山ノ中ニ有リ山行記録一覧2006年山行一覧>西上州・三国山〜大上峠[3/3]

2006年春 - 西上州・三国山〜大上峠[3/3]


2006年5月3日(水・祝)〜5日(金・祝)
場所
長野県南佐久郡川上村・南相木村・北相木村・佐久穂町・群馬県多野郡上野村・甘楽郡南牧村/西上州・佐久の山
コース
5月2日
新宿駅23:54発快速ムーンライト信州81号乗車(車内泊)
5月3日
小淵沢3:09下車(仮眠)6:11発車=(JR小海線)=6:55信濃川上駅7:05=(川上村営バス)=7:29梓山…新三国峠…三国山…蟻ケ峰…大蛇倉山…舟留(泊)
5月4日
舟留…石仏…弥次の平…赤火岳…ぶどう峠(泊)
5月5日
ぶどう峠…新三郎…十石峠…大仁田越…大上峠…臼石荘=(佐久穂町営バス)=羽黒下=(JR小海線)=佐久平=(長野新幹線)=上野駅
参加者
単独
天気
3日、4日、5日とも晴れ
06上信国境縦走(三国山〜大上峠)の地図

3日目

2006年5月5日(金・祝)

ぶどう峠…ぶどう岳…新三郎…栂峠…1531m電波塔峰…十石峠…1446m三角点峰…大仁田越…ククリ岩分岐…大上峠分岐…大上峠…臼石荘=(佐久穂町営バス)=JR小海線羽黒下駅

コースタイム
ぶどう峠3:30起床
4:37
ぶどう岳5:07
5:11
1628m峰5:43
新三郎6:01
6:20
栂峠6:38
6:41
1570m付近迷い6:50
7:10
1626m峰7:45
1626m峰北東尾根
1550m付近迷い
7:52
7:53
1626m峰7:59
8:03
1531m電波塔峰8:21
8:25
十石峠8:43
9:14
1406m峰9:31
9:33
1400m峰9:40
1446m三角点峰10:06
10:23
大仁田越1379m峰10:40
10:44
1350m峰11:13
11:19
1408m峰東の肩11:40
11:57
1310m峰12:06
12:09
1275m鞍部12:13
12:15
1340m峰12:27
12:31
ククリ岩分岐12:42
1312m峰東の1310m峰12:58
13:02
渋沢川分岐13:09
1312m峰13:17
13:35
1340m峰14:01
14:03
大上峠分岐14:39
14:42
大上峠14:54
15:26
臼石荘16:04
17:56

 昼はあれだけ車通りのあったぶどう峠も夜は静かだった。夜は長野側北相木村の夜景でも見られるかと期待したが、光はほとんど見えなかった。車通りも少なく、3:30に起きてから4:30に出発するまで1台しか車が通らなかった。

 今日の目標は大上峠。少なくとも十石峠までは行けるだろう。ぶどう峠の長野側の笹ヤブに踏み跡があり、これをたどる。登っていくとすぐ稜線。群馬側は切り立っていてちょっと登れなさそうだ。はじめは背丈ほどの笹ヤブの中の道を行く。踏み跡はあるのでそんなにつらくない。ずっと急な登りで10分ほどで笹ヤブを抜けると岩峰が4つほど出てくる。あおぎ見るように眺め、どこから登るのか思案する。しかし、どれも長野側を巻いていくと簡単に上に出られる。立木もあるしそんなに難しくない。ただここを下るとなると傾斜が急なので大変そうだ。

 30分でぶどう岳。けっこう急登だったので歩行時間は短いが一本とる。ぶどう岳の山頂は南北に細長く、群馬側が切り立っている。葉を落とした木が多くそれなりに展望がある。東の空にはお日さまが赤い。今日もこれから暑くなるのだろう。群馬側にはキリンが上下逆さまになって頭から地面にささっているような木があり、思わず写真を撮った。

ぶどう岳
5/5 ぶどう岳。けっこう急な登りだった。
新三郎1681.5m三角点峰
5/5 新三郎1681.5m三角点峰。ここも険しい登りだった。でもヤブがない分、楽。

 ぶどう岳からも狭い稜線を歩く。1561m鞍部から次の1600mマムシ岳尾根分岐までは送電線の巡視路が整備されており、大変歩きやすい。この1561m鞍部の長野側には2本の送電線が交差しており、眺めるとなんだか網みたいになっている。ただ厳密に言えば送電線はねじれの位置にあるので交差ではない。こんな山の中に鉄塔を建てる人は大変だと感じる一方、東京で使う電気はこうやって運ばれているのかと思うと頭が下がる思いだ。1600mマムシ岳尾根分岐からは枯れた笹ヤブにつっこむが道はあり、のんびり歩ける。新三郎は岩峰で岩場がたくさん出てくる。ここも下りだと恐いかもしれない。砦を攻略するようにエッチラオッチラと岩を登っていくと新三郎1681.5m三角点峰の山頂に着いた。

 新三郎は登りの険しさに比べて山頂が広かった。岩の出っ張り程度しかスペースがないかと思ったが5,6人は休める。南面と東面の景色がよく、御座山の好展望台だ。北側は展望がなく、この先はよく分からない。ちょうど6時に山頂に着いたのだが、長野側からチャイムの音が聞こえてきた。北相木村に住んでいる人たちはみんなこのチャイムで起きるのだろうか。新三郎の山頂には3つ看板があった。上から「1972夏 群馬県境全山縦走 群馬大学W.V.」「新三郎 MHC 1681.5」そして三国山西の鞍部にもあった日本縦断分水嶺歩きのアルミの板。分水嶺歩きもすごいが群馬県境全山縦走もすごい。

新三郎から見る御座山
5/5 新三郎から見る御座山。
栂峠
5/5 栂峠。最低鞍部から少し北へ登ったあたりにお地蔵さんがいる。群馬側には林道がある。

 新三郎から栂峠へ下る。新三郎からは尾根が複数あるので少し迷うが赤テープもあり、無事下れた。下り着いたあたりは平坦地になっており、気持ちのよい林になっている。林床には丈10cmほどの笹が生えているが歩くのに支障はない。広い尾根を迷わぬよう歩いていく。緩く下りついて少し登ると栂峠。峠にはお地蔵さんがいた。群馬側に舗装されていない林道がある。長野側には笹の中に道があった。ただ、下まで続いているのかは分からない。

 栂峠からは群馬側に林道が続いているが、ここは稜線を登る。稜線には道があり、笹の丈もヒザほどで歩きやすい。が、栂峠から最初の1600m峰の下りがやっかいであった。1600m峰で長野側に送電線の鉄塔(地形図に表記なし)に至る道を分け、下る。と、稜線からはずれ群馬側の斜面に寄ってしまい林道が現れた。少し登り返して稜線に復帰。今度は稜線をはずさないようわずかに下ると鞍部に出て長野側に新たな林道が。地形図によれば林道は群馬側だけのはず。林道が長野側を巻き、南へ登っていっている。この道は地形図に載っていない道なのか、それとも私が県境稜線からずれて群馬側の林道に出ているのか。正面に向かうべき1622m峰が見えるので正面に向かえばよいのだが、林道が錯綜してどの尾根が1622m峰に通じているのか分からない。林道を地形図に載っていない長野側の林道と同定し、林道から離れて県境稜線を行くがまた同じ林道に出た。その先の尾根は踏み跡がほとんどない。どうやら県境稜線ではなく枝尾根のようだ。やむをえず、この林道を少し下り、現在地を把握することにした。2分ほど下ると1622m峰がよく見える県境稜線の鞍部に出た。群馬側の一段下がったところに林道も見えるので県境稜線だろう。どうやら私は気付かぬうちに枝尾根を下っていたらしい。一応県境稜線をつなげておきたいのでそこにザックをおいて空身でその尾根を少し戻った。歩いてみると尾根と道は長野側へ下るようにつけられており、私はそのまま枝尾根に引き込まれたようだった。往復4分。

 その後、林道と県境尾根が一致するところは林道を、林道が尾根を巻いているところは県境尾根を歩き、1622m峰へ向かった。しばらくで長野側の林道と群馬側の林道は稜線で合流(下から来れば分岐)していた。長野側の林道は1600m峰西の送電線鉄塔の管理道らしく「西群馬幹線103」という杭が立っていた。「西群馬幹線」というのが送電線の名前だろう。この後も十石峠まで錯綜する林道に悩まされる。

 1622m峰の南は林道が三叉路になっており、南へは「栂峠へ1KM」、東へは「十石峠へ3KM」、西へ「四方原山へ3.5KM」「茂来山へ8.5KM さくまちへ」と書かれていた。さっきから車が走っていないことからここは一般車通行止めだと思うのだが、こんなところに看板置いて見る人いるのだろうか。三叉路の掘り割りから強引に1622m峰へ登る。四方原山への道を分け、東へ。しばらくでまた林道に出る。

四方原山分岐
5/5 四方原山分岐。栂峠〜1531m電波塔ピーク間は林道が並走していて逆に地形が分かりにくい。
1531m電波塔ピーク
5/5 1531m電波塔ピーク。さくまちの看板がある。

 稜線の鞍部でXを描くように林道が伸びており、長野側へ下る道はだいぶ荒れていた。倒木が多く歩きでも難儀しそうだ。厳密にはX字のクビレ部分が縦に長く伸びたようになっている。X字の地点から1626m峰へ。道は明瞭。1626m峰からは下りで失敗する。南東の尾根を下るはずが北東の尾根を下ってしまう。しばらく下って道があやしくなって気がつく。50mほど登り返し。1626m峰から県境尾根を下るが、道がない。しばらく下って平坦になってくると右手から道が合流した。しかし県境尾根はこの尾根と分かれてさらに北東に進路を変える。正面の1531m電波塔ピークが本当にこの尾根の先にあるのか不安になりながら県境尾根を下るとまた右手から林道が合流する。林道は県境稜線のわずかに群馬側を走っているので頑固に稜線を歩く。歩いていくとやがて長野側からも道が伸びてきた。最後に1531m電波塔ピークに登るときにこの長野側林道に少しだけ出た。

 1531m電波塔ピークは丸いピークで道もなく、山頂に「十石峠へ さくまち」「栂峠へ 四方原峠へ さくまち」という看板があるだけである。休むにはよいが、もう十石峠まで目と鼻の先なので十石峠までがんばることにする。十石峠へは丸い尾根を下っていく。道はいまいちはっきりしないが、ヤブもなく歩きやすい。2度林道と交差して、最後に1400m峰へ登る。1400m峰は送電線塔が立っており、一面刈り払われてながめがよい。十石峠北の大仁田越方面にも2本送電線が見え、このあたりは本当に送電線が多い。今日は全部で5回くぐったことになる。

 1400m峰を過ぎて緩やかに下っていくと十石峠。車道の通じる峠で駐車場、トイレ、水、展望台まである。同じ車道の通っている三国峠やぶどう峠と違って切り通しではなく平坦な地形だ。水にはていねいに「飲めません」と書いてあったが、飲んでみて問題なさそうだったので空のペットボトルに水を詰める。水はこんこんと流れているのでおそらく湧水なのだろう。しかし十石峠の前後に水道施設は見つからず、いったいどこから水をひいてきているのか気になった。車通りも多く、レジャー客が来ては休んでいく。私もにわかレジャー客として展望台に登ってみる。群馬側の展望がよく、妙義山から両神山まで見えた。残念ながら武尊や谷川方面は見えなかった。展望台の脇にいたお地蔵さんにこれまでの山行が無事来られたこと感謝します、これからも何とかうまく行くようにお願いします、と祈る。

十石峠
5/5 十石峠。ぶどう峠と違って平坦な峠。トイレもある。
1531m電波塔ピーク
5/5 1446.2m三角点峰手前の笹ヤブ。登りなのでかなりつらい。

 十石峠から北、1446.2m三角点峰へは地形図に登山道が載っている。地形図には載っていないが十石峠から大仁田越1379m峰まではエアリアマップに林道も載っている。登山道が十分期待できる区間だ。が、1446.2m三角点峰を始めとしてだいぶしんどい区間だった。はじめはヤブはないが、道もはっきりせず、好きなところを歩く。1406m峰へ登っていくと笹がある。ちょっとつらい。1406m峰の次、1400m峰には地形図に載っていない送電線塔があり、開けている。北へ下ると林道に出る。1446.2m三角点峰ははじめヤブのない急登なので何とかなるが、その肩までは背丈を越えるヤブがあり道もない。ここは諦めて群馬側を巻きながら登る。1446.2m三角点峰は笹ヤブも薄く何とかたどりついた。かなりしんどかった。十石峠から1時間も歩いていないが一本とることにする。平和な道という期待が外れてつらかった。この調子だとこの先もあまり高速で進めないかもしれない。1446.2m三角点峰は三角点と看板しかなく、展望もなく、苦労して登ったわりに面白くない山頂であった。

 1446.2m三角点峰から稜線は直角に曲がり東に下る。下る道は笹は少なく楽に下れる。下り着いてからは林道から登ってきた送電線巡視路が稜線に伸びており、笹が刈り払われている。そうやって1410m峰の手前までたどりつき、ここから大仁田越1379mへ向かって北へ下る。笹の中で道ははっきりしない。ガサゴソと背丈ほどの笹の中を移動し、大仁田越1379mに近付くがピークは濃い笹ヤブに覆われており、ここは群馬側からぐるりと巻いた。群馬側には1410m峰を巻いてきた林道が見え、すぐ足元を通っている。崖の上なので眺めはよい。25,000分の1地形図に見られる登山道を分け、1408m峰へ向かう。

1446.2m三角点峰
5/5 1446.2m三角点峰。三角点と看板があるだけ。ヤブが多い。
1408m峰東の肩1380m付近
5/5 1408m峰東の肩1380m付近。迷いやすい。

 笹ヤブの大仁田越1379mを巻くと何となく下る道を見つける。これに従って下るが、ヤブがうるさい。しかもしばらくするとすぐ道がなくなる。どうやら廃道らしく、ちょうど野に返っていく過程のようだ。しかもこのあたりの地形は稜線がはっきりせず、稜線と垂直方向に小尾根が伸びていて迷いやすい。例えば大仁田越1379mのあとの2つめのピーク1360mは南に小尾根が伸びており、尾根の道に沿って歩いていくと青い笹の壁にぶつかる。ここで稜線は西に向かうはずだ、と笹の壁から西に踏み出すと踏み跡が見つかった。大局的に見ても1446.2m三角点峰から沢の源頭をぐるりと回るように稜線があり、稜線上のピークもほぼ同じ高さなので方向が分かりにくい。それでも意外なことに大きく稜線を間違えることはなかった。派手に間違えたのは稜線上の進み具合だけである。背の高い笹ヤブを越えて1408m峰へ登るが、実はそれは手前の1350m峰であり、登りついてから正面の高い山を見て落胆した。なお1350m峰は群馬側の笹枯れ部分からだと登りやすかった。1408m峰は笹の中に斜上するわずかな道があり、笹がその上にかぶさっている。ちょうど前日の赤火岳の登りのような道でまた四つんばいになって登る。顔や手首に笹が当たるし、倒木の枝で顔を傷つけられるし、背中に枯れた笹の破片が入ってくる。つらい。1370m付近の1408m峰の肩からは1408m峰に登らずその東側を乗り越す。さすがに疲れたので1408m峰東の肩1380m付近で一本とる。

 この1446.2m三角点峰から1408m峰東の肩までの一本がこの日最もつらかった。「関東ぐるり一周山歩き」ではこの区間について「その後も笹は深いものの、尾根の分岐点を除いて、けっこう踏跡が付いている」(1987年の踏査)と淡々と述べており、約20年の歳月が山のようすを大きく変えたと感じた。踏み跡がある点について否定はしないが、もはや失われつつあるといってもよいだろう。なお、このあたりはぶどう峠で会った中央分水界縦走の人が「どこにいるのかわからなくなる」と言っていた区間である。この調子では大上峠に着くのはいつになるか不安になる。

 さらに1276m鞍部に下り、ククリ岩1354.7m三角点峰方面へ向かう。1408m峰東の肩から1276m鞍部まではそれまでに比べて道が見えたので下りやすかった。途中尾根が広がる1790m付近でヤブが禿げたところがあり、ここなら幕営できると思った。そこで写真を撮ろうとしていると後方で唐突にガサガサという音がする。クマかとびっくりする。しかし、そのガサガサゾーンの移動速度と身の軽さから判断するにシカだったようだ。今回の山行でシカの糞はどんな密ヤブの中でも見つかる。でも結局シカの姿を見ることはなかった。なんにしろクマでなくてよかった。さらに下った1275m鞍部もヤブがなくここの方がテントを張るには広そうだった。

1275m鞍部
5/5 1275m鞍部。平坦で幕営ができそう。
1340m峰
5/5 1340m峰。笹ヤブの薄いところを選んで登る。

 1276m鞍部から1340m峰へ登り返し。1340m峰の南側斜面は長野側が青い笹で群馬側が枯れた笹である。当然群馬側に道を探し、見つけだした道に沿って登っていった。道とはいえ足元の笹が薄い程度、上部を笹が覆っているので楽ではない。ときどき倒木に頭をぶつけたりヒザをぶつけたりして痛い思いをする。誰もいないのをいいことに全力で「イテェー」と叫んでみたりする。たどりついた1340m峰には境界杭と白いビニル袋だけで特徴もない。

 1340m峰の先は比較的道が明瞭だった。下るにつれククリ岩1354.7m三角点峰が高く大きくなってくる。ククリ岩を派生する小ピークに登り始めると見えていた道が、長野側を巻く道を分けてからはっきりしなくなる。なので薄い踏み跡をたどって群馬側へ。小ピーク北の鞍部に出る。この鞍部は平坦であり、テントが張れそう。ククリ岩への道ははっきりしない。北西側の谷はなだらかで二重山稜を思わせる。うまくたどれば群馬側熊倉・砥沢へ下る道に出られるのかもしれない。

ククリ岩分岐
5/5 ククリ岩分岐。ここも平坦で幕営ができそう。
1250m峰から大上峠への下り
5/5 1250m峰から稜線離れて大上峠への下り。かなり急。

 小ピークに登り、1312m峰へ。小ピークの後は平坦地でヤブが少ない。なので1312m峰手前の1310m峰を群馬側から巻くこともできるがせっかくなので登っておいた。幸い道はあった。1310m峰から北へ下り、1312m峰手前の鞍部に到達する。ここには25,000分の1地形図によれば群馬側熊倉・砥沢から稜線に登ってくる道があり、その道は県境稜線を経て大上峠手前で長野側古谷ダムに下ることになっている。この道があれば大上峠までの行く先も楽なのだが、十石峠から1446.2m三角点峰への道がほとんどなかったようにこの道もあまりはっきりしなかった。1312m峰は北側に尾根を発しており、いったんこの尾根に登ってから尾根沿いにピークに達した。

 1312m峰で休んでいたら自分が歩いて来た方向を見失ってしまった。だいぶ疲れていたらしい。見える景色も前からあまり変わらない。それでも大上峠まであと一本。気を引き締めていく。と思ったらいきなり稜線はずしてトラバースしながら下る。その後2つの1340m峰のあたりは道があったりなかったりだった。ただ群馬側が崖になっているので群馬側の崖の際に沿って歩けば間違えることはなかった。最後、25,000分の1地形図に載っている登山道と県境が分かれる1250m峰付近は営林局の人が手を入れているらしく、普通の登山道だった。1250m峰からは登山道を離れて大上峠まで県境を無理やり歩こうと考えていたが、意外にも道があった。だいぶ急だが踏み跡がある。始めは小さくジグザグに傾斜が緩やかになってきたら斜面の勾配方向にまっすぐ歩いていった。右手に平らなところが見え、稜線を越える踏み跡が交差したら大上峠に出た。

大上峠
5/5 大上峠。
JR小海線羽黒下駅
5/5 JR小海線羽黒下駅。佐久平駅から長野新幹線で帰京。

 大上峠は広い車道が通っており、看板とお地蔵さんがある程度ですっきりした峠だ。地形的には平坦であり、木が茂っていて展望はない。群馬側は急な斜面だが、長野側はなだらかな斜面が続く。ここにザックを置いて水を汲みに行く。「関東ぐるり一周山歩き」でには「水も長野県側に1分下ると得られた」とあるので長野側へ下る。しかし、それとおぼしき沢はすっかり涸れていて水が流れていない。さらに下っていくと公衆トイレがあり、ブルドーザーで対岸へ造成した跡がある。トイレの下の水を汲む気もしないし、下るにつれ沢がどんどん深くなっていくので水を汲めない。諦めて大上峠に下る。改めて群馬側にも行ってみる。峠からすぐのカーブに登山道があるはずなのでそれを下れば手に入るかもしれない。しかし行ってみてもその道は見あたらなかった。500mほど群馬側に行けば、沢にぶつかり道がヘアピンカーブになるのでそこでなら手に入ったかもしれない。ただもし水が手に入らなかったら今日中に下ってしまいたいので調べには行かなかった。

 結局水は手に入らなかった。選択肢は2つ。

  1. 今晩泊まるだけの水はあるので大上峠に幕営し、翌日広小屋山を越えて縦走を続ける。ただし、水がなくなった時点で下山する。
  2. 今日中に東京に帰る。

 靴擦れも痛いので選択肢2を選び、今日中に帰ることにした。それにしても群馬側に下るか、長野側に下るかは思案のしどころである。群馬側は車道歩きが長いが、公共交通機関に乗ってしまえば東京は近い。長野側は車道歩きが短いが、公共交通機関に乗ってから東京までが長い。悩んだが、長野側は車道歩きが短い分、終バスにも間に合う可能性が高いので長野側に下ることにした。しかも長野側には臼石荘という温泉があるようだ。

 車道歩き30分で無事臼石荘に着いた。臼石荘は十石峠道にもあたっており、車通りが多い。建物の前の平地ではキャッチボールしている家族や走り回っている子どももいて平和だ。幸いバスはあと2便あり、終バスに乗れば風呂にも入れた。日帰り入浴400円。ボディーソープもシャンプーもあり、非常によかった。読み方の分からなかった「大上峠」も受付の人に聞いたら「おおかみとうげ」と分かった。駅までの佐久穂町営バスはガラガラで、臼石荘で乗ったのは私だけであった。客は他におばあちゃんが1人途中で乗って途中で下りていっただけ。そのバスは試験的に全区間大人も子どもも100円としていて終点羽黒下駅まで乗った私も100円しかからなかった。自家用車からバスへのシフトを促していると思うのだが、田舎では難しいのだろう。大変だと思った。

 JR小海線羽黒下駅は委任駅で営業時間を過ぎており、駅員さんはいなかった。あとは佐久平経由長野行新幹線で東京へ帰った。新幹線は5連休の3日目の夜とあって自由席は込んでおり、大宮まで立ちであった。

おわりに

 結果的に計画の三国峠から荒船山までの県境縦走はできなかったが、計画の2/3ほどである三国山から大上峠までを歩くことができた。その成果には満足である。さらに県境の縦走を続けていきたいと思う。

(2006年5月6日~7日記す)


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