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2003年秋 - 白神山地・追良瀬川[3/4]


2003年8月31日(日)〜2日(火)
場所
青森県西津軽郡深浦町/白神山地
ルート
8月29日
JR新宿駅…快速ムーンライトえちご(車内泊)
8月30日
新潟…秋田…能代…JR五能線白神岳登山口駅(泊)
8月31日
JR五能線白神岳登山口駅…JR五能線陸奥岩崎駅…追良瀬大橋…追良瀬堰堤…石ノ滝…五郎三郎ノ沢出合(泊)
9月1日
五郎三郎ノ沢出合…ウズラ石沢出合…ウズラ石沢遡行…白神岳山頂…白神岳避難小屋(泊)
9月2日
白神岳避難小屋…蟶山(まてやま)分岐…JR五能線白神岳登山口駅…JR五能線あきた白神駅…JR奥羽本線東能代駅(泊)
参加者
初川(OB), 戸部(M1), 中山(B4)

白神山地・追良瀬川の位置

2日目

2003年9月2日

五郎三郎ノ沢出合…ウズラ石沢出合…ウズラ石沢遡行…白神岳山頂…白神岳避難小屋(泊)

2日目コースタイム
五郎三郎ノ沢出合4:30起床
5:56
ウズラ石沢ノ出合7:45
8:07
ウズラ石沢720mあたり9:38
10:02
白神岳避難小屋11:15
20:05就寝

 夜は寒かった。寒くて何度か起きた。シュラフカバーだけで寝ていたのがよくなかったらしい。タープなので、横から風が入ってきたのが寒かった。同じようにシュラフカバーしか持ってきていなかった戸部さんも寒かったようだ。

 歩き始める。朝だけあってやはり寒い。天気は昨日と同じく、くもり。しばらくで三ノ沢出合。その先にゴルジュ。泳ぐか、巻くか。朝一番で寒いので巻くことにする。右岸を登ってみるが、道が見つからない。やや怖いが草付きをトラバースして巻き道を見つけた。結局、足がつかないほど水の中に入ったのは石ノ滝だけだった。歩いていると、ときどき五郎三郎沢出合で見かけたような赤い河床や、青い河床があり、美しい。一枚岩の河床でも深いところと浅いところがあり、ジャンプして対岸にわたることもあった。依然として河原は少なく、水際まで木が生えている。また、川の中に島のように草があちこちに生えている。増水しないのだろうか。

シャア専用
9/1 シャア専用の河原に迷い込む。
苔
9/1 苔むす河原。追良瀬川は川の中に草や苔が生えている。増水しないのだろうか。

 だんだんと川幅が狭くなり、水は冷たくなってくる。石ノ沢出合では股下までぬれた。川は廊下状になり、水際の岩を越えていく。一ヵ所、左岸に残置ロープがあった。やや開けた川岸にはコケが生えている。黒部川の上ノ廊下がそれを構成する岩によって自然のダイナミックさを表現しているとすれば、この追良瀬川は散らばって生える草やコケを用いて自然の静けさを表しているといえよう。どちらも美しい。

 右手に小さなテントが張れる場所を見過ごすと、ウズラ石沢出合。遠目に見るとウズラ石沢が本流に見える。追良瀬川本流は左手の岩に隠れて近づかないと見えない。出合は大きな釜になっており、本流に行くには水の中を泳ぐしかなさそうだった。ウズラ石沢は泳ぐことなく行ける。2時間歩いたので、ここで一本とった。しかし、2時間歩いたような疲れを感じてはいなかった。そのくらい穏やかでのどかな沢歩きだったのだ。

ウズラ石沢出合
9/1 ウズラ石沢出合。左が追良瀬川本流、右がウズラ石沢。
ウズラ石沢出合
9/1 ウズラ石沢側から出合を眺める。本流へ行くには深い淵を横切らなければならない。

 ウズラ石沢に入る。ここから「川」でなく「沢」のサイズになり、小滝をかけていく。沢の両岸はひらけており、木が生い茂っている。いくらでも巻くことができる。ゴルジュに入る。直登が難しそうな傾斜の緩い滝があり、左岸を登る。ここで私だけてこずった。ホールドは大きいのだが、足をかけたところが斜めになっており、滑る。いっぺん落ちて初川さんと戸部さんに先に行ってもらう。ふたりとも難なく越えていた。私はそのあと2度ほど落っこちてやっと登れた。二人とも私がなかなか越えられないのを不思議に思っていた。頼りない残置ザイルがぶら下がっているところである。

 その後、巻くより水の中入った方がいいところとかを越えて、水量比1:1の二俣になっているところに出た。左を行く。しばらく行って一本。3人でここがどこだか話したが、結局どこだか合意は得られなかった。ここから目標の白神岳へはいくつか枝沢があり、完璧にツメると白神岳直下に出るそうだ。ルートファインディングの能力が要求される。

 歩き始めると、いよいよ上流といったおもむきで、滝と呼べるものはなく、両岸フキに覆われた急な斜面を登っていく。沢が右に曲がるところで現在地がわかった。100m登ると小さな二俣。見ると右が本流、左が枝沢に見えるが、白神岳の山頂へは左をとる。振りかえるとだいぶ高いところにいるのがわかった。沢の水はいつなくなってもおかしくない水量だが、登っても登っても水は尽きない。また二俣のようなところに出る。右に行くとすぐ水が尽きたので、左に行く。こっちはずっと水が流れている。最後の二俣のようなところは左の水がなかったので、右に行った。こっちもすぐ水はなくなる。そこで水を汲むことにする。そしたらあろうことか登り始めて1分ほどで水流復活。しかもしばらく続く。とうとう水がなくなるところで横からパイプが突き出しており、おそらく白神岳避難小屋の水場であることがわかった。正解ルートである。そこから5分足らずで上の方から人の声が聞こえてきた。笹のトンネルを抜けると、そこは白神岳と避難小屋の鞍部だった。両者は50mほどしか離れていない。

 上の方の人に「そこ山頂ですかー?」と聞くと、そうだと返事が返ってくる。20秒ほどの登りで白神岳山頂。山頂には3人ほどおり、「沢から登ってきたのか?」と聞かれた。「追良瀬川から」と答えると感嘆の声を持って迎えられた。しかし、ちょっと気になったのはそこにいたハーフパンツの太いふともものおっちゃんで、彼らが去ったあと、「たぶん、あのおっちゃんの方が強いぞ」と話し合った。なんかクライマーみたいな雰囲気のおっちゃんだった。ピーク缶を二つ食べる。天候はくもり。日本海側は雲がもくもくと出ており、反対の山側はどこまでも緑の起伏が続いていた。

白神岳山頂
9/1 白神岳山頂は比較的平坦である。
左がトイレ、右は白神岳避難小屋。
白神岳の東側の眺め
9/1 白神岳の東側には尽きることのない緑が広がっている。

 白神岳の山頂を十分味わって、避難小屋に移動する。避難小屋へは1分足らず。すぐそこ。山頂にいた人たちは白神岳登山口へ下っていったが、私たちはへたに下ると寝床や居場所に困るので、ここに泊まる。今回の山では「どこで泊まる」という点でほとんど相談しなかった。ちょうどいい時間、疲れたときに泊まるのに適したところが出てきて、まるで用意されたようだ。

 小屋のところには64歳のおじさんがいて、今回で白神岳は25回目だといっていた。植物分類学を学んでいると言っていた。年取ってから勉強するのもいいと言っていた。頭も体も元気そうだった。ああなりたいものだ。

日本海
9/1 白神岳山頂からのぞむ日本海
日本海と戸部さん
9/1 日本海と戸部さん。トイレにて。

 山頂から人がいなくなって、われわれは銀マットを広げ、昼寝と物干しと決め込んだ。そこらじゅうに濡れたものを広げ、気持ちよく寝た。16時になって小屋に入り、メシを作った。飯を食った後、心も体もリラックスして夕暮れを見に行った。山頂から日本海側の沢筋へと下る旧道があり、そこは日本海を真正面にして日が沈んでいくのが見えた。また、避難小屋より立派なトイレからも眺めがよかった。昼あった厚い雲も高層の薄い雲になり、雲の筋がちょうど西向きに太陽に集まるように伸びていた。山の片隅にある黒崎の集落や港が、海に突き出しているのが見えた。町はだいぶ近そうだ。海は黒光りするようにややてかっていた。水平線は雲がかかっていて見えない。やがて太陽はその雲の中に沈んでいった。そのあとトイレに入って出てくると、空は暗く、海岸の片隅に黒崎の集落と岩崎の集落の明かりがさびしくついているのが見えた。あとは静けさが山を取り囲んでいた。一隻、船が海の上に浮かんでいるのが見えた。

夕暮れ
9/1 夕暮れどき。絹雲が空をなでる。
白神岳避難小屋の中
9/1 白神岳避難小屋の中。けっこう快適。

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