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2006年春 - 丹沢・大山川


2006年4月15日(土)
場所
神奈川県伊勢原市/丹沢
コース
小田急線伊勢原駅=(神奈川中央バス)=大山ケーブル駅…下社…二重滝…大山川遡行…大山…下社…大山ケーブル駅=伊勢原駅
参加者
植松(2)、栗山(2)、辛島(2)、澤(1)
天気
晴れ
参考文献
06丹沢・大山川の地図

はじめに

 沢登りの時期が待ちきれず、水量の少ない沢を選んで4月のうちに沢を登った。

 沢登りは概して寒い。腰まで水に浸かったり、シャワークライミングを強いられる。必然、沢登りができる季節は限られ、5月から10月までといったところだろうか。下界で肌寒い風が吹く季節は沢登りはできないし、しても面白くない。その分、季節が春になると沢登りを待ち切れなくなる。東京の4月はまだこたつやストーブをしまう時期ではなく、ときどき寒い日にそれらの暖房機具を使うくらいの気候である。それでも週に1度ほどぽかぽかと暖かい日があり、そんな日は沢登りもできる。

 今回は特に水量の少ない沢を選び、今年最初の沢登りに行った。天気予報では降水確率20%、天気はくもりと条件は悪かったが、行ってみると天気は晴れ、そこそこ暖かかった。水量はほぼゼロで濡れないようにと思えば全く濡れないで登ることができるくらいの量だった。

 選んだ沢は丹沢・大山川。大山川を発する大山は丹沢の端に位置し、登山を趣味にしない人でも多く登っているポピュラーな山だ。大山川は川といっても沢登りの対象範囲は山頂に近く、谷の幅も水量もない。そのため、ネットで検索すると4月とか11月とか寒い時期の遡行記録が見つかる。おそらくは私と同じようにその年の沢始めにするか、締めの沢登りにするかしているのだろう。レベルは初級であり、今年の沢始めには手ごろなところである。一人で行くのも寂しいので大学の後輩と行くことにした。

日帰り

2006年4月15日(土)

小田急線伊勢原駅=(神奈川中央バス)=大山ケーブル駅…下社…二重滝…大山川遡行…大山…下社…大山ケーブル駅=伊勢原駅

コースタイム
大山ケーブルバス停8:01
8:22
二重の滝9:00
10:10
750m二俣10:35
二俣
左俣を行く
10:55
910m付近11:25
大山山頂13:20
13:53
下社14:40
追分ケーブル駅15:03
社務所入口バス停15:35

 朝4時起き、4:56発の始電に乗って京成、都営新宿線、小田急と乗り継いで大山のふもと、伊勢原へ。去年くらいから都営地下鉄では土日限定の1日乗車券を期間限定で発売しており、500円と普段の一日乗車券700円より安い。乗車した本八幡〜新宿間は普通乗車券で360円。往復で720円なので単に往復するだけで購入価値がある。さらに小田急線でも丹沢・大山フリーパス(Bキップ)1480円を購入。これも新宿〜伊勢原が570円、伊勢原〜大山ケーブル駅バス停が300円、往復で1740円なので普通に往復するより安い。結局1980円なので奥多摩へ行くときによく使うホリデーパス2300円と同じくらいの交通費になった。安い切符に敏感になっておくことは重要である。

 伊勢原駅についたのは8:30。私が一番遠かったので一番最後だった。バス停にはどこかの高校生が50mほどの長蛇の列を作っており、大山ケーブル駅行きのバスが見つけにくかった。バス停で待っているとけっこう寒い。下手すると寒くて水に入れなくて敗退かもしれないとちょっぴり思う。

 終点大山ケーブル駅バス停で下車、他に数人バスを降りていた。バス停すぐそばのトイレで装備を整える。20リットルほどのデイバッグで来たのだが、辛島にパッキングを驚かれる。私はむしろ大きなザックに適当なパッキングで山に登る方を好むので、あんまり驚かれてもとまどう。単に沢に登るのにぼろぼろにしてもよいザックがこの小さいデイバッグなのでそれに無理やりつめただけなのだ。お土産屋の連なる商店街みたいな参道を登り、追分ケーブル駅につく。さらに道は男坂と女坂に分かれるが、男ばかりなので男坂を登る。急な階段を登り、阿夫利神社下社に到着。茶屋があり、客引きのおばちゃんの声を無視しながら右手のトラバース道へ。すぐ堰を持つ小さな沢が現れ、隊は一時ストップ。ここが遡行する大山川でないことは地形図を見てすぐわかり、さらにトラバースを続け、入渓点の二重滝に着いた。沢には石橋がかかっており、そのたもとに小さな社がある。

バス停から歩き出す
4/15 バス停から歩き出す。桜が咲いている。
登山道のすぐ脇にある二重滝
4/15 登山道のすぐ脇にある二重滝を登る。観光客から写真撮られたりする。

 二重滝はくの字の形に流れており、傾斜は大きい。一見すると登れなさそうだ。よく見ると滝の右側に残置ハーケンが3枚ささっているが、右側はほぼ垂直で初心者には到底ムリ。ガイドブック(「丹沢の谷110ルート」、「東京周辺の沢」ともに)によれば左手を登るのが一般的なようだ。左壁ははじめ一枚岩のスラブだが、上部はホールド、スタンスが多そうだ。残置ハーケンもいくつか見られる。栗山がリードの準備をしている間に水流沿いを見るが、水流沿いも細かいホールドがありそそられる。よく見るとハーケンも一枚ささっている。しかし、何ぶん寒い。ちょっとだけとっかかって落っこち、やめた。気温さえ高ければここを登ってもよさそうだ。

 栗山、澤、辛島、中山、植松の順に登る。植松がラストなのは植松がリーダーだから。栗山がリード、澤がビレイヤーで登った後、澤がセカンドを務める。いくつかのヌンチャクを回収しながら順調に進む。私は一見したところフリーでも登れそうだったのでザイルなしで登った。登ってから振り返ってみると橋の上に人だかりができている。滝を登るというのは珍しいようで写真を撮っている人もいた。二重滝にはザイル回収までたっぷり1時間かけて登った。目的がザイルのトレーニングなので時間は気にしない。

 二重滝を登るとガレた河原になり、水はなくなる。水がなくなるのがあまりにも早い。澤と辛島が先行して涸れ滝の前で待っていた。左手にザレたルンゼがある。地形図を見て750m二俣かと思ったようだが、それはいくらなんでも早すぎる。涸れ滝を登る。石の積み重なりになっていて特に難しくない。この涸れ滝はガイドブック(「丹沢の谷110ルート」、「東京周辺の沢」ともに)ではどの滝か分からなかった。

 そしてハングの滝(「丹沢の谷110ルート」ではF4-5mハングの滝、「東京周辺の沢」では(2)ハングの滝)。一見すると直登不可能な滝に見える。どちらのガイドブックにも「3本の太い倒木が掛かっている」と書いてあるが、倒木はどこにも見つからない。「丹沢の谷110ルート」には「この倒木を登って落ち口へ抜ける」、「東京周辺の沢」では「倒木と滝の間に潜り込んで越える」とあるが、これじゃこの滝は倒木なしでは登れなさそうだ。しかし、先人は偉いもので残置ハーケン+シュリンゲがすでに3つ打ってある。そこでシュリンゲをつかんで腕力で登った。腕力のない植松が不安そうにしていたが、無事登れた。ついでにリポビタンDのCMみたいな写真も撮れてよかった。

F4-5mハングの滝を登る澤
4/15 F4-5mハングの滝を登る澤。
F4-5mハングの滝を登る植松
4/15 F4-5mハングの滝を登る植松。

 ハングの滝を登るとすぐ右に枝沢が入ってきている。先行した澤と辛島は気付かなかったようだ。確かに見落としやすいが、上部は谷の地形になっているし、地形図との対応もとれる。この枝沢はガイドブック(「丹沢の谷110ルート」、「東京周辺の沢」ともに)には記入されていない。

 そしてゴーロを歩いていくと8m滝(「丹沢の谷110ルート」ではF5-8m、「東京周辺の沢」では(3)7m)。幅広で辛島は左から登って落ち口へトラバース、他は右の倒木沿いに登った。倒木の上端の根っこには残置ロープがかかっている。足元はぐずぐずした土の斜面で登りにくく、残置ロープでゴボウ登りしてしまった。水流沿いはスラブの上に立てなさそうだったのでやめた。この8m滝を後列のメンバーが登っている間に先に登った栗山にハーケン打つ練習をしてみろと指示する。

F5-8m右に倒木の滝
4/15 F5-8m右に倒木の滝
10m滝
4/15 10m滝

 8m滝に続いて右にルンゼを分け、10m滝(「丹沢の谷110ルート」ではF6-10m、「東京周辺の沢」では(3)10m)。ホールドも多く順に登っていく。残念ながらハーケンはうまくささらなかった。この後も何度かハーケンを打つ練習をしたが、ハーケンがうまくささったときのいい音が聞けなかった。

 10m滝の後すぐ二俣。ただし、二俣の直下に右から枝沢が合流しているので一見すると三俣に見える。ここは右俣に入る。左俣を少し見たところ、難しそうな滝が控えていた。

二俣
4/15 二俣
F7-5mトイ状滝
4/15 F7-5mトイ状滝。栗山が苦戦する。

 10分歩いてトイ状滝(「丹沢の谷110ルート」ではF7-5mトイ状、「東京周辺の沢」では(5)6mCSトイ状)。中央を水が岩をなめるように流れている。シュリンゲが2つかかっており、これをつかんで登る。トップ栗山が途中でフリーズし、滑って落ちた。辛島はひょいひょいと簡単に越えた。去年の川乗谷でも思ったが、辛島はクライミングのセンスがあるのかもしれない。うまく両手を突っ張り、チムニー中心のスタンスを踏めば簡単に登れる。

 このトイ状滝を登ったところで一本とる。 二俣状になっているところで910m付近と考えられる。すでに谷はかなりの傾斜になり、あちこちに落石が転がっているところだが、遡行開始から2時間半でそろそろ休みたいのも確かなので、いくらかましそうなところで休む。幸い休んでいる間落石はなかった。二重滝の上で水がなかった時点で分かっていたことだが、ここも水がない。パーティーは澤と私以外誰も水を用意しておらず、沢の中で水を汲もうと思っていたため水がない。植松がリーダーなのに水を汲む指示をしなかったことを謝っていたが、実際のところ水を用意してこなかった各人の責任もあるだろう、と書いている今思った。そのときは何も考えず、水持ってきてない奴に水を与えていた。幸い今日この大山川に入っているのは我々だけのようでせかされずに悠々とザイルの練習をしながら登れる。

 出発して15分ほどの8m滝(「丹沢の谷110ルート」、「東京周辺の沢」ともに記述なし)で辛島にビレイの練習をさせる。別に難しい滝ではないが、練習のため。栗山と辛島がフリーで登り、栗山が辛島に指導した。支点が少なく、細い木で支点をとっていた。あれはもっと遠くでもいいからましな木を探すべきだなと思った。2人をビレイして所要時間は30分。ザイルを束ねて出発。

8m滝。ここで練習のためザイルを出した。
4/15 8m滝。ここで練習のためザイルを出した。
5mチムニー状。登りにくかった。
4/15 5mチムニー状。登りにくかった。

 谷はいよいよ狭くなってくる。撮った写真も縦長がほとんどだ。8m滝の後、すぐ簡単なCS滝を越える(「丹沢の谷110ルート」、「東京周辺の沢」ともに記述なし)。澤が足が届かず、左からも登っていた。やがてチムニー滝(「丹沢の谷110ルート」では3m?、「東京周辺の沢」では(7)5mチムニー状)を登る。両手を突っ張って登るのだが、途中で登れなくなり、後ろの植松に「右登れませんか」と指示をもらって右に逃げることができた。私がこの沢で一番あせったのはここだった。

大山川のツメ
4/15 大山川のツメ。

 その後は笹がところどころに生えた谷を登り、やがて開けてくる。傾斜は急なままで谷の幅が広がり明るくなってくる。不安定な斜面に生えたうすい笹薮を踏んで登ると、ザレと土の斜面になり、右手の尾根へ。尾根に出たところは向こうがすぐ別の谷になっており、さらに尾根沿いに登る。別の谷の源頭だろうか、また開けたところに出て土の斜面を登っていく。最後はジグザグを登りながら笹薮につっこみ登山道に出る。途中、古いファンタの空き缶を見つけた。あとは左手へと登っていけば山頂にたどりつく。途中、ただのハイキングに来た家族連れとすれ違う。我々はヘルメットにハーネス、ギアをがちゃがちゃ言わせながら登っており、お母さんらしき人はおののいているように見えた。普通の登山客なら普通に挨拶するのだが。

 大山山頂でゆっくり休む。装備をはずして、ピーク缶を食べたり、記念写真を撮ったり、栗山はひん曲がったハーケンを打ってまっすぐに直したり。30分も休んでいるとさすがにまだ4月、北風が冷たく、北側のあずまやに逃げた。景色は相模川が見えてまあまあよかった。栗山は鎌倉の鶴岡天満宮の前の道が見えたといっていたが、私には鎌倉の手前の江ノ島も見えなかった。

 下りははじめ土の階段を下り、下社が近付くと急な石段を下って行った。下りの途中では辛島と栗山が麻雀の話に花を咲かせていた。また栗山が前日寝ていないのはなぜかと話した。栗山は頑固に口を割ろうとしなかったので勝手に妄想しながら下っていった。下社からは女坂を下り、大山不動尊を経由する。ものすごい急斜面に立った家に犬がおり、後続が来ないと思ったら4人で犬をさわっていた。ケーブルの下の追分駅に着いてあとはバス停まで下る。ただ、濡れなかったものの風呂に入りたかったので風呂を探しながら下る。700円と500円の風呂があったが、途中、「大山唯一の温泉」という看板にひかれて通り過ぎる。その温泉はバス終点の大山ケーブル駅バス停より下なので道沿いに下って行った。バス停3つ下って行ったところにその温泉はあったのだが、1050円と高額であった。さすがに誰も入ろうといわず、入らないことを即決。すぐ下のバス停で10分ほどバスを待ち、伊勢原へ下った。バスはそこそこの混雑具合であったが、座ることができた。栗山はものすごい低い姿勢で熟睡していた。伊勢原駅に着いたときは下車してから「ここ駅?」と聞いていた。駅前のメシ屋で反省会をして解散。私は新宿まで、他の4人は相模大野、中央林間経由で大学に戻ったようだ。栗山は小田急線でも立ち寝していた。私は都営地下鉄の1日乗車券を持っていたので神保町の石井スポーツによって去年の日光・温泉ヶ岳でなくしたザックカバーを買った。

おわりに

 行ってみると、天気は悪くなく、気温が低くなるという予報も外れてよかった。また大山川自体もほとんど水がなく、寒くて凍えるということはなかった。なのでオフシーズンの沢にはよい沢であった。春先にも登れる貴重な沢である。そもそも濡れないのでフリース・ヤッケなどを着込んで冬に登ることもできるかもしれない。水が流れていないのは沢としての要件を疑われる点ではあるが。

 レベルもそんなに難しくなく、かつ簡単すぎてつまらないということもないちょうどのレベルであった。できるだけフリーで登ろうとしてすべてフリーで登れたので満足である。大学院も卒業してしまったので、これから単独で登るか、社会人山岳会に所属するか考え中ではあるが、ひとり沢登りにはずみがついたと言えよう。ただ、2年生の沢登りの練習という山行の目的のため私はトップを務めなかったので、単独で登っていたらどこかで落っこちていたかもしれない。気を引き締めたい。

 またレベルの点で登っていて気付いたのだが、ちょっとしたザイルを使わないような滝を登る際は意外と経験がモノをいうのだろうかと感じた。途中、私が何とも思わない滝でとまどっているメンバーもおり、なぜ登れないのだろうと考えたが、昔は私も登れなかったはずで、その差は経験ではないかと感じた。クライミングの能力に関してはセンスがモノをいうと考えていたが、トップクライマーの領域ではなく趣味で沢歩きをしている程度ならその人の経験で充分カバーできるようだ。

(2006年4月16日記す)


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