山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2008年山行一覧>上越・登川割引沢ヌクビ沢
ヌクビ沢は巻機山に突き上げる沢の一つ。魚野川登川の支流、割引沢のさらに支流の一つである。割引沢及びヌクビ沢沿いにはずっと登山道が続いており、アルペンガイドにもコースガイドが載っている(山岳図書編集部「アルペンガイド3 上信越の山」P.145-148)。登山道が走っているためそこここに赤ペンキがあり、普通の沢登りに比べて登りやすい。また大きな滝はアイガメの滝くらいであり、さほど難しいところはない。しかし上部は谷が深く登山道が沢沿いとなり、またスノーブリッジもあるため、一般登山道としては難しい方だと思う。
はじめはヌクビ沢の遡行は予定に入っていなかった。1泊2日かかる巻機山裏側の五十沢川下ノ滝沢の遡行が先に決まり、3連休で1日余るのでどこかもう1本登ろうということで巻機山表側の割引沢を登ることになった。したがって今回はヌクビ沢遡行→裏巻機登山道下降→五十沢川下ノ滝沢遡行→巻機山井戸尾根登山道下降と8の字を描きながら歩いた。
1日目 |
2008年9月13日(土) くもり時々雨 |
桜坂駐車場…割引沢…巻機山…五十沢川本流徒渉点(泊)
桜坂駐車場 | 5:20起床 |
6:05 | |
割引沢徒渉点 | 6:35 |
6:46 | |
アイガメの滝 | 7:04 |
割引沢・ヌクビ沢二俣 | 8:00 |
8:17 | |
布干岩 | 8:35 |
三沢出合・行者ノ滝 | 8:50 |
不動滝 | 9:21 |
不動滝上 1425m | 9:45 |
10:00 | |
水涸れ 1750m | 11:05 |
11:18 | |
割引岳・御機屋 最低鞍部 | 11:43 |
12:13 | |
牛ヶ岳北端 | 13:00 |
13:10 | |
八合目 1671m | 13:32 |
中ノ滝沢徒渉 1400m | 14:00 |
14:23 | |
六合目 1200m | 14:53 |
四合目 五十沢川本流徒渉点 | 16:10 |
19:20就寝 |
12日金曜日22:30JR武蔵野線新座駅集合。所沢ICから関越道に乗り、前日のうちに巻機山登山口の桜坂駐車場まで詰めておく。1:10着、まだすいている駐車場にテントを張り、一夜を過ごす。
朝起きると続々と車がやってくる。テントをしまい出発。すぐ井戸尾根への道を分け割引沢へ向かう。小屋が2軒建っているススキの原を過ぎる。奥には黒ツブネ尾根の天狗岩が見える。比較的平らな道を進んでいると眠くなり、うつらうつらしながら割引沢に出る。割引沢に出たところで沢装備を出す。登山道沿いだから厳しいところはないだろうということでハーネスはつけない。
登山道は無視して沢沿いにすたすた登る。しばらく平凡な河原を登る。途中で夫婦と若いグループに抜かれる。彼らは登山道をたどっていたので私たちより速かった。やがてナメが現れる。ナメを進むと釜を持つ6m2段滝で詰まる。右手から回り込んでナメを登っていくがみんな苦戦する。大した滝ではないのだが、スラブの上に立たなければならず不安定である。Hさん、Iさんは今年最初の沢登り、Sさんも2回目とあって苦労していた。ここでザイルを出したのでやっぱりハーネスを着けて登ることにする。
9/13 6m2段滝。最初のこの滝で意外に苦戦する。 |
9/13 吹上ノ滝。右から簡単に登れる。上にニッコウキスゲが咲いていた。 |
そのあと吹上ノ滝。スラブ滝だが、滝の右側にでこぼこがあり、快適に登れる。登った右上にはニッコウキスゲの群落があり満開になっていた。私がIさんに「ヤマユリ?」と尋ねたら「ニッコウキスゲ」と言われてしまった。花の名前はよく分からない。
吹上ノ滝を登ると割引沢は右に戻るように屈曲し、奥にアイガメの滝。割引沢で一番大きな滝であり、地形図にも滝の記号が見られる。ここは登山道に従って左から巻く。すぐには沢に戻れず登山道沿いに歩く。こんなときにヤブ漕ぎをしなくてよいのは楽だ。沢が滝を一つかけるところで沢に戻れる。
9/13 アイガメの滝。左の巻き道から登る。 |
9/13 割引沢・ヌクビ沢二俣の落合でどちらを登るか相談。 |
河原歩きをしばらくで割引沢・ヌクビ沢二俣の落合に着く。ここから割引沢を詰めるかヌクビ沢を詰めるか相談するが、ヌクビ沢の方がずっと沢沿いに登山道が続いているのでヌクビ沢を詰めることにする。落合では蜂が飛んでおり、なぜかHさんを慕ってブンブン追いかけていた。
9/13 井戸尾根の登山道から見るヌクビ沢。 |
9/13 ヌクビ沢の河原を進む。一般登山道とは思えない場所に赤ペンキが続いている。。 |
ヌクビ沢に入るとしばらく岩の河原。沢が左に曲がるところで布干岩。一枚岩の平たいスラブに水が流れている。ここは気持ちよく登れる。やがて三沢出合。出合にヌクビ沢を示す赤ペンキの矢印が塗ってあった。ヌクビ沢にはすぐ行者ノ滝が控えている。すぐ右についた巻き道を登る。
9/13 布干岩をぺたぺた登る。 |
9/13 正面に三沢出合を合わせる。矢印に従い左のヌクビ沢本流に進む。 |
そしてしばらく河原歩き。やがて2mほどの滝にぶつかる。左に巻き道が見える。この2m滝は水流の右側から簡単に登れるが、奥にある5mほどの滝が登りにくい。真ん中前方に突き出した岩に乗っかり、その上へ登るのだが、突き出した岩に乗っかるのもそこから登るのもつらい。私は上段の細かいホールドをつかんで登れず、Kさんにシュリンゲで引き上げてもらった。私とKさんのほかは左の巻き道を登っていた。たぶんこのあたりがアルペンガイドの示す不動滝なのだろう。上段には古いハーケンがささっており、昔は沢登りとしてここを登っていたのだろうことがわかる。
9/13 三沢を分けて行者ノ滝。右の巻き道から登る。 |
9/13 5mほどの不動滝とおぼしき滝。真ん中のリッジに乗っかり、そこから這い上がる。ヌクビ沢で一番難しかった。 |
5m滝の上に4m滝が控えるが、上部がつるつるで登れない。左の巻き道から登り、苦戦するKさんを引き上げた。そのあとはただの河原歩きで難しくない。やがてHさんと合流した。巻き道もあんまりよくないらしく、Hさんと巻き道をたどったIさんとSさんは遅れていた。沢沿いにしても巻くにしても下ることは難しいようだった。全員合流して一休み。
9/13 不動滝の巻き道をSさんとIさん。 |
9/13 スノーブリッジの下を行く。 |
そこからは雪崩のためか荒れた沢が続く。浮き石が多く歩きにくい。やがてスノーブリッジが現れた。雪はだいぶ薄くなっているので下をくぐる。一般登山道でスノーブリッジの下をくぐるところなど滅多にない。スノーブリッジをすぎるといよいよ沢は狭くなり、水量もくるぶしくらいしかなくなる。
9/13 ヌクビ沢上部。流れは細い。 |
9/13 木いちご。甘くておいしい。 |
と、小滝の登りでHさんが木いちごを見つける。これがなかなかおいしい。たくさんなっているのでみんなで食べる。私たちのほかに2パーティー先行して登っているはずだが、たくさん残っていた。
木いちごの小滝を過ぎると10分足らずで水涸れ。水を汲むが、雨が降ってきた。明日の天気が思いやられる。水涸れからすぐ沢から離れて稜線に向かう。足下が不安定な急登だ。沢はすぐ先でどんづまりとなっており、岩が行く手を阻んでいた。15分ほどの登りで稜線に達する。ここで沢装備を解除する。案の定、稜線に出たところには「下山禁止」という看板が置いてあった。
9/13 沢を離れて稜線へ。 |
9/13 稜線で沢タビから運動靴に履き替える。 |
ここから明日登る下ノ滝沢の入り口へ向かう。巻機山の山頂は北側の下ノ滝沢源頭をぐるりと囲むように稜線が伸びている。五十沢川下ノ滝沢へは東の端の牛ガ岳から北へ下る登山道しかないので牛ガ岳へ移動する。御旗屋で井戸尾根の登山道を合わせるとだいぶ人が増えた。池塘を見たりIさんに花の名前を聞きながら牛ヶ岳へ。
牛ガ岳の北端から五十沢川への裏巻機の道が伸びているが、入り口の看板に熟達者向けとあり道があまりよくないことが分かる。さらにそこに農工大探検部の追悼の碑があり、「下ノ滝沢で眠る」とあってパーティーの雰囲気が悪くなる。ちょうど雨も降ってきて嫌な感じだ。どちらにしてももう13時なので幕場を決めなければならず五十沢川へ下る。
9/13 牛ガ岳北端のピークから五十沢川へ下る。 |
9/13 五十沢川へ下る道は笹が滑りやすい。 |
五十沢渓谷への道は看板通り熟達者向けであまり整備されていない。周りは笹で、道沿いは刈られているのだが、それでも草が生えており滑りやすい。あまりにも滑るのでその辺の笹をつかみながら下る。切った笹の根元が見当たらないところを見ると昨年以前に切られたのではないだろうか。また看板も赤テープもなく、人通りもない。
裏巻機の登山道も清水からの井戸尾根同様「何合目」の区切りがある。少し下ると九合目の草原。乾いた湿原のような原っぱで九合目の小さな看板がある。踏み跡も獣道みたいなもので濃いガスに巻かれたら迷ってしまいそうだ。九合目から右に曲がり、中の滝沢に沿った尾根を下る。
尾根上の1671m標高点が八合目、ここから急な滑る道を下ると中の滝沢徒渉点。徒渉といっても水量はわずかで飛び石で渡れる。しかし足を滑らせ片足を水たまりにつけてしまった。靴下もびっしょりで気持ち悪い。ここまでよく滑って苦戦していたSさんも派手にこけていた。
9/13 中ノ滝沢で一本。足が水たまりに入り靴がずぶぬれ。 |
9/13 すべりやすい土の斜面を下る。 |
しばらく休んで出発。中の滝沢を渡ると樹林帯に入る。依然として急で滑りやすい道だが、掴むものが笹でなく灌木になって少しはましになる。1150m付近になると道は平らになる。水が汲めるか汲めないかくらいのわずかな流れがあるところが六合目。そのあと細いヤセ尾根を下る。ところどころ花崗岩らしき崖があり、高度感がある。崖のところからは五十沢のスラブ群がよく見えた。あす登る下ノ滝沢にもスラブが見え、あんなところ行けるだろうかと不安になった。道ばたに目をやるとウルシの仲間のハゼが赤く色づいていたので、かぶれる人は長袖を用意した方がいいだろう。
ときどき頼りないロープがぶら下がった急な道を下って四合目の五十沢渓谷に降り立つ。ときはすでに16:10。テント場を探す。私は対岸の登山道登ったところを、Kさんは五十沢川下流を、Hさんは五十沢川上流を探し、徒渉点すぐ上流左岸の河原にテントを張る。砂地で植物がないので増水が不安だが、水面より1mくらい高いのでそこに張る。
9/13 五十沢川に降り立つ。 |
9/13 徒渉点の少し上流に幕営。 |
テントを張ってすぐ飯をつくり、たき火を囲む。しかし18:30ごろ雨が降ってきたのでたき火をあきらめてテントに引っ込んだ。雨はすぐやんだが、テントのIさん、Sさん、私はもう疲れていたのですぐ寝てしまった。ベテランのHさん、Kさんのツェルトはしばらく飲み続けていたようだった。
上越・五十沢川下ノ滝沢へつづく。
ヌクビ沢はアルペンガイドに登山道として載っているほどの沢なので、大して難しくもなく巻きが多かったりするのだろうかと思いあまり期待していなかった。しかしほとんどが登れる滝、登れない滝もすぐ横に巻き道があり、思ったより楽しめた。一方で上部では浮き石ばかりの沢と登山道が一致していて巻き道も滑りやすく、一般登山道としては厳しいと感じた。少なくとも下るのは難しい。となりの米子沢に行く人で1日予定が余るならこのヌクビ沢を登るのもよいかもしれない。
また巻機山裏側の五十沢渓谷へ下る登山道を初めて歩いたが、非常に歩きにくかった。草が付いていて滑りやすく笹や灌木につかまりながらの下山となってしまった。この道もまた看板にある通り熟達者向けだと思う。
(2008年9月18日記す)