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北アルプス・前穂高岳北尾根4峰[1/2]←|→八ヶ岳・中山尾根
2日目 |
2016年11月4日(金) 快晴 |
涸沢…前穂高岳北尾根5・6のコル…前穂高岳北尾根4峰途中…5・6のコル…涸沢(泊)
涸沢 | 4:03起床 |
6:45 | |
5・6のコル | 8:35 |
9:15 | |
6峰 | 9:35 |
5・6のコル | 9:49 |
6峰 | 10:15 |
10:35 | |
5峰 | 11:50 |
12:03 | |
4・5のコル | 12:24 |
4峰引き返し点 | 14:10 |
5峰 | 15:17 |
15:34 | |
5・6のコル | 16:15 |
16:27 | |
涸沢 | 17:16 |
21:00就寝 |
前日眠かったせいもあってよく寝た。起きたとき天気はくもりだったが、夜が明けるにつれ晴れてきた。新雪をまとった穂高連峰はほのかに赤く色づいた。涸沢ヒュッテには三脚を立てたカメラマンが何人も並んでいた。
アタック装備を持って前穂高岳北尾根を目指す。今日は年末へ向けたデポ設置と時間の許す限り北尾根偵察が目的だ。まずは5・6のコルへ向かう。モレーンの上に雪が数cm積もって岩の配置が見えず、確実に足場を捉えられない。アイゼンを付けた私も付けていないKさんも同様でバランスを崩しながら登った。涸沢から5・6のコルまで夏なら1時間のところ、2時間近くかかった。
11/4 涸沢から5・6のコルへ向かう。岩に雪が乗っかって歩きにくい。 |
11/4 2時間弱で5・6のコルに到着する。コルに着いたら涸沢側から強い風が吹いてきた。 |
5・6のコルにデポを設置し、ハーネスを装備する。コルに着いたころから涸沢側から風が吹き、ハーネスを締める手が凍える。北尾根を登る前に6峰を偵察する。ハイマツの切れた雪面を登り、肩に出ると6峰は近い。岩場を縫って歩くと6峰であった。6峰は5・6のコルと異なり、風が吹いていない。5・6のコルではなくこっちにデポしようとKさんが提案し、5・6のコルへ引き返す。デポを回収し、6峰へ。
11/4 前穂北尾根6峰に着く。ここは風が弱い。 |
11/4 6峰から前穂北尾根下部を見る。慶應尾根2460m峰も見える。 |
6峰に改めてデポを設置し、休む。6峰からは7峰、8峰、慶應尾根がよく展望できる。7峰から6峰の登りに上から見ても顕著なピナクルがあり、最初の岩場らしい岩場になりそうだ。慶應尾根は2460mピークから樹林帯を出て風が当たりそうだ。
11/4 6峰から5・6のコルを経由して5峰へ向かう。写真中央やや上のなだらかなところが5峰。 |
11/4 5・6のコルは涸沢からの風が強い。 |
5・6のコルから5峰へ登る。コルでザイルを結びコンテで登る。中間の露岩にぶつかってから左へトラバースし、雪の付いたルンゼを直上する。緩やかな尾根となり、5峰に至る。5峰山頂にはテント1張張れそうなスペースがあり、そこで休む。風は止み過ごしやすい。
11/4 前穂北尾根5峰は露岩にぶつかったら左の雪のルンゼを登る。 |
11/4 前穂北尾根5峰は風が弱く休むのに良かった。 |
5峰から目の前のピークを涸沢側から巻く。4・5のコルへは5mほど涸沢側へ下ってから登った。4・5のコルから確保しながら隔時登攀にする。支点が見つからずピナクルにシュリンゲをかけて支点とする。1ピッチ目、Kさんリード。やや急な岩場を登り、リングボルトに捨て縄がかけられているところでピッチを切る。2ピッチ目、中山リード。雪の積もったやや緩やかな斜面を登る。
11/4 前穂北尾根5峰先の正面のピークを涸沢側から巻く。 |
11/4 4・5のコルから1ピッチ目。岩場を登る。 |
11/4 前穂北尾根4峰2ピッチ目。なだらかな尾根を登る。 |
11/4 前穂北尾根4峰3ピッチ目。正面の露岩にぶつかってから左へトラバースする。 |
3ピッチ目、Kさんリード。20mほど登って露岩に突き当たり、左の奥又白池側へトラバース。2箇所ほど残置ハーケンが見つかる。4ピッチ目、中山リード。雪の付いたルンゼを登る。稜線手前で見上げるような岩場にぶつかりピッチを切る。Kさんがセカンドで登ってきて右へトラバースし、稜線に出る。岩場を15mほど登り様子を見る。14時を過ぎたので引き返す。
11/4 前穂北尾根4峰4ピッチ目と少し。稜線に出る。ここで引き返す。 |
11/4 前穂北尾根4峰を懸垂下降で下る。 |
登ってきた4峰の4ピッチを懸垂下降、スタカット、スタカット、懸垂下降で下る。懸垂下降した箇所にはそれぞれ残置シュリンゲがあった。5峰で休む。5峰からは雪のルンゼを2ピッチスタカットで下り、5・6のコルまではコンテ。5・6のコルでハーネスを外し、涸沢へ下る。すでに日は陰り涸沢には夜の帳が下りようとしていた。登りで苦戦したモレーンは下りも岩が見えず不安定であった。私は5・6のコルでアイゼンを外したためか大きな平たい岩に足を乗っけてよく転んだ。涸沢にはなんとかヘッドランプを出さずにたどり着けた。
11/4 前穂北尾根5峰の雪のルンゼをバックステップで2ピッチ下る。 |
11/4 5・6のコルから涸沢へ下る。すでに薄暗い。 |
夜はシチューを食べる。頭がうっすらと痛く、食欲がない。高山病の症状だが、下りで焦っていたからか呼吸が浅かったのかもしれない。水汲みの際によくストレッチしたからか足がつることはなかった。小屋じまいは日々進んでいて昨日あったテント泊用の洗い場が撤去され、ビールの販売も停止していた。
3日目 |
2016年11月5日(土) 快晴 |
涸沢…横尾…上高地=沢渡石見平
涸沢 | 4:00起床 |
6:00 | |
本谷橋 | 6:57 |
7:14 | |
横尾 | 8:00 |
8:15 | |
新村橋 | 8:57 |
9:15 | |
徳沢園 | 9:26 |
9:35 | |
明神 | 10:15 |
上高地バスターミナル | 10:55 |
11:25 |
未明、トイレに起きる。外は星空であった。昨日と同じ4時に起床し横尾経由で下山する。
涸沢から本谷橋へ下る道はパノラマ新道と異なり踏み跡がしっかりと付いていた。振り返ると穂高岳が朝日にまぶしい。屏風岩からガレが押し出している箇所を渡る。以前はこんなところはなかったが、屏風岩も崩壊が進んでいるのだろうか。
本谷橋で1時間歩いたので休む。夏に使用している橋は取り外され、木製の仮橋がかかっていた。後で上高地で見た掲示板には6日に仮橋が撤去され、涸沢への行き来が困難になります、と書いてあった。出発する時にちょうど日が差してきた。
屏風岩をぐるりと巻きながら横尾へ下る。見る場所に応じて屏風岩の形が変わっていく。中心にある一枚岩を差してKさんが夏に登りに来ようというがどうやったら登れるのか見当もつかない。人工登攀でも距離が長そうだ。
11/4 横尾から徳沢へ向かうと慶應尾根下部がよく見える。 |
11/4 新村橋のやや上流から見た前穂北尾根全景。 |
横尾山荘は小屋じまいが終わっていた。しかし、裏手の小屋から人が出入りしていて何かまだ仕事があるようだ。横尾からは前穂北尾根、慶應尾根のようすを観察しながら下る。新村橋からは前穂北尾根の主峰から8峰までが見えた。徳沢を過ぎると人も増える。明神から見る明神岳5峰はゴツゴツの岩山でよくあんなところ登る人がいるなと思う。
河童橋のあたりは11月にもかかわらず混んでいた。天気はよく雪化粧した穂高岳がよく見える。観光客がこぞって写真を撮っていた。上高地バスターミナルの向こうには焼岳が見えてやはり雪が積もっていた。11:25のほぼ満員のバスに乗り沢渡へ下る。あとは車を交代しながら運転し、立川へ帰った。
目的であるデポ設置は6峰で行えた。
もう一つの目的である北尾根の偵察は4峰途中までできた。無雪期の前穂北尾根の核心部は3峰の登りであるが、積雪期は5峰、4峰でもザイルを出して登る必要があり、時間がかかる。年末の風雪の中、荷物を背負って歩くとさらに時間がかかる可能性があり、荷物の軽量化、登攀能力の向上の2つの点からスピードアップを図る必要がある。
また、4峰ではルートファインディングが難しい。夏はもっと奥又白池側をトラバースし、山頂を踏まなかったような気がするが、「ROCK & SNOW BOOKS アルパインクライミング」の記載や残置ハーケンをたどると、より稜線沿いを歩くことになる。核心部以前でも苦労しそうだ。
天候にもよると思うが、冬の前穂北尾根は難しそうだ、というのが率直な感想だ。