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2009年夏 - 上越・谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜


2009年6月7日(日)
場所
群馬県利根郡みなかみ町(旧・水上町)
ルート
一ノ倉沢出合…テールリッジ…衝立岩中央稜…衝立の頭…一ノ倉岳…谷川岳…天神尾根…田尻尾根…谷川岳ロープウェイ
参加者
K、中山
参考文献

はじめに

 Kさんに岩登りに、と誘われて一ノ倉沢へ行った。ちょうど松木沢のクライミングの前の週だったので、去年行った奥多摩のつづら岩みたいな岩場で練習かと思っていたら一ノ倉だったので少々驚いた。一ノ倉沢は小説や谷川岳小唄で聞くが、行ったこともないし、見たこともない。白毛門山の山頂から眺めたくらいだ。

 谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜は上越国境谷川岳にある岩場の一つ。谷川岳東面の湯檜曽川支流一ノ倉沢の奥にある衝立岩の中央稜である。谷川岳の岩登りとしては入門らしい(チャレンジ!アルパインクライミング)。

 私の実力から言えばまったく入門というレベルではなく、上級であった。何度か落ちるかと思ったし、登れないかと思ったことも何度かあったが、何とか這い上がって登れた。登攀後のルートは一ノ倉岳まで登り、谷川岳、天神尾根を経由し、田尻尾根からロープウェイ土合口駅へ戻った。

0日目

2009年6月6日(土) くもり

東所沢駅集合=谷川岳ロープウェイ土合口駅(泊)

 22:00東所沢駅に集合。関越経由で0:00谷川岳ロープウェイ土合口駅着。一番上の階で銀マットひいて就寝。初めてここで寝たが、私たちの他5人ほどが寝ていた。

1日目

2009年6月7日(日) くもり

一ノ倉沢出合…テールリッジ…衝立岩中央稜…衝立の頭…一ノ倉岳…谷川岳…天神尾根…田尻尾根…谷川岳ロープウェイ

コースタイム
ロープウェイ土合口駅4:15起床
4:30
マチガ沢出合4:40
5:15
一ノ倉沢出合5:33
5:41
テールリッジ末端6:10
6:21
衝立岩中央稜
取付点
7:00
7:10
衝立岩中央稜
終了点
11:45
11:55
衝立尾根懸垂岩14:20
14:45
一ノ倉岳16:40
16:55
谷川岳オキノ耳17:34
谷川岳トマノ耳17:43
田尻尾根分岐18:37
18:47
谷川岳
登山指導センター
19:30

 朝起きて車でマチガ沢出合へ移動。天気は曇り。車の中で支度している間、小雨がフロントガラスを濡らすので行くかどうか悩ましいが、小雨はすぐやんだので出発する。

 マチガ沢から一ノ倉沢まで歩く。見える一ノ倉沢は上部が雲で隠れていて岩の要塞のようで、もはや沢の形をとどめていない。どこに取り付いても登れそうにない。衝立岩中央稜があれだとKさんに教えられても登れるかどうか不安であった。一ノ倉沢にはカメラを構えた人たちがたくさんおり、晴れ間の撮影を狙っているようだった。

衝立岩中央稜
6/7 一ノ倉沢出合から見た衝立岩中央稜。
テールリッジ
6/7 テールリッジ末端に取り付く。

 出合で水を汲み、ヘルメットを装備する。そうしている間にも次々と登山者が入山していく。あんな登れそうにない岩場なのに人気とは登山者の気持ちを察しかねる。

 入渓して少し右岸を巻いた後、すぐ雪渓を登る。キックステップで滑らぬよう歩き、テールリッジ末端に着く。ここで足下を履き替え。私たちの目の前を歩いていた2人はテールリッジの岩が前日の雨で湿っているのを見てスパッと諦めて帰ってしまった。

 テールリッジは衝立岩中央稜の下部に伸びる尾根であり、衝立岩中央稜へのアプローチである。しかし、テールリッジの岩場は一般ルートの岩場以上の難度があり、アプローチとバカにできない。こんなところでよたよた歩いて苦労していると先が思いやられる。道にはイワカガミが咲いていて写真を撮りたいと思ったが、そんな余裕は既になかった。

 テールリッジ末端に到着。衝立岩中央稜はここから登る。烏帽子沢奥壁南稜はここからさらに烏帽子スラブをトラバース、南稜テラスへと向かわなければならない。私はすでに参っていたのでここまででよかった。登攀具を身につけ、衝立岩中央稜へ登る。

 以下、特に断りがなければKさんリード。

1ピッチ目
取り付き点から見えるフェースを登る。傾斜が緩いが、上に行けば行くほどだんだん傾斜が立ってきてつらい。中央稜を左へ乗っ越すあたりまで。男女のパーティーが私たちに続く。
衝立岩中央稜
6/7 衝立岩中央稜1ピッチ目。
衝立岩中央稜
6/7 取り付き点にて衝立岩中央稜を仰ぎ見る。
2ピッチ目
烏帽子沢奥壁側を登る。烏帽子沢奥壁側は階段状で登りやすい。向かいの烏帽子沢奥壁でときどき落石があり、おびえる。
3ピッチ目
上へ登るのかと思っていたら、すぐ中央稜を衝立岩正面壁側に乗っ越す。外傾していてこわい。衝立岩正面壁側に出て直登。乾いたフェースを登る。フェースは傾斜があり、ピッチを切った場所も狭かった。
4ピッチ目
3ピッチ目の衝立岩正面壁側のフェースの続き。核心部。登るごとにホールド、スタンスが細かくなり、難しい。途中、ランナーを一つ外し忘れ、戻るのに苦労する。最後にチムニーを抜ける。スタンスが見つからずしばらく往生する。チムニーにバックをくっつけ這い上がった。まだ核心部でないと思っていたので焦る。
5ピッチ目
中山リード。烏帽子沢奥壁側へ移り、階段状を登る。中央稜上でピッチを切る。
衝立岩中央稜
6/7 衝立岩中央稜3ピッチ目、衝立岩正面壁側にトラバースするKさん。
衝立岩中央稜
6/7 衝立岩中央稜6ピッチ目、衝立岩正面壁側のフェースを登る。
6ピッチ目
再び衝立岩正面壁側のフェースを登る。凹角にホールドがあるのでそれをたどる。上部はチムニー上になっているが、中に足場は見つからず、左に逃げた。振り返ると烏帽子スラブが広がりその先に滝沢の滝が見える。日本離れした風景だ。
7ピッチ目
烏帽子沢奥壁側を登る。中山リード。階段状。途中、衝立岩正面壁側に支点があり平らなところがあったのでそこでルートを探すが、烏帽子沢奥壁側が正しいルートだった。
8ピッチ目
傾斜の緩やかになった中央稜を登る。そんなに難しくない。
9ピッチ目
衝立岩正面壁側へ一段下りて岩のルンゼを登る。岩がもろく、浮き石が多かった。登りついたところが衝立の頭。休んでいるとひとパーティー追いついてきたが、前のパーティーとは別の人だった。追い抜かれたのか、懸垂下降で戻ったのか。
衝立岩中央稜
6/7 衝立岩中央稜9ピッチ目。ルンゼを登る。
衝立尾根
6/7 衝立尾根4ピッチ目。左壁がせり出し気味の黒い岩の壁を登る。難しかった。
1ピッチ目
衝立尾根を登る。岩は出ているが、灌木も生えており難しくない。
2ピッチ目
リングボルトが打ってある岩を登る。登り始めに右下が切り立っていてカラビナ付きの支点があり、懸垂下降かと思ったが稜線沿いだった。
3ピッチ目
稜線沿いを行く。黒い岩のルンゼにぶつかってピッチを切る。
4ピッチ目
左壁がせり出し気味の黒い岩の壁を登る。そんな難しく見えないが、今回の山行の核心部だった。3mほど登ったところで手詰まり。Kさんは右に3mほど下り気味にトラバースし、登っていたが、スタンスが見当たらず真似できない。5分くらいおろおろする。左側の壁と正面の壁に足をかけ、正面の壁に取り付く。残置ハーケンを見つけ、シュリンゲを通してA0で這い上がる。ハーケンが抜けなくてよかった。草もつかみながら登り、右手のリッジへ移る。右下が切れ落ち、スタンスが見つからない。左側のクラックに腕をつっこみ、岩に抱きつくようにして登った。岩から体を離して登るのが正しいと知っていても怖くてできなかった。
5ピッチ目
中山リード。岩のフェース。ときどき灌木もある。烏帽子岩の基部まで。4ピッチ目の疲れがどっと出てきて2つのランナーの上下を間違えた。幽ノ沢のあたりをヘリがうろうろしていて不安になる。
6ピッチ目
右側の笹ヤブを登る。上部は右側斜めにトラバース。
7、8ピッチ目
烏帽子岩の巻きから懸垂岩の下まで2ピッチくらいあったと思うが、覚えていない。
9ピッチ目
懸垂岩まで。浮き石の多いルンゼを登り、懸垂岩にたどり着く。
懸垂岩
6/7 懸垂岩を懸垂下降。
国境稜線
6/7 国境稜線上、一ノ倉岳の脇に出たところ。

 懸垂岩にて懸垂下降し、笹の生い茂るコルへ下る。稜線は左側から登る。そこからはしばらく足跡のある斜面なのでコンテで歩く。

 一ノ倉尾根と合流する直前でところどころ草の生えた岩場。もう岩場はお腹いっぱいだが、登らないと帰れないので登る。そんなに難しくはなかった。

 一ノ倉尾根と合流してからはそんなに難しいところはない。一カ所、ハング気味の岩があるが、上にガバがあるので簡単に登れた。そのあとは笹の斜面を登る。足下は見えないが、踏み跡があるのでそれをたどる。雨は降っていないが、ガスで笹が濡れて冷たい。やがて一ノ倉岳の谷川岳よりの道に出た。

 越後側から風が吹くので、風の弱いところでクライミングシューズを履き替えた。一ノ倉岳へ行く余裕もなく、ただ疲れた。

天神尾根
6/7 天神尾根の下り。
谷川岳
6/7 振り返ると谷川岳はまだ雲の中だった。

 ガスで視界のきかない稜線を歩く。すでに17時を過ぎ、稜線を歩く人はいない。すっかり疲れてしまって下りは順調に歩けるが、登りはゆっくりしか歩けない。それでもオキノ耳トマの耳を過ぎ、肩の小屋へたどりつく。車がおいてあるマチガ沢出合には西黒尾根経由が最もはやいが、西黒尾根にはまだ雪が残っているので天神尾根経由で下山する。天神尾根には肩の小屋のすぐ下に雪が少しあっただけであとは雪はなかった。ロープウェイの最終は17時ですでにないため、天神平手前で田尻尾根を下る。田尻尾根は下ったことがなかったが、少々枯れ葉が積もっている程度でよく踏まれた道であった。

 ロープウェイ土合口駅に着くころには19:30となりあたりは暗くなっていた。ロープウェイ土合口駅の少し上にある登山指導センターでザックを下ろし、Kさんがマチガ沢出合まで空身で歩き、車を回収した。すっかり夜で満月がキレイだった。

 あとは急いで帰京し、何とか0:30に私も家にたどり着くことができた。

おわりに

 初めての一ノ倉沢だったが、怖かった。登山者が多かったが、あんなのを登る人の気が知れない。

(2009年6月8-12日記す)


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