山ノ中ニ有リ山行記録一覧2007年山行一覧>南アルプス・北岳

2007年夏 - 南アルプス・北岳


2007年8月11日(土)、12日(日)
場所
山梨県南アルプス市/南アルプス北部
コース
8月10日
高尾=甲府(泊)
8月11日
甲府=広河原…白根御池小屋…肩の小屋(泊)
8月12日
肩の小屋…北岳…八本歯のコル…広河原=甲府=高尾(解散)
参加者
菅井先生、安岡さん(H17卒)、原君(H18卒)
天気
両日とも晴れ
参考文献
07南アルプス・北岳の地図

はじめに

 千葉高山岳部OB会の山行として3月の御岳山に続いて企画した。場所は安岡さんの「北岳」、原君の「高い山」から決定した。10人以上に声をかけたが、夏休みの中程であり私のほか3人しか集まらなかった。

 私自身、北岳は1度しか登ったことがなく、それも11年前なのでちょうどよい機会だった。天気はよく、夏山らしい山であった。ただ久しぶりの純粋な夏の縦走で暑かった。夏はやはり沢登りがいい。

0日目

2007年8月10日(金)

高尾=甲府(泊)

 JR中央本線高尾駅集合。22:26発の終電、小淵沢行きに乗って甲府へ。甲府で改札を抜ける際、安岡さんが財布がなくすというアクシデントに見舞われる。駅構内の忘れ物承り所、駅前の交番に届けるが、所在は分からない。さしあたっては他の人からお金を借りることにする。バスの待合室前で銀マット敷いて仮眠。

1日目

2007年8月11日(土) 晴れ

甲府=広河原…白根御池小屋…肩の小屋(泊)

コースタイム
広河原6:10
6:38
1800m付近7:33
7:45
白根御池小屋8:50
9:17
2600m付近10:13
10:35
小太郎尾根11:23
11:48
北岳肩の小屋12:16
17:35就寝

 3:30起床。ムーンライト信州から降りてきた人たちと合流してバスに乗車。さすがにシーズンだけあって快速広河原行きのバスは5台ほど出ていた。

 途中、芦安夜叉神峠で停車しながら終点広河原に到着。前は吊り橋のそばの大樺沢出合バス停で降りたのだが、今は大樺沢出合バス停はなく、終点広河原まで行かなければならない。下車してから数えるとバスは7台あった。芦安で増発したのだろうか。出発準備する。トイレはあるが、水場がない。しかたがないのでトイレとなりの「この水は飲めません」という水を汲む。

 今日の行程は白根御池小屋経由肩の小屋まで。日差しが暑そうなので大樺沢沿いの道ではなく、樹林帯の道を選んだ。野呂川の吊り橋手前で北岳が見える。今日は天気がよさそうだ。吊り橋を渡って広河原山荘のそばをすぎ、枯れ篠の道を行く。登り道になると大樺沢と白根御池小屋との分岐に出る。ここで樹林帯の続く白根御池小屋への道をとる。なぜか大樺沢沿いの道に比べて白根御池小屋への道を歩く人は少ない。

北岳
8/11 野呂川の吊り橋から見た北岳。
登り
8/11 白根御池小屋への登り。

 白根御池小屋への道は急登である。小尾根をずっと登っていく。天気は晴れで日差しが強いが、樹林帯なのでさほど暑くはない。今日は1500mずっと登りなのでペースは抑えて歩く。途中、白根御池小屋まで半分という看板の少し下で休む。少し広くなったあたりで菅井先生いわく、昔はこのあたりに水が出ていたそうだ。今はその面影もない。

 その後の急登で下ってくるパーティーとすれ違うとき安岡さんがあっと声をあげた。パーティーのひとりのおばさんと少し話していた。あとで聞くとニュージーランドのミルフォードトラックを歩いたときに同行した人らしい。大阪の人らしいので日本で会うとはすごい偶然だと思う。

 あるところで道は水平トラバースになる。これまでの急登に比べて歩きやすい。2か所ザレを巻くために登りがあるが他は水平である。途中、沢を渡るところでみんな水に触れる。菅井先生がメガネをかけたまま顔を洗おうとしてメガネを濡らして困っていた。

 沢からしばらくで白根御池小屋。単調な山腹にこんな平坦地があったのかと驚くような広さだった。日差しが強いので小屋の玄関の軒先で休む。水は蛇口から手に入るのでここで全員持っているすべての水筒を満たす。肩の小屋は水が手に入るかどうか分からないからだ。水は登ってくるときに横切った沢から汲んでいるのだろうか。

白根御池小屋
8/11 白根御池小屋。
草すべり
8/11 草すべりの登り。

 白根御池小屋から草すべりを経由して小太郎尾根へ登る。白根御池小屋から少し南へ進むと白根御池。池の水は緑色で飲料には適さない。草すべりは池のそばから急に登っている。名前の通り草付きでいろとりどりの花が咲いている。黄色、白、青、紫と10ほど種類があり、菅井先生がミヤマなんとか、なんとかナデシコとか指呼してくれるのだが、ちっとも覚えられない。私が分かる草はアザミだけだった。そんな感じで急登にもかかわらず楽しく登れた。樹林帯に入ったところで一本。北岳の山頂が見えそうだが、雲がかかってなかなか見えない。でもまだまだ登りそうだ。

草すべり
8/11 草すべりを登る。後は白根御池。
草すべり
8/11 草すべりに咲いていた花。

 樹林帯を抜けて大樺沢二俣からの道を合わせる。そこからジグザグに登り、小太郎尾根に出る。いよいよ稜線に上がり、展望もある。野呂川をはさんで仙丈ヶ岳がよく見え、東に鳳凰三山が見える。北岳と甲斐駒は雲がかかってなかなか姿が見えない。北岳の肩の小屋は見えた。原君の持ってきた水ようかんをみんなで食べる。何でも先週槍ヶ岳を登ってきた由緒正しい水ようかんだそうだ。水気のあるものがおいしい。

草滑り上
8/11 草滑り上で一本とる。
小太郎尾根
8/11 小太郎尾根に出たところ。背後は鳳凰三山。

 今日最後の一本、肩の小屋まで歩く。しばらく水平な山腹の巻き道だが、肩の小屋の手前から100mの登り。ひとしきり登って平坦地を過ぎると北岳肩の小屋に出た。小屋は急登の直前で明日は最初がつらそうだ。1人500円の幕営料を払い、テントを張る。テント場は小屋の大樺沢側で稜線から1段下りたところ。稜線なので狭い。原君に持ってきてもらったエスパース4,5人用テントを張る場所がなかなか見つからない。結局一番下の段の小石をどかしてそこに幕営した。テントは他に20張りほどあった。

小太郎尾根
8/11 小太郎尾根から北岳肩の小屋まで縦走。
肩の小屋
8/11 北岳肩の小屋。ここに幕営。

 水は小屋で買うか、100m下って汲みに行くか。買うと100円/リットル。場所がら天水だと思う。私たちは汲みに行くことにした。こんな稜線でどのように水が手に入るのか調べたかったのである。後で原君と下ってみた。下り始めてすぐ登り返してくる人とすれ違う。その人の手元のペットボトルは空だ。すれ違うときに私たちが聞きたいことをその人は聞いてきた。「水場どこだか分かりますか?」どうも水が見つからなかったらしい。「わかりません。水場の看板に従って下り始めたところです」と答えて下る。確かに100mほど草付きのジグザグ道を下ったところでルンゼに出る。ただの涸れ沢だ。「水」と書かれた赤ペンキがあるが、見つからない。ルンゼは湿っているが水が流れていない。私がルンゼを下ろうとすると、原君が声を上げた。ちょうど私の後ろで水が流れていたのだ。岩の下で気がつかなかった。先ほどの人もそのために見つけられなかったのだろう。金物の樋があるが水を汲むにはコップが必要だった。3つのポリタンを水で満たし、テン場に戻った。

テント場
8/11 北岳肩の小屋のテント場。
水場
8/11 北岳肩の小屋の水場。わずかしか流れておらず持参したコップで水を汲んだ。

 テン場で持ってきたメロンを出す。これはみんなに好評だった。小屋の下に小さな雪渓があったので缶ビールをそこで冷やす。晩飯のハヤシライスと一緒にビールを飲むが、みんな炭酸で腹がいっぱいになってしまってハヤシライスが入らない。残ったハヤシライスは翌日の朝食べることにした。

メロン
8/11 メロンをいただく。
富士山
8/12 翌朝北岳山頂から見た富士山。

 東の空を眺めていると、かなとこ雲がぐんぐん成長して足下がちぎれて行く様子が観察できた。くもっていた北岳山頂も晩飯の頃には晴れ、よく見えた。この日の行動時間は5時間40分と標高差1500mの割に苦戦せずたどり着けてよかった。

2日目

2007年8月12日(日) 快晴

肩の小屋…北岳…八本歯のコル…広河原=甲府=高尾(解散)

コースタイム
肩の小屋2:00起床
3:30
北岳山頂4:12
5:25
八本歯のコル6:11
6:27
大樺沢二俣7:41
8:04
1770m付近
大樺沢渡渉
8:57
9:07
広河原9:45
10:30

 2:00起床。寝付く頃はまだ日があって暑かったが、夜更けはシュラフに入らないと寒かった。昨日のハヤシライスの残りを食べ、ラーメンを一袋だけ食べる。0時頃から吹き始めた強風はテントをバタバタ揺らし、撤収が大変だった。しかし、強風のおかげか雲はなく、東西方向に見事な天の川が天を覆い、夜叉神峠のあたりにはオリオン座が見えた。富士山にもスバルライン五合目に灯りが見えた。

 3:30発。まだ暗いのでヘッドランプを頼りに歩く。肩の小屋から山頂まではエアリアマップで50分。夜明けは5時頃なので出発は早くなってしまった。もう少し起床を遅くすればよかったと少し後悔する。

 暗い中、ヘッドランプで道を探しながら歩く。ところどころ間違いながら歩くが、道が分からないと迷っている時間もあり、すんなり進まない。山頂直前のピークで少し迷う。稜線の西側を歩く道だが、ときどき稜線に出ると東風が強い。北岳山頂には4:12着。日の出まで50分ほど残っている。私は着るものを山シャツ&カッパしか持っていなかったため、寒くて稜線に立っていられず、ひたすら岩陰で紅茶を作っては飲み暖まっていた。

北岳の影
8/12 北岳の影が伊那谷の雲海に映った。
北岳山頂
8/12 北岳山頂にて記念撮影。左から安岡、原、菅井先生、中山

 3杯目の紅茶を作った5時頃。だいぶ人も集まり、今まで真っ黒だった間ノ岳の山の端も、山の陰と白いザレを区別できるくらいに明るくなってきた。そして鳳凰三山の後ろ、奥秩父の肩からご来光。さえぎる雲はなく、なかなか乙なものである。展望は絶好。北アルプスは白馬岳あたりから穂高、焼岳まで見え、その左には手前から仙丈ヶ岳、中央アルプス、木曽御岳。南は間ノ岳、塩見岳、荒川三山。さらに左に目を移すと富士山から東に鳳凰三山、奥秩父、その後に浅間か赤城か日光連山。一周して北へ目を向けると八ヶ岳と甲斐駒。絶景なり。さらに日が昇ってくると伊那谷の雲海に北岳の三角形の影が映った。思いのほかきれいな二等辺三角形でみんな富士山の影と勘違いしていた。

 1時間以上たたずんでいた北岳山頂を後にして広河原へ下る。来た道を戻るのはつまらないので八本歯のコルから大樺沢沿いの道を下る。山頂から南へ下る。北岳山荘から次々と人が登ってくる。なかなか八本歯のコルと北岳山荘の分岐が現れず、少しあせるが思ったより下の方に分岐があった。分岐からさらに下って、北岳山荘のトラバース道を合わせてから八本歯のコルまでハシゴの下り。コルで一本。

八本歯のコル
8/12 八本歯のコルに下る菅井先生。ハシゴが多い。
大樺沢左俣
8/12 大樺沢左俣の道。ときどき雪渓を渡る。

 八本歯のコルから見る大樺沢はすぐ下れそうに見えるが、けっこう長かったはずである。ハシゴの連続する下りでなかなか下りにくい。途中、バットレスのよく見えるテラスがあり、クライマーを2パーティー見かけた。ときどき「ビレイ解除」などのコールがよく聞こえた。スタンスがどこにあるか分からず私には難しそうに見えた。ハシゴの道が終わると雪渓の上端。雪渓のきわのザラザラした下りにくい道を下ると大樺沢二俣。ここで一本。

 大樺沢二俣には仮設トイレが2基おいてあり、小用をすます。大樺沢二俣からの道は前に来たときに往復で歩いているはずだが全く覚えていない。いったん大樺沢を左岸から右岸に渡るが、それも覚えていない。二俣から登山客が多く、すれ違いの待ちで閉口した。すれ違いながら気がついたが、他の山に比べて若い人(20代から30代前半)が多かった。シーズンだから富士山に続いて第二の高峰北岳も登ってやるという一般の人が多いのだろうか。大樺沢を右岸に渡り返すところで一本。そこで登山ラッシュも一段落した。

 大樺沢沿いの水際の道を歩き、白根御池小屋からの道を合わせて広河原山荘に到着。吊り橋を渡ってバス停へ。北岳山頂から標高差1660mを6時間15分で下ってきた。振り返ると北岳が高く、空は依然として真っ青。夏らしい天気だ。でも暑いので夏は沢登りだと再確認する。今日、下界は35℃を越える猛暑日で相当暑かったらしい。

 広河原からは1人2000円の乗り合いタクシーで甲府へ下る。夜叉神峠手前で車酔いしてしまい、ずっと窓を開けて風にあたっていた。途中、シレイ沢を横切るときその様子を見たが、出合からいきなり滝がかかっていて登りがいのありそうな滝であった。去年計画したが工事中で登れず、ナルミズ沢に変更した経緯があり、一度登ってみたい。

 甲府についてから風呂を探したが駅の近くに安い銭湯が見つからず、そのまま中央本線に乗車した。高尾で解散する。安岡さんのなくした財布は高尾駅にあり彼女の手に戻ったが、残念ながらお金は抜き取られていたそうだ。この日は15時頃に帰宅でき、15日以降の北アルプス・裏銀座から槍穂縦走に備えて準備した。

おわりに

 久しぶりに南アルプス北部に行った。場所の決定に私の希望は特になかったが、しばらく行っていないことが特に反対しなかった理由だろう。希望した安岡さんと原君は初めての北岳で2人とも夏山を十分満喫していたようだ。

 でも夏らしい縦走もまた久しぶりで顔は焼けたし、何より暑かった。やはり私には沢登りが合っているらしい。

(2007年8月12日記す)


山ノ中ニ有リ山行記録一覧2007年山行一覧>南アルプス・北岳

inserted by FC2 system