が分かった。まだトラバースの最中であり、大ナゲシに見えた山は六助のコル先の1510m峰であった。トラバースを終えると南側に稜線が分かり、これを下っていくと道になってきた。急な下りだった。そして小さな祠のある六助のコルに到着。標高は倉門山1572mから一気に下って1360m。さらに1510m峰へ登り返すことになる。群馬側、埼玉側ともに車道が見えた。群馬側にはピンク色のテープがあり、道が続いているようだった。埼玉側は赤錆びたアーチ橋が見えた。六助のコルからの登り返しはけっこう急だった。道も分からず、土の斜面を登る。登りきるとそこは防火帯なのか木や笹が幅2mほどに渡って切り開かれており、歩きやすい。

 その次の1460m峰にも防火帯が続いていたが右に踏み跡があり、こっちから行く。笹で覆われた山腹を道は曲がっていき、やがて西へ続く枝尾根に引き込まれそうになった。踏み跡はまだ続いているようだったが、六助のコルをくぐる車道に下っているのだろうか。踏み跡を少し戻り、稜線の防火帯に出て歩く。 正面には大ナゲシと間違えた1510m峰。見上げるような立派な形の山だが、名前は付いていない。山奥だからだろうか、それとも道がないからだろうか。不遇な山だ。とっついてみると道はない。赤岩岳の登りにも似た急な登りで落っこちないようにゆっくり登っていく。右手埼玉側に出ると傾斜は緩むが、木がなくつかむものがない。山頂直前にテラス状のところがあり、ここから登りながら群馬側をトラバース。いったん山頂の東側に出て西へ登り返す。

 着いてみた1510m峰山頂は西側がよく見える。ザックを置いて息を整える。いくらか木が茂っており、展望はさえぎられるが、高度感は大ナゲシや赤岩岳にひけをとらない。名前も付いてないし、紹介もないし、道もないしで本当にもったいない山である。おかげですばらしい山頂を一人締めできたわけだが。しかし、この北側斜面を下るとしたらザイルがないと怖い。逆にいえばこれから下る東側斜面も急である可能性があるわけで不安になる。まあ、ここまでくれば赤岩峠までは1時間と少し。もう計画の達成は目前だ。

 上武国境稜線、今回の山行の最後の一本を歩き始める。1510m峰は槍のような形だけあって下りも険しい。そろそろと下りていくと北側斜面ほど悪くはない。下りついたコルには立ち木を利用したワイヤーの中間支点があった。国境稜線をまたいでワイヤーが越えており、立ち木の上方に滑車がついている。何をやり取りするのだろうか。やはり防火帯になったいた。

 登り返しの1490mピークはけっこうつらい。下りも同様しんどかった。次の1443m峰付近は埼玉側に間伐の跡があり、人の手が入っていることを予想させる。しかし、これを下って雁掛峠にいたるところは胸くらいの高さの笹ヤブで道もなくひどかった。大ナゲシを派生する1493mの登り返しに近くなって雁掛峠の小さな祠を見つける。埼玉・群馬とも道はないようだった。そして最後の1493m峰。160mを登り始める。ふと左の大ナゲシの方から掛け声のようなものが聞こえた。三国峠以来24時間ぶりの人だ。そのひとけに元気付けられえっちらおっちら登っていく。1493m峰に着けばもうすぐ道だ。下るとすぐ鞍部につき、赤岩峠から大ナゲシにいたる道に出た。ここは昨年2004年11月末に来ている(参考:上武国境・赤岩尾根)のでもう安心して歩ける。これで三国山から西上州二子山までの上武国境がつながった。

 あとは赤岩峠を経由して小倉沢へ下るだけだ。ただ、その前にもう一つ大仕事がある。大ナゲシ・赤岩岳を日帰りで来ている人に聞いて車に乗せてもらうのだ。小倉沢に下ってもバス停の出合までは1時間30分の行程だ。しかもバスも1日5本。ここからはルートファインディングに注いでいた神経を人探し及び相乗りのお願いに全力を注ぐことにする。

 ゴールデンウイークだから誰かいるはずだと思う一方、誰もいなかったら歩くのはかったるいなと不安になりながら歩く。赤岩峠の直前、赤岩岳正面壁を望む所に出た。正面壁は鮮やかなツツジで彩られており、秋とは異なった雰囲気を見せていた。そこで登山者を発見。聞くと大ナゲシを往復してこれから赤岩岳を往復しようかどうか迷っている単独行の人だった。お願いしたら一発OK。三国峠から歩いてきたと言ったら驚いていた。乗せてもらうので赤岩岳の案内をかってでる。前に来たときは赤岩峠に泊まって赤岩尾根を縦走したので道は覚えている。とりあえず赤岩峠に出てザックを置いて空身で往復する。

 稜線をたどり、途中で北側にトラバース。変なところを登っている人が3人くらいいて正面壁を登っているのかと思ったら道を聞かれた。どうやら道を間違えたらしい。確かにトラバース、ルンゼ直登、北稜をたどる、と知らなければ難しいと思う。登りながら車に乗せてもらうおじさんの話を聞くと、大ナゲシは4パーティー、15人くらいが登ってきていたそうだ。さすがはゴールデンウイーク。この時間になれば誰もいなかった天丸山も人がいるに違いない。前に赤岩岳に登ったときは夜明け前で西側から回ってしまったが、正しくは赤テープが続いていた。

 たどり着いた赤岩岳は西側の展望があり、おじさんとあれが甲武信ヶ岳だろうか、和名倉山だろうか、などと話し合った。カメラのバッテリーがあればまた撮ったに違いないのに。惜しいことをした。10分ほど休み、先ほど道に迷っていた5人の中高年パーティーと入れ替わりに下る。峠でザックを回収してそのまま小倉沢へ。花の名前をおじさんに教わりながら下る。ツツジ、リンドウ、ヤマブキを覚えることに成功した。山の名前を覚えても花や木の名前はなかなか覚えられない。下っていると日窒鉱山から正午を伝えるエーデルワイスが流れてきた。

 小倉沢についてすぐ車に乗る。走り始めてすぐ、出合バス停から歩いて来たと思われる若者2人が休んでいた。この時間から来て今日は清滝の小屋に泊まるのだろうか。おじさんは若いときに少し山をやっており、12年前に再開したそうでけっこう登っているようだ。私もまだ8年目だし、私なんかよりはよっぽど詳しい。なんでも南天山の北側の登山口を見つけたいとということで寄り道。雁掛トンネルをくぐり、六助のコルへと通ずる道をたどる。砂利道でところどころ釣り人の車が駐車してあった。私は地形図を片手に探すが、見つからない。しかし、広河原沢の向こうの山はほとんど壁でとても登れない。地形図の広河原沢の「広」の字のトンネルのところで、その道はもうなくなってしまったのだろうと判断して引き返した。しかし、今エアリアマップを見ていたら確かに道があった。それはそのトンネルの先、山吹沢の出合の尾根に沿って薄い道が載っていた。地形図の方が縮尺が小さいので参照していたがおじさんに悪いことをした。

 そのあと、おじさんは西武秩父線西吾野まで送ってくれると言ってくれたが、腹が減って秩父の街で何か食べていこうと思って途中の秩父鉄道影森駅で降ろしてもらった。お花畑から西武秩父へと乗り換える道は観光客で非常に込んでいた。羊山公園とか言うところに芝桜なる植物が植えられており、それが美しいので観光客が訪れるとか。そば屋でそばをかきこみ、改札をくぐる。特急レッドアロー池袋行きはこの先6本ほど満席となっていた。ホームに出ると普通飯能行きすでに人で満杯だった。しかたなく、立つ。飯能で乗り換えてもやはり座れず、特に理由もなく所沢で西武新宿線に乗り換える。それでも座れず、結局高田馬場まで座れなかった。

 そして家に帰って風呂入ってからわき腹のあたりがかゆいと思うとノミがついていた。初めてノミに刺された山行になった。

おわりに

 今回2泊3日の計画だったが、思いのほか踏み跡があり1泊2日で行くことができてよかった。また来たいとは思わないが、うまくいってよかった。

 三国峠〜赤岩峠の間についていくつか注意点を挙げると、

(2005年5月5日記す)


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