山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2007年山行一覧>奥秩父・一之瀬川竜喰谷
↑この地図は、国土地理院発行の2万5千分の1地形図(雁坂峠、柳沢峠)を使用したものである。
竜喰谷は丹波川の支流、一之瀬川の谷の一つ。「ROCK & SNOW BOOKS 沢登り」の紹介文によれば「下駄小屋ノ滝、曲り滝という大滝のほか、数多くの小滝を有するが、ほとんどが直登可能で、滝巻きも比較的容易」な谷である。
平和そうな点で私も興味はあったのだが、多摩川の奥深くでありアプローチに車を使わないと行けないので、ペーパードライバーの私は半ば諦めていた。しかし、ある日ワンゲルのサイトを見ていると現役が竜喰谷に行くという予定を掲示板で見かけた。千載一遇のチャンスと見て私もそれに飛び乗った。
行ってみると確かに曲り滝以外の滝はすべて直登できたし、ナメはあるし、最後はヤブ漕ぎなく大常木林道に出られたので、十分楽しむことができた。沢登りの楽しいところを詰め込んだ沢で、今年の沢はじめにちょうどよかった。
日帰り |
2007年5月12日(土) 晴れ |
石楠花橋…曲り滝下…大常木林道…二之瀬集落…石楠花橋
石楠花橋 | 8:16 |
8:44 | |
曲り滝下 | 10:23 |
10:36 | |
大常木林道 | 13:00 |
13:25 | |
二之瀬集落 | 15:05 |
石楠花橋 | 15:17 |
前日にワンゲル部室泊。朝5時に大学を出る。後輩の運転する車で約3時間。入渓点の石楠花橋に着いた。各自準備して出発。
石楠花橋から少し下流に下り、竜喰谷出合の少し下流から一之瀬川に下る踏み跡がある。これをたどって一之瀬川に下る。少し上流に一之瀬川をたどると滝が一つあり、これを右から巻くと滝上で竜喰谷が出合う。竜喰谷はナメで始まり気持ちがいい。
5/12 竜喰谷に入渓する。踏み跡はしっかりしている。 |
5/12 一之瀬川本流にかかる滝。滝のすぐ上の右に竜喰谷が流れ込んでいる。右から巻き。 |
出合から見えるところで5m幅広滝。黒くて重々しい門のようだ。青木が率先して右から登る。私たちもそれに続く。その後狭まったところを過ぎて4mほどの滝。左からへつるが、ホールドがない上、スタンスが滑りそうで心もとない。道場、青木、辛島と順調に通過していくが、私はビビってすぐ上から巻いてしまった。栗山は果敢に突入していったが、滑り落ちてずぶ濡れになってしまった。半年ぶりの沢で感覚がまだ慣れない。
5/12 竜喰谷に入ってすぐの5m幅広滝。 |
5/12 4mほどの滝。栗山が落っこちる。私はビビって左から巻き。 |
9:15ごろ、左から枝沢を合わせる。すぐ上で右から涸れ沢のような壁がある。9:20、幅広8m滝。右から登れるが水をかぶるので私は右から避けた。青木、道場、栗山の3人はちゃんと登っていった。9:35、倒木の沈んだ3m滝。トップは左からへつっていったが、栗山が腰まで沈んで倒木に乗っかっていったのを見て私も真似する。
5/12 幅広8m滝。 |
5/12 幅広8m滝を登る栗山。 |
9:45下駄小屋ノ滝12m。2段で下段は吹き上げている。苔むしていて滑りそうだ。私はまた巻き道を探す。左から巻けそうだ。その点をリーダーの辛島にも報告する。トップの青木、道場はどこから登るか迷っていたが、道場が滝の左から突破。上段も簡単に登れたようだ。後続もそれに続くが、私は下りるのが面倒なので、そのままヤブを漕いで滝の上に出た。10分ほどで全員越えられた。
5/12 下駄小屋ノ滝12m。 |
5/12 下駄小屋ノ滝12mを登る青木。 |
下駄小屋ノ滝の後はしばらくナメや小滝など平和な沢が続く。10m幅広滝では水流の少ない左から登るが、2年生は水流のある右から登っていった。栗山や私は沢タビのフェルトがすり減っていてフリクションを信用できず、真似できない。やがて8m多段滝。下から見ると左に曲がりながら上に続いている。岩がすべすべしていて登りが怖い。うまく岩角を見つけながら登り、右手から枝沢を合わせると曲り滝10m。
5/12 下駄小屋ノ滝上のナメ。 |
5/12 10m幅広滝。 |
ここで一本。滝は直登なら右からだが、難しそうだ。相談の結果、巻き。しばらく休んだ後、8m多段滝の途中まで戻って巻き道に入る。巻き道はしっかりしている。曲り滝の右岸の壁の上、ヤセ尾根を歩く。巻き道はだいぶ高く巻き、下降点に迷うが、曲り滝の上から30mくらいの高さまで登り、滝の上流に緩やかに下っていった。下り道は少し見つけにくい。下り立ったところは美しいナメであった。
5/12 曲り滝10m。左から巻く。 |
5/12 曲り滝の巻き道。だいぶ上まで登るが明瞭。 |
その後左から中の平沢を合わせる。2年生に現在地確認をさせるが判断がどうも怪しい。その後、枝沢が現れるごとに現在地確認をさせる。
曲り滝を過ぎてしまえば大きな滝はもうない。2段8m2条滝は「ROCK & SNOW BOOKS 沢登り」に「直登は中央」と書かれていたが、右からの方が簡単そうだ。私は右からツイツイッと登ったが、青木を始めとして残りのメンバーがバカ正直に真ん中から登ってきた。
5/12 2段8m2条滝を登る青木。 |
5/12 チョックストーンのある3m滝。 |
ところどころナメがあり、気持ちのよい沢だ。チョックストーンのある3m滝では左から巻けるが青木と道場が右から踏ん張って登ってきた。右に2つ枝沢を分ける。2つ目では枝沢に立派な石積みの堰が見え、どうやって作ったのか首を傾げた。
その後またチョックストーン滝(2m)が現れ、青木と道場が挑戦するが、無理だったようだ。私は右から穴を抜けて出てきた。上から見るとその穴は見えず、岩の下から唐突に手と頭が出てきて滑稽であった。
1480mの二俣は右の枝沢がすっかり倒木に覆われていたが、そこに赤テープがあった。もう大常木林道かと周辺で道を探すが見つからない。割と広い沢を行くと1495m付近の二俣。しかし右はヤブに覆われて枝沢は見つからなかった。ただ谷の地形は確認できた。
そのあたりで砂金のように見える大きさ1mmくらいの砂を見つけた。水底の砂の上に10粒/cm2くらいの密度で散らばっている。金かなあと思うが、雲母のような黒い薄片の片面が光を反射しているようだった。場所柄、武田の金山も近くにあったようなところなので気になったが、残念ながら金を判別する能力もなくほったらかしにしてきた。
すぐ沢がヤブに覆われて右から巻く。巻きと言っても沢が広いので河原を歩く感じだ。右岸は砂地の壁が崩壊していた。沢に戻ると楯ノ沢と井戸沢の二俣。楯ノ沢はヤブっぽい。「ROCK & SNOW BOOKS 沢登り」に従い、井戸沢を歩くことにする。ここでトップの2年生に大常木林道を見逃さぬよう強調する。ひょっとしたら冬の間に大常木林道の橋が流されているかもしれないので左右道らしきものを探すよう言う。ついでに大常木林道を見逃すと将監小屋まで2時間の猛烈なヤブ漕ぎとおどしておいた。
二俣から40秒後。「あ、橋」との声。大常木林道はすぐ見つかった。そこで沢タビを脱いで一本。東側は東京都水道局の通行止めの看板が。そもそもここまでも来る人いないだろうに。
靴を履き替えて下山。西へ小尾根を一つ巻くと楯ノ沢に出る。楯ノ沢を橋で渡ってすぐ登る。登ると楯ノ沢・中ノ平沢間尾根の最低鞍部に出る。コルの南側は縞状に笹が刈られていた。営林上よいのだろうか。そこで背後から人がやってきた。カッコから言って登山者でなく仕事のようだ。それにしてもこの道に入る人がいるとは。1550mの等高線に沿って西へ巻く。
2本目の涸れ沢を渡るところで分岐。右は登っていって将監峠道のムジナノ巣。左は二之瀬へ通じる道。しかし、その場ではそれぞれいったいどこへ通じているのか不明だったため、相談。私は「ROCK & SNOW BOOKS 沢登り」の記述「分岐では基本的に左」に基づき左を主張する。結局、左に進む。
5/12 大常木林道に出て遡行終了。 |
5/12 1537.7m三角点峰南の小屋根。用途はよくわからない。 |
道は涸れ沢に沿って下る。やがて涸れ沢には水が流れてくる。適当なところで1537.7m三角点峰を乗り越えて二之瀬に下るのだろうと思っていたが、どんどん中ノ平沢に下っていく。右から涸れ沢一つを合わせた後、右岸に渡り、下る。やがて沢からだんだん離れてトラバース道になり、小沢を2つ渡り、1537.7m三角点峰の東斜面をトラバース。
延々トラバースして竜喰谷の右岸斜面に出る。とはいっても竜喰谷は300mほど下。対岸のモリ尾根の1434m峰付近が平らなので現在地確認できた。1460m峰を1400m等高線に沿って回り込み、さらに1353m峰の尾根を乗り越す。
どこ歩いているのか分からず、「この道どこまで続くんだ」という不安でみんな疲れているようだった。私は一人、ルートファインディングのいい機会なので、地形図をにらめっこしながらおおむね現在地をつかみながら下っていった。道自体は荒れることもなく分岐もほとんどなく至って歩きやすい。ルートを地形図に落としたので、このあたりは文章読むより地図を見てもらいたい。
さらに二之瀬集落裏の尾根に出てジグザグに下り、二之瀬集落に降り立った。遡行終了点から約1時間半の道のり。出たところには何も看板が立っていなかった。二之瀬は谷の合間の平らな小さな村でちょうど桜や桃が満開であった。険悪な一之瀬川の上流にこんな平和なところがあるとは思わなかった。ここから下流の次の村(丹波)まで約12km、それも険悪な一之瀬川、丹波川が控えていることから考えて、二之瀬の人はたぶん塩山側と交易していたのだろうと思う。
二之瀬から15分ほど下って石楠花橋にもどる。各自着替えて下山した。天気はよく、下山したときにはズボンもパンツも乾いていた。
今年の沢登りの1回目としては竜喰谷は不安であったが、登れる滝も多く、濡れなくても済むよう巻き道も多いため、安心して登れた。深い谷だから日差しも少ないかと思ったが、天気もよく日に当たれば暖かかった。
2年生の元気に圧倒され見習わなければと思ったが、臆病なので真似は難しそうだ。
(2007年5月13日記す)