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2008年秋 - 上越・朝日岳〜巻機山[2/2]


2008年10月18日(土)・19日(日)
場所
群馬県利根郡みなかみ町(旧水上町)・新潟県南魚沼市(旧南魚沼郡塩沢町)
コース
17日
東京=高崎=土合(泊)
18日
土合…白毛門…朝日岳ジャンクションピーク…大烏帽子岳…檜倉山(泊)
19日
檜倉山…柄沢山…米子頭山…巻機山…桜坂駐車場
参加者
単独行
天気
2日とも晴れ
参考文献

2日目

2008年10月19日(日) ガスのち晴れ

檜倉山…柄沢山…米子頭山…巻機山…桜坂駐車場

コースタイム
檜倉山5:00起床
6:12
檜倉乗越7:30
1656m草原8:04
8:20
柄沢山9:10
9:18
1809m峰9:44
9:55
エガシラ山10:10
米子頭山11:10
11:33
1646m鞍部12:07
1840m峰13:12
13:28
巻機山御機屋14:31
14:49
桜坂駐車場16:43
16:50
車にピックアップされる17:10
六日町温泉中央温泉17:30

 夜明け前はルートファインディングできないと踏んで昨日より遅い5時起床。起きると外がガスっている。まずい。非常にまずい。ガスっていては先が見えず尾根を誤る可能性がある。ことによるとしばらく様子見かと思いながらインスタントラーメンを作り、テルモスの紅茶を作る。

 外が明るくなり、様子をみていると東風に乗ってガスが稜線を越えており、どうやら1分ほどの周期でガスになったり晴れたりするようだ。それを見て出発を決める。

 ツェルトをたたむが、夜の風でずいぶん傾いてしまっていた。まだ沈まぬ月がガスの向こう西の空に見える中、出発。

 はじめは昨日偵察した通り、山頂の東側をかすめていく踏み跡をたどる。山頂北側の草地に出て斜面を下る。最初は群馬側に草地が続き、歩きやすい。檜倉山から最初のピークで草地がなくなり、稜線に這い上がる。稜線は思ったよりヤブが薄く、ヒザから胸くらいの深さの灌木まじりの笹だ。途中ピンクテープを見かけるが、別に迷いやすいところではなく、狭い稜線の一端にあった。

 強い風が群馬側から新潟側へ稜線を乗っ越していく。気温は低くないが、風が当たり体感ではけっこう寒い。笹は露で濡れており露よけに上下カッパを着ているが、軍手はびしょぬれである。右手の凍傷跡が冷たい。

稜線
10/18 翌日歩く檜倉山〜柄沢山の稜線。
ピンクテープ
10/19 ヤブの中にあるピンクテープ。誰かが迷わないように付けたのだろうか。

 1630m付近で稜線は左に曲がり、同時に群馬側に尾根を派生するが、尾根伝いに歩いていけば群馬側に迷い込むことはない。1590m付近は二重山稜となり、群馬側の稜線が草地になっているので歩きやすい。一方で尾根が分かりにくいので現在地がつかみにくい。

1630m付近
10/19 1630m付近の稜線が左に曲がるところ。
檜倉乗越
10/19 檜倉乗越。稜線はやせている。

 稜線が細くなり、群馬側に露岩が現れるようになると檜倉乗越。乗越と言っても群馬側・新潟側とも道はまったく見えない。ずっとガスに包まれているが、いっとき新潟側が晴れた。すぐ下の登川だけでなく大源太山や遠くの山まで見え、しかも日が当たっているところを見ると新潟側は快晴である。どうやら稜線を境に天気が変わっているようだ。さすが国境稜線。

 檜倉乗越からしばらく群馬側を巻く。群馬側は草地と岩があり、稜線のヤブを避けられる。草地と岩場の歩きやすい部分が思いのほか長く続き、1659m標高点までさほどヤブ漕ぎせずに登れる。1659m標高点の上は草原となっており、気持ちよい。折しも空が晴れ、柄沢山も見えはじめた。これで見通しがきき道に迷う心配がない。ひとりで「おっしゃー」と雄叫びをあげる。ちょうどきりがよいのでここで一本。

檜倉乗越
10/19 檜倉乗越から柄沢山へ。けっこう草地が使える。
1659m標高点の草地
10/19 1659m標高点の草地。空も晴れた。

 さっきまで夢の中のようなガスに覆われていた稜線に遮るものはない。振り返れば朝日岳から清水峠、奥に谷川岳が見える。檜倉乗越で登川が晴れているのが見えたが、ガスっていたのは稜線だけだったようだ。群馬側もいくらか雲が残っているが、所々稜線に乗っかっている程度である。行く先の柄沢山はまた群馬側に草地が続き、ヤブを避けられそうだ。

 柄沢山へ向かって歩き始める。群馬側の草地をつないで歩く。柄沢山南の1800m付近で笹ヤブを避けて稜線に上がるが、風が強い。ガスは消えたが群馬側から吹く風が強く、新潟側に転げ落ちそうだ。草を掴みながら稜線を歩く。稜線にはヤブが生い茂っているものの、風が強いからか丈は腰程度であり踏んづけて歩くことができる。最後、柄沢山頂部のピラミッドみたいな山に登る。はじめと上の方は草地だが、途中笹ヤブなのでちょっと苦しい。

柄沢山
10/19 柄沢山への登り。小さいコブをいくつか越える。
柄沢山
10/19 柄沢山山頂。ヤブ。

 柄沢山のてっぺんは笹ヤブの平らな山頂で檜倉山同様三角点がどこにあるのか分からない。ピンクテープがあったのでその下に三角点があるのかと探しにいったが見つからなかった。柄沢山は1900mあり、朝日岳〜巻機山で最も高い山頂であり、2つの山のほぼ中間に位置することと相まって来し方、行く先がよく見える。柄沢山の北側は平らな山並みが続き、平坦部はほとんどが笹ヤブに占領されているが、群馬側が切れ落ちていて草地になっている。また途中に草原が広がっているので歩きやすそうだ。その先の巻機山もなだらかに稜線が接続しているのでうまく歩けそうで気分が楽になる。

柄沢山
10/19 柄沢山から巻機山へ至る稜線。しばらくは草地が点々とする。
柄沢山
10/19 1809m峰から柄沢山を振り返って。鞍部に池塘があり、アルペンガイドでは幕営予定地としている。

 柄沢山の下りは腰ほどの高さの笹ヤブだが、下りなのでそんなに苦にならない。1809m峰の直前の鞍部は平らになっており胸ほどの高さの笹ヤブが広がっている。それを抜けると1809m峰まで草原。アルペンガイドでは幕営予定地としているところである。平らなので幕営するにはよい。池塘が鞍部と1809m峰上の2カ所にあるが「水は池塘の水を沸かして使用する」には少々汚いかと思う。

 1809m峰の次の1820m峰まではこれまでの繰り返しのような稜線。1809m峰の下りは胸ほどの丈の笹ヤブ、鞍部から1820m峰まで草原。鞍部に草の生えた池塘と渇いて苔の生えている池塘がある。この上で一本。米子頭山までは草原はなく、狭い稜線が続いているのが見える。

1809m峰
10/19 1809m峰北の鞍部。ここも池塘がある。テントも張れそう。
米子頭山
10/19 1809m峰北の1820m峰から北、米子頭山から巻機山に至る稜線。

 しばらく胸から背丈ほどの笹ヤブが続く。新潟側は灌木があるので群馬側の際を歩く。途中、群馬側のザレに登山靴の足跡を見つけ、戦慄が走る。雨が降ったら消えそうな足跡なので無雪期、それも1, 2週間前に歩いた人がいるのだろう。こんなところ無雪期に歩く人が私以外にいるのか、そう思うとギョッとした。

 もう一つの1809m峰は気づかず通過。米子頭山の手前の1780m峰は右手に露岩があり、これを使ってどうやって登ろうか考える。とりあえず岩場に取り付いてみるが急で落っこちそうなのでさっさと稜線のヤブに突っ込む。すると意外にもヤブの中に明瞭な道を発見する。ヤブの中で道を発見したのはこれが最初で最後だ。しかし道はすぐ消えてしまった。

幹の上を歩く
10/19 1780m峰の下り。幹の上を歩く。
米子頭山
10/19 米子頭山へのヤブ漕ぎ。

 1780m峰の下りは幹が寝て伸びているスギの林で、の上に乗りながら歩く。バランスをとりながら歩く。米子頭山の登りは背丈を越える笹ヤブで傾斜は緩い割にきつかった。

 米子頭山はやはり平らな山頂だが、マツと灌木と笹に覆われている。群馬側に露岩があり、その辺りで休める。露岩には明大ワンゲルのものと思われる小さな鉄板が置いてあった。「昭和58年6月24日 初夏班別フリーW」というので私が生まれた頃の話だ。そのころはもう少し道もまともだったのだろうか。もう露避けに着ていたカッパが不要なので上下とも脱ぐが、群馬側の露岩は東風が吹き付け寒い。それでもゆっくり休み、カッパの上だけヤブよけに着て出発。

米子頭山
10/19 米子頭山山頂。群馬側の露岩で休めるが、風が冷たい。
米子頭山
10/19 米子頭山から鞍部へのヤブ漕ぎ。手強い。

 コルへ向かって下る。いきなり灌木のヤブに行く手を阻まれるがもがくように進む。やがて群馬側に出て草地のトラバースも混ぜながら下る。米子頭山北のコルは笹ヤブに覆われている。行く先には緑色の斜面が広がっている。

 米子頭山北のコルの次はもう巻機山だ。いよいよ登山道に出られるかと思ったが、そうは問屋がおろさなかった。この日一番のヤブはこの巻機山の登りだった。

米子頭山
10/19 米子頭山北のコルから巻機山の登り。
栂ノ頭
10/19 栂ノ頭1928mへの登り。延々と背丈を越える笹ヤブが広がる。

 1780m峰までできるだけ群馬側の草地を使って登る。1780m峰あたりからは以前米子沢遡行の際、巻きに失敗して登ったことがあるはずだが、ほとんど記憶がない。強いてあげるなら稜線に出るまでひどいヤブに悩まされ、稜線に出てからは苦しんだ記憶がない。とはいえ単に忘れているだけのようで厳しい笹ヤブが広がっていた。1780m峰から栂ノ頭1928mまではずっと背丈を越える笹ヤブでかなりきつい。ときどき灌木が混じっているので遠目に見て灌木を避けながら歩く。しかしそれでも身体への負担は大きく、数歩に1回呼吸を整えるような有様であった。途中でどうしてもつらくて一本とる。笹ヤブの中での一本は不快なものだ。

 栂ノ頭1928m峰の登りは新潟側に回るか群馬側に回るか悩む。定石でいえば草地の発達している群馬側だが、新潟側は林になっており笹の勢いが弱い可能性がある。しかし、巻機山へ続く登山道が群馬側に伸びていたような気がしたので定石通り群馬側へ登っていく。尾根を回り込むと下に草地を見つけそこへ下る。草地にはなんとなく道があり、斜面を登るとあとは草原の道だった。やはり正解は群馬側だった。

栂ノ頭
10/19 栂ノ頭1928mへの登り。圧倒的な笹に根負けて休みを取る。
栂ノ頭
10/19 栂ノ頭1928mの東側の道。

 道は栂ノ頭1928mを群馬側から巻く。途中、道のない笹ヤブに突っ込むが、また道が復活する。やがて道に黒いフェルトが敷かれるようになり、巻機山の縦走路に出た。そこには「朝日岳方面縦走路」「縦走路入口」と道を示す2つの古い看板があった。道の現状を考えるとこの看板も取っ払った方がいいと思うのだが。

 巻機山の稜線を御機屋へ向かう。10月ともなると寒くなるし雪の降る恐れがあるからか、登山者を見ない。やっと登山道に出たというのに人に会わないとさびしい。山頂の湿原をひとり歩く。桜坂駐車場への下り道が分かれる御機屋に着くと登山者が2人いた。2人にあいさつし、そこで一本とる。山頂も風が強く、2人はカッパを着ていた。

巻機山
10/19 巻機山の登山道に出たところ。
栂ノ頭
10/19 巻機山御機屋にて記念撮影。

 時刻はまだ14:30。もっと時間がかかり、夕暮れ時に巻機山にたどり着くかと思っていたが、これなら今日中に下山できる。避難小屋で山の余韻に浸りながら一晩過ごすのもよいが、核心部を突破しあとは下山だけの今、さほど魅力も感じず帰れるなら帰ることにした。

 巻機山から桜坂駐車場への下りは1ヶ月前にも下ノ滝沢の帰りに歩いている。長いものの1本で下れる長さなので1本で下った。桜坂駐車場で車に乗せてもらえないか交渉するが断られ、清水バス停までとぼとぼ歩く。でも途中で車に乗っけてもらい、六日町で下ろしてもらった。帰りは六日町温泉中央温泉に入り、新幹線で帰京した。

おわりに

 それなりに苦戦すると思われた朝日岳〜巻機山の縦走だが、意外にも1泊2日で抜けることができた。しかし天気がよかったためであり、ガスだったら道が分からず、雨、雪が降ればヤブを漕ぐには寒すぎて向かないだろう。ヤブそのものもかなりきつい。地形は比較的平坦なので多くの人が行っているように残雪期に山スキーで行くのがヤブも漕がずに済み最もよいと思う。関東ぐるり一周山歩きの上野さんも残雪の5月の連休に通っており、巻機山牛ヶ岳から朝日岳まで1日で踏破している。

 流水の水場は以下の3カ所。

 あるいは檜倉山、柄沢山北の池塘の水が飲めるかもしれない。アルペンガイドでは柄沢山北の池塘の水を沸かして飲むとある。また慶応大学WV2005年の記録によれば、かなり下ると流水が得られるようだ(下記参照)。

 幕営できそうな箇所は以下の4カ所。

 また人と季節によってコースタイムはかなり変わるようだ。以下に比較表を示す。

アルペンガイド上野さん*1中山
踏査時期1993年夏*21981年5月2008年10月
朝日岳JP→大烏帽子山1:301:551:59
大烏帽子山→檜倉山2:001:022:33
檜倉山→柄沢山2:301:582:58
柄沢山→米子頭山1:303:091:52
米子頭山→巻機山1:552:58
9:258:0412:20
  1. 上野さんは巻機山→朝日岳の逆コース。上野信弥「関東ぐるり一周山歩き」(白山書房,1998)による。
  2. 『アルペンガイド3 上信越の山』(山と渓谷社,1994) P.28凡例末尾の記述「本書の解説コースは、著者が調査した1993年夏時点のものです」による。

(2008年10月23日記す)


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