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2008年秋 - 上越・五十沢川下ノ滝沢


2008年9月13日(土)〜15日(月・祝)
場所
南魚沼市(旧南魚沼郡塩沢町・六日町)
ルート
9月12日
JR武蔵野線新座駅=桜坂駐車場(泊)
9月13日
桜坂駐車場…割引沢…巻機山…五十沢川本流徒渉点(泊)
9月14日
五十沢川本流徒渉点…下ノ滝沢50×30m滝上(泊)
9月15日
下ノ滝沢50×30m滝上…巻機山…桜坂駐車場=JR武蔵野線新座駅
参加者
K、H、S、I、中山
参考文献

はじめに

 五十沢下ノ滝沢もヌクビ沢同様巻機山に突き上げる沢の一つ。魚野川三国川の支流にあり、巻機山の裏側に位置する。五十沢渓谷は巻機山の清水集落側と比べて人が少なく、道も険しい。谷もあちこちにスラブが見受けられ険しい。下ノ滝沢はその中でも「巻機山北面の沢の中でスラブの美しさでは群を抜いた沢といえる」(関東周辺の沢)。「関東周辺の沢」では3級上とされている。

 この前日にヌクビ沢を登ったが、ヌクビ沢はアプローチとしてとった沢で、メインは下ノ滝沢。行ってみると半分は高巻きのヤブ漕ぎでつらかった。上部のスラブと明るく平和な源流部はよかったが、なにぶん下部の高巻きがつらく、また行きたいとは思わない。

2日目

2008年9月14日(日) 晴れ

五十沢川本流徒渉点…下ノ滝沢50×30m滝上(泊)

コースタイム
四合目
五十沢川本流徒渉点
3:30起床
5:50
中ノ滝沢出合6:29
吹上ノ滝下6:44
7:02
吹上ノ滝上8:15
8:20
下部ゴルジュ帯中間
910m
9:10
9:35
下部ゴルジュ上10:24
12m滝下平ナメ
1180m
11:10
11:40
12m滝巻き途中
1305m
12:50
13:05
右岸ルンゼ15:34
下ノ滝沢
50×30m滝上
16:50
20:15就寝

 2008年秋 - 上越・登川割引沢ヌクビ沢の続き。

 夜は雨も降らず、あたたかかったのでシュラフカバーにも入らず寝てしまった。前日の桜坂駐車場の朝は標高はほぼ同じにも関わらずけっこう寒かったので意外である。

 朝にチキンラーメンを食べる。チキンラーメンはあっというまに水を吸ってしまい、ツェルト組に持っていったときにはすっかり伸びていて不評だった。夜も明け明るくなった5:50、出発。

 スラブもある五十沢川本流の河原を15分ほど下ると目的の下ノ滝沢出合。大きな岩が積み重なった出合でこの先の沢の様子が読めない。ともかくこの沢の遡行が今回の目的なので入渓する。

五十沢川本流
9/14 五十沢川本流をしばらく下る。
吹上ノ滝
9/14 吹上ノ滝。下部ゴルジュ帯の始まり。左から巻く。

 はじめは大きな岩の河原。岩の隙間を縫いながら登る。3mほどの高さの狭い滝があり、すぐ左を登るが、ホールドが細かく登れない。ここはKさんが登り、シュリンゲで引き上げてもらう。昨日のヌクビ沢の不動滝でも同じだったが、私は指の第一関節だけかけて登ることができない。クライマーは指で懸垂するというが、ただのハイカーの私にはとても無理だ。

 やがて左に中ノ滝沢を分ける。木が茂っていて中ノ滝沢の先はどうなっているのかよく分からなかった。沢が左に曲がるとドーンと壁が立ちはだかる。真ん中に20mの滝がまっすぐ落ちており、これが吹上ノ滝だ。落ちているというかまるで白いろうそくが立っているような滝だ。初めて下ノ滝沢を登った人はこの滝をみて遡行をあきらめなかったのだろうか。そんな壁みたいな滝である。なお水量が少ないのか名前通りに吹き上げてはいなかった。

 ここから下部ゴルジュ帯の巻きに入るので水を汲んでおく。Sさんは1本目にも関わらずさっそく行動食を食べていて「もう腹減ったのか」と突っ込まれただけでなく、朝飯のチキンラーメンが水を吸ってスープがなかったことを指摘されていた。

 吹上の滝のトラバースは「関東周辺の沢」に従い左のルンゼから。といっても明確な巻き道はない。急な斜面をアジサイやシダを掴みながら這い上がる。一段落すると露岩にぶつかる。踏み跡もなく露岩を直接登る。岩はざらざらでフリクションで登るが、上部の傾斜が強く怖い。またトゲの付いた草もある。Hさんはもっと左側から登り、Iさん、Sさん、Kさんはシュリンゲで引っ張った。

吹上ノ滝
9/14 吹上ノ滝の巻き。踏み跡はない。
吹上ノ滝の巻き
9/14 吹上ノ滝の巻き。露岩の上に出るが下りられず、下からヤブをトラバース。

 その次も灌木のトラバース。冬の積雪のために木が寝ていてトラバースしにくい。山をぐるりと回り、沢側に出るが沢に下る道がない。自然と上へ上へ追いやられるとまた露岩。地形図にも岩のガケの記号が載っている。露岩のトラバースも行き詰まってしまう。Kさんが懸垂下降したと思われる捨て縄を、見つけたが露岩の先、下の方でたどり着けない。こうなると左岸の方がよかったんじゃないかと思う。しかたなく下へ下り、最初トラバースを躊躇した灌木帯をかき分けて吹上ノ滝の上の滝の落ち口に降りた。

 結局最初の巻きに1時間かかってしまった。下りついたそこは傾斜のあるナメになっており、気持ちよい。ナメの途中にポットホールもあった。ナメをたどっていくと滝があり、今度は右に追いやられてしまう。今度は緩やかな登りでスラブに出てスラブの上端をトラバース。またヤブに突っ込んで沢に戻ることができた。沢に戻ったところで一本。パンを食べたりして過ごす。金曜日の予報ではこの日雨だったが明るく晴れ間も見えた。

ナメ
9/14 吹上ノ滝の巻きを終え、沢に戻るとナメ。しかしまた奥の滝が登れず右から巻き。
草付きスラブ
9/14 巻いていると草付きスラブのトラバース。

 沢に戻って続きのナメ滝を登る。右から登るが途中の滝で行き詰まってしまい、帰ってくる。また右から巻き。小さく巻いて5mほどの逆くの字滝。ゴルジュになっていて横向きに水が飛び出している。壁に向かってホースで放水したようになっており、壁がうがたれて穴が開いていた。登れないと判断し右から巻き。大岩を右から巻き、小尾根を登ってルンゼに下りる。ルンゼを渡ってヤブを乗っ越して本流に戻った。これで下部ゴルジュ帯は終わり。ほとんど巻きに終始した。

1700m
9/14 巻きを終えて一本。この滝も右から巻く。
沢を離れて
9/14 逆くの字滝。斜瀑の当たる右側に穴が開いている。右から巻くと下部ゴルジュ帯終わり。

 右のルンゼ、左から枝沢が入っていることから標高990mほどと分かる。沢はいくつか分流し、水量は少ない。このあとはしばらく河原歩き。大きな岩がゴロゴロした河原を乗り越えて行く。途中途中でアスレチックのように腕で這い上がったり、両手突っ張って渡ったりする。Kさんが一人順調に進み遥か遠くに行ってしまった。やがて5mほどの滝で河原は終わり。右から乗り上がるとナメが広がる。ここで一本。

河原
9/14 下部ゴルジュ帯と上部ゴルジュ帯の間の河原。
スラブ
9/14 河原歩きの終わりに広い乾いたスラブにたどりつく。奥に上部ゴルジュ帯入り口の滝。

 広い乾いたスラブの上で休む。行く先は壁が立ちはだかり真ん中にV字谷が切れ込んでいる。ちょうど吹上ノ滝と同様、滝が見える。上部ゴルジュ帯の始まりだ。上部ゴルジュ帯の入り口の2段10m滝は左から登る。水流には近づけない。さらに10mほどの滝が2つほど続いており、左のスラブから登る。一見すると急で登れないが、要所要所にスタンスがあり、左手の灌木を掴めば難しくない。でも沢登りが久しぶりのIさんは大変そうだった。

滝
9/14 上部ゴルジュ帯入り口の滝。左を登る。
スラブ
9/14 左側のスラブを登る。意外にスタンスが多い。

 1カ所沢に戻れそうなところがあったが、その先の岩に挟まれた5mほどの滝が越えられなさそうだった。しかたなく左から巻く。これが上部ゴルジュ帯の5時間にわたる高巻きの始まりだった。

スラブ
9/14 スラブを這いつくばって登る。その後、上部ゴルジュ帯の巻き。
スラブ
9/14 巻きの途中から見た上部ゴルジュ帯。見えている滝をすべて巻く。

 その滝の先でヤブに突っ込みトラバース。沢に下りられるところを探す。が、両岸切り立っていて下りられない。もっともヤブの間から見える谷間も困難な滝が控えており、沢に下りるのも得策ではない。しかたないから上へ上へとヤブを漕ぐ。

 ヤブの切れ目で一本。上越の水平に寝ているヤブでなかなか進まない。この一本の先でいったん灌木帯を抜け、草付きのトラバース。草はどうも滑りそうだし、掴んでも手が切れそうだしあんまり好きではないのだが、ここは足下もしっかりしていて灌木帯よりはずっと歩きやすかった。

草付き
9/14 草付きのトラバース。
大滝
9/14 巻きの途中から見た大滝150m。たぶん見えているのは上の方だけだろう。

 だいぶ沢に近づくことができたが、すべりそうで下りられない。奥の滝も登れそうにないので高巻きを続ける。途中で大滝の上半を眺めることができた。少し遠くて何mあるのか分からないが、「関東周辺の沢」の見立てでは150mとのこと。近づくことすらできなかった。

スラブ
9/14 乾いた涸れ滝のような段々のスラブを登る。
トラバース
9/14 段々のスラブのあとトラバース。奥には50x30m滝とスラブ帯。

 高巻いて行く中で草付きの中に岩が転々としたカルスト台地のような斜面を登る。「関東周辺の沢」では大滝の上で高巻きを終えて本流に戻るが、ルートが見当たらない。乾いた涸れ滝のような段々のスラブに出て容易に登れるのでここを登り、途中からトラバースすることにする。私トップで登って行くが途中、後ろでHさんが草の切れ目にトラバースできそうなところを見つけた。みんなそっちから行くが、私が進退窮まってしまい最後になる。結局ていねいに下り、追っかけた。そこのトラバースの草付きから大滝の上部、50x30m滝、そして上部のスラブ帯が見えた。まだまだ遠い。

1本目の枝沢
9/14 トラバースの途中、1本目の枝沢に出る。
トラバース
9/14 2本目の枝沢を経て下ノ滝沢本流に出る。

 またヤブの中に突っ込んでトラバース。大滝の上には左から2本沢が入っており、どちらも巻く。遠くに見える2本目の枝沢はスラブ滝の連続で渡れるかどうか不安になる。足下が滑りやすく腕の力でトラバースする笹ヤブを越えると1本目の枝沢。Sさんがだいぶ疲れてしまって遅い。後ろについて登る。

 1本目の枝沢を登り、灌木帯の上に出ると草原。少し滑りやすい草原を斜めに下って2本目の枝沢に出る。Kさんがうまく下るところを見つけ、ザイルなしで下れた。そこからヤブをトラバースして50x30m滝の上。スラブの上に下りるが、湿地のようなヌルヌルが所々にあって足下が不安である。Kさんはすいすい歩いて行ったようだが、他の人はそううまく行かない。ザイルを出して木に固定し、スライドしながら渡った。常に湿っているようでモウセンゴケもときどき見かけた。

幕営
9/14 50x30m滝の上、スラブ帯下部12mの下で幕営。
トラバース
9/15 翌朝スラブ帯を登る。

 5時間ぶりの本流。やっとたどりついたが、時もすでに16時を回っている。早急にテント場を探さねばならない。先行するHさんが6m滝の手前で探すが、沢から離れたところには見つからず、しかたなく沢沿いの平らなスラブにテントとツェルトを張った。

 虫が多く、テントに潜り込んで飯を作る。やがて日も暮れ、テントの中で晩飯と酒。テントの中は暖かいが外はだいぶ寒かった。今日は高巻きばかりで、みんなも私も今日はだいぶ疲れていたようだ。

3日目

2008年9月15日(月・祝) 晴れ

下ノ滝沢50×30m滝上…巻機山…桜坂駐車場=JR武蔵野線新座駅

コースタイム
下ノ滝沢
50×30m滝上
3:30起床
5:45
スラブ帯奥12m滝上7:46
1815m
水涸れ
8:40
9:00
御機屋北コル9:25
9:45
巻機山御機屋9:54
巻機山避難小屋10:10
10:15
桜坂駐車場12:44
12:50

 3:30起床。昨日の高巻きがきいたのか、起きると筋肉痛である。だんだんと夜は明け、やがて晴れ。

 今日は下ノ滝沢のハイライト、広大なスラブ帯と平和な源流帯である。これがないと昨日の高巻き地獄の甲斐がない。

 まずは正面の6m滝。右から登る。6m滝を登った後で右岸に渡り、スラブを登る。また右に渡り、ちょっと難しそうなところを登る。ザイル出してKさんが登り、そのまま引きずって少し平らなところまで登る。つるつるのスラブでどこから登れるのか分からず、途中セミになりかける。先に登ったIさんの指示でテテテと駆け足で登った。

 その上が広いスラブ。左岸が大きく開けていて明るい。50mほどの左に曲がるナメ滝があり、右から登るか左から登るか悩ましい。右のスラブは滑りそうだし、大回りになるので左から登る。Sさんが滑りそうなのでKさんとSさんでコンテで登る。対岸のスラブが広くて爽快だ。

スラブ帯
9/15 広いスラブ帯。スラブ帯は右にも広がっており、全体を写せなかったのが残念。
12m滝
9/15 スラブ帯どんづまりの12m滝。左から巻く。

 ナメ滝を左へぐるりと回り、今度は右へ回るとスラブ帯どんづまりの12m滝。吹上ノ滝、上部ゴルジュ帯入り口2段10m滝同様、両岸壁のようになっている。まるで円形の劇場のようだ。ここは「関東周辺の沢」にしたがい左から。左の階段状スラブを登り、滝の落ち口へトラバース。途中一段登ってから水平に歩き、ヤブに突っ込む。あとはヤブを掴んで沢に下りられる。最初の階段状スラブは私がザイル引っ張って登ったのだが、ところどころに生えた草付きがぬめって怖い。最後に両足滑って草につかまり滑落はしなかったが、すっかりビビってそこで後続を確保した。

12m滝巻き
9/15 12m滝の巻き。左から登って岩場をトラバース。
源流帯のナメ
9/15 12m滝を越えて源流帯のナメ。

 12m滝の上で沢に戻り、ゴルジュを抜けるともう源流帯。なだらかな緑に囲まれたナメを登って行く。最初の二俣までナメが100mほど続く。渓相はおだやかでその後も難しいところはなく、ときどき現れるナメを楽しむ。と左岸に木いちごを見つけ、みんなで食べる。これがちょうどいい具合に熟れており甘い。今日はまだ休みを取っていなかったこともあり、見つけては足を止めて食べる。

木いちご
9/15 木いちごに舌つづみ。
奥の二俣
9/15 奥の二俣とスノーブリッジ。

 やがて奥の二俣。巻機山稜線の最低鞍部に出る一番右を選んで登る。奥の二俣にはスノーブリッジが残っており、くぐって通過。その先も沢はくねくねと曲がりながら伸びていて迷路のようだ。右へ右へと歩いて行くが、途中途中にある木いちご畑で足を止めてムシャムシャ食べる。ときどき酸っぱいのにあたったりもするが、おおむね甘いものが多く、いくらでもあるので食べるには困らない。

 いよいよ狭くなった沢を登って行くと標高1800mくらいで水涸れ。水を汲んで一休み。そこから涸れ沢を登る。2mほどの涸れ滝があり、ここでみんな苦戦する。私は大股広げて右足をかけ何とか登るが、後続がなかなか登れない。Sさんを登らせるためHさんがヒザを出してそこから登るよう指示するが、手前の岩から跳ねるように岩に取り付いたため、登れないばかりでなく蹴られたHさんが痛がっていた。他のみんなはシュリンゲにつかまって何とか登った。

小滝
9/15 みんなが苦戦した小滝。みんなでSさんを持ち上げる。
奥の二俣
9/15 下ノ滝沢のツメ。御機屋と割引岳の間の登山道に出る。

 しばらくで稜線の道も見えてくる。∩の形にくぼんだところが沢のどん詰まり。そこから滑る草付きを10m登って稜線直下の道に出た。おとといヌクビ沢から御旗屋へ歩いた道の途中でもある。出たところで装備を解除し、あとは下る。

 3連休3日目だが人は多く、御機屋に出ると小屋まで点々と歩いている人が見えた。そこで記念撮影して桜坂駐車場へ戻った。下りではSさんが足を捻らせ、かなりゆっくり歩いた。おかげで私もゆっくりペースにだいぶ疲れてしまった。

 帰りは越後湯沢でこまくさの湯につかり、駅前の中野屋でへぎそばを食べて帰京した。

おわりに

 五十沢川下ノ滝沢は思いのほか厳しい沢だった。半分は高巻きのヤブ漕ぎで上部ゴルジュ帯の高巻きでは5時間もかかってしまった。上部のスラブと木いちごのある源流部は評価できるが、下部のヤブ漕ぎがある限り再訪しようとは思わない。

(2008年9月21日記す)


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