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2016年夏 - 上信越・清津川本谷[1/3]


2016年8月5日(金)〜8月7日(日)
場所
新潟県南魚沼郡湯沢町/上信越
ルート
8月5日
越後湯沢駅=元橋バス停…赤湯温泉…セバト沢出合上1120m(泊)
8月6日
セバト沢出合上1120m…西ノ沢出合…清津川本谷右俣…白砂山…堂岩山…堂岩山水場(泊)
8月7日
堂岩山水場…野反湖=長野原草津口駅
参加者
L. 中山、H
参考文献
柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系2 南会津・越後の山」(白水社,1981)p.258

はじめに

 上信越の山は拓けていない。例えば北アルプスの上高地や室堂のように山のふところにバスが何台も入るようなところはない。佐武流山や上ノ倉山など登山道のない2000m峰もあり、未だに山深い。谷もまた魚野川長笹川、白砂川、四万川など1泊以上を要する長い沢がある。

 Hさんから金曜日に休みをつけて2泊3日で沢登りに行きたい、場所は中山が決めてほしい、と頼まれたとき、正直困った。2泊3日かかる沢は遠いところが多く、電車バスで行ける沢は実質1泊2日程度に考えないと帰れなくなってしまうからだ。今年はまだ沢に登っていないこともあり、比較的易しい沢がいい。関東周辺の沢を見ながら上信越の沢はいい、白砂川か清津川サゴイ沢かと選んでいたが、地図を見ると清津川本谷が長い。日本登山体系を読んでみると悪場もなさそうだ。そこで山域を知るためにも清津川本谷を選んだ。

 清津川本谷は白砂山から流れ、赤倉山からセバト沢の頭までの長大な上信越国境稜線の水を集め、赤湯温泉に流れている。二居ダムより下流では三国街道に沿って開け、三俣の集落があるが、その下流では清津峡を形成している。日本登山体系は以下のように紹介している。

 本流は上流部まで単調な川歩きに終始するが、白砂山への登路として興味深く、また谷筋の緑濃い原生林は深山の趣きを堪能させてくれる。

清津川本谷,柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系2 南会津・越後の山」(白水社,1981)p.258

 登攀的な要素は少ないものの、沢旅らしい沢歩きが楽しめそうであった。

1日目

2016年8月5日(金) 晴れ

越後湯沢駅=元橋バス停…赤湯温泉…セバト沢出合上1120m(泊)

コースタイム
元橋バス停9:47
9:55
赤沢渡渉10:51
11:07
小日橋11:28
センノ沢出合12:00
12:12
鷹ノ巣峠12:49
13:08
赤湯温泉山口館13:49
14:02
ナラズ沢出合14:53
セバト沢出合14:57
清津川本谷1120m付近15:14
19:20就寝

 朝一番の八高線に乗って北上する。高崎、水上で乗り換え、越後湯沢で下車。浅貝行きのバスに乗る。赤湯温泉へはアプローチが悪く、バスだと元湯バス停から4時間、林道車止めからでも2時間と一般の温泉宿としてはあまりに遠い。タクシーを使うことも考えたが、2人なので割りが悪くやめた。

 元橋バス停で下車。運賃590円+荷物料100円であった。降りてからサンダルを靴に履き替えたりする。電車バスで私はよく寝ていたのだが、Hさんは靴を履き替え、日焼け止めを塗って準備を整えていた。日差しは強く、暑い。

 国道17号線を三国峠に向かって2分ほど歩くと「赤湯温泉山口館」の看板が現れる。これに従い、進むと鉄塔があり、浅貝川へ下る山道が続く。思いのほか急で、Hさんは出していた日傘をしまっていた。浅貝川には鉄橋が架かっており、安心して渡れる。地形図では河原が広く蛇行しているように見えるが、河原は樹林帯で覆われ日差しに当たることはなかった。浅貝川左岸に渡り、登り返す。途中2回ほど車道と交差する。右下にはグラウンドがあって、サッカーの合宿を行っているようであった。地形図ではところどころ車道も歩くようだが、看板に従っていくと車道とは交差するばかりで、車道を歩くことはない。途中、苗場スキー場と田代スキー場を結ぶドラゴンドラの下を通る。こんな険しいところによくゴンドラを通す気になったなと改めて感心する。尾根を乗っ越して下ると赤沢についた。ここで一休み。

赤沢渡渉
8/5 元橋バス停から小日橋までの登山道で赤沢を渡渉する。
小日橋
8/5 赤湯林道は小日橋で車両通行止めになっていた。

 赤沢を渡渉して登ると3分で林道に出る。あとは赤湯林道を延々と終点まで歩く。下りになって稼いだ高度がもったいないと思うと小日橋で清津川を渡る。車両通行止めの看板があり、2台の車が停まっていた。清津川左岸の林道を歩く。途中、蝶々を捕まえようとしているおじさんを見かけた。林道終点のセンノ沢出合で休む。エアリアマップをどこかで落としたことに気づく。Hさんから取ってくるかと聞かれるが、エアリアマップはHさんも持っているし、どこに落としたか確証がないので探しに行かなかった。

棒沢
8/5 棒沢を鉄橋で渡り、尾根に取り付く。
鷹ノ巣峠
8/5 1184m標高点に鷹ノ巣峠の看板。

 センノ沢出合を過ぎてすぐ棒沢。棒沢にかかる鉄橋を渡ると登山道になる。登りは思いのほか急で沢装備を持つ身には辛い。ひとしきり登って1184m標高点に着くとそこには鷹ノ巣峠の看板があった。歩荷を背負った年配の男性がおり、私たちのザックにぶら下げたヘルメットを認めて沢登りか、と声をかけた。清津川本谷を行くと伝えると、3日ほど前に学生のパーティーが入って行ったそうだ。積乱雲は出ているが、ここのところ雨は降っていないのでおそらく降らないだろうとのことだった。荷物を見てHさんが重くないですか、と聞いたが、20kgくらいでいつもより軽いとのことであった。赤湯温泉まで車を使っても片道2時間の道のりを行き来して食料を運んでいるのかと感心した。

 鷹ノ巣峠からは比較的平坦なトラバース道になる。見返りの松というところでタクシー会社の看板があった。ここだと携帯電話が通じて予約すれば林道終点まで来てくれるそうだ。ひどく山奥だが、一体どこの電波を拾えるのだろう。

 途中男女のカップルを追い抜き、清津川への急な下りにかかる。下りきって水量の少ない熊沢・サゴイ沢を鉄橋で渡る。渡った先にテント場があるが誰も張っていない。その先に水量の多い清津川本谷にかかる橋がある。橋を渡ると河原沿いに温泉が2箇所あった。尾根をぐるりと回ると赤湯温泉山口館があった。

赤湯温泉山口館
8/5 赤湯温泉山口館は山奥にありながら3階建ての立派な建物だった。
昌次新道
8/5 昌次新道は小屋の脇から清津川本谷沿いに歩く。

 玄関で休む。人気はなく、御用の方はボタンを押して呼んでくださいと看板があった。山奥にしては3階建ての立派な建物である。隣に新館もある。川が近くて増水が不安になるくらい平地いっぱいに建っている。皇太子様が泊まったことがあるとHさんから聞き納得する。休みついでに靴から沢たびにはき替える。

赤湯
8/5 赤湯温泉の建物から50mほど歩くと赤い温かい湯があった。
昌次新道
8/5 判然としない昌次新道を歩く。行く先に橋がかかっているのでそれとわかる。

 昌次新道も赤倉山への道も山口館から清津川本谷右岸を遡り、橋を渡る。河原の判然としない道を辿ると赤茶けた溜り水があった。手を入れると暖かい。沢たびなのでそのまま足を入れて温泉を楽しむ。橋の下をくぐるともう道はなく沢登りの範疇になる。といっても広い河原が続き、沢登りという感じはしない。渡渉もするが、深さはせいぜい膝程度。

清津川本谷
8/5 清津川本谷にかかる橋をくぐれば沢登りの範疇である。
赤倉沢出合
8/5 赤倉沢は文字通り赤い土砂が押し出していた。
門
8/5 両岸に岩のある門のようなところ。
ナラズ沢出合
8/5 ナラズ沢出合も土砂が押し出していた。

 右手に赤い土砂が押し出した赤倉沢を見送り、門のように両岸の岩が迫ったところを通り過ぎると右手からナラズ沢が合流する。沢が急に右に曲がるところで左手にセバト沢が合流する。セバト沢出合付近は両岸にがけ(岩)の記号が見られるが、河床は浅い河原で通過は容易である。また河原が広くなった標高1120mあたりで幕営に適した砂地を見つけここに幕営する。川が少々近いが雨は降らなさそうだし大丈夫だろう。

セバト沢出合
8/5 両岸迫ったところでセバト沢が合わさる。水量は本谷と同じくらい。
清津川本谷1120m
8/5 清津川本谷1120m付近で幕営。

 整地してテントを立てる。枯れ木は多く、薪には困らない。集めた木に火をつけると扇がずともすぐに火が立ち上がった。去年の魚野川で火がつかなかったのでショックだったのだが、難なく火つけできて拍子抜けした。夜ご飯はHさんのペミカンの麻婆豆腐ゴーヤ入りを食べた。久しぶりの河原歩きは足の裏が痛いと2人で話す。日が暮れたころテントに入り就寝。


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