山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2016年山行一覧>北アルプス・前穂高岳北尾根3峰[1/4]
数ある穂高の尾根の中で最も美しいものの一つであり、その鋸歯状のスカイラインは穂高のシンボルといっても過言ではない
柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系7 槍ヶ岳・穂高岳」(白水社,1990)P.145
と、前穂高岳北尾根は穂高岳を象徴する尾根の一つとして日本登山体系に描かれている。1928年3月25日に大島亮吉が転落死したことでも有名である。無雪期は岩のバリエーションルートであるが、積雪期は雪と岩のアルパインルートとなる。
私は無雪期に1回、残雪期に1回の計2回登っているが、いずれも無雪期・残雪期なりの難しさがあり、印象に残っている。今回は年末年始なのでより天気や雪のつき方など、より困難であろう。そのためにも偵察を2回行った。
計画では前穂高岳まで3泊4日、4日目に奥穂高岳を越えて穂高岳山荘冬季小屋泊、5日目に涸沢岳西尾根を下山とした。予備日は2日間である。
0日目 |
2016年12月26日(月) |
中央道日野バス停=松本駅(泊)
22時中央道日野バス停に集合する。バス停があるのは知っているが、乗降するのは初めてだ。立川から多摩都市モノレールに乗り、甲州街道駅で下車して徒歩10分ほど。Kさんが荷物が重くて遭難しそう、とこぼしていた。予約した22:15発松本行きのバスに乗車する。
1時前に松本バスターミナルに着く。朝まで松本駅で仮眠する。
1日目 |
2016年12月27日(火) 雨のち雪 |
松本バスターミナル=中の湯…上高地…新村橋…慶応尾根1780mコル(泊)
中の湯バス停 | 9:13 |
9:24 | |
上高地トンネル坑口 | 9:59 |
10:10 | |
上高地浄化センター | 11:02 |
11:12 | |
河童橋南詰 | 11:39 |
11:48 | |
明神館 | 12:38 |
12:48 | |
徳沢園 | 13:42 |
13:54 | |
新村橋北詰 | 14:13 |
14:19 | |
奥又白沢第3号谷止 | 15:12 |
15:25 | |
慶應尾根1780mコル | 15:52 |
20:00就寝 |
起きると松本は雨だった。降りてすぐ歩けるようカッパを着て、靴を履き替え、スパッツを装着する。置いていく着替えなどは松本駅のコインロッカーに預けた。アリオの1階バスターミナルで中の湯までの2,200円の切符を買う。切符売り場は改装されて綺麗になっていた。10番線に停車する7:50発の特急高山行きバスに乗車する。眠いのでまだ寝る。
中の湯で下車する。私たち以外に単独行が2人下車していた。道路の脇には除雪された雪が残っていたが、天気は雨であった。釜トンネルの中に入り、雨をやり過ごしながら出発準備を行う。
釜トンネルは一般車の通行が規制されており、照明が消されている。非常用設備の灯りを頼りに歩くが、途中でヘッドランプを出した。まだ仕事納めではないので、仕事の車が往来していた。釜トンネルを出て沢を渡ると2016年に竣工したという上高地トンネルが続く。
上高地トンネルを抜けるといよいよ上高地。しかし雨が降っているので坑口で休む。砂防事務所の入り口を通り、梓川に架かる橋を右岸に渡る。道は凍っていて滑りやすい。ピッケルを出したが、支えにするには短いので意味がなかった。1箇所沢が洗い越しになっているところがあり、少し上流に回ってジャンプして渡る。
上高地浄化センターの軒下で休んでいると松本市上下水道局の人が維持管理のためか立ち寄っていた。河童橋を渡り、左岸に戻る。夏はあれほど混雑する河童橋だが、誰もいない。左岸の建物にハシゴをかけて何か作業している人たちがいるくらいだった。
12/27 雨の河童橋を渡る。 |
12/27 新村橋からはガスで前穂高岳は見えない。 |
河童橋からは車が往来していないようで、道路は凍っていない。小梨平には冬季トイレがあったが、テントはなかった。明神館は有刺鉄線で囲われており、軒下で雨を避けることもできないのでトイレの軒下で休む。明神のトイレは夏季のみで冬季は使えなかった。徳沢園も有刺鉄線で囲われ営業していなかった。ただ、冬季トイレはあいていた。
新村橋から見る山はガスっていて見えない。右岸にデポしたガス缶を回収する。治山運搬路にはうっすらと足跡が見えた。奥又白谷沿いの道に入り、奥又白沢第3号谷止の上で休む。標高が上がったからか雨は雪に変わってきた。
12/27 奥又白沢第3号谷止の上で奥又白谷を渡る。 |
12/27 慶応尾根1780mコルに幕営する。 |
偵察時につけたピンクテープに従い、奥又白谷を横断し、慶應尾根に取り付く。白ザレを登って1780mコルに出る。時刻も16時近いのでここで幕営する。コルの北側斜面で雪を集めた。晩飯はKさんがすき焼きを用意していた。生の牛肉だけでなく、卵まで割らずに持ってきていた。これからの登攀に英気を養う。
2日目 |
2016年12月28日(水) 晴れ |
慶応尾根1780mコル…パノラマコース横断点…慶応尾根2460m峰…前穂北尾根8峰2631m…6峰登り出し(泊)
慶應尾根1780mコル | 3:33起床 |
6:11 | |
慶應尾根2055m | 7:39 |
7:51 | |
慶應尾根2154m峰 | 8:33 |
パノラマコース横断点 | 8:43 |
9:00 | |
慶應尾根2400m | 10:26 |
10:36 | |
慶應尾根2460m峰 | 10:53 |
11:07 | |
前穂北尾根8峰 | 12:04 |
12:21 | |
前穂北尾根7峰 | 14:17 |
前穂北尾根6峰登り出し | 15:30 |
20:00就寝 |
夜は風はなかったが少し寒かった。月や星が見えないが、樹林帯なのでくもっているのかどうかはわからない。
昨日、下界で降った雨は山では積雪になっていた。途中でワカンをつけて登る。深いところでヒザくらいの積雪であった。夜が明けると今日は晴れのようだ。サングラスを出す。
12/28 慶應尾根2154m峰付近を登る。 |
12/28 パノラマコース横断点で休む。 |
慶應尾根2154m峰は狭いピークで右から下る。パノラマコース横断点から登りは急になる。2460m峰の手前でワカンからアイゼンに履き替える。振り返るとザックが落ちてしまいそうな急登だ。ピッケルとバイルを併用して登る。2460m峰で奥又白谷越しに前穂高岳が見える。白化粧をまとい人を寄せ付けない姿である。日が当たり風もなく暖かいので休みがてら写真を撮る。Kさんが12月の職場の標語を持っていて写真を撮ってくれと頼まれた。
12/28 慶応尾根2460m峰への登り。 |
12/28 慶応尾根2460m峰にて前穂高岳を背景に私。 |
12/28 慶応尾根2460m峰から前穂高岳北尾根8峰へ向かって登る。 |
12/28 前穂高岳北尾根8峰から前穂高岳へ向かう。左から本峰、6峰、7峰。 |
8峰へは雪稜が続いている。ところどころ急なところがあったり、もなか雪を踏み抜くことがあるが、難しくはない。前穂北尾根8峰は広く、7峰寄りがゆるい窪地になっている。風を避けられるので、ザックを降ろしハーネスを装着する。正面には7峰、6峰が見え、5峰から前穂高岳山頂まではひと重なりになって各ピークはわからない。右手には奥穂高岳、北穂高岳、槍ヶ岳が見えた。
12/28 7峰の登り。 |
12/28 7峰を振り返る。 |
8峰から少しでザイルを出す。雪稜は急なところがあったり、ナイフリッジになっている。木が生えているのでランニングビレイは取りやすい。スタカットで進む。7峰から6峰は地図上では近いが2つほど小ピークがあり、これらを乗っ越す。ギャップに下りるときに涸沢側を巻く。涸沢から吹き上げる風が冷たく、防寒着を着る。さらに涸沢側から巻いて登ると6峰登り出しであった。6峰まで登ってデポを回収したいところだったが、時刻も15時過ぎなのでここに泊まることにする。岩の基部の奥又白谷側を掘って幕営する。
12/28 6峰はさらに険しい。 |
12/28 前穂高岳北尾根6峰登り出しで岩陰に幕営した。 |
けっこう疲れて食欲が少なく、晩飯の鍋もあまりそうになった。ラジオは明後日の天気が悪いことを告げており、Kさんは明日中に前穂山頂に抜けようと息巻いていた。ときおり風に吹かれる中、就寝。