山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2016年山行一覧>北アルプス・剱岳北方稜線[3/3]
5日目 |
2016年5月3日(火・祝) 快晴 |
池の平山…小窓…小窓の王基部…三ノ窓…池ノ谷乗越(泊)
池の平山 | 3:00起床 |
5:38 | |
小窓 | 7:35 |
7:57 | |
2640m付近 | 9:08 |
9:38 | |
小窓の王基部 | 9:47 |
三ノ窓 | 10:30 |
池ノ谷乗越 | 11:08 |
18:30就寝 |
昨日の残りのご飯を食べて出発する。ここからは私も黒部横断のときに歩いたことがある。天気は晴れだが、風が吹いている。ラジオによると西から低気圧が来るらしいのでどこでやり過ごすかをKさんと相談しながら歩く。
5/3 剱岳を守る小窓の王はいかにも鉄壁堅牢である。 |
5/3 池の平山からの下りはところどころ岩場が出ている。 |
池の平小屋から小窓へトレースが続いており、これをたどる。できるだけ南側斜面の雪面を使って下るが、急なところは雪のない岩とヤブの稜線伝いに下る。小窓に下りるところは例年は懸垂下降だが、今年は雪がうまくついており、懸垂下降せずに下れた。S君の歩行が慎重な分、遅く、小窓で小窓雪渓へ下山するかという話も出たが、一応遅いなりにも歩いているので剱岳を目指すことにする。
5/3 小窓に下りる箇所は今年は懸垂下降せずに済んだ。 |
5/3 小窓に下りついて休む。 |
小窓からはただの雪壁を登る。急だが、岩場がないのでもくもくと登る。小窓尾根に到達すると、小窓尾根からの明瞭なトレースが付いていた。池ノ谷乗越に3人くらいのパーティーが見えたので多分あのパーティーがつけたトレースだろう。途中1箇所岩が出ていて後続が不安なところがあったのでKさんがザイルを出しに行く。今のところ天気は晴れで暑い。私はカッパズボンが暑かったので脱いでいた。
5/3 小窓から小窓尾根に雪壁を登り返す。 |
5/3 小窓の王、チンネ、池ノ谷尾根が不気味に並ぶ。 |
HさんとS君が追いついてから、Kさんと小窓の王基部に先行する。50mザイル1本しかないので確保しながら下る。先に私が確保しながらKさんが下り、ザイルをフィックスする。その後、ザイルにプルージックをつけてHさん、S君を下らせる。最後に私がKさんに確保されながら下った。ロープワークのコールが池ノ谷ガリーに跳ね返って響いていた。Hさんは下った後フリーでトラバースし、中山、S、Kでザイルをつけたままトラバースした。シュルンドに入ったらザイルを外し、Kさんにザイル回収をお願いし、S君と三ノ窓に向かう。
5/3 小窓の王基部をロープ出して下る。 |
5/3 小窓の王基部をトラバースして三の窓に至る。 |
先に三ノ窓についたHさんはザックを下ろしていた。S君も暑いそうなので1枚脱ぐ。私は先に池ノ谷ガリーに取り付く。池ノ谷ガリーにはトレースが刻まれており、難しくない。ただ気温が高いのか上からパラパラと一度溶けた雪が流れてくるのが気になる。焦らずゆっくりと登る。やがて後続も登ってくるので振り返り写真を撮りながら登る。
5/3 池ノ谷ガリーの長い急登。トレースははっきりしているので黙々と登る。 |
5/3 池ノ谷ガリーを振り返れば毛勝山が見える。 |
登り着いた池ノ谷乗越には立派な幕営跡があり、幕を張るか悩む。夜には低気圧が来て朝には通過するとのことなので、今日はあまり遅くまで行動したくない。乗越まで上がってみると長次郎谷から強い風が吹き付ける。富山市には暴風警報が出ているそうだ。稜線歩きは厳しそうだ。一方長次郎谷から池ノ谷乗越に登ってくるトレースがあるので、もし停滞したとしても本峰を踏まずに長次郎谷に下りることはできるだろう。そこで池ノ谷乗越で低気圧をやり過ごすことにした。
その間に五竜岳から黒部を横断してきたというパーティーが池ノ谷乗越を通り過ぎていった。天気が悪くなる前に本峰を踏んで剱沢に下りたいとのことであった。幕営跡は2, 3人用のスペースだったので山側を削って4, 5人用テントを張れるよう広げる。雨が降るのでブロックを二重に立てて補強した。テント内で話し合い、予定は早月尾根を下山だが、悪天候の中岩場を下るのは時間がかかるだろうと考え、ハシゴ谷乗越経由で黒部ダムに下ることに決めた。
6日目 |
2016年5月4日(水・祝) ガスのちくもり |
池ノ谷乗越…長次郎のコル…剱岳…長次郎のコル…長次郎谷…ハシゴ谷乗越…内蔵助平(泊)
池ノ谷乗越 | 3:00起床 |
7:36 | |
長次郎のコル | 8:30 |
8:39 | |
剱岳 | 9:12 |
9:16 | |
長次郎のコル | 9:48 |
9:55 | |
熊ノ岩下2500m付近 | 10:22 |
10:33 | |
長次郎谷出合 | 10:55 |
真砂沢ロッジ | 11:12 |
11:37 | |
ハシゴ谷乗越 | 14:20 |
14:46 | |
内蔵助平 | 15:09 |
18:00就寝 |
朝起きると外は霧雨であった。明け方雨になり、テント内で待機する。7時を過ぎて雨が小止みになり、テントを回収する。KさんとS君が先行して出発する。長次郎の頭までは晴天も見えたが剱沢から吹き上げる風が強い。
5/4 雨が上がってから剣岳へ向けて出発する。 |
5/4 一瞬青空が広がったがすぐガスになってしまった。 |
池ノ谷乗越から登りきってザイルを出して進む。途中、Hさんがかぶっていたヘルメットを池ノ谷側に落としていた。カラカラカラという音に私は落石かと思って振り向いたらヘルメットが池ノ谷に転がっていた。どうやらヘルメットの留め具を留めていなかったようだ。
風に足を取られてバランスを崩しそうになりながら稜線を歩いた後、長次郎のコルに下る。長次郎谷側を巻いて下るが、雪が緩んでいてズボズボと落ちる。私も一度足がつかないシュルンドに引っかかった。長次郎のコルに着く頃にはまたガスに巻かれてしまった。ザックを長次郎のコルに置いて剣岳本峰をアタックする。私達が休んでいる間にKさんがロープを伸ばしてくれた。
5/4 長次郎のコルにザックを置いて剱岳に登る。 |
5/4 ライチョウがトコトコ歩いていた。 |
雪壁を急登して岩峰に着く。そこからしばらくで小さな山に到達したので、ここが剱岳本峰かと思ったら一瞬ガスが晴れてまだ先に登りがあった。雪壁を登り、剱岳本峰に改めて到達した。今度は祠が顔を出しているので間違いない。みんなで握手を交わし、長次郎のコルに戻る。
5/4 剱岳山頂にて記念写真。 |
5/4 長次郎谷を下る。 |
ガスの中長次郎谷を下る。トレースはない。ところにより膝くらいまで潜るところがあるが、下りなので強引に下る。熊の岩付近に門のように両側に岩がせり出したところがあったが、そこは真ん中を通れた。熊の岩の下で一休みする。さらに長次郎谷を下って真砂沢ロッジで休む。真砂沢ロッジは建物の一部が雪から顔を出していた。剱沢は晴れていて暑い。
5/4 真砂沢ロッジは雪から顔を出していた。 |
5/4 ハシゴ谷乗越への道が分からない。向かいの尾根に出ればよいのだが稜線に上がる箇所がどこも険しい。仕方ないので適当な雪渓を詰め上がった。 |
ハシゴ谷乗越へ登るところは道がわからず、一つ手前の雪渓を登ってしまった。しかもS君が滑落してしまった。迷いながら雪渓をつめきってハシゴ谷乗越より高いところに出てトラバースしてハシゴ谷乗越に出た。真砂沢ロッジから3時間近くかかってしまった。トレースがないと難しい。
5/4 ハシゴ谷乗越の少し上に出たのでトラバースしながら下る。 |
5/4 内蔵助平へ下って幕営した。 |
もう15時近いため、今日中に下界に出るのは難しい。内蔵助平で幕営し翌日黒四ダムへ下山することにした。内蔵助平の水の出ているところで幕営する。もう酒もほとんどなく、食べ物も予備日分なので食べるだけ食べてさっさと寝た。
7日目 |
2016年5月5日(木・祝) くもり |
内蔵助平…内蔵助谷出合…黒四ダム=(トロリーバス)=扇沢=信濃大町=松本
内蔵助平 | 2:43起床 |
4:53 | |
内蔵助谷出合 | 7:10 |
7:30 | |
黒四ダム | 8:50 |
9:35 |
夜、雨が降って少し寒かった。朝早くに起きて夜明けとともに行動する。複雑に流れる沢をかわすため、迷いながら鉄橋を見つけて内蔵助谷右岸に出る。しばらく雪を下って行くと倒木があってあとはほとんど夏道であった。例年の5月ならほとんど雪の上を歩くのに珍しい。ところどころ雪渓もあるため道を探しながら下る必要もあり、面倒であった。内蔵助谷出合の平地で休む。Kさんがウドを見つけていた。
5/5 内蔵助谷に架かる鉄橋を渡る。 |
5/5 内蔵助平を過ぎると雪がほとんどない。倒木をまたぐ。 |
黒部川も雪不足で夏道を歩いた。橋が壊れているところがあり、靴を濡らしながら渡る。やがてダムが見えて川を渡るが、やはり橋が壊れている。水深の浅いところをザブザブと走って渡り、あとはジグザグを登って黒部ダムに着いた。9:05発のトロリーバスに乗れそうであったが、フキノトウを摘んでいたHさんたちに合わせて9:35発のトロリーバスに乗った。我々の乗った扇沢行きのバスは空いていたが、対向車を見ると立ち客もいるくらい混んでいた。
5/5 黒部川も雪が少なく夏道を歩く。 |
5/5 黒四ダムに到着。 |
あとは大町温泉郷の薬師の湯に入り、信濃大町駅から松本経由で帰京した。
久々に剱岳に登ることができてよかった。また、北方稜線という長いコースを踏破できたことが嬉しい。
困難さは毎年残雪の量に左右されるだろうが、去年登ったKさん、S君の言葉からすると今年の方が雪が多くて易しかったようだ。滝倉山からウドの頭を越えて平杭乗越まで、大窓から池の平山までが私の感じた核心部である。
それなりにつらかったので北方稜線はしばらく行かなくていいくらい満足した。
(2016年5月8日記す)