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2003年夏 - 上越・宝川ナルミズ沢[1/2]


2003年8月23日(土)、24日(日)
場所
群馬県利根郡水上町/上越
ルート
8月23日
JR上越線土合駅…東黒沢遡行…ウツボギ沢下降…宝川広河原…大石沢出合(泊)
8月24日
大石沢出合…二俣…大烏帽子岳…ジャンクションピーク…朝日岳…笠ガ岳…白毛門山…JR上越線土合駅
参加者
中山(4), 永谷(4)
その後の山行
2006年秋 - 上越・東黒沢&ナルミズ沢

宝川ナルミズ沢の位置

はじめに

 永谷君から誘われて行くことにした。ナルミズ沢は美しいナメで有名な沢だし、実際この前の週は白毛門沢に行ったが、計画ではナルミズ沢に行こうとしてたのだ。そのときは雨に阻まれたが、俵田さんや初川さんはもう3回くらい阻まれている。ワンゲルの人間が行くのは五十畑さん以来だろうか。まあ、とにかくワンゲルにとってはやや遠い山なのだ。

1日目

2003年8月23日

JR上越線土合駅…東黒沢遡行…ウツボギ沢下降…宝川広河原…大石沢出合(泊)

1日目コースタイム
JR上越線土合駅4:50起床
5:25
白毛門沢出合6:12
6:18
東黒沢二俣6:55
7:04
左俣1000mあたり7:37
7:55
1090m二俣滝8:30
8:40
1300mあたり9:30
9:45
1526m峰西尾根上10:20
10:40
ウツボギ沢1320m11:53
12:13
ウツボギ沢出合13:15
13:35
大石沢出合14:30
18:15就寝

 8月22日金曜日16時。研究室を抜け出し部室に行くと、永谷君が座って待っていた。部室に入ってすぐ、後ろに三井君が駆け込んできて、「落ちた−!」。東工大の院に落ちたらしい。9割が受かるという院試に落ちたことにショックを隠せないようだった。17:30上野発高崎行きに乗るため、部室を出る。

 会社帰りの人々で混雑する列車に乗りながら、三井君をけなす。聞くと、私でも理解できてしまうような誤りだった。偏微分方程式を解く問題なのだが、変数分離の際、複素数をおくべき定数項に実数をおいてしまい、ドミノ式にあとの問題も間違えたそうだ。永谷君はわからないようだった。「いや、工学部なら偏微分方程式くらいやるだろ」とか言って永谷君をバカにしていたら「バカヤロー、学科でやるって言ったらブール代数とかだろ、1+A=Fとか」とかなんとかよくわからんことを抜かすので、三井君と二人で「わけわからん人」扱いする。

 土合駅に着く。久しぶりに土合の階段を上る。下りホームはなぜかガスっていた。登るにつれガスは晴れ、駅舎に着いた。人が多いので、外に出て軒下に銀マットをひく。暗がりで三井君がカブトムシのメスを踏んでいた。三井君は申し訳なさそうに家に電話していた。こうなると翌週の東大の院試に全力を注ぐことになる。

 23日 4:50起床。三井君はひと晩考え、「山になぞ登っている場合でない」ことを悟り、帰ることにした。帰って火曜日の東大の院試に向けて勉強するらしい。というわけでナルミズ沢には永谷君と私の二人で行くことになった。なお、三井君は見事に東大の院に受かり、なぜか専門を宇宙から気象に変えて勉強することにした。

東京へ帰ります
「東京へ帰ります」。朝、三井君は帰って行った。
ハナゲの滝
ハナゲの滝で記念撮影。

 ペーパードライバーばかり(仮免許一人含む)のメンバーだったので、コースは湯檜曽川東黒沢を遡行し、白毛門山の東尾根を乗り越して宝川ナルミズ沢に入る。したがって、白毛門沢出合まで私は先週(参照:白毛門沢の項)と同じルートをとることになる。東黒沢出合まで、先週とうってかわって晴れのもとを歩く。前みたいに堰を登らぬよう、東黒沢にかかる橋に出ず、手前の左岸沿いの道を歩くと堰の上に出た。

こけた
こけた。ハナゲの滝上。
すべり台
すべり台。天気もよく、条件は最高。

 先週歩いたよりも長く感じた河原歩きの後、ナメ。ハナゲの滝も難なく越える。ハナゲの滝上部で永谷君がコケて、おどろく。でも落っこちなかった。白毛門沢までで滑り台を一つ見つけ、滑った。白毛門沢出合で一本とる。その先もナメは続き、おもしろい。途中、小さなゴルジュがあり、泳いだ。そのあと立派な滝もあり、右から簡単に登った。永谷君は左から登っていた。右に変な巻き道っぽいのがあったけど、巻きが一番めんどくさそうだった。やがて東黒沢二俣について一本とる。二万五千図にはこのあたりを道が通っているはずだが、見つからなかった。

緑が明るい
緑が明るい。
東黒沢F1?
東黒沢F1かな?右から越えると楽だった。

 二股の左を行く。赤い岩の広いナメが続く。美しい。ナメを終えるとだんだん水量が少なくなる。コンパスをきると西に向かっていて不安になる。このあたりは沢の向きがあっちこっちとかわり、どこにいるのかはっきりつかめなかった。滝を重ねながら登っていくと二つの滝が合わさるところに出た。この二俣滝で一本とる。右か左かとコンパスをきろうとすると、コンパスを落としたことに気づく。かなり落ち込む。どちらかというと左の方が落ち口が低かったことと、実際より先に進んでいると考えていたこともあって、左に進んだ。見たところ、直登は難しそうだったので、左から巻く。巻き道はない。土の上に草の生えた斜面で滑る。なんとか上部の笹をつかんでヤブを漕いで左の沢に出た。直後、3メートルほどの滝が3つほどあり、直登が難しい。ひとつの滝で右に巻こうとして落っこち、左に巻こうとして落っこち、腕に切り傷、胸に打ち傷を負った。ほとんど人は歩いていないような沢だ。

極上のナメ
極上のナメ。
二俣滝
二俣滝。左へ行ったら大変なことになった。

 かなり水量は減って一本。予定通りなら沢のツメは緩やかになって平坦なコルに出るはずなのだが、傾斜は一向に緩くならない。すぐに水も尽きてコルに着くだろうと、安易な気持ちで歩き出して30分。ササヤブとかん木のいやらしいヤブ。尾根のようなところに出る。しんどいので一本とる。現在地確認しようとすると、永谷君もコンパスをなくしたことが判明。ここにいるときはコルより東にいると思っていたが、実際には西にいた。

 向こうに山が見えたので、そっちにトラバースしながら登る。やっと、本当の尾根に出る。植生の違いでそれが明らかだった。北側斜面はヤブはさほどひどくなく、木より笹の方が多い斜面だった。尾根を乗っ越したことで自分たちがどこにいるのか把握し、落ち込む。ここからだと、行くはずだったコルに出てからナルミズ沢に出るか、ナルミズ沢支流のウツボギ沢に下ってからウツボギ沢沿いに下るか。しばらく尾根を低い方に向かって歩くが、急なところに出たので、やむを得ずウツボギ沢側に下る。

 変な枝沢があったので、それをたどろうといっぺんその枝沢に下りるが、急過ぎて下れない。しかたなくまた沢から離れ、斜面をずっと下る。最後は懸垂下降せず、シリセードで下れた。実はザイルを持ってこなかったのだ。必要なかろうと思って。必要はなかったが、このときは精神的に不安だった。やっぱり補助ザイルくらい持っておいたほうがいい。あたりまえか。ウツボギ沢はだいぶ平和な沢だった。出たところで一本とる。自分が確実に地図上のウツボギ沢というライン上にいるということが、安心できた。とはいえ、これから先も何も情報のないウツボギ沢を下るのはけっこう不安だった。どんな滝があるかわからない。

ウツボギ沢に出て
ウツボギ沢に出て。
宝川広河原
宝川広河原

 下ってみると、ウツボギ沢はいたってのどかな沢だった。一ヵ所だけ、急なところがあって、1230mと1240mの等高線の間が、ひどくつまっている。ここは30mほどの大きな滝があって、巻き道を探したがなく、左岸のヤブを伝って下に出た。なんとかザイルを使わずに済んだ。そこから雰囲気が黒部川の上ノ黒ビンガみたいな小さなゴルジュを抜けて、ウツボギ沢とナルミズ沢の出会う広河原に出た。ここで一本とる。そしたら、永谷君がここでザックの天ぶたからコンパスを発見する。必要なところが過ぎたら出てきた。広河原は名前のとおり河原になっている。テントは数張り張れるが、そんなに広い河原ではない。地形は広いが、木が生えているから河原は広くないのだ。

 地形図を見ると、ここからはほとんど登らないし、ここからはこんな河原が続くのかと思っていた。そしたら1200mくらいから両岸せばまり、立派な滝が現れる。しかもなんか泳がされる。この日は晴れだったので、水の中入っても寒くはないが、あんまり泳いでないので、水が怖い。永谷君はラッコ泳ぎで、私は平泳ぎで突破する。二つの大きな釜を結ぶ滝は左から巻いたが、下は大きな洗濯機でちょっと怖い。登りきって振りかえって永谷君を撮ろうとしたら、上の釜に落っこちた。左手にあったカメラは腕を伸ばしていたおかげで無事だったが、あせった。その後、泳ぎもほとんどなく、そのうち河原歩きになって大石沢出合についた。

ナルミズ沢の滝
ナルミズ沢の滝。
大石沢出合近く
大石沢出合近く。

 大石沢出合はナルミズ沢本流から低い滝をかけ、広い淵を持っている。大石沢出合にはすでに夫婦らしき人と中高年10人くらいの集団がいた。左岸の傾いた草地にテントを張り、休んだ。10人くらいの集団は大石沢の方に入っていったが、あとで煙が立っていたところを見ると大石沢に入ったところでテントを張っていたようだ。永谷君も焚き木拾いをしていたが、メシを食い終わると眠いのか、すぐ寝てしまった。

寝るヤクザ
寝るヤクザ。
テント
左岸にテントを張った。右から流れて来るのがナルミズ沢本流、左上から流れて来るのが大石沢。

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